夏祭り、恋花火
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#121 [七瀬]
 
 
顔が熱いまんまの私を
ほったらかしにしたまま、奏君は帰った。



今、改めて思い出しても恥ずかしくって溜まらん。

いきなり
キスするか、普通!?


あの日から2日経っても、頭から離れてくれない。

奏君が。

⏰:09/03/20 00:43 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#122 [七瀬]
 
 
それに明日また祭がある。

田舎の方で、2日間。


嫌でも、奏君に会う。

しかも

そこには金魚とカステラとボールの3店しか出せへん。

ってことは……

私と遊希と大竹さん。

そして奏君の4人しか、行けへんってこと。

⏰:09/03/20 00:47 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#123 [七瀬]
 
 
 
「まつり、早くしなさい。大竹さん、もう下に来てるよ。」

とお母さんの声。

『わかってるーっ!!』


しまった!

昨日は考えすぎて、寝られへんかった。
 

⏰:09/03/20 07:46 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#124 [七瀬]
 
汚れたスニーカーに足を突っ込む。


『行ってきまーすっ!』

家を出て、エレベータのボタンを押す。


あー、もう遅いなあ。

エレベータがなかなか来うへんのにイライラする。


プップー

下から車のクラクション。

⏰:09/03/20 07:51 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#125 [七瀬]
 
 
もういいや!

私の足は階段へ。


猛スピードで下へ降りていく。

ダンダンダンダン…



「まつり、はよしろ。」
 
大竹さんの白くて大きなワゴン車が見えた。
 

⏰:09/03/20 07:54 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#126 [七瀬]
 
『ごめーん。遅れて…』


忘れてた。



大竹さんの助手席に奏が座ってたこと。

太陽がギンギンしていて、よく見えへんかった。


窓の外を見てた顔を私へ向けた。


やっぱり似てる…。

⏰:09/03/20 07:58 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#127 [七瀬]
 
 
車の助手席の後ろの席に乗り込む。

高等座席に座ってる遊希がドアを開けてくれる。


『おはようございます。』

「おはよう。」

大竹さんの不機嫌な声。


『…その遅れて、ほんまにすみません。』

「もうええ。出発すんぞ。」

⏰:09/03/20 08:02 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#128 [七瀬]
車が走りだす。

はあ。
グダグダや。


前を見ると

“おはよう”

奏君が口パクをしている。


“散々やな”

と大竹さんを指さし笑う。


そんな奏君に肩をすくめて見せる。

⏰:09/03/20 08:09 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#129 [七瀬]
 
20分ほど走って、車はいつもの業務用スーパーへ。


「確か牛乳とハチミツがないてゆうとったなあ。」

大竹さんがメモ用紙を見て呟く。

ある程度は昨日の内に屋台の方に持って行く。

でも牛乳なんかは、
この炎天下に何時間も放っておいたら、一発アウトや。

私も車から降りる。

⏰:09/03/20 08:21 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#130 [七瀬]
 
 
大竹さんが店員に色々、指示してる。

その間に私らは、パンやペットボトルを買う。


あっ、これ!

このパンめっちゃ美味しいねん。


手を伸ばす。


『ああっ!』

⏰:09/03/20 08:25 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#131 [七瀬]
後ろから手が伸びてきて、お目当てのもんを奪われる。


「まつりはほんまに、これ好きやなあ。」

後ろを振り向くと奏君。


『奏君、なんでそれ取んのよ!
いっつも、甘いパンは食べへんやんか。』


「たまにはええかな、思て。」

⏰:09/03/20 08:29 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#132 [七瀬]
その言葉に子供みたいに膨れる。


「ブッ、ハハハ。
ほんままつりは面白いわ。

嘘やって!嘘嘘!!
まつりが食べるやろなあ
思て、カゴ入れてん。」


そう笑う奏君に、
三日前のことを思い出し、恥ずかしくなる。


『…ありがと。』

⏰:09/03/20 08:34 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#133 [七瀬]
 
「どういたしまして。


ってゆうか、まつりさあ。もしかして思い出した?

三日前のこと。」


そう耳元でささやく。


『な、なんのこと!?』

真っ赤にしながら聞く。


「分かってるくせに。」
 

⏰:09/03/20 08:38 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#134 [七瀬]
意地悪く笑う奏君。


「もうそろそろ行こか。

二人の秘密がバレてしまう前に。」





車に牛乳、ハチミツを積み込んだ。


車が再出発する。

私のドキドキは先ほどよりも増していた。

⏰:09/03/20 08:42 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#135 [七瀬]
業務用スーパーから出発して40分近くが経った。


車内では欠伸が響く。

そりゃ、そうなるわな。


向こうに着くには2時間ほどかかる。

11時過ぎには着く予定やし、業務用スーパーにも寄る予定やったから、かなりの早起きをしなアカン。

もちろん、
その中には私の欠伸も率先して入っている。

⏰:09/03/20 08:55 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#136 [七瀬]
 
前を見ると、奏君も寝てるみたい。


ああ、もう無理や。

私も仮眠しよ。


そう首を少し傾けて目を閉じる。

その時、

ピリリリリリ…


携帯が鳴る。
 

⏰:09/03/20 09:00 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#137 [七瀬]
 
メール?

