夏祭り、恋花火
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#61 [七瀬]
「で!
で、なんて返事したん?」

『普通に断ったよ。
“ごめんなさい”って。』


「お試し期間みたいなんはないわけ!?」

『だって全然知らん人やし…。
一回もしゃべったことないし。』


はぁ。

遊希はため息をついた。

⏰:09/03/18 22:33 📱:N703iD 🆔:1U/TvnL6


#62 [七瀬]
「お前アカンわ。」

は?

「一生男できんわ。
結婚もせんと、一人おばあちゃんや。」

頭を横にふる遊希。


『あんたにそんなこと
決められたくないっ!』

「そんな

“自分から好きになった人じゃなきゃいや”とか
幼稚園児みたいなこと言ってたら、そうなるやろ。」

⏰:09/03/18 22:39 📱:N703iD 🆔:1U/TvnL6


#63 [七瀬]
うっ……。

遊希の言ってることが
図星やから、なんも言い返されへんかった。



そう。

私は幼稚園児だ。


まだ
“いつか、あの人が迎えに来てくれる”
という甘い夢を見ている。

甘くて二度と叶わないだろう夢。

⏰:09/03/18 22:43 📱:N703iD 🆔:1U/TvnL6


#64 [七瀬]
 
7歳の時。


初めてあの人に出会ったのは、10年前。



その人もただのバイトだった。

そして当時7歳の私は、
ただの“バイト先の子供”という存在。

あの人は当時23歳。


年の差は15歳。

⏰:09/03/18 23:43 📱:N703iD 🆔:1U/TvnL6


#65 [七瀬]
 
また新しい人が来た。

最初はいつものように、
そう思ってた。


『なあなあ〜。
アンタ名前は〜?』


あの頃の私はバイトの子が入る度に
男だろうが、女だろうが、話し掛けてた。

そして質問攻めにする。
 

⏰:09/03/19 13:03 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#66 [七瀬]
『何才なん?』

『どこ住んでんの?』

『なんで、ここで働いてるん?』

『彼女おんの?』


今、思えば
かなりウザいガキ。

子供嫌いな私やったら、
多分キレてた。


お母さんにも、よく怒られた。
“邪魔したらアカン”って

⏰:09/03/19 13:09 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#67 [七瀬]
 
最初はニコニコと答えてた子たちも、

忙しくなってきたり、

隅々まで聞かれたり。

段々、うっとうしくなってくる。


当たり前やわな。

そんなことをするのが私は面白くって溜まらんかった。

ほんまひねくれてるガキ。

⏰:09/03/19 13:13 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#68 [七瀬]
 
で、いつものように質問しまくる。


でも、あの人は

いつもの私の逆のポジションにおった。


いつも、バイトの子を
質問して、うっとうしがってる顔を見て楽しんでる私。

私が質問しまくる姿を見て楽しんでるあの人。

⏰:09/03/19 13:16 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#69 [七瀬]
質問に答えながらも、ニヤニヤ笑ってる。


なんか負けた気がした。

負けず嫌いな私は、
ムキになってさらに質問する。


そんな私を見て楽しんでる。

あの人は“大人”やった。
“子供なんて、どうってこない”
って感じやった。

⏰:09/03/19 13:20 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#70 [七瀬]
それからというもの、
私はずっと祭に行ってる。

お母さんにたまに、ついていってただけやったのを、

“祭”と聞いたら
ついてゆく。

もちろん、あの人に会うために。

めっちゃ楽しい。

あの人としゃべることが。

あの人は子供の私にも真剣にしゃべってくれた。

最初は適当やったくせに。

⏰:09/03/19 13:26 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#71 [七瀬]
 
でも、そんなことが
ずっとは続かへん。


私が小学4年生になろうとする前、

「祭に来たいなら働き!」

とお母さんに言われた。


いつか言われるなあ
とは思ってた。

だって、
あの人のところで
ずっとしゃべってたら
そう言われるよな。

⏰:09/03/19 13:33 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#72 [七瀬]
 
 
 
それから、祭に行きたい私は働きだす。


と言っても、10歳になったばかり。

初めの内は、お母さんと一緒にした。

お金をもらって、お釣りを渡すだけの役。

でも、ドッと疲れた。
 

⏰:09/03/19 14:22 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#73 [七瀬]
しゃべる暇なんてない。

一歩も動かず、同じことを繰り返すだけ。


それでも私はうれしかった。
“また会える。
あの人に会える。”

そう思いながら頑張る。


あの人には前ほどは会えなくなったけど、
祭が始まる前と終わった後には
少しだけ話せた。

⏰:09/03/19 14:26 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#74 [七瀬]
 
