黒猫の棲むところ
最新 最初 🆕
#500 [イリア]



雨の音 風の声 聴いて
揺りかごを揺らして

早く私を迎えにきて――……


⏰:09/03/27 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#501 [イリア]



キャハハハハ……


時折もれる、楽しそうな笑い声。


⏰:09/03/27 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#502 [イリア]



苦しくなる。


何故、こんな気持ちになるの。

どうしてこんな暗い場所で、
あなたたちは、笑っているの。


この闇は何。

この甘い甘い、血の香りは何?


⏰:09/03/27 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#503 [イリア]



誰だろう?


もう少しだけ近づいてみようか。

そうしたら、
もっとはっきり見えるかも。


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#504 [イリア]



唄が聞こえる方向に
足を一歩踏み出す。


女の子が、私を見つめた。


七「……え?」


思わず声を出す。


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#505 [イリア]



こっちを見て、
楽しそうに笑う少女は…





七「―――………私……?」


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#506 [イリア]



男の子の顔は、ぼやけていて見えない。


何、何なの?
ここは、どこ?



幼い私に向かって、手を伸ばす。


⏰:09/03/27 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#507 [イリア]



グィッ


するとすぐに
誰かに意識を掴まれ
引き戻される。


意識が遠のく。


⏰:09/03/27 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#508 [イリア]









「――……僕は君を、守りたい」


⏰:09/03/27 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#509 [イリア]



引き戻される直前に
顔の見えない、男の子の声が響いた。



ズキッ


七「痛ッッ!!」


⏰:09/03/27 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#510 [イリア]



頭が痛い。
割れそうだ。




痛い…痛い―………


⏰:09/03/27 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#511 [イリア]



七「―――……痛………」

猫「――……??!!……オイ!!!!」



七「?」


⏰:09/03/27 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#512 [イリア]



目の前で、
夢の中の男の子とは違う少年が
私を心配そうに覗き込んでいた。


⏰:09/03/27 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#513 [イリア]



七「―…?猫さん…」


猫「オイ…あんた、大丈夫か?」


風が吹き抜けるテントの中。
見覚えのある景色。
ついさっきまで麗さんと
話をしていた場所。


⏰:09/03/27 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#514 [イリア]



七「……………」



あれは、どこだったんだろう。

あの檻も、あの暗さも。
何故か私を、懐かしくさせる。


⏰:09/03/27 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#515 [イリア]



猫「…オイ、聞いてる?」


七「…私…どうしたんですか?」


猫「それは俺が聞いてるの。

迎えにきたらさ、あんた
座り込んで、うなされてるし。」


⏰:09/03/27 13:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#516 [イリア]



うなされてた…

そうか私、寝ちゃったんだ。


猫「―…嫌な夢でも、見てたわけ?」


七「……嫌な夢……?」


⏰:09/03/27 13:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#517 [イリア]



分からない。

分からない。



――……僕は君を、守りたい



あの男の子の声だけが、
鮮明に頭に響き続ける。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#518 [イリア]



深い闇と、甘い血の香り。


そんな場所で
屈託(クッタク)なく笑っている
幼い私の顔。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#519 [イリア]



猫「―…気分悪い?
医者呼ぼうか?」


猫さんの綺麗な声が聞こえる。

心配してくれてるのかな。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#520 [イリア]



七「―…変な夢…見て…」


猫「…変?」


七「はい…でも、もう大丈夫です。
ただの夢ですよね。ごめんなさい。」


⏰:09/03/27 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#521 [イリア]



アハハ、と笑ってみせる。


そう、夢なんだ。

今の私には、関係ない。


⏰:09/03/27 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#522 [イリア]



猫「―…夢と現実は、必ず繋がってる」


七「………え?」


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#523 [イリア]



猫「繋がってるんだ。

――……俺は、そう思う。」


猫さんの顔がかすむ。
少し悲しそうな顔に胸が痛む。


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#524 [イリア]






―…繋がってる。

私とあの夢は…繋がっている?


