夏祭り、恋花火
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#420 [七瀬]
でも、カステラを焼くのは難しい。
粉を入れる量。
たくさんある穴に、すべてを同じ量にするのは、考えただけでも…
フタを開くタイミングも、大切。
早すぎると、中が生で冷たかったりする。
中には、生が好きで、
わざと生にしてとゆう人もおるけど、ごくまれだ。
:09/04/02 09:19 :N703iD :opfWhb72
#421 [七瀬]
だから商品にならない。
かといって、焼きすぎてももちろんダメ。
このタイミングが一番、
大切で難しい。
ポンポンポンポンと
軽やかに穴からカステラを取り出してゆく遊希。
「なにしてんねん。」
:09/04/02 09:32 :N703iD :opfWhb72
#422 [七瀬]
『へ!?』
「“へ”ちゃうわ。
はよ入れぇや。」
『ああ、ごめん。』
私がボンヤリしてる間に、焼き上がって
湯気の出ているカステラたち。
「お、毎年、来てくれる子やんな。」
:09/04/02 09:36 :N703iD :opfWhb72
#423 [七瀬]
遊希が女の子に笑いかけると、その子は笑った。
「この子、毎年カステラ買いに来てくれんねん。」
うれしそうな遊希。
「いつもは、お父さんと一緒やのに…お父さんは?」
「そこ。」
女の子の指差す。
その先に目を向けると、男性が一人、軽く会釈した。
:09/04/02 09:41 :N703iD :opfWhb72
#424 [七瀬]
「はい。」
私が、急いで詰めてる間に遊希は残ってたカステラを一つ、女の子の手に握らせた。
「ありがと。」
カステラを口一杯に頬張る女の子に遊希は
「こちらこそ、いつもありがとぉな。
また来年も来てな。」
と言った。
:09/04/02 09:46 :N703iD :opfWhb72
#425 [七瀬]
女の子と、バイバイした後も列は続く。
遊希の汗も私の手も止まらない。
たくさんあったペットボトルも空に近づいてゆく。
3時間近く、この状況。
さすがに疲れた…
体力も限界に達する
その瞬間…
:09/04/02 09:54 :N703iD :opfWhb72
#426 [七瀬]
ヒュー、ドーン!!
花火が上がった。
人々の目が空へと向かう。
うそ…っ
今日は、中止なんじゃ…
「お!」
遊希も店から乗り出した。
:09/04/02 12:32 :N703iD :opfWhb72
#427 [七瀬]
「今年は天神祭に負けへんくらい、きれぇや。」
遊希のゆう通り、とても綺麗な花火だった。
今、思うと
この時から、
また私の花火は上がり始めていたのかもしれない。
以前よりも、激しさを増した恋花火が…
:09/04/02 12:37 :N703iD :opfWhb72
#428 [七瀬]
パチパチパチパチ…
最後の取りを飾った、大きな花火も散っていった。
花火が終わると、
客数はより一層、増えて
詰める作業が続いた。
「お疲れ。」
そして、祭が終わる頃に
やってくるのは
いつもの幸せな時間。
:09/04/02 21:56 :N703iD :opfWhb72
#429 [七瀬]
『お疲れ〜…フフ。』
「なに笑ってんねん。
薄気味悪い。」
『いや〜、遊希はええパパになるなあ思て。』
「なんやそれ。」
缶ジュースをクイッと飲みながら遊希は言った。
:09/04/02 21:59 :N703iD :opfWhb72
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