夏祭り、恋花火
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#162 [七瀬]
 
『おめでとぉ。
また1年間よろしくな。』

「こちらこそ、よろしく、まつり。」


チンッ

乾杯して、グラスを口に運ぶ。

『でも、淋しいなあ。

2年前、私と奏が付き合った祭が
今年からなくなってしもたなんて。』

⏰:09/03/20 22:49 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#163 [七瀬]
「まあな。
でも、そのおかげで
今ここで、まつりと過ごせるわけやん。
ほんまの2周年を。」


『そうゆわれたら、そぉやけど。
去年は2日、ズラしてしたよな、1周年は。』



ほんま懐かしい。


今でも、もちろん祭には欠かさず行っている。

⏰:09/03/20 22:53 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#164 [七瀬]
 
 
でも17歳の私とは大きく違っているところがある。

それは、

私はあの人ではなく、

“奏のため”に行くようになった。


祭に行くたび、奏に会えてうれしい。

昔の傷は癒えた。

あの人のことを思い出すことも少なくなっている。

⏰:09/03/20 22:57 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#165 [七瀬]
 
確実に前に進んでいる。 

中学生で止まったままの
記憶も流れてゆく。


恋花火は、もう聞こえない。

聞こえるのは、

奏の優しい声だけ。
 
 
今、私は幸せなんや。
 

⏰:09/03/20 23:01 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#166 [七瀬]
 
 
 
 
「まつり!まつりっ!!」 


『どうしたん?麻友ちゃん。
そんな血相変えて…。』



今は、
祭で一番、忙しい時間帯。

麻友ちゃん、
こんな忙しい時に、どしたんやろか。
 

⏰:09/03/20 23:07 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#167 [七瀬]
 
息を整え、
麻友ちゃんは言った。


「あんな、まつり。
落ち着いて聞いてや。」

頷く。


「…来てんねん。

ハラダタカシが、ここに来てんねん!」


ハラダ…タカシ……。
 

⏰:09/03/20 23:12 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#168 [七瀬]
 
呼吸が荒くなる。

苦しい。



ハラダタカシ
ハラダタカシ
ハラダタカシ…


原田俊(ハラダタカシ)。



あの人。

私の初恋の人……。
 

⏰:09/03/20 23:15 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#169 [七瀬]
 
 
『…うそ。うそやっ!
来てるわけない……。

そんなん嘘やっ!』


私は完全に混乱している。

お客さんがおるのも忘れ
一人、取り乱す。



「ううん。嘘やない。
嘘ちゃうねん、まつり。」

麻友ちゃんは落ち着いた口調で言う。

⏰:09/03/20 23:19 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#170 [七瀬]
 
 
 
なんで?

なんで今さら。


せっかく忘れかけてたのに。



昨日は奏との記念日であんなに楽しかったのに、
今は苦しくって仕方ない。 
 

⏰:09/03/20 23:21 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#171 [七瀬]
 
 
 
「まつりに会いたいって原田さんゆうてるよ。」


少し落ち着いて、
そんなことを麻友ちゃんから聞かされる。



『…会わへん。』


「まつり、アカン。」

麻友ちゃんは厳しい目をして言った。

⏰:09/03/20 23:25 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


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