それだけで十分やった。


それに働くことで、
働くことの気持ち良さ
を知った。


ますます祭が好きになっていく。



…はずやったのに。
 
 

⏰:09/03/19 14:29 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#75 [七瀬]
時は進んでゆく。

中学1年生になったばかりの春休み。


造幣局の通り抜け。

よくテレビでも放送されたりする。

この通り抜けには、
毎年、桜見物にたくさんの人が来る。

1メートル歩くだけでも、大変。

特に土日は押し潰されそうなくらい混雑する。

⏰:09/03/19 14:34 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#76 [七瀬]
 
 
そこには神野商会、唯一の茶店(チャミセ)を出す。


茶店を出してるのはここだけ。



私は茶店が大好き。

だって、あの人と長くおれるもん!

茶店の仕事は主に、
お客さんの注文を聞いて、料理、飲み物を届けて、
お金を貰う。

⏰:09/03/19 14:43 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#77 [七瀬]
 
一つの茶店に注文を聞く人が5、6人。


その他におでんを入れる人。
焼そばや焼き鳥を焼く人。

味噌汁を作る人。

とか、それぞれ役割分担する。


だから、
普段は屋台をしてる人も、茶店に一斉動員するというわけ。

⏰:09/03/19 14:48 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#78 [七瀬]
 
ってことは、

わざわざ屋台に遊びに行かんでも、
あの人は茶店におる。


やっぱ茶店は大好きや!

あの人は焼そばを焼いてる。

私は注文聞き係。

「焼そば一つ。」

と言われるたびにうれしくって、つい声が高くなる。

⏰:09/03/19 15:27 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#79 [七瀬]
『焼そば一つでーすっ!』


そしてあの人の傍で
焼そばが焼きあがるのを
待つ。


幸せな時間。


そんなことをしていると
時間はあっという間に過ぎてゆく。

通り抜けは夏祭りと違って終わるのが早い。


遅くて8時くらいまで。

⏰:09/03/19 15:31 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#80 [七瀬]
でも、

桜の咲き始めから満開まで

満開から散り始める頃まで店を出している。


だから10日間くらいしている。



学校が終わると、
ジャージに着替え、真っ先に駅へと向かう。


二駅向こうの
あの人の元へと…。

⏰:09/03/19 18:00 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#81 [七瀬]
 
 
 
でもその10日間もあっという間。


通り抜け最終日。



『ありがとうございました。』

最後まで酒を飲んで
なかなか腰を上げないサラリーマンたちも
ようやく席を立った。
 

⏰:09/03/19 18:02 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#82 [七瀬]
 
ふぅ。
やっと帰った。

疲れた身体にムチを打ち、最後の仕事をし始める。

それは洗い物。


お客さんの使った皿やら箸。
後はおでんを煮た大きな鍋など。

かなりの重労働。


大体2、3人の女の子たちとする。

⏰:09/03/19 18:11 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#83 [七瀬]
 
はずが女の子たちは、
おばあちゃんに呼ばれ、
とりあえず一人で始めることにした。


春とはいえ、まだ肌寒い季節。

冷たい水に耐え、金ダワシに洗剤をつけ、こする。



「まつり。」
 
後ろから柔らかい声。
 

⏰:09/03/19 18:14 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#84 [七瀬]
振り返ると、そこにはあの人。

「今日で最後やな。」

私はこの時、この意味がよく分からんかった。

『うん。今度は夏やな。』

これが終わると、天神祭まで祭がない。

「そやな。」

今、思うとなんで気付かんかったんやろう。

悲しそうな顔してたのに。

⏰:09/03/19 18:20 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#85 [七瀬]
 
 
『どうしたん?そんな顔して。』

「いやまた会おな。」

『なに言ってんの。』

クスクス笑う。


「また迎えに来るわ。」

『トラックで?』


その当時、私はよくトラックで送り向かいをしてもらってた。

⏰:09/03/19 19:58 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#86 [七瀬]
 
 
 
「うん、トラックで。
きっとな。」





それが最後に聞いた、あの人の言葉だった。
 
 
 

⏰:09/03/19 20:00 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#87 [七瀬]
 
中学生になって初めての、天神祭。



あの人は来なかった。


そして入れ替わるように、新しいバイトの子たちが入ってきた。


なんかあったんやろか?

と最初は思った。


けれども、もう4年。

⏰:09/03/19 20:04 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#88 [七瀬]
 
あれから4年が経った。



生きてるかどうかも分からない。


時は確実に過ぎて行ったのに、

私は置いてきぼり。


いつまでも中学生のまま。 
 
 

⏰:09/03/19 20:07 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#89 [七瀬]
 
 
 
もー、暑い!
暑い暑い!!