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#525 [イリア]



七「―…猫さん…」


猫「……?何?」



七「―…私がちゃんと、
全部思い出したとき…

それでも私は、私だから…」


⏰:09/03/27 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#526 [イリア]



風が吹いている。

記憶をなくす前も私は
この風を感じれていたのかな。


⏰:09/03/27 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#527 [イリア]








七「―……今と変わらず、

傍(ソバ)で笑ってくれますか?」


⏰:09/03/27 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#528 [イリア]



猫さんが驚いた顔をした。

瞬間、いま自分が聞いたことに
焦りと恥ずかしさを感じる。


⏰:09/03/27 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#529 [イリア]



七「……ッッ!!///いえ、別に!!
なに聞いてんだろ私、寝ぼけてる!!//
忘れて下さい//忘れ―…「あんたが」」


猫さんの声。

変わらない、甘い、甘い声。


⏰:09/03/27 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#530 [イリア]





猫「―…あんたが変わらないなら、
俺も変わらない」



その声に、表情(カオ)に

今日一日だけで
どれだけ鼓動を速めさせられただろう。


⏰:09/03/27 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#531 [イリア]



猫「―…行こう、もう飯の時間だ」


猫さんは私の腕を引っ張り立たせると

そのまま外に歩き出す。


⏰:09/03/27 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#532 [イリア]



猫さんの手のひらに、
確かな熱を感じる。



私たちは生きていること。

ここは夢じゃないということ。



目の前の人の優しさに、
溺れてしまってるということ。


⏰:09/03/27 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#533 [イリア]



確かなことは少ないけれど、
少しずつ、増えてきた。





私たちは布をめくり、外に出る。

さっきまでの雨はどこかに消え、
紅い夕日が顔を見せていた。


⏰:09/03/27 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#534 [イリア]



第一話:opening
>>3-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-425
>>431-533

安価
>>2

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★

⏰:09/03/27 13:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#535 [イリア]


>>533から

⏰:09/03/28 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#536 [イリア]



猫さんに手を引かれ、
大きなテントの裏口に回る。

するとさっきの川が見え、
その近くに人溜まりができていた。


⏰:09/03/28 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#537 [イリア]



猫「――……チ、また来てやがる」


七「?…誰がですか?」


猫「この劇団のファンだよ、
移動劇団ッつっても噂は流れる。

人気があるって、大変だね本当。」


そう言うと猫さんは
私と繋がれていた手を離した。


⏰:09/03/28 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#538 [イリア]



「――……ッッ??!//黒猫さん??!!//」


人溜まりの中から声がした。



猫さんは見たことのない笑顔で
ヒラヒラと手をふる。


⏰:09/03/28 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#539 [イリア]







七「――……何ですか、その笑顔。」


猫「クス、役者ってね、

イメージが大切なんだよ」


⏰:09/03/28 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#540 [イリア]



何十人もの人だかりが
一気に私たちのほうに流れてくる。


「キャァッ!!//やっぱり
本物のほうが綺麗だわ!!///」


「噂通りのお方!!///」


「お綺麗ですねぇ//
何か贈り物をしたいのだけど、
お好きなものは何かしら?///」


⏰:09/03/28 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#541 [イリア]



次々とファンの人の声がする。

よく見ると向こうのほうで
狼さんもファンの人に囲まれている。



――……麗さんの姿はない。

麗さんどうしたんだろ…
もう先に来てると思ったのに…


⏰:09/03/28 12:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#542 [イリア]



私がそんなことを考えてる間にも
ファンの人たちの質問は続く。


「私、前に一度違う街で
この劇団の講演を見たことあって//
そのときから黒猫さんの大ファンで!!//

覚えています?あれは去年の今頃、
セパナ会館での講演で…//」


⏰:09/03/28 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#543 [イリア]







猫「―…『夢の街、スレライナ』」


猫さんはそう言うと

妖艶に微笑んだ。


⏰:09/03/28 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#544 [イリア]



「そうです!!//流石だわ!!//
私あのときの黒猫さんの最後の台詞、


あれを聞いたとき本当に鳥肌が…//」


⏰:09/03/28 12:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#545 [イリア]






