夏祭り、恋花火
最新 最初 全
#225 [七瀬]
嘘?
“奥さんが死んだ”
ってゆうのは嘘?
「ほんまは子供なんておらんねん。
8年前……。
まつりが小学生の時、流産した。」
:09/03/24 08:24 :N703iD :z5682swI
#226 [七瀬]
なに…それ。
安心は束の間。
“奥さんが死んだ“
のが嘘なんやなくて、
“子供がおる”
ってゆうんが嘘?
そんなん…、
なんでいまさら。
がく然とする。
:09/03/24 08:27 :N703iD :z5682swI
#227 [七瀬]
私が今まで見てきたのは
夢やった。
家族に囲まれて笑うあの人は
ただの幻やった。
なんのために願ったんだろう。
“幸せになっ”
:09/03/24 08:30 :N703iD :z5682swI
#228 [七瀬]
「あの時…。
まつりが“幸せにな”ってゆうてくれた時。
おっちゃん……心底、誓った。
なのに……」
あの人は声は震えている。
私は何も言わない。
言えない。
:09/03/24 08:33 :N703iD :z5682swI
#229 [七瀬]
それは、
あの人に同情して何も言えないんじゃない。
感情がない。
言わば、脱け殻状態。
あの人は続けた。
「買い物行ってた時、急に…。
普通にしてたのに。
転んだわけやない。無理してたわけでもない…。」
:09/03/24 08:38 :N703iD :z5682swI
#230 [七瀬]
声の震えが増してゆく。
「まつりには言われへんかった。
あんな喜んでくれてたのに。」
ここで、やっと悲しさが襲って来た。
あの人も苦しかったんや…。
泣きたかったんや。
私以上に。
:09/03/24 08:41 :N703iD :z5682swI
#231 [七瀬]
「それから、自殺しようとした。
その時は未遂で終わったけど…。
でも彼女は完全に病んでた。
何回も何回も……
止めても止めても、死のうとした。」
途中から、すすり泣きを入れつつ、話す彼。
私の目も自然と潤みだす。
:09/03/24 08:47 :N703iD :z5682swI
#232 [七瀬]
「彼女の両親に、相談すると
“病院入れろ”と一言、
言われただけやった。」
冷たい両親。
怒りを覚える。
「俺、それだけはいやで…
俺の両親にゆうたら協力してくれた。
だから神野商会を止めた。
彼女となるべく一緒にいてあげよう思て。」
:09/03/24 08:52 :N703iD :z5682swI
#233 [七瀬]
途中、あの人が自分のことを
“おっちゃん”ではなく
“俺”とゆうてるのに気付いた。
それだけ余裕がなくなってんのかな?
『気付かんで、ごめん。』
すると、あの人は首を振った。
:09/03/24 08:57 :N703iD :z5682swI
#234 [七瀬]
「アホ。
お前は自分のことだけ考えてればいい。」
そう笑ったけど、今にも壊れてしまいそうだった。
「それから、まもなくして
癌…見つかった。」
なんとなく予想はしていた。
:09/03/24 09:01 :N703iD :z5682swI
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194