こいごころ
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#683 [向日葵]
「あー……。なんで僕ばっかり……」

「珍しい。加賀さんが愚痴ってる」

おっとっと。
みっともないところを見せるとこだった。
こういうところは、愛する人しか見せたくない。

「帰る前に一息つきましょうか。コーヒーいれますね」

立った花形は、裕之のデスクの左側にある、コーヒーメーカーがある場所へと歩いていった。

しかし、急にめまいが彼女を襲い、ぐらりと体が傾く。
いち早く気づいた裕之は、花形の体を支える。
裕之は椅子から立ち上がって支えたが、バランスを崩して、また椅子に座ることとなった。

⏰:11/04/17 00:23 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#684 [向日葵]
そしてその上に花形が座る形になった。

「だ……大丈夫か……?」

「ご……ごめんなさ……。最近けっこうこんなのがよくあって……」

「ちゃんと休めているのか?」

「はい……。助けて頂いて、ありが……」

花形が顔をあげれば、裕之との距離は、数センチしかなかった。
2人共、離れようとしない。

「…………好きです」

こぼれ落ちるように、花形の口からそうきこえた。

「加賀さんが好きです……。ずっとずっと……好きでした……っ」


やめてくれ。

⏰:11/04/17 00:24 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#685 [向日葵]
「奥さんがいてもいいんです……。私、代わりでもいいんです」

やめてくれ。
彼女と同じような顔で、香りで、声で、僕を求めないでくれ。

彼女ですら、こんなに情熱的に求めたことはない。
いつも裕之が求めて、馨がそのふんわりとした空気で受け止めてくれる。

それはもちろん、馨が嫌がっているのではなく、それが2人の愛し合い方だから、裕之は幸せに満ちあふれていた。

「好き……。加賀さん……。好きなの……。」

頭が、疲れているから、働かない。

馨……。

⏰:11/04/23 20:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#686 [向日葵]
僕は今、君を、こんなにも欲している。

働かない頭のせいにする。
なにもかも。

気づけば、花形に唇を寄せていた。
今すぐ、自分を癒してほしくて、無我夢中で、花形を抱いた。

「加賀さん……」

「……花形。ーーーーーっ!?」


裕之は、ハッとした。

今、誰の名を呼んだ?

わからなくなった。
僕は馨を愛してるのか、花形を愛しているのか。

あんなに馨を欲していたのに、紡いだ名前は、違う名だった。

⏰:11/04/23 20:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#687 [向日葵]
「加賀さん、私はいいんです。私は、ずっと、あなたのそばにいますから」

その言葉は、甘美な呪縛だった。

月日を重ねる度、裕之の評価は上がり、更に仕事は増え、家に帰れない日が続いたこともあった。

家に帰れば、自分が元の自分に戻った気がして、茉里と馨を力いっぱい抱きしめた。

同時に、懺悔をしたくなった。

僕は、君と似た女性と、肌を重ねた。
君と似た女性と関係をもっている。
許してくれ、君を求めた結果だったんだ。
君が……君が……。

⏰:11/04/23 20:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#688 [向日葵]
許しを請う言葉は、最早、言い訳にしかきこえなくて、裕之は吐き気がした。

殴りたい。
殴れるなら、もう顔がわからないくらい、自分の顔を殴りたい。

そして、3年の月日が過ぎた。
あの甘美な呪縛に甘えて、疲れた体を、花形で癒していた裕之は、もう、いい加減関係を切らなければと、久々に早く帰りながら考えていた。

早いといっても、もう11時だったが。

「ただいま」

玄関をあけて、そう言っても、馨がこなかった。
いつもなら、たとえ手が泡だらけだろうと、ふんわり笑って「おかえりなさい」というのに。

⏰:11/04/23 20:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#689 [向日葵]
リビングにはまだ光があった。

「馨……?」

リビングのテーブルに、疲れたような背中があった。

馨は声をかけられると、ゆっくり立ち上がり、同じ動作で裕之を見つめた。
その目が、恐ろしいほど澄んでいて、裕之は息を呑む。

「花形さん」

出てきた言葉は、「おかえりなさい」でも「お疲れ様」でもなかった。

「って方から、今日、電話があったわ」

⏰:11/04/23 20:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#690 [向日葵]
裕之はもう終わりだと思った。
すべてバレた。

「あなたと別れてほしいんですって」

「…………すまない」

なんとか出た言葉が、そんな陳腐な言葉で、裕之は逃げ出したくなった。

暴れまわるくらい、怒られた方がまだマシだ。
馨はどこまでも静かで、冬の夜みたいに、しん……と冷たい。

「どれくらい付き合ってるの?」

「3年……」

終わった。
なにもかも、失った。

⏰:11/04/23 20:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#691 [向日葵]
「疲れたあなたに気づいてあげられないのなら、私が彼を癒します、って言われたわ」

裕之は、馨を見れなかった。
顔を伏せ、目をギュッととじる。

「あなたをそうさせたのは、わたしなのね……」

違う。

「別れたい?」

「そんなわけ……っ!!」

そんなわけないと言うため、顔を勢いよくあげる。
裕之は馨をみて、むしろもう別れたくなった。

⏰:11/04/23 20:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#692 [向日葵]
それでも馨は、裕之を責める気にはなれなかった。
いや、責めたかったのかもしれない。

でも、誰が正しいとか正しくないとか、悪いとか悪くないとか、考えだしたらキリがなくて、もう馨も自分がどうしたいのかわからなくなっていた。

でも裕之が、自分を心の底から愛してくれているのはわかっている。

しかし、3年間も自分しか知らない裕之を、他の誰かが見たのかと思えば、胸が痛むのは仕方がなかった。

⏰:11/04/23 20:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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