「―…嗚呼、コレを見よ。」


猫さんの声が響く。


⏰:09/03/28 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#546 [イリア]



猫『コレが本物の、我らの故郷。
スレライナのあるべき姿だ。

王、兵、そして群集。
殺戮(サツリク)と哀話(アイワ)。

壁を創(ツク)ったのは誰だ??』


⏰:09/03/28 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#547 [イリア]



いつもよりずっと澄んだ声。
思わず聞き惚れる。

しばらくすると
またファンの人たちが叫び始める。


⏰:09/03/28 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#548 [イリア]



「キャァッ!!//それです!!//
あぁもうどうしましょう!!//
明日の講演が待ちきれないわ//」


猫「―…クスッ、有難う。
僕も今から、待ち切れません。」



誰だよ僕って。

ちょっと性格違い過ぎません?


⏰:09/03/28 13:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#549 [イリア]



猫さんの声に、また人だかりが増える。


っていうか、あきらか私邪魔だよね。
そう思い、一歩後ろに下がる。

少しの間、離れていよう。

そう思った、そのとき。


⏰:09/03/28 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#550 [イリア]



狐「はいはいはい!!」


狼さんの周りの人だかりで、
狐さんの声がした。



狐「お客様、これから僕らは
最後の練習に入ります。
一度、ご退席願えますか?」


ニコッと笑い、狐さんが言う。


⏰:09/03/28 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#551 [イリア]



「狐さんだわ//」

「どうしてあれほどのお顔なのに、
監督をしていらっしゃるのかしら??//」

「是非一度、演技している姿
拝見してみたいものですわ////」



遠くから声が聞こえる。

あぁやっぱ狐さんもモテるんだな。
かっこいいもんなー


⏰:09/03/28 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#552 [イリア]



猫「―…ッて、いうことだから…」


「あの!!//練習風景
少しだけ見せて頂けません??///

そうしたら私たち、
すぐに帰…「それは嫌だな…」


⏰:09/03/28 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#553 [イリア]



ん?猫さんのファンに対する
初めての否定的な言葉。

ついに本性だすのかな?


⏰:09/03/28 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#554 [イリア]



「―…あら、ごめんなさい……

私たち少し調子に―…「だって」」


また猫さんがファンの人の声に
声を被せる。


⏰:09/03/28 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#555 [イリア]



猫「―…明日の楽しみが、
なくなるでしょ?


それに僕、まだ台詞
全部覚えられてなくて…

…恥ずかしいから、嫌だな。」


⏰:09/03/28 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#556 [イリア]



その甘い声に、私もファンの人たちも
顔を赤くする。




僕って誰!!!

僕って誰???!!!////

っていうか台詞なら
もう覚えてるでしょ??!!///


⏰:09/03/28 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#557 [イリア]



「あらまぁ////そうでしたの////」


ファンの人たちが、
また甘ったるい声を出す。


「劇団トップ人気の黒猫さんでも
そんなこともあるのねぇ///」

「それはやっぱり、まだ18歳だもの//」

「ほら!私たち、お邪魔にならないよう
早く帰らなくちゃ!!//」


⏰:09/03/28 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#558 [イリア]



改めてさっきの、狼さんが
言っていた言葉の意味が分かる。






七「――……悪魔だ…///」


「…ところで貴女、
―…一体、どなた?」


⏰:09/03/28 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#559 [イリア]



私に声が向けられる。
突然のことに驚いた。


七「……ふぇっ??!!あ、私ですか?
えーと私は………」


猫さんのマネージャー?

