黒猫の棲むところ
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#501 [イリア]
:09/03/27 13:07 :W61P :☆☆☆
#502 [イリア]
苦しくなる。
何故、こんな気持ちになるの。
どうしてこんな暗い場所で、
あなたたちは、笑っているの。
この闇は何。
この甘い甘い、血の香りは何?
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#503 [イリア]
誰だろう?
もう少しだけ近づいてみようか。
そうしたら、
もっとはっきり見えるかも。
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#504 [イリア]
唄が聞こえる方向に
足を一歩踏み出す。
女の子が、私を見つめた。
七「……え?」
思わず声を出す。
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#505 [イリア]
こっちを見て、
楽しそうに笑う少女は…
七「―――………私……?」
:09/03/27 13:09 :W61P :☆☆☆
#506 [イリア]
男の子の顔は、ぼやけていて見えない。
何、何なの?
ここは、どこ?
幼い私に向かって、手を伸ばす。
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#507 [イリア]
グィッ
するとすぐに
誰かに意識を掴まれ
引き戻される。
意識が遠のく。
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#508 [イリア]
:09/03/27 13:11 :W61P :☆☆☆
#509 [イリア]
引き戻される直前に
顔の見えない、男の子の声が響いた。
ズキッ
七「痛ッッ!!」
:09/03/27 13:11 :W61P :☆☆☆
#510 [イリア]
:09/03/27 13:12 :W61P :☆☆☆
#511 [イリア]
七「―――……痛………」
猫「――……??!!……オイ!!!!」
七「?」
:09/03/27 13:12 :W61P :☆☆☆
#512 [イリア]
目の前で、
夢の中の男の子とは違う少年が
私を心配そうに覗き込んでいた。
:09/03/27 13:13 :W61P :☆☆☆
#513 [イリア]
七「―…?猫さん…」
猫「オイ…あんた、大丈夫か?」
風が吹き抜けるテントの中。
見覚えのある景色。
ついさっきまで麗さんと
話をしていた場所。
:09/03/27 13:14 :W61P :☆☆☆
#514 [イリア]
七「……………」
あれは、どこだったんだろう。
あの檻も、あの暗さも。
何故か私を、懐かしくさせる。
:09/03/27 13:14 :W61P :☆☆☆
#515 [イリア]
猫「…オイ、聞いてる?」
七「…私…どうしたんですか?」
猫「それは俺が聞いてるの。
迎えにきたらさ、あんた
座り込んで、うなされてるし。」
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#516 [イリア]
うなされてた…
そうか私、寝ちゃったんだ。
猫「―…嫌な夢でも、見てたわけ?」
七「……嫌な夢……?」
:09/03/27 13:15 :W61P :☆☆☆
#517 [イリア]
分からない。
分からない。
――……僕は君を、守りたい
あの男の子の声だけが、
鮮明に頭に響き続ける。
:09/03/27 13:16 :W61P :☆☆☆
#518 [イリア]
深い闇と、甘い血の香り。
そんな場所で
屈託(クッタク)なく笑っている
幼い私の顔。
:09/03/27 13:16 :W61P :☆☆☆
#519 [イリア]
猫「―…気分悪い?
医者呼ぼうか?」
猫さんの綺麗な声が聞こえる。
心配してくれてるのかな。
:09/03/27 13:16 :W61P :☆☆☆
#520 [イリア]
七「―…変な夢…見て…」
猫「…変?」
七「はい…でも、もう大丈夫です。
ただの夢ですよね。ごめんなさい。」
:09/03/27 13:17 :W61P :☆☆☆
#521 [イリア]
アハハ、と笑ってみせる。
そう、夢なんだ。
今の私には、関係ない。
:09/03/27 13:17 :W61P :☆☆☆
#522 [イリア]
猫「―…夢と現実は、必ず繋がってる」
七「………え?」
:09/03/27 13:19 :W61P :☆☆☆
#523 [イリア]
猫「繋がってるんだ。
――……俺は、そう思う。」
猫さんの顔がかすむ。
少し悲しそうな顔に胸が痛む。
:09/03/27 13:19 :W61P :☆☆☆
#524 [イリア]
:09/03/27 13:19 :W61P :☆☆☆
#525 [イリア]
七「―…猫さん…」
猫「……?何?」
七「―…私がちゃんと、
全部思い出したとき…
それでも私は、私だから…」
:09/03/27 13:20 :W61P :☆☆☆
#526 [イリア]
風が吹いている。
記憶をなくす前も私は
この風を感じれていたのかな。
:09/03/27 13:20 :W61P :☆☆☆
#527 [イリア]
七「―……今と変わらず、
傍(ソバ)で笑ってくれますか?」
:09/03/27 13:21 :W61P :☆☆☆
#528 [イリア]
猫さんが驚いた顔をした。
瞬間、いま自分が聞いたことに
焦りと恥ずかしさを感じる。
:09/03/27 13:21 :W61P :☆☆☆
#529 [イリア]
七「……ッッ!!///いえ、別に!!
