こいごころ
最新 最初 全 
#703 [向日葵]
「別れましょう」
「う…………。…………え?」
馨の表情は、あの時ぐらい静かだった。
「このままいても、あなたが楽しく私たちと過ごすことは無理だと思うの。ずっと、罪の意識に苛むなら、別れたほうがきっといいわ」
「馨、なに言って……」
「あなたはもしかしたら花形さんの方がいいのかもしれないわ。仕事の大変さをわかってくれそうだもの。だから……」
「嫌だ」
自分でも驚くぐらい、強く否定した。
:11/04/30 20:33
:SH05A3
:☆☆☆
#704 [向日葵]
「他の女(ヒト)に心うつりを一瞬でもしてて、こんなこと言っても信じてもらえないかもしれない。でも僕は、君を、茉里を愛してる。絶対に離れたくない。離れたなら、今以上に僕は苦しむよ」
「離れれば、その想いも風化していくわ」
「しないよ」
即答すると、馨の瞳が揺れる。
水面が、風で波立つように。
「僕の心にはずっと君しかいない。花形のことだって……、君を求めすぎたことが、原因だった。……いや、これは別に責めてるわけじゃないよっ。ただ……いつも僕には君が」
「うそつき……」
駄目……。
抑えなきゃ……駄目。
困らせたくない。
面倒なことには、したくない……。
:11/04/30 20:35
:SH05A3
:☆☆☆
#705 [向日葵]
そう思う度、涙があとからあとから落ちて、フローリングに染み込む。
あの時は、涙なんてすぐ止まったのに、今になってどうして……?
「じゃあどうして3年も続くのよ!!それは……っ、あなたがあの人に気があったって証拠じゃない!!」
「かお……」
「私は苦しいことは嫌!こんな思いするのは嫌なの!楽しくのんびり過ごしたかった!!ごちゃごちゃ家族がバラバラになるようなことは嫌なの!!」
「僕だって嫌だよ……」
:11/04/30 20:35
:SH05A3
:☆☆☆
#706 [向日葵]
「した人がな……っなに、言ってるの、よ……っ!!」
しゃっくりが出てきて、うまく喋れない。
せき止めていた沢山の思いは、もうとまらない。
「むかつく……っ!!」
気づかなかった自分が。
彼を3年も魅力していた花形を。
花形が彼の全てを手にいれたことを。
崩れ落ちた馨は、フローリングを拳で何度か叩く。
指の骨がぶつかって痛いけど、どうでもよくなった。
:11/04/30 20:36
:SH05A3
:☆☆☆
#707 [向日葵]
「別れてよ!!わか……っれてくれたら、いいじゃない……っ!!私は風化出来……るわっ!!」
「じゃあ……もう僕が嫌い?」
「だ……だい……っ嫌っい!!」
「目を見て言って」
大きな手が、顔を包む。
30代になっても、裕之の綺麗な顔は変わらない。
甘い言葉をつむぐ唇は、キスすればもっと甘くて。
笑った顔は、心に明かりが灯ったように暖かくて。
大きな手で茉里の頭を撫でる姿が、微笑ましかった。
:11/04/30 20:37
:SH05A3
:☆☆☆
#708 [向日葵]
「だ…………っ」
大嫌い。
あなたなんか、大嫌い。
裏切り者。
嘘つき。
触らないで。
もう私に2度と触れないで。
大嫌いなの。
もう愛せないの。
「ずるいわ……」
大嫌い。
そんなわけないじゃない。
「そんな……か、んたんに……っ、嫌いになれたら、こんなに苦しくならないわよ……」
「うん……」
:11/04/30 20:37
:SH05A3
:☆☆☆
#709 [向日葵]
大好きよ……。
離れたくない。
でもこんなんじゃ、ただの面倒くさい女だわ。
なんでもないふりして、あなたのことわかってますみたいな顔して。
でも暴かれれば泣き崩れてすがりつくなんて。
そうなりたくなかったし、そんなことになることも避けようとした。
まるで雨のように、フローリングが濡れていく。
ガンガンと殴る手は、自分を戒めるかのように、力がだんだんと強くなっていく。
:11/05/07 22:18
:SH05A3
:☆☆☆
#710 [向日葵]
その手を、やわらかく包まれる。
「殴るなら、僕の顔にしなよ」
ぶんぶんと、馨は首を横にふる。
「僕は……馬鹿だからさ……」
ぽたりと、馨ではない涙が、フローリングに落ちる。
形のいい目から、丸い涙がこぼれる。
馨は目を見開いた。
裕之が、泣いている。
:11/05/07 22:18
:SH05A3
:☆☆☆
#711 [向日葵]
「君が、傷つくの、わかってたのに……」
痛いほどに、馨の心にひびが入り、小さな破片が割れてとんだと思えば、次々にガラガラと崩れていく音がきこえてくるのがわかった。
どうしようもない馬鹿。
謝罪の言葉は、無力で、無意味で……。
「ごめん」なんて言葉が何故あるのかわからなくなりそうだった。
でもそれを何重にも重ねて、君がそばにいてくれるなら、僕は重ね続ける。
:11/05/07 22:19
:SH05A3
:☆☆☆
#712 [向日葵]
「信用……、なくしたことはわかってる。でも僕は君しかいらない。茉里しかいらない。愛してる……っ」
胸からせりあがってきそうになる叫びを抑えながらも、必死に届いてくれとこめる。
離れないでくれ。
君しかいない。
君だけだ。
好きだ。大好きだ。
愛してるんだ。
そばにいてくれ。
それしか望まない。
もうなにも望まないから。
:11/05/07 22:19
:SH05A3
:☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194