いやぁ、そんなこと言ったら
何か色々ややこしいよな。


⏰:09/03/28 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#560 [イリア]



猫「新しいスタッフなんだ。

大道具の白(ハク)って奴に惚れて
この劇団に入ったみたい。

動機不十分だよねー」


猫さんがアハハと、幼い顔で笑う。


⏰:09/03/28 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#561 [イリア]



すいません、ハクって誰ですか。


「あらぁ、そうなの//」

「いやね、黒猫さんと一緒に
歩いてきたもんだから、
私ったら、てっきり…//」


またガヤガヤと騒ぎだす。
猫さんは私の耳元で囁(ササヤ)いた。


⏰:09/03/28 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#562 [イリア]



猫「あんた、ちょっと離れてて。
こいつら、俺とあんたのこと
疑ってるみたいだから。」


七「……はぁ」


猫「狼のほうが片づいたら
狐が来て追っ払ってくれるから」


⏰:09/03/28 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#563 [イリア]



そう言われて私は猫さんと離れ
人だかりの少ないほうに歩き始めた。








――…それにしても。


⏰:09/03/28 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#564 [イリア]



何だよさっきの猫さんの態度。

いくら何でも、サービス精神
旺盛(オウセイ)すぎでしょ!!


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#565 [イリア]



訳もなくイライラする。


あの声で舞台の上に立ってるのかな。

そんなのファンができて当然じゃん。


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#566 [イリア]






七「……猫さんにとっては私も

うるさいファンの一人なのかな…」


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#567 [イリア]



そう考えると、
どうしようもなく切なくなる。
無意識に頬に冷たい涙が伝う。



七「……?…涙?
どんだけ女々しいんだよ私…」


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#568 [イリア]



ファンの人たちの声、聞きたくない。



私はそう思い、森の中に足を進める。

危険かもとは思ったが、
まぁ奥まで入らなかったら
大丈夫だろう。


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#569 [イリア]




ザワザワザワ…



森が風で揺れてる。

少し肌寒い。


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#570 [イリア]



「――……ッめ…たら」





誰かの声が聞こえる。
こんなところで…誰…?

そう思い、声のするほうに歩く。
すぐに知ってる顔が見えた。


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#571 [イリア]



七「――…麗さん…」


そこには麗さんと、
麗さんを囲う男性4人。
ファンの人かな?
でも何か様子が――……


私は木の影に隠れ、様子を窺(ウカガ)う。


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#572 [イリア]



男「だからぁ、いいじゃん
俺たちだってさー
もうアスタリスク劇団の一員だよー?」


男「今日の晩飯んとき
正式に発表されるみたいだけどー
アスタリスク劇団とオリオン劇団、
次の舞台から合併なるんだってぇ」


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#573 [イリア]





麗「――……だから、何よ」


麗さんの声がする。


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#574 [イリア]



男「だからぁ?
だからどうってことないけどー
まぁ仲良くしようってことぉ〜

…こないだみたいにさー」


こないだ?
こないだって何?


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#575 [イリア]



麗「――……ッッ!!
意味の分からないことを言うな!!
私は別に何も――……ッッ!!」





男「キスしたじゃぁ〜ん」

男が笑いながら言った。


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#576 [イリア]



え、キス?

麗さんが?




麗「―――………ッッ!!」


⏰:09/03/28 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#577 [イリア]



男「あんときはさぁ
途中で邪魔入ったし
あんだけで終わったけど〜…

あんただってさ、他の奴らに
知られたくないだろ?

…仲良くしよって、そういうこと。」


⏰:09/03/28 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#578 [イリア]



ギャハハハハハ……
男たちの下品な笑い声が響く。



麗さんの体の痣(アザ)。

最近元気がないって言った
狼さんの言葉。



――…………まさか。


⏰:09/03/28 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#579 [イリア]



思わず飛び出そうになる。

でも向こうは体の大きい男性4人。
私が出ていっても、何もならない。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#580 [イリア]



誰か。

誰か呼んでこよう。



誰か。



私は走ってさっきの場所に戻る。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#581 [イリア]



狐さんは猫さんのファンの
説得をしていた。



狼さんはファンの人たちを
狐さんに帰されたのか、

食事の準備を手伝っている。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#582 [イリア]



七「――ハァ…ッッ!!狼さん!!!!!」


狼「ん?何だ新入り、
そんなに慌てて。

ところでお前、麗知らないか?
一緒に来てたんじゃ……」


七「いいから!!早く来て!!!!!」


⏰:09/03/28 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#583 [イリア]



私は狼さんの腕を引っ張ると
森のほうに走り出す。


遠くで人だかりに囲まれた猫さんが
一瞬こっちを見た気がしたが、
今はそんなこと関係ない。


⏰:09/03/28 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#584 [イリア]



狼「……うぉ!!何だ何だ!!!!
何かあったのか?」


七「――ハァ…麗さんが…ッッ!!」


狼「麗?」



その言葉に狼さんがピクッと反応する。


⏰:09/03/28 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#585 [イリア]



狼「麗に何かあったのか?