こんな時に誰やねん。


少しイラッとする。

宛先は……


遊希?

なんなんよ、ほんまに…。


横におる遊希に目をやると視線が合う。
 

⏰:09/03/20 09:04 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#138 [七瀬]
“はよ開けてみい” 

と催促するような目。

仕方なく、遊希に見せ付けるように携帯を開く。

するとそこには


「奏と付き合ってんの?」

の一文。


私は目を見開き、遊希を見る。

遊希の瞳には強い光が宿っている。

⏰:09/03/20 09:08 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#139 [七瀬]
 
なっ、なんで!?

なんで遊希が
そんなこと聞くんよ!


頭が混乱する。

すると、

ピリリリリリ…


私は急いでメールを開く。

そのメールには
 
 

⏰:09/03/20 09:35 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#140 [七瀬]
 
「天神祭でキスしてたやろ。
しかも、さっきもイチャついてたし。」



み、見られてた…。


なんて
答えたらええんやろ。

だって私にも分かれへん。


私らは付き合ってんの?

なあ、奏君…。

⏰:09/03/20 09:39 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#141 [七瀬]
 
目を閉じてるであろう奏君を見る。





「やっぱ付き合ってんのや。」

遊希の声がする。



『…分からん。』


私らは付き合ってんの?
 

⏰:09/03/20 09:43 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#142 [七瀬]
“私らは付き合ってんの?”

って何回、思ってんのやろ。


自分で呆れる。



「…い!おい!」

『…ああ、ごめん。』


「自分の世界に入らんといてくれ。」
 
遊希も呆れてる様子。

⏰:09/03/20 09:47 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#143 [七瀬]
 
『ほんまに分かれへん。』


「そっか。」

遊希はせれ以上、なんも聞いてこうへんかった。


私は寝ようと目をつむったけど、
全然、寝られへんかった。


奏君が買ってくれたパンは放っておいたら、
チョコレートの部分が溶けてしまった。

⏰:09/03/20 09:53 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#144 [七瀬]
 
 
目的地に着いた。


カステラはボールの隣にある。

金魚だけ、この2店から
ちょっと離れている。

安心したような、残念なような…複雑な気分。


「店建てる前に昼飯、食いに行こか。」

4人で、少し歩いたところにあるファミレスへ。

⏰:09/03/20 10:27 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#145 [七瀬]
 
大竹さんの隣に奏君。
私の隣に遊希。

向き合うように座った。


料理を注文し終える。


チラッと前を右斜めを見ると、
奏君が笑って、こっちを見ている。

そして横には遊希…。

頬杖をついている。
 

⏰:09/03/20 10:35 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#146 [七瀬]
 
アカン。
なんか気まずい。


多分、私が意識してるからそう感じるだけやろう。

でも…この空気。


耐えられへん!



すると

「なんやお前ら、元気ないやんけ。」
 

⏰:09/03/20 10:38 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#147 [七瀬]
大竹さんが口を挟む。

「いつもみたいに、
うるさいとイラッと来るけど、
何もしゃべらんかったら、それはそれで調子狂うわ。

特にまつり。
俺はもう怒ってへんで?
朝の寝坊。」


うん。忘れてた。

自分が遅刻したってこと。

でも、
まあここは、そういうことにしとこか。

⏰:09/03/20 10:43 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#148 [七瀬]
『うん。
ありがとう、大竹さん。』


「ああ。
それともなんや?

恋煩いか?恋煩い。
男でもデキたんか?」

ニヤニヤしながら聞く大竹さん…。


空気読めよっ!


この空気で、
そんなことゆうか!?

⏰:09/03/20 10:47 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#149 [七瀬]
 
『ハハ…ハ……。
そんなわけないやんか。』

なんとか笑いながら誤魔化す。


そんな私を見て、

奏君はクスクス笑う。

遊希は不機嫌さを増すように見える。


「そぉかあ。」

大竹さんはガハハと豪快に笑ってるだけ。

⏰:09/03/20 10:51 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#150 [七瀬]
 
 
料理が運ばれて来た。

食べ始める。


さっきより空気が重い。

押し潰されそう。



「まつり。」


この沈黙の中、
奏君が声を発した。
 

⏰:09/03/20 10:54 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#151 [七瀬]
 
『ん?』

「ついてる。」


『へ?』

「口の周り。
ハンバーグソース。」

自分の口の周りを指して、奏君は言った。


うそっ!

