こいごころ
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#753 [向日葵]
この人は……、この人も、なにかから逃げようと苦しんでいたのかしら。
「今は…………なにもしてないの……?」
「してないよ」
「嘘ならもうつかないで」
即答が不安で、そう言ってしまう。
「嘘なんかじゃないよ」
「私が子供だと思って茶化してるなら、もうやめて……。私もう……」
:11/05/28 20:14
:SH05A3
:☆☆☆
#754 [向日葵]
涙が流れた。
自分の中で、裕之をどうするかなんて答えは決まっていないのに、吐き出したのは、本心だった。
「あの時みたいな思いは、辛いの……っ。だって、帰ってきたら、「ただいま」って……、抱きしめてくれてたのに……っ!それは他の誰かを抱いたかもしれないあとだなんて……っ!!」
ああそうか。
許せなかったのは、許したくなかったのは、駄々をこねてたんだ。
お父さんをとらないで、触らないで。
お父さんは私のお父さんなの。
:11/05/28 20:15
:SH05A3
:☆☆☆
#755 [向日葵]
駄々をこねて。
拗ねて。
相手が自分に謝るまで、そして自分はそれを許すまで。
この人はぬいぐるみかなにかか。
泣いてるけれど、どこか冷静に自分を分析して、茉里は自身を笑った。
「もう、いいよ……」
そんな馬鹿げた理由でこの人を憎んで、許せないのなら。
終わりにしよう。
もう駄々をこねる歳じゃない。
「もうやめる、恨むの……」
かちゃりと音がしたと思ったら、扉が少し開いていた。
裕之は悲しそうに微笑んでいた。
:11/05/28 20:15
:SH05A3
:☆☆☆
#756 [向日葵]
こうやって向き合ったのは、何年ぶりだろう。
顔を合わせても、まともに見ようともしなかったから。
あの頃と変わったような変わってないような。
少し痩せた?
シワも少し増えた。
でも顔は、整っている。
お父さんだなんて呼べないのは、まだ拗ねた心が残ってるからだ。
でもこれくらいは大目にみなさいよね。
元凶に文句なんて言わせないんだから。
:11/05/28 20:16
:SH05A3
:☆☆☆
#757 [向日葵]
「馬鹿……。馬鹿馬鹿大馬鹿。アンタなんて、大嫌いよ……」
あとからあとから涙が流れてくる。
悪口を言われても裕之が傷ついた顔をしないのは、もう茉里の気持ちを知っているからだ。
「大嫌い。なによ、結局皆から許してもらうだなんて、運に恵まれてるわね」
「そうだね……」
「私やお母さんじゃなかったら、絶対にアンタなんか捨ててやるんだから」
「そうだね……」
:11/05/28 20:16
:SH05A3
:☆☆☆
#758 [向日葵]
口が、波でもうってるかのような形になりそうなのを必死で堪える。
「私がどれだけ悲しかったかなんて、しらないでしょ」
「……」
「大好きだったのに……っ、う、うら……っぎられた気持ち、わかんないでしょ……っ」
家に帰るのが嫌で、もうこの家族は一緒にいられないかもしれない不安が毎日ついてきた。
「ふぇ……っ?んくっ、私……っ、すごく傷ついたんだからぁぁぁ!!」
:11/05/28 20:17
:SH05A3
:☆☆☆
#759 [向日葵]
なにもかもが爆発した。
5年間、言いたいことはいっぱいあって、でも言いたくなくて、けれど思い知れと思った。
もう恨まなくていい、言いたいことは言った、その達成感とか安心感とか、全部が弾け飛んだ。
子供みたいに「うえぇぇえん!!」なんて言って泣き叫ぶ自分をみっともないと思いながらも、声を出さないようにすることが出来なかった。
「もう疲れたっ!!娘にこんな思いさせ……さ、せな、いでよおっっ!!私はふ……っふつ、うに幸せに、17年間を、しゅ、し、過ごしたかったあぁぁっ!!」
:11/05/28 20:17
:SH05A3
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#760 [向日葵]
裕之はなんとも言えない笑顔で、茉里の言葉に頷く。
「昼ドラじゃ、な、いんなだからさぁっ、ドロドロしたよ……ようしょ……、要素、入れないでよおぉっ!!」
「茉里さっきから噛み倒してるよ」
「アンタのせいでしょうがぁ!!必死にっ、話してんの、に、茶化すなあぁっ!!」
裕之はまた笑みを深くする。
その笑顔が胸にしみて、茉里はまた一段と声を上げた。
ふわふわと裕之が頭を撫でれば、撫でるその掌の感触が懐かしいあの頃を思い出してまた泣けた。
:11/05/28 20:17
:SH05A3
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#761 [向日葵]
ああみっともない。
馬鹿らしい。
許してしまった。
でもそんな顔で笑うなら、許してあげてよかった。
そう思ったことなんて、当分言わない。
全部いっぺんに許しちゃうのは、なんだか嫌だから。
だからまず、今日は一緒にご飯を食べようか。
:11/05/28 20:18
:SH05A3
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#762 [向日葵]
[18]茉里と父
急に泣き声がきこえたので、リビングで椅子に座って待っていた宗助はびくりとはねる。
泣きながら何か言ってるのはわかったが、何を言ってるかはまったくわからなかった。
さっき自分の前で混乱してても泣かなかった茉里が、あんなに大きな声で泣いている。
でもそれはいいことだと思った。
茉里が、甘えている証拠だからだ。
そしてその甘えている相手が、裕之なのだから尚更良い。
どんな形でそうなったかはしらないが、きっと和解出来たんだろう。
結局自分はなにも出来なかったし、したところで役には立たなかったかもしれない。
:11/06/05 22:26
:SH05A3
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