夏祭り、恋花火
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#232 [七瀬]
「彼女の両親に、相談すると
“病院入れろ”と一言、
言われただけやった。」
冷たい両親。
怒りを覚える。
「俺、それだけはいやで…
俺の両親にゆうたら協力してくれた。
だから神野商会を止めた。
彼女となるべく一緒にいてあげよう思て。」
:09/03/24 08:52 :N703iD :z5682swI
#233 [七瀬]
途中、あの人が自分のことを
“おっちゃん”ではなく
“俺”とゆうてるのに気付いた。
それだけ余裕がなくなってんのかな?
『気付かんで、ごめん。』
すると、あの人は首を振った。
:09/03/24 08:57 :N703iD :z5682swI
#234 [七瀬]
「アホ。
お前は自分のことだけ考えてればいい。」
そう笑ったけど、今にも壊れてしまいそうだった。
「それから、まもなくして
癌…見つかった。」
なんとなく予想はしていた。
:09/03/24 09:01 :N703iD :z5682swI
#235 [七瀬]
“まもなく”とゆうても、あの人が神野商会を辞めて3年が経っていた頃。
私が中2の時だった。
私が奏と出会って1年が過ぎてた時期。
あの人の奥さんに癌が見つかった。
乳ガンだった。
:09/03/24 09:05 :N703iD :z5682swI
#236 [七瀬]
心の病は、癒されても
体はどんどん蝕まれてゆく。
手術を受けた。
結果は一応、成功。
でも1年後、転移した新たな癌が見つかったらしい。
医者には、“手遅れ”と言われた。
それから抗がん剤だけの治療が始まった。
:09/03/24 09:09 :N703iD :z5682swI
#237 [七瀬]
髪は抜け落ち、
頬は痩せこけ…
癒えた心の傷も、また開きだす。
あの人は頑張った。
だけど
とうとう先月
彼女は屋上から飛び降りた。
:09/03/24 09:12 :N703iD :z5682swI
#238 [七瀬]
飛び降りようが、しなかろうが、もう長くはなかっただろう
と医者は言ったとゆう。
「彼女……由利は最後の力を振り絞ってでも、
少しでも早く…
楽になりたかったんやな。」
遠くを見ながらあの人は言った。
:09/03/24 09:16 :N703iD :z5682swI
#239 [七瀬]
今度は同情して、何も言われへんかった。
「葬式はあっとゆう間やった。
あれ、不思議なもんで
葬式中は慌ただしくって悲しみも忘れてまうのに、
終わったら、普通の何倍も悲しくなる。」
そう笑うあの人に胸がキュッと締め付けられた。
:09/03/24 09:24 :N703iD :z5682swI
#240 [七瀬]
「俺も死んじゃおっかなーって思た時、
まつりの顔が浮かんで、
会いたなった。
だから今日、会いに来た。」
そうゆうと、真っすぐに私を見つめた。
『…死なんといて。』
:09/03/24 09:29 :N703iD :z5682swI
#241 [七瀬]
気が付けば、私の手と頬は涙でグッショリ。
『死んだらアカン。
死んだら…』
涙で詰まる。
「ありがとう。」
そう涙をすくってくれる。
これじゃ、どっちが慰めてんのか分からん。
:09/03/24 09:33 :N703iD :z5682swI
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