座ってるだけで汗が出てくる。


「まつり、ご飯食べに行こか。」

『奏君、行こか。』


天神祭二日目。

奏君と一緒にご飯を食べに行く。

⏰:09/03/19 20:25 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#90 [七瀬]
 
 
昨日はあんま寝られへんかった。


遊希が色々聞くから…。



「遊希から聞いてんけど、
まつり、男と付き合ったことないんやって?」


遊希〜!
 

⏰:09/03/19 20:27 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#91 [七瀬]
 
 
 
『…そうやけど。
やっぱ変かな?
この年で彼氏もできたことないって。』


「うーん。別にええやん。まつりのペースでゆっくり頑張りぃ。」



…ありがと、奏君。
 
 

⏰:09/03/19 20:31 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#92 [七瀬]
「あ、ここここ。」


そう言って、レトロ風の喫茶店?に入っていった。


「チャーハンが美味しいねん、ここの喫茶店。

チャーハン二つ。」

そう勝手に注文されてしまった。

ってか、やっぱりここは喫茶店みたい。

まるで昭和時代にタイムスリップしたみたいな店。

⏰:09/03/19 20:34 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#93 [七瀬]
 
 
しばらくしてチャーハンが二つ運ばれてくる。


普通のチャーハン。

特に目立ったとこはない。


『いただきます。』

スプーンを口に運ぶ。



『んっ!美味しい〜!!』
 

⏰:09/03/19 20:37 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#94 [七瀬]
 
なにこれなにこれ!


めっちゃ美味しいやん!!

素朴やのに、忘れられへん味。


「やろ?」

奏君はうれしそうに笑う。


あまりに美味しくって、
あっさりと食べおわる。

『ごちそうさま。』
 

⏰:09/03/19 20:40 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#95 [七瀬]
「旨かったやろ?」


見ると奏君もいつの間にか食べおわってて、タバコを吸うてる。

『うんっ!

こんな店知らんかったわ。最近はずっと牛丼やったから胃、もたれとってん。』


「満足してもらったみたいで良かった。」

そう言って、
奏君は横を向いてフーと白い煙をはく。

⏰:09/03/19 20:44 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#96 [七瀬]
 
 
あ…、やっぱ似てる。



そういう仕草。







奏君はあの人に似てる。
 
 
 

⏰:09/03/19 20:46 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#97 [七瀬]
 
「もうそろそろ店出よか。
あんまり油売っとったら、給料引かれるわ。」


店を出た。




奏君とバイバイして、金魚に向かう。


奏君…。
 

⏰:09/03/19 21:19 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#98 [七瀬]
 
 
初めて遊希がここにやって来た時、私は目を奪われた。



遊希の後ろにおった奏君に。


一瞬、
“あの人が迎えに来たんや”と思った。


そんなはずないのに。
 

⏰:09/03/19 21:22 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#99 [七瀬]
 
 
年が近いからか、
遊希はよく話し掛けてきた。

奏君と仲良くなりたかった私は、
遊希を通して、奏君に話し掛けた。


でも奏君のことを知れば知るほど思い知る。



奏君はあの人とは違うんやって…。
 

⏰:09/03/19 21:27 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#100 [七瀬]
 
 
でも時々、

奏君の何気ない仕草や表情があの人に似てて

ドキドキする。



ほんま私はアカンな。

引きずり過ぎ。


いつまでも、あの人を忘れられへんまま…。

⏰:09/03/19 21:30 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#101 [七瀬]
 
 
 
「まつり、ご飯食べに行かへん?」


いきなりの声で、ハッと我に帰る。

『あ…ああ、遊希。』

「ボーッとして、どしたんや?」


『なんもないよ。

あ、ごめん。
さっき奏君と行ってん。』

⏰:09/03/19 21:34 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#102 [七瀬]
 
「奏と?
…ふーん、そっか。」


『うん。


ってか奏君ゆうたやろ!

私が“一度も男と付き合ったことない”って!!』


「うん、悪ぃ。」

そう言いながらも、
悪びれる様子のない遊希。 
 

⏰:09/03/19 21:39 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#103 [七瀬]
『ほんまに反省してる!?
もう変なこと、ゆわんといてや!』


「…ん。」

遊希は元気なく去っていった。


なんなん、あれ。

あんなに落ち込まんでもええやん。

私…、
そんなキツい言い方した? 
 