私は慌てて、ティッシュを取り出す。
 

⏰:09/03/20 10:58 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#152 [七瀬]
 
 
そんな私を見て、奏君は


「ほんま面白いわ。
朝のことといい、
今のことといい。

なあ、そう思わんか?
遊希。」


「んあ?」

奏君の挑むような目に、
遊希の目付きは、一層キツくなる。
 

⏰:09/03/20 11:04 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#153 [七瀬]
 
 
ちょっとお二人さん?


『遊…希?』



「ほんまや。
ほんまにコイツはアホや。」

そう言って、また食べ始めた遊希。


なんやったんや、今の雰囲気…。
 

⏰:09/03/20 11:06 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#154 [七瀬]
 
よう分からん雰囲気のまま、

私はアホ呼ばわりされたまま、

ファミレスを後にする。


金魚に戻る。

「じゃあ、後で奏か遊希に金魚たち持って行かすわ。」

大竹さんの言葉に
わかった
と返事して、準備にとりかかる。

⏰:09/03/20 11:23 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#155 [七瀬]
 
 
店を組み始める。


この二日間、私はどうなるんやろか。

不安と期待が入り交じる。





「金魚、持って来たで。」
 
 

⏰:09/03/20 11:36 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#156 [七瀬]
 
『それはどうも。』

「ってか。
動揺し過ぎや、まつり。」


『それは、奏君があんなことゆうからやろ!
突然……』

「突然?」


『いきなり耳元でささやいたり、
遊希を挑発するようなことゆうたり、

それに……』

⏰:09/03/20 11:41 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#157 [七瀬]
 
「それに?」

知ってるくせに。
わざとやな。

分かってても、奏君の思うツボ。


『…それに

突然、キス……したり。』


言った。

小さくって消えてしまいそうな声で。
 

⏰:09/03/20 11:44 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#158 [七瀬]
 
 
 
「したよ。
確かに俺はまつりにキスした。
あの日に。

でもな、突然じゃない。

俺はずっとキスしたかった。
まつりと。」


うれしい。

私も分かってても、聞いてしまう。
 

⏰:09/03/20 11:48 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#159 [七瀬]
『キス出来るなら誰でも良かったん?』


「アホか。そんなわけないやろ。

お前だけや。


好きやで。」



たくさんの金魚たちに見届けられながら、
私たちはもう一度、唇を交わした。

今度は両思いのまま。

⏰:09/03/20 11:53 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#160 [七瀬]
 
 
神野まつり。

17歳の夏休み真っ盛り。

とうとう私にも彼氏が出来た。

あれから、もう2年。


『奏〜!
遅れて、ごめんなあ。』

「まつり、遅ーい。」


奏、大好き。
 

⏰:09/03/20 22:40 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#161 [七瀬]
 
 
今日は2周年の記念日。

そして久しぶりのデート。


最近、
二人共、忙しくって
忙しくって…。

なかなか会えなかった。


私は今、大学生。
19歳。

奏は21歳。
 

⏰:09/03/20 22:43 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#162 [七瀬]
 
『おめでとぉ。
また1年間よろしくな。』

「こちらこそ、よろしく、まつり。」


チンッ

乾杯して、グラスを口に運ぶ。

『でも、淋しいなあ。

2年前、私と奏が付き合った祭が
今年からなくなってしもたなんて。』

⏰:09/03/20 22:49 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#163 [七瀬]
「まあな。
でも、そのおかげで
今ここで、まつりと過ごせるわけやん。
ほんまの2周年を。」


『そうゆわれたら、そぉやけど。
去年は2日、ズラしてしたよな、1周年は。』



ほんま懐かしい。


今でも、もちろん祭には欠かさず行っている。

⏰:09/03/20 22:53 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#164 [七瀬]
 
 
でも17歳の私とは大きく違っているところがある。

それは、

私はあの人ではなく、

“奏のため”に行くようになった。


祭に行くたび、奏に会えてうれしい。

昔の傷は癒えた。

あの人のことを思い出すことも少なくなっている。

⏰:09/03/20 22:57 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#165 [七瀬]
 
確実に前に進んでいる。 

中学生で止まったままの
記憶も流れてゆく。


恋花火は、もう聞こえない。

聞こえるのは、

奏の優しい声だけ。
 
 
今、私は幸せなんや。
 

⏰:09/03/20 23:01 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#166 [七瀬]
 
 
 