なに聞いてんだろ私、寝ぼけてる!!//
忘れて下さい//忘れ―…「あんたが」」
猫さんの声。
変わらない、甘い、甘い声。
:09/03/27 13:22 :W61P :☆☆☆
#530 [イリア]
猫「―…あんたが変わらないなら、
俺も変わらない」
その声に、表情(カオ)に
今日一日だけで
どれだけ鼓動を速めさせられただろう。
:09/03/27 13:22 :W61P :☆☆☆
#531 [イリア]
猫「―…行こう、もう飯の時間だ」
猫さんは私の腕を引っ張り立たせると
そのまま外に歩き出す。
:09/03/27 13:23 :W61P :☆☆☆
#532 [イリア]
猫さんの手のひらに、
確かな熱を感じる。
私たちは生きていること。
ここは夢じゃないということ。
目の前の人の優しさに、
溺れてしまってるということ。
:09/03/27 13:24 :W61P :☆☆☆
#533 [イリア]
確かなことは少ないけれど、
少しずつ、増えてきた。
私たちは布をめくり、外に出る。
さっきまでの雨はどこかに消え、
紅い夕日が顔を見せていた。
:09/03/27 13:25 :W61P :☆☆☆
#534 [イリア]
:09/03/27 13:28 :W61P :☆☆☆
#535 [イリア]
:09/03/28 12:52 :W61P :☆☆☆
#536 [イリア]
猫さんに手を引かれ、
大きなテントの裏口に回る。
するとさっきの川が見え、
その近くに人溜まりができていた。
:09/03/28 12:53 :W61P :☆☆☆
#537 [イリア]
猫「――……チ、また来てやがる」
七「?…誰がですか?」
猫「この劇団のファンだよ、
移動劇団ッつっても噂は流れる。
人気があるって、大変だね本当。」
そう言うと猫さんは
私と繋がれていた手を離した。
:09/03/28 12:53 :W61P :☆☆☆
#538 [イリア]
「――……ッッ??!//黒猫さん??!!//」
人溜まりの中から声がした。
猫さんは見たことのない笑顔で
ヒラヒラと手をふる。
:09/03/28 12:54 :W61P :☆☆☆
#539 [イリア]
七「――……何ですか、その笑顔。」
猫「クス、役者ってね、
イメージが大切なんだよ」
:09/03/28 12:54 :W61P :☆☆☆
#540 [イリア]
何十人もの人だかりが
一気に私たちのほうに流れてくる。
「キャァッ!!//やっぱり
本物のほうが綺麗だわ!!///」
「噂通りのお方!!///」
「お綺麗ですねぇ//
何か贈り物をしたいのだけど、
お好きなものは何かしら?///」
:09/03/28 12:55 :W61P :☆☆☆
#541 [イリア]
次々とファンの人の声がする。
よく見ると向こうのほうで
狼さんもファンの人に囲まれている。
――……麗さんの姿はない。
麗さんどうしたんだろ…
もう先に来てると思ったのに…
:09/03/28 12:56 :W61P :☆☆☆
#542 [イリア]
私がそんなことを考えてる間にも
ファンの人たちの質問は続く。
「私、前に一度違う街で
この劇団の講演を見たことあって//
そのときから黒猫さんの大ファンで!!//
覚えています?あれは去年の今頃、
セパナ会館での講演で…//」
:09/03/28 12:57 :W61P :☆☆☆
#543 [イリア]
猫「―…『夢の街、スレライナ』」
猫さんはそう言うと
妖艶に微笑んだ。
:09/03/28 12:57 :W61P :☆☆☆
#544 [イリア]
「そうです!!//流石だわ!!//
私あのときの黒猫さんの最後の台詞、
あれを聞いたとき本当に鳥肌が…//」
:09/03/28 12:58 :W61P :☆☆☆
#545 [イリア]
:09/03/28 12:59 :W61P :☆☆☆
#546 [イリア]
猫『コレが本物の、我らの故郷。
スレライナのあるべき姿だ。
王、兵、そして群集。
殺戮(サツリク)と哀話(アイワ)。
壁を創(ツク)ったのは誰だ??』
:09/03/28 12:59 :W61P :☆☆☆
#547 [イリア]
いつもよりずっと澄んだ声。
思わず聞き惚れる。
しばらくすると
またファンの人たちが叫び始める。
:09/03/28 13:00 :W61P :☆☆☆
#548 [イリア]
「キャァッ!!//それです!!//
あぁもうどうしましょう!!//
明日の講演が待ちきれないわ//」
猫「―…クスッ、有難う。
僕も今から、待ち切れません。」
誰だよ僕って。
ちょっと性格違い過ぎません?
:09/03/28 13:01 :W61P :☆☆☆
#549 [イリア]
猫さんの声に、また人だかりが増える。
っていうか、あきらか私邪魔だよね。
そう思い、一歩後ろに下がる。
少しの間、離れていよう。
そう思った、そのとき。
:09/03/28 13:02 :W61P :☆☆☆
#550 [イリア]
狐「はいはいはい!!」
狼さんの周りの人だかりで、
狐さんの声がした。
狐「お客様、これから僕らは
最後の練習に入ります。
一度、ご退席願えますか?」
ニコッと笑い、狐さんが言う。
:09/03/28 13:02 :W61P :☆☆☆
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