こいごころ
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#236 [向日葵]
風が徐々に止む。
宗助の目に、苦しさが滲んでいる気がしたが、それは日差しのせいだろうか。
「茉里をこれ以上悩ませないで。もしもなんかあれば、私はアンタを許さない」
それだけ言って、ミュシャは来た道を引き返していった。
残された宗助は、ただその背中を見るしか出来なかった。
自分の気持ちが、整理出来なかった……。
ミュシャが校門まで行けば、茉里だけしかいなかった。
どうやら沢口は帰ったらしい。
:09/06/23 03:42
:SO906i
:☆☆☆
#237 [向日葵]
「あ、ミュー。ゴメンネ待たせて」
「いいの。私も、ちょっとケンカ売りたい相手がいたから」
「え?ケ、ケンカ、売ったの?」
「相手が無抵抗だったから、張り合いなくて帰ってきちゃったよ」
心配そうにこちらを見る茉里に、ミュシャはそっと微笑む。
ミュシャは、茉里の家庭事情を知っている。
あの時、どうしようもなく傷ついている茉里を見て、ミュシャは茉里には幸せになってほしいと願った。
:09/06/23 03:42
:SO906i
:☆☆☆
#238 [向日葵]
自分よりも、ずっとずっと。
何があったとしても、茉里は笑顔を絶やさない。
だから、この笑顔を奪った奴は、誰だろうと許さない。
ミュシャは、そう思っていたのだった。
―――――――――…………
「夏祭りかあ……。いいねっ。皆、きいてきいて!」
次の日、茉里は沢口から誘われた夏祭りの事を、とりあえず綾香に話してみた。
「明日、夏祭りがあるんだって!行かない?皆でっ!」
:09/06/23 03:43
:SO906i
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#239 [向日葵]
何人かは、予定があるとかで断ったが、ほとんどは行くと行った。
宗助も。
皆は道場の真ん中に集まって、あれやこれやと話し合っている。
皆が飲んだコップを重ねていると、宗助が静かに隣に立った。
ドキリとして、思わず手が止まってしまう。
「……宗助も、行くんだ」
「ああ」
「先輩が……来るの……?」
「なんで?」
「宗助、こういうの苦手そうだから。来るって言うとは思わなかったの」
:09/06/23 03:43
:SO906i
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#240 [向日葵]
「……あの、さ……、前の事だけど」
「集合場所決まったよー」
綾香が言った。
「え、どこどこー?」
茉里はコップを置き、宗助から逃げるようにして綾香の元へと行った。
今更、言い訳なんて聞きたくなかった。
それならすぐに、あの時、訂正してほしかった。
今は何も、先輩の事は聞きたくなかった。
もう……潮時なのかな……。
諦めろって、神様が言ってるの?なら言わせてよ、宗助に。
:09/06/23 03:44
:SO906i
:☆☆☆
#241 [向日葵]
「アンタの事は、好きになれない」って。
そう言わすように、仕向けてよ。じゃないと私……。
諦められないよ……。
[そうやって、裏切られたのに、加賀が変わらず、人の愛情や優しさを信じている人になってて、俺は良かったと思う]
そうやって言ってくれた人を、どうやって嫌いになれって言うの?
――――――――…………
夏祭り当日。
校門前で待ち合わせになった。
:09/06/23 03:44
:SO906i
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#242 [向日葵]
沢口もそこへ来る。
茉里は浴衣を着なかった。
着ても意味がない気がしたからだ。
課題している時、頑張った髪型を褒めてくれた宗助。
でも今回ばかりは、もう褒めてはくれない気がした。
沢口はきっと褒めてくれると思う。
でも、褒められて嬉しいだろうけれど、宗助に誉められる喜びとはまた違う。
だから、着て行かない。
「あ、茉里ちゃん!」
校門にはもう何人かいた。
:09/06/23 03:44
:SO906i
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#243 [向日葵]
茉里みたいに私服の子もいたが、ほとんどは浴衣だった。
「あ、沢口さん」
振り向けば、沢口が気づいた茉里に微笑みを浮かべて歩いてきていた。
「こんばんわ」
「こんばんわ。こんな大勢になっちゃったよ」
「いいよ。僕は大勢で騒ぐの好きだし」
そうやって微笑まれれば、なんだかホッとした。
この笑顔には、癒しを感じる。
「あ、笹部くん!こっちー!」
それを聞いて、茉里はドキリとする。
:09/06/23 03:45
:SO906i
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#244 [向日葵]
でも、宗助の方は向かなかった。
「さ、さあ!今日は楽しむよー」
邪念を払うように、茉里はそう告げて歩き出した。
「加賀さんは、浴衣着ないの?」
沢口が隣に並んで喋りかけてきた。
「あ、うん。なかったから」
「そっか」
歩いて行く度、人が増えて行く。気をつけないと迷子になるかもしれない。
それに周りは、夏祭りならではのものばかりで目を奪われてしまう。
:09/06/23 03:45
:SO906i
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#245 [向日葵]
最初、皆が立ち止まったのは、金魚すくいだった。
茉里は皆がやっているのをジッと見ている。
沢口は器用で、何匹も取る。
その容姿で集まってきた人も感嘆の声をあげる。
沢口はすくい終えると、金魚を3匹、袋に入れて茉里に差し出す。
赤く、光の加減によって金にも見える金魚は、とても綺麗で、ついつい茉里も嬉しくなって笑う。
「ありがとう」
「どういたしまして」
そんな2人を、宗助は静かに見ていた。
:09/06/23 03:45
:SO906i
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