 
「まつり!まつりっ!!」 


『どうしたん?麻友ちゃん。
そんな血相変えて…。』



今は、
祭で一番、忙しい時間帯。

麻友ちゃん、
こんな忙しい時に、どしたんやろか。
 

⏰:09/03/20 23:07 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#167 [七瀬]
 
息を整え、
麻友ちゃんは言った。


「あんな、まつり。
落ち着いて聞いてや。」

頷く。


「…来てんねん。

ハラダタカシが、ここに来てんねん!」


ハラダ…タカシ……。
 

⏰:09/03/20 23:12 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#168 [七瀬]
 
呼吸が荒くなる。

苦しい。



ハラダタカシ
ハラダタカシ
ハラダタカシ…


原田俊(ハラダタカシ)。



あの人。

私の初恋の人……。
 

⏰:09/03/20 23:15 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#169 [七瀬]
 
 
『…うそ。うそやっ!
来てるわけない……。

そんなん嘘やっ!』


私は完全に混乱している。

お客さんがおるのも忘れ
一人、取り乱す。



「ううん。嘘やない。
嘘ちゃうねん、まつり。」

麻友ちゃんは落ち着いた口調で言う。

⏰:09/03/20 23:19 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#170 [七瀬]
 
 
 
なんで?

なんで今さら。


せっかく忘れかけてたのに。



昨日は奏との記念日であんなに楽しかったのに、
今は苦しくって仕方ない。 
 

⏰:09/03/20 23:21 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#171 [七瀬]
 
 
 
「まつりに会いたいって原田さんゆうてるよ。」


少し落ち着いて、
そんなことを麻友ちゃんから聞かされる。



『…会わへん。』


「まつり、アカン。」

麻友ちゃんは厳しい目をして言った。

⏰:09/03/20 23:25 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#172 [七瀬]
 
麻友ちゃんは

…麻友ちゃんだけは、
私の初恋を知っている。


「ちゃんと自分の気持ちにけじめをつけ。」


けじめ?

そんなん
もうとっくについてる。


7年も時が過ぎてんで?

⏰:09/03/20 23:29 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#173 [七瀬]
 
 
「そのままやったら、
奏君も苦しい思いすることになる。」


奏が?

なんでなん?


私が愛してんのは奏だけやのに。


「まつりっ!待って!!」

麻友ちゃんの声も聞かず、私は立ち去った。

⏰:09/03/20 23:32 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#174 [七瀬]
 
 
 
「ちょっと…まつり。
どしたんや、急に。」


気が付けば、ボールに来ていた。

『奏っ!』

奏に抱きつき、泣きじゃくる。

『うっ、ヒック…。』

いきなりのことやのに、
奏はこれ以上、何も聞かずにいてくれた。

⏰:09/03/20 23:36 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#175 [七瀬]
『うっ、うっ、奏ぉ〜。』

「よしよし。」

頭を優しく撫でてくれる。

早く離れな。

ボールにも、金魚にも
お客さんがいっぱいおる。

このままじゃ
麻友ちゃんにも、奏にも
迷惑かけてまう。


早く泣き止め!

早く早く…。
 

⏰:09/03/21 01:35 📱:N703iD 🆔:GhvADkNo


#176 [七瀬]
 
そう思ってるのに、

涙を堪えようとすれば、
するほど、溢れてくる。

あまのじゃくな自分の涙腺に腹が立つ。


「ちょっとお兄ちゃん?」

「抱き合ってんと、はよしてよ。」


そうゆう声が、後ろから聞こえてくる。
 
 

⏰:09/03/21 01:44 📱:N703iD 🆔:GhvADkNo


#177 [七瀬]
お客さんの堪忍袋の緒も、もう限界。

なのに、体はチッともゆうことを聞いてくれない。







「まつり。」

声がした。



あの柔らかい声が。
 

⏰:09/03/21 01:47 📱:N703iD 🆔:GhvADkNo


#178 [七瀬]
 
涙が止まる。

一瞬にして、
体温が上がってゆく。


ああ、

あの人が迎えに来てくれたんや。
 


 
「まつり?」

ピタリと泣き止んだ私を
奏が不思議そうに見る。
 

⏰:09/03/21 01:54 📱:N703iD 🆔:GhvADkNo


#179 [七瀬]
 
 
「久しぶりやな、まつり。」

あの人の声。




「誰や、あいつ。」

奏の優しかった声が、低くなる。


なのに、
私はドキドキしてる。

あの人に。
 

⏰:09/03/21 02:14 📱:N703iD 🆔:GhvADkNo


#180 [七瀬]
 
「なあ、まつり。
誰や?知り合いか?」

奏がさらに聞く。


「彼氏出来てんな。」

とあの人。



バッ

とっさに私は、奏から離れる。
 

⏰:09/03/21 02:18 📱:N703iD 🆔:GhvADkNo


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