こいごころ
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#312 [向日葵]
「先輩なんて大嫌いっ!私に無いものいっぱいあるに贅沢ばっかり言って……人の気持ちを踏みにじるばかりしてるくせに……っ!!」

目が潤む。
先輩がどういう顔をしているか分からない。
でも吐き出してしまえば、それまでなんとか必死に抑えていた感情が、一気に涙となって流れてきた。

「分かったように……理解者みたいに語らないでくださいっ……」

宗助のこと、分かったように言わないで。
一番、先輩が分かってない。
どれほど、宗助が先輩を好きか。
どんなに辛い思いをしたか。

⏰:09/08/06 21:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#313 [向日葵]
その一因に、自分も入ってしまっているけれど、でも、自分なんか本当に小さな存在だった。

宗助の悩みのほとんどは、先輩だったから……。

「そんなに宗助を気に入ってるなら……、付き合えばいいじゃないですか」

言い終わると同時に、戸が開く。
振り返ると、そこに立っていたのは、宗助だった。

茉里は冷静さを取り戻したはいいが、さあっと血の気が引く音を聞いた。

余計な事を言ってしまったのと、先輩を殴った犯人は明らかに自分で、幻滅されると思ったからだ。

⏰:09/08/06 21:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#314 [向日葵]
いや、もう幻滅されようとなにされようて、自分には関係ないか……。

「え、どうか……したん……すか?」

宗助の問いかけに、茉里は口を結んだ。
ちらりと先輩を見れば、頬が赤くなっていた。

しかし先輩は苦笑するだけだった。

やがて鞄を持って、茉里の横を通り過ぎた。

「ちょっと用があって、茉里ちゃんと話してただけ。試合明日なんだし、今日は気合い入れて練習しなよっ。じゃあね、宗助、茉里ちゃん」

⏰:09/08/06 21:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#315 [向日葵]
笑顔と同じように、先輩は爽やかに出て行った。
まるで、わだかまりなんてないかのように。

しかし、茉里はそうもいかないから、そのまま立ち尽くしている。
ギシッと床が軋む音がしたかと思えば、すぐ後ろに気配を感じる。

でも茉里は振り返らず、それ以前に微動だにしなかった。

「……なにかあったのか?」

「……」

「……加賀?」

突然、茉里は方向転換して、駆け出した。
驚いた宗助は、一拍おいてすぐに身を翻した。

⏰:09/08/06 21:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#316 [向日葵]
「か、加賀……っ!ちょっと待って!」

思わず宗助は茉里の腕を掴む。
茉里の顔を見ると、今にも大声で泣いてしまいそうな顔をしていて、宗助は驚いた。

こんな顔をしているのは先輩と何かあったからか?
それとも自分が……?

何も言えず、静寂が2人を包む。

「……ごめん」

しばらくして、茉里が呟くように言った。
ちゃんと耳をすまさなければ、聞こえないくらいの音量だ。

「なにが……?」

出来るだけ怖がらせないよう、宗助は茉里に優しく問いかける。

⏰:09/08/06 21:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#317 [向日葵]
しかし、茉里は答えない。

「加賀?」

「……ごめん……」

2回謝った茉里は、静かに宗助の手をほどいた。
自分の鞄から小さめのタオルを取り出し、洗面所で濡らした。
ゆるめに絞って、それを宗助に渡した。

「なに?」

「先輩のほっぺ……。わたしてくるといいよ」

鞄を持った茉里は、道場を出ようとする。

「加賀っ!」

再び宗助が茉里をとめる。

唇をかみ、茉里は出来るだけ明るい声を出そうとする。

⏰:09/08/14 03:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#318 [向日葵]
声が震えてしまわないよう、意識しながら。

「綺麗な顔に、傷つくっちゃったから、早く冷やしてあげて」

惨めな気持ちが、胸を埋め尽くす。
きっと今、ひどい顔してるに違いない。
でも、笑顔になれなんて、そんなことできっこなかった。

―――――――――…………

今日は練習少なめで、後は明日の準備に時間を費やした。

「加賀」

先生が茉里を呼び、メモを渡す。

「コールドスプレーとテーピング、きれてるから買っといてくれ」

⏰:09/08/14 03:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#319 [向日葵]
「はい、帰りに防具屋さんに寄ります」

メモを片手に、道場をあとにする。
すると戸を出たところで、宗助がまた茉里を引きとめた。
早いことに、もう着替えている。

「なに?」

さすがに茉里は眉を寄せた。

「……一緒に、帰らないか」

「私、買い物が」

「ついて行く」

「なんで?なにがしたいの?」

「なにがって……」

困惑する宗助を見て、茉里の心は嫌な気分でいっぱいになった。

⏰:09/08/14 03:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#320 [向日葵]
罪悪感があるとかで優しくするならやめてほしい。
そんなのいらない。
欲しいのは……そんな事、今更か……。

気持ちが欲しくても、欲しがることは宗助を傷つけるだけだと分かったから、自分は引き下がった。

いっそ、冷たく引き離した方が、宗助にも、自分にも、為になるかもしれない。

「一昨日のことをまだうじうじ悩んでるわけ?」

それは自分だ。

「馬鹿じゃない?」

それも自分だ。

⏰:09/08/14 03:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#321 [向日葵]
「そんなこと心配してる時間があるなら、先輩と付き合う作戦でも考えなさいよ!」

宗助の顔が、痛そうに歪む。
だから茉里も怯むが、これも自分たちの為だと思えば、心を鬼に出来た。

宗助にもう苦しんでほしくはない。
そんな悲しい目でもう見ないで。
悲しい声で呼ばないで。

その度、流したりない涙が流れそうだから。

「私たちはただのクラスメート兼同じ部の仲間。ただそれだけ。これ以上、私に変な気まわさないで」

⏰:09/08/14 03:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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