⏰:09/03/19 21:53 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#104 [七瀬]
 
 
ドンドンドンドン…

太鼓の音が段々、大きくなってきている。


祭の盛り上がりが最高潮になってきた。

金魚すくいに夢中の人たちも手を止めて見ている。


こんなん何がええんやろ。うるさいだけやん。

私は冷めた目で通り過ぎてゆくお神輿を見ている。

⏰:09/03/19 22:00 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#105 [七瀬]
 
太鼓の音も次第に小さくなっていき、完全に消えた。



そして人々が、また金魚たちに目を戻した頃……





ヒューッ ドン!!
 
 
花火が上がる。
 

⏰:09/03/19 22:04 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#106 [七瀬]
 
 
人々の目は空に向かう。



歩いていたカップルも
“わあ、キレイだね”
とか言いながら立ち止まる。

私のキライなガキ共も、キャッキャゆうて騒いでる。


これも毎年のこと。
 
 

⏰:09/03/19 22:08 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#107 [七瀬]
 
 
毎年のことなのに、



私の心臓は慣れてくれない。


ドクドクうるさい。


あの人も見てるんかな?

これも毎年、思うこと。


見てるわけないのに。
 

⏰:09/03/19 22:11 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#108 [七瀬]
 
 
 
花火が終わっても、
まだまだ人は、ようさん歩いてる。


「よーし、勝負しよーや。」

若い男たちが金魚すくいに群がる。


これも毎年のこと。

これにはさすがに慣れたけど。

⏰:09/03/19 22:16 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#109 [七瀬]
 
 
 
毎年毎年、そんなこんなで天神祭を終える。



「まーつり。」

今度は奏君が一緒に潰しに来てくれた。


ドキドキする。

だって

昔、よくあの人も潰しに来てくれたから。

⏰:09/03/19 22:20 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#110 [七瀬]
 
 
 
金魚も潰し終え、トラックがやってくる。

今日は天神祭は最終日やから、トラックに積み込みをする。



私は女の子やし、
これはさすがにやらない。


遊希、奏君、後の若いバイトの男の子たちが
軍手をはめて、どんどん積み込んでゆく。

⏰:09/03/19 22:24 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#111 [七瀬]
 
まるで、
さっきまで人がワイワイ騒いでたようには見えない。

屋台も跡形もない。



『お疲れ〜。』

みんなにジュースを配る。


みんな死にそうな顔をしてる。
 

⏰:09/03/19 22:27 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#112 [七瀬]
 
奏君にも渡す。


「ありがと、まつり。」

そう言って、缶コーヒーを飲み始める。

その横顔がほんまにあの人に似てて、
つい見惚れてしまう。



「どしたんや?
そんなに見て…
俺の顔になんか付いてるか?」

⏰:09/03/19 22:32 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#113 [七瀬]
 
『…似てる。』


「え?」

無意識に口が開く。



『…人に。
私の初恋の人に。』

奏君の目が大きくなっていったのに気付く。


『…あ、ごめん!
変なことゆうてごめん。』 

⏰:09/03/19 22:37 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#114 [七瀬]
 
すると奏君はフッと笑って

「どんな人なん?
まつりの初恋の人って。」


私は少し戸惑った。

『どんな人って…
優しい人やで。

奏君みたいに……。』


「なあ、まつり。

それって告白してんの?」 
 

⏰:09/03/19 22:40 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#115 [七瀬]
 
告白…してんのかな?


うつむく。

分からん。





「答えへんってことは、
そうゆう意味やって解釈すんで。」



え?
 

⏰:09/03/19 22:44 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#116 [七瀬]
 
顔を上げると


チュ





唇に柔らかいものが当たる。



奏君にキスされてた。
 
 

⏰:09/03/19 22:47 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#117 [七瀬]
 
 
「フフッ、驚いた?」



いきなりのことで固まる私。





これが私と奏が付き合い始めたきっかけ。
 
 

⏰:09/03/19 22:49 📱:N703iD 🆔:DKWoRP7w


#118 [七瀬]
 
 
 
こめかみに汗の滝が流れる。

今、私はプリント集とにらめっこの最中。



あー、分からん。
お手上げや。

少し頭を冷やそうと冷蔵庫へ向かい、一番上を開ける。
 

⏰:09/03/20 00:29 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#119 [七瀬]
 
あったあった!!


アイスクリームを取出し、袋をポイッ。

口に運ぶ。

ああ、生き返るわあ。


アイスクリームで頭が冴え渡ってる内に
またプリントに目を通す。



でも次は他のことが思考回路を邪魔する。

⏰:09/03/20 00:33 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


#120 [七瀬]
 
 
天神祭の最終日。


あの後、
まだ固まってる私に奏君は


「秘密やで。」

そう言って、
私の唇に人差し指を乗せて笑った。


私は体温が上昇するのを
感じた。

顔が熱い。

⏰:09/03/20 00:37 📱:N703iD 🆔:bKNl0Pwo


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