場所は?場所はどこだ?」



七「…ハァ…ハァ…今、向かってます!!
そこ…その大きな木の向こう…ッッ」


私のその言葉を聞くと
狼さんは私を置いて走り出した。


⏰:09/03/28 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#586 [イリア]



間に合ったかな――………ッッ??

狼さんが木の近くで走るのをやめた。



七「??!どうしたんですか??
麗さん、大丈夫――……ッッ」


狼「…新入り…」


狼さんの声が響く。


⏰:09/03/28 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#587 [イリア]



狼「―…誰も、いないぞ?」


え……?


私も狼さんの横に着き、
さっきと同じ場所で前を見る。


七「――……嘘……」


⏰:09/03/28 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#588 [イリア]



するとさっきまで
麗さんと男性がいた場所には、

狼さんの言うとおり、
誰もいなかった。


⏰:09/03/28 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#589 [イリア]



七「……さっきまで確かに…」


麗「――……何がよ?」


後ろから、麗さんの声。
驚いて後ろを振り向く。


⏰:09/03/28 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#590 [イリア]



狼「――…麗」

七「…麗さん……」


麗「狼、あんた馬鹿じゃないの?
いきなり走り出すから、
何かと思ってついてきたら…
…私がなに?私はずっと
テントの傍(ソバ)にいたわ。
…あんた、雨原に騙されて…」


七「……違うッッ!!!!」

私が叫ぶ。


⏰:09/03/28 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#591 [イリア]



七「何で嘘つくんですか??!!
さっき確かにここで、
麗さんと男性4人で…
何か話してたじゃないですか!!

―……麗さん、震えてた!!
何で言えないんですか……ッッ!!」


⏰:09/03/28 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#592 [イリア]



嫌われてもいい。

一生、口をきいて貰えなくてもいい。


だから、本当のこと
狼さんに話してよ。

こんなに麗さんのこと想ってる、
狼さんに全部話してよ。


⏰:09/03/28 13:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#593 [イリア]



麗「――……何この子?きちがい?
…だから嫌なのよ、人間って「麗」」


狼さんの声が、
麗さんの言葉を遮(サエギ)る。


⏰:09/03/28 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#594 [イリア]



麗「…何?まさかあんたも
こんな子の言うこと信じてるの?」

狼「新入りの言うこと、
あながち嘘には聞こえない。だけど

――……俺は、お前を信じてる」


狼さんの声が響く。

麗さんは狼さんから目を背けた。


⏰:09/03/28 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#595 [イリア]



麗「…なにその台詞?

明日の舞台にそんな台詞
あったかしら?」


狼「―…お前を、信じてる。
だから今ここで、一つ約束して欲しい」


⏰:09/03/28 13:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#596 [イリア]



風が吹いてる。

あぁ、さっきまで雨が降ってたもんな。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#597 [イリア]



狼「――……何かあったら、
絶対俺に言うこと。

どんなことでも、必ず。」



狼さんを見る。
強く意志のある赤い瞳は
猫さんとは違う美しさを持つ。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#598 [イリア]



麗「――……何で私が…」


狼「約束だぞ、麗」



狼さんの気迫に押されたのか、
麗さんがコクリと頷く。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#599 [イリア]



狼「……よし、それじゃあ
今度こそ本当に飯にしよう!!

猫のファンは帰ったかな?
あいつのファンはしつこくて困る、
まったくあんな悪魔の
どこにそんなに惚れるのか…

行くぞ!麗!!
新入りもご苦労だったな!!!!」


⏰:09/03/28 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#600 [イリア]



そう言って狼さんはまた

白い歯を見せてニカッと笑う。


⏰:09/03/28 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194