こいごころ
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#661 [向日葵]
[17]上げることの出来ない頭

帰ってこない……。

茉里はリビングで全身に力を入れて座っていた。

なにをしてるの?
宗助になにをしてるの?
関わらないでよ。
私の大切な人に、関わらないでよ……っ!

ことりと音がしたかと思い、いつの間にかかたく閉じていた目を開く。
目の前に、白く少し大きめのカップに、ココアが入っていた。
甘い匂いに、体の力が緩む。

⏰:11/04/02 22:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#662 [向日葵]
「色々考えすぎると、可愛い顔に変なシワが入るわよ」

からかうように笑う母、馨は、茉里から見ても美人の類に入る人だと思う。

そんな母なら、他にいい人なんてたくさんいるはずなのに、どうして父にこだわるのだろう。

「今年で結婚何年目になる?」

「3月でー……17?18?それぐらいね。あら?19だったかしら?」

「まあ約20年ね……。」

⏰:11/04/02 22:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#663 [向日葵]
少しだけとろみがついたココアに口をつける。
甘い味が口の中をいっぱいにする。

「アイツのなにがよかったの?」

「もう……。いい加減お父さんって呼びなさいよ。お父さん茉里にどう接したらいいかわからなくてオロオロしてるわよ」

「自業自得じゃない。私やお母さんがどんな思いしたかわかってんの?」

馨は苦笑いして、茉里の頭をふわりと撫でた。
茉里をなだめる為に撫でたのだが、茉里はなんだか叱られてる気分になって、肩を落とす。

⏰:11/04/02 22:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#664 [向日葵]
そんな茉里を見ながら、馨は昔を思い出した。

ーーーーーーーー…………

大学を卒業した裕之は、有名ではないが社名を言えばみんなが「ああ……アレね」というぐらいのところへ就職出来た。

馨はまだ1年ある為、大学にまだ通っていたが、裕之は休みなど暇が出来れば馨に連絡するというマメぶりだった。

「馨は就職はどうするの?」

何回かのデートの時に、裕之がきいた。

「デート中の台詞がそれですか?」

⏰:11/04/02 22:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#665 [向日葵]
ぶにっと、裕之の頬を軽くつねる。
そんなことさえ嬉しいのか、裕之はにこにこしている。

「あんまり忙しかったら会えないから、それなりのところがいいな」

「そんなの勝手に決めないでくださいよ。確かにそんな年がら年中バタバタ走り回ってるようなところには行きませんけど」

「じゃあもう働かずくる?」

「どこに?」

「僕のとこ」

⏰:11/04/02 22:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#666 [向日葵]
「冗談はやめてください」

もうっ、と馨はそっぽを向く。

裕之は冗談ではないのにと思いながら、そうやって雰囲気に流されない真面目な馨がいとおしくなる。

「まあ、そのうち嫌だって言っても結婚してもらうからね」

「なんですか。その脅迫めいたプロポーズは」

しかしその日もそう遠くはなかった。
大学を卒業し、半年ほどが過ぎた時、待ちきれないかのように裕之がまたプロポーズをした。

⏰:11/04/10 22:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#667 [向日葵]
車で出かけてた2人は、暗くなり、そろそろ帰ろうかという時に、海岸沿いに車をとめて、指輪を出した。

馨は嬉しくて涙を流すことで「はい」と答えた。

色んなことが足早に過ぎていき、気がつけば茉里が生まれて、毎日が本当に幸せだった。

そしてーーーーーーーー

裕之は間違ったのだった。

・・・・・・・・・・・

⏰:11/04/10 22:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#668 [向日葵]
「加賀」

上司から呼ばれた裕之は、足をとめて振り返る。

「はい?」

「この前のプレゼン良かったって評判だぞ。もしかしたらおれたちので決まるかもしれないって」

「本当ですか!」

もともと、なにをやっても器用にこなす裕之は、上司からの信頼も厚く、若くして色々な重要企画に加わっていた。

嬉しくて笑顔を隠せない裕之は、ふと、上司の後ろにいる影に気づく。

⏰:11/04/10 22:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#669 [向日葵]
「田辺さん、後ろにどなたかいらっしゃいますか?」

「あ、そうだった。ホラ、挨拶」

出てきた相手に、裕之は息を呑んだ。

「馨……?」

呟くように名前を呼ぶ。

しかし、馨ではない。
それはわかった。

ただその雰囲気、顔立ち、ほとんどが馨にそっくりだった。

控えめに笑う彼女は、裕之に向かって頭を下げる。

⏰:11/04/10 22:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#670 [向日葵]
「はじめまして、加賀さん。私、花形香と申します。部署が変わりまして、加賀さんとお仕事させて頂くことになりました」

名前までそっくりだ。

しかし自分と仕事?

「田辺さん。話がみえないのですが……?」

「ああ、今言ったとおり、コイツ部署が変わってな。仕事は結構優秀だって言われてるんで、おれたちのチームに入ることになったんだ。で、一番新人のコイツを、チームの中で一番新人のお前が、面倒みるってこと」

ああ、なるほど。

⏰:11/04/10 22:35 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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