こいごころ
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#312 [向日葵]
「先輩なんて大嫌いっ!私に無いものいっぱいあるに贅沢ばっかり言って……人の気持ちを踏みにじるばかりしてるくせに……っ!!」
目が潤む。
先輩がどういう顔をしているか分からない。
でも吐き出してしまえば、それまでなんとか必死に抑えていた感情が、一気に涙となって流れてきた。
「分かったように……理解者みたいに語らないでくださいっ……」
宗助のこと、分かったように言わないで。
一番、先輩が分かってない。
どれほど、宗助が先輩を好きか。
どんなに辛い思いをしたか。
:09/08/06 21:38
:SO906i
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#313 [向日葵]
その一因に、自分も入ってしまっているけれど、でも、自分なんか本当に小さな存在だった。
宗助の悩みのほとんどは、先輩だったから……。
「そんなに宗助を気に入ってるなら……、付き合えばいいじゃないですか」
言い終わると同時に、戸が開く。
振り返ると、そこに立っていたのは、宗助だった。
茉里は冷静さを取り戻したはいいが、さあっと血の気が引く音を聞いた。
余計な事を言ってしまったのと、先輩を殴った犯人は明らかに自分で、幻滅されると思ったからだ。
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:SO906i
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#314 [向日葵]
いや、もう幻滅されようとなにされようて、自分には関係ないか……。
「え、どうか……したん……すか?」
宗助の問いかけに、茉里は口を結んだ。
ちらりと先輩を見れば、頬が赤くなっていた。
しかし先輩は苦笑するだけだった。
やがて鞄を持って、茉里の横を通り過ぎた。
「ちょっと用があって、茉里ちゃんと話してただけ。試合明日なんだし、今日は気合い入れて練習しなよっ。じゃあね、宗助、茉里ちゃん」
:09/08/06 21:38
:SO906i
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#315 [向日葵]
笑顔と同じように、先輩は爽やかに出て行った。
まるで、わだかまりなんてないかのように。
しかし、茉里はそうもいかないから、そのまま立ち尽くしている。
ギシッと床が軋む音がしたかと思えば、すぐ後ろに気配を感じる。
でも茉里は振り返らず、それ以前に微動だにしなかった。
「……なにかあったのか?」
「……」
「……加賀?」
突然、茉里は方向転換して、駆け出した。
驚いた宗助は、一拍おいてすぐに身を翻した。
:09/08/06 21:39
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#316 [向日葵]
「か、加賀……っ!ちょっと待って!」
思わず宗助は茉里の腕を掴む。
茉里の顔を見ると、今にも大声で泣いてしまいそうな顔をしていて、宗助は驚いた。
こんな顔をしているのは先輩と何かあったからか?
それとも自分が……?
何も言えず、静寂が2人を包む。
「……ごめん」
しばらくして、茉里が呟くように言った。
ちゃんと耳をすまさなければ、聞こえないくらいの音量だ。
「なにが……?」
出来るだけ怖がらせないよう、宗助は茉里に優しく問いかける。
:09/08/06 21:39
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#317 [向日葵]
しかし、茉里は答えない。
「加賀?」
「……ごめん……」
2回謝った茉里は、静かに宗助の手をほどいた。
自分の鞄から小さめのタオルを取り出し、洗面所で濡らした。
ゆるめに絞って、それを宗助に渡した。
「なに?」
「先輩のほっぺ……。わたしてくるといいよ」
鞄を持った茉里は、道場を出ようとする。
「加賀っ!」
再び宗助が茉里をとめる。
唇をかみ、茉里は出来るだけ明るい声を出そうとする。
:09/08/14 03:25
:SO906i
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#318 [向日葵]
声が震えてしまわないよう、意識しながら。
「綺麗な顔に、傷つくっちゃったから、早く冷やしてあげて」
惨めな気持ちが、胸を埋め尽くす。
きっと今、ひどい顔してるに違いない。
でも、笑顔になれなんて、そんなことできっこなかった。
―――――――――…………
今日は練習少なめで、後は明日の準備に時間を費やした。
「加賀」
先生が茉里を呼び、メモを渡す。
「コールドスプレーとテーピング、きれてるから買っといてくれ」
:09/08/14 03:25
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#319 [向日葵]
「はい、帰りに防具屋さんに寄ります」
メモを片手に、道場をあとにする。
すると戸を出たところで、宗助がまた茉里を引きとめた。
早いことに、もう着替えている。
「なに?」
さすがに茉里は眉を寄せた。
「……一緒に、帰らないか」
「私、買い物が」
「ついて行く」
「なんで?なにがしたいの?」
「なにがって……」
困惑する宗助を見て、茉里の心は嫌な気分でいっぱいになった。
:09/08/14 03:25
:SO906i
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#320 [向日葵]
罪悪感があるとかで優しくするならやめてほしい。
そんなのいらない。
欲しいのは……そんな事、今更か……。
気持ちが欲しくても、欲しがることは宗助を傷つけるだけだと分かったから、自分は引き下がった。
いっそ、冷たく引き離した方が、宗助にも、自分にも、為になるかもしれない。
「一昨日のことをまだうじうじ悩んでるわけ?」
それは自分だ。
「馬鹿じゃない?」
それも自分だ。
:09/08/14 03:26
:SO906i
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#321 [向日葵]
「そんなこと心配してる時間があるなら、先輩と付き合う作戦でも考えなさいよ!」
宗助の顔が、痛そうに歪む。
だから茉里も怯むが、これも自分たちの為だと思えば、心を鬼に出来た。
宗助にもう苦しんでほしくはない。
そんな悲しい目でもう見ないで。
悲しい声で呼ばないで。
その度、流したりない涙が流れそうだから。
「私たちはただのクラスメート兼同じ部の仲間。ただそれだけ。これ以上、私に変な気まわさないで」
:09/08/14 03:26
:SO906i
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