こいごころ
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#678 [向日葵]
裕之はそれでも、馨と花形は違うと思っていたから、ただの同僚としてしか思っていない。
「あ、そうだ加賀、この資料まとめといてな」
「え、昨日やりましたよね?」
「訂正の部分が出たんだ。悪いな」
肩を叩いて去っていく上司は、ちっとも悪いと思っていない。
ちぇっと、訂正しなくてはならなくなった書類を苦々しくみつめる。
残業決定か。
最近こんなことが多くなって、茉里と遊べないし、馨ともゆっくり出来ない。
:11/04/17 00:21
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#679 [向日葵]
茉里ももう小学3年生になった。
この前も、父の日だからと、少ないお小遣でネクタイを買ってくれた茉里は、裕之にあげるのを楽しみにしていたのに、裕之はその日残業で、結局あげたのは次の日だった。
「気に入った?これを見てたまには茉里のことも思い出してね」
幼く、いじらしいその言葉は、裕之は胸を痛めた。
だから早く帰って、力いっぱい抱きしめてやりたいのに。
少し疲れ気味の裕之は嘆息する。
「あの加賀さん、私も手伝いますよ」
明らかに肩を落としている裕之を気遣ってか、花形は控えめに申し出た。
:11/04/17 00:21
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#680 [向日葵]
「ああ……悪いな……。頼む」
「任せてください!」
にっこりと微笑む。
その笑顔が、馨と重なる。
疲れた心が、癒される。
手を伸ばした裕之は、何か迷って、花形の頭を撫でた。
「ありがとな。ちょっとコーヒーでも飲んでくるわ」
花形の隣を通れば、あの香り。
裕之は頭を撫でるつもりなんてなかった。
そして自分のしようとしてたことを、歩きながら心の底から戒めた。
撫でるつもりなんてなかった。
本当はーーーーーー。
:11/04/17 00:22
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#681 [向日葵]
ーーーーー抱きしめようとした。
:11/04/17 00:22
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#682 [向日葵]
「なにを……してるんだ……っ」
疲れて頭がおかしくなったか!
いくら馨に似てるといっても彼女は違うではないか。
代わりにしようとするなんて、最低な男のやることだ。
ーーーーーーーー………………
「あーっ!!やっと終わりましたねー!!」
残業してから3時間。
2人共椅子の背もたれにもたれきって背伸びをする。
もう目がチカチカして、しばらくはパソコンの画面とにらめっこしたくはない。
:11/04/17 00:23
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#683 [向日葵]
「あー……。なんで僕ばっかり……」
「珍しい。加賀さんが愚痴ってる」
おっとっと。
みっともないところを見せるとこだった。
こういうところは、愛する人しか見せたくない。
「帰る前に一息つきましょうか。コーヒーいれますね」
立った花形は、裕之のデスクの左側にある、コーヒーメーカーがある場所へと歩いていった。
しかし、急にめまいが彼女を襲い、ぐらりと体が傾く。
いち早く気づいた裕之は、花形の体を支える。
裕之は椅子から立ち上がって支えたが、バランスを崩して、また椅子に座ることとなった。
:11/04/17 00:23
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#684 [向日葵]
そしてその上に花形が座る形になった。
「だ……大丈夫か……?」
「ご……ごめんなさ……。最近けっこうこんなのがよくあって……」
「ちゃんと休めているのか?」
「はい……。助けて頂いて、ありが……」
花形が顔をあげれば、裕之との距離は、数センチしかなかった。
2人共、離れようとしない。
「…………好きです」
こぼれ落ちるように、花形の口からそうきこえた。
「加賀さんが好きです……。ずっとずっと……好きでした……っ」
やめてくれ。
:11/04/17 00:24
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#685 [向日葵]
「奥さんがいてもいいんです……。私、代わりでもいいんです」
やめてくれ。
彼女と同じような顔で、香りで、声で、僕を求めないでくれ。
彼女ですら、こんなに情熱的に求めたことはない。
いつも裕之が求めて、馨がそのふんわりとした空気で受け止めてくれる。
それはもちろん、馨が嫌がっているのではなく、それが2人の愛し合い方だから、裕之は幸せに満ちあふれていた。
「好き……。加賀さん……。好きなの……。」
頭が、疲れているから、働かない。
馨……。
:11/04/23 20:29
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#686 [向日葵]
僕は今、君を、こんなにも欲している。
働かない頭のせいにする。
なにもかも。
気づけば、花形に唇を寄せていた。
今すぐ、自分を癒してほしくて、無我夢中で、花形を抱いた。
「加賀さん……」
「……花形。ーーーーーっ!?」
裕之は、ハッとした。
今、誰の名を呼んだ?
わからなくなった。
僕は馨を愛してるのか、花形を愛しているのか。
あんなに馨を欲していたのに、紡いだ名前は、違う名だった。
:11/04/23 20:30
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#687 [向日葵]
「加賀さん、私はいいんです。私は、ずっと、あなたのそばにいますから」
その言葉は、甘美な呪縛だった。
月日を重ねる度、裕之の評価は上がり、更に仕事は増え、家に帰れない日が続いたこともあった。
家に帰れば、自分が元の自分に戻った気がして、茉里と馨を力いっぱい抱きしめた。
同時に、懺悔をしたくなった。
僕は、君と似た女性と、肌を重ねた。
君と似た女性と関係をもっている。
許してくれ、君を求めた結果だったんだ。
君が……君が……。
:11/04/23 20:30
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