こいごころ
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#561 [向日葵]
「もうちょっと待っててよ!そしたらあたし、宗助と釣り合えるぐらいの女の子になってた!なれてた……っ!なのに……、な、な……、なのにいいーっ!」
保健室では堪えることが出来たのに、本人を前にすると、もう無理だった。
ただ駄々をこねる子供みたいに、「なんでよーっ!」と叫びながら大声で「うわーん!」と泣いてしまった。
言いたいことが溢れる度、一際声が大きくなった。
幸せを祈るってどうしたらいい?難しくて、難しすぎて、あたしには、もうわからない。
:10/10/28 13:14
:SH05A3
:☆☆☆
#562 [向日葵]
喉の奥が、焼け付くように痛い。
胸の奥も同じくらい痛かった。
もどかしいこの気持ちを、一体どこに持っていけばいいかわからなくて、気がつけば右手に力をいれて、振り上げていた。
渇いた音が、もう暗くなり始めた空に響いた時、栞は初めて宗助を殴ったことに気がついた。
ハッとして、宗助を見上げたが、彼は怒りもしないで栞をじっと見つめていた。
「ごめんな……」
:10/11/14 12:51
:SH05A3
:☆☆☆
#563 [向日葵]
そう言いながら栞の頭を優しく撫でる。
「それだけ好いてくれてたのは、栞がオレを兄貴として懐いてくれてるからだとずっと思ってた。だから、気づいてやれなかった」
今まで、そうやってなだめられることはあったが、こんなに優しい声を出す宗助は初めてだった。
例えそれが同情でも、栞はもう良かった。
宗助が、ちゃんと耳を傾けてくれているだけで、もう良かった。
「栞の気持ち、嬉しいよ。正直、時々お前はわからない時があるから、こうやって吐き出してくれて良かった」
:10/11/14 12:51
:SH05A3
:☆☆☆
#564 [向日葵]
髪の毛の間を、宗助の指先が時々とおる。
その感触が、今だけ自分を女の子として扱ってくれていることが、栞にはよくわかった。
不器用な宗助。
でもそんな彼だからこそ、栞は好きになったのだ。
あの人も、そうなのかな……。
一瞬浮かべる、柔和な笑顔が眩しい。
:10/11/14 12:52
:SH05A3
:☆☆☆
#565 [向日葵]
初めて会った時から、彼女がまとう穏やかな雰囲気は嫌いじゃなかった。
なんと言ったって、あの華名が懐いているんだから、決して悪い人ではないということはわかった。もしかしたら仲良くしたかったのかもしれない。
そう言い出すのは、時間がまだかかりそうだけれど。
頭を撫でている宗助の手を、栞はゆっくりと握る。
一瞬、まるで何かを祈るようにしてギュッと力を入れた後、栞は屋上を後にした。
――――――――…………
「あ、宗助え」
:10/11/14 12:52
:SH05A3
:☆☆☆
#566 [向日葵]
もう誰も残っていない教室に、茉里はいた。
今朝のくだらない喧嘩はミュシャによりおさまり、もうすっかり喧嘩をした気配すら漂わせていない茉里は、課題のプリントをしていた。
「今日部活休みで良かったー。急に宗助いなくなるんだから、皆に居場所きかれても困るとこだったよ」
身支度をする茉里に、宗助は何も言わずゆっくりと近づく。
「久瀬は?」
「ミュー?ミューならとっくに帰ったけど」
:10/11/14 12:53
:SH05A3
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#567 [向日葵]
栞が屋上にいるのを教えたのはミュシャだった。
もちろん、ミュシャは居場所を知ってたわけではないが、栞の性格を考えた時、そんな予感がした為、イチかバチかで宗助に言ったところ、ビンゴだったのだ。
ミュシャは無言で宗助に訴えたのだ。
決着をつけなさい、と。
「そっか……」
力無く言う宗助に、茉里は首を傾げながらマフラーを巻く。
「さ、暗くなるし帰ろう帰ろーう」
:10/11/14 12:53
:SH05A3
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#568 [向日葵]
鞄の紐を持つと同時に、宗助が、肩に頭をのせてきた。
彼が甘えてくるのが珍しいのと、何かに傷ついて弱っているのが見てとれた。
「…………ごめん」
ボソリと呟いたその言葉は、誰に向けられたものかわからない。
けれど茉里はなんとなく、自分に言っているのではないとわかった。
理由はきかない。
いずれ彼はポロポロと話し出すだろうから。
だから今の願いはただ1つ。
「寒いから、あったかくして帰ろうね……」
茉里はギュッと宗助を優しく抱きしめる。
:10/11/14 12:54
:SH05A3
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#569 [向日葵]
願いはただ1つ。
幸せに、笑ってて下さい。
―――――――――…………
涙がいつまでも枯れなかった。
これが枯れた時、今度は違う自分になっているのかしら。
そう思いながら、栞は鞄をとりに教室へ向かった。
すると、まだ教室に明かりが灯っていた。
覗くと、今日喋りかけてきた女の子の中の1人が、ポツリと座っていた。
そして栞を見つけると、優しく笑った。
:10/11/14 12:54
:SH05A3
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#570 [向日葵]
「あ、良かった帰ってきて。あのままどこに行ったかわからなかったから、下校時間まで待っておこって思ってたんだ」
その優しい顔は、どこか華名と、あの人を思い出すような、柔らかなものだった。
栞はその子の手をギュッて握った。
「……ありがとう……」
人は1人では生きていけないという言葉をよく耳にする。
栞はその言葉は嘘だと思っていた。人は本気になれば、1人でも生きていけると思っていた。
:10/11/14 12:54
:SH05A3
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