こいごころ
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#291 [向日葵]
宗助は泣くのではないかと思うくらいの、しぼり出した声で、そう告げた。

そして茉里は気づいてしまった。

こんなに、宗助を苦しめているのは、自分だと。

自分が無理矢理「仮彼女にしろ」だなんて言ってしまったから、宗助は、ずっとずっと、苦しんでいたんだ。

それに気づかず、何が彼女に昇格……だ。

「アンタを、もう傷つけたくない……。気持ちに、嘘つけないんだ……っ」

宗助は嘘なんてついた事ない。

⏰:09/07/22 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#292 [向日葵]
ずっと、一途に、先輩だけを見ていた。

むしろ嘘をついていたのは自分だ。

一途は悪い事じゃない。
そう言っておきながら、先輩に一途である宗助をずっと許せなかった。
好いてもらいたくて、綺麗事を並べた。

仮彼女制度は、ただ単に諦めるように仕向けたものだったと、今気づいた。

「……今日、先輩と、なんの話してたの?」

静かな問いかけに、宗助はハッとした。

⏰:09/07/22 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#293 [向日葵]
茉里は声音と同じくらい、静かな表情で宗助を見ていたが、不思議と、視線は温かかった。

「彼氏と別れたから、ちょっとそばで泣かせてくれって……。今も、多分1人で泣いてる」

それで、茉里が来た時、気づかなかったのだ。

先輩を、気にして。

「戻ってきなよ」

その言葉に、宗助は驚く。
また雪が降ってきた。

茉里はマフラーを巻き直し、手を繋ぐ為に隠していた手袋を出す。
「仮彼女は、もういいからさ。解除。これで宗助は、私に縛られる事はないよ」

⏰:09/07/22 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#294 [向日葵]
さらりとした言い方に、宗助は戸惑う。

「でも、今日は一緒に」

「だめ!先輩を慰めるのは、宗助の仕事でしょ!」

腰に手を当て、宗助を見上げる。
それでもまだ、宗助が迷っているので、茉里はフッと笑う。

「あのね、失恋ごときで落ち込まないから。何回もフラれた経験はあるの。自慢じゃないけどね」

茉里は宗助の横を通りすぎて、駅へと歩き出す。

「じゃ、まった明日ー!」

前を向いて歩いたまま、宗助に手をふる。

⏰:09/07/22 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#295 [向日葵]
自分の足音とは別の足音が、だんだんと遠くなる。

少しして振り向けば、宗助が来た道を引き返していた。
その背中を見ていた茉里の目から、一筋の涙が流れる。

「……ありがとう」

重いから別れてくれと言われ続けてきた自分に、重いと1度も言わず、重いという理由で自分を選ばなかったわけじゃなかった宗助。
そんな人、初めてだったよ。

本当に茉里自身を見てくれた。

今、流れる涙が、悲しい涙じゃなく、嬉しい涙だと言い聞かす。

だって、宗助は悪くないもの。

⏰:09/07/22 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#296 [向日葵]
悪いのは、苦しめた自分だから……。
だから……。

そう思っても、胸を締めつける痛みや、込み上げる嗚咽を止めることは出来なかった。

また、嘘をついた。
失恋ごときで落ち込まないなんて、嘘。
今、消えてしまいたいほど、辛い……。

涙が、雪のように、地面に落ちては消えていく。

クリスマスまで、あと4日の出来事だった。

⏰:09/07/22 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#297 [向日葵]
[9]それぞれの気持ち。

明日はクリスマス。
そして今日は終業式。

ミュシャはそれはもう怒っていた。

どちらかと言えばたれ目と言える彼女の目はつり上がり、髪の毛に隠れた額にはおさらく、いや絶対青筋があるだろう。

しかしそれは、あくまで茉里にバレないように気をつけている。

「ミュー。通知表どうだった?」

茉里が無邪気に笑いかけてくる。

その目が、また赤かった。

きっとまた泣いたんだ。

⏰:09/07/31 03:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#298 [向日葵]
一昨日の一連の出来事を、茉里は親友であるミュシャに話した。

ミュシャが宗助をあまり好いてないのは知っていたが、いつもより今回はミュシャに迷惑をかけたりしたので、関係ないだろうと報告しないのは何か違う気がした。

話した時、からりと不自然なくらい笑っていた茉里だが、ミュシャには何もかも分かっていた。

きっと、子供のように、大声で泣きたいほど、今辛いのだと。

茉里は元気でいるように努めているが、バレバレだったのだ。

「加賀ー。ちょっとー」

⏰:09/07/31 03:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#299 [向日葵]
担任が茉里を呼ぶ。

茉里がどこかに行った隙に、ミュシャは動いた。

歩いていくその先にいるのは、決まっていた。

男子と談笑している途中、歩いてきたミュシャに気づいた宗助は、突然ネクタイを引っ張って、顔を近づけて低く声を出す。

「ちょっと来なさいよ」

そのままネクタイを引っ張って、強制的に宗助を廊下に連れ出す。

廊下に出ると同時に、投げるようにして宗助を出し、ネクタイを持っていた手を離す。

ネクタイで首が絞められていた宗助は、少し咳き込む。

⏰:09/07/31 03:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#300 [向日葵]
「なにから言ってほしい?……違うわね。なにからしてほしい?」

「……なんでもいいよ」

投げやりのような答えに、いつも冷静なミュシャはカッとなって宗助に平手をお見舞いした。
乾いた音が、廊下に小さくこだまする。

「たくさん叩けばいい」

前髪が長い宗助は、あまり表情が見えない。

しかし口元は、なにか悔しそうに歯を食いしばっていた。

「俺だって、自分が許せない……」

そんな顔、するのは反則だ。

⏰:09/07/31 03:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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