こいごころ
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#401 [向日葵]
「すいませえん」

そう言って、走ると言っていいのかわからないくらいゆっくりとこちらにきたのは、髪の毛をふわりと内側に膨らませた、背の低い可愛らしい女の子だった。

「それえ、カナのなんですう」

ゆっくりとした喋り方が、その可愛さをゆり引き立たせる。
ぶりっ子しているような作った喋り方ではなく、本当にそういう喋り方らしいので、茉里は好感が持てた。

「はい、どうぞ」

笑いかければ、カナと名乗る少女も、垂れ目がちの目を更に垂れさせ、ふにゃりと笑った。

⏰:09/12/10 23:56 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#402 [向日葵]
「おい、カナー」

男の人の声が聞こえた。

お兄ちゃんが妹の面倒を見てあげてるのかな?
偉いなー。

と、その方を見ると、茉里が予想していたお兄ちゃんよりははるかに大きく、そして相手を見るなり目をむく。

「そ、宗助!」

「加賀?!」

思わず立ち上がってしまう茉里。駅が3つ離れている宗助が、まさかここにいるだなんて思わなかった。
しかもこんな朝っぱらから。

⏰:09/12/10 23:57 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#403 [向日葵]
「なに……やってんの……?」

「俺は、妹の遊び相手になってて……」

妹?!

さっきの可愛らしい女の子を見る。
妹は不思議そうに2人を交互に見る。

「こんな……朝から、爽やかな……」

「華名は、言い出した聞かないから……」

会話が続かず、間が空いてしまう。
そんな2人を馬鹿にするかのように、遠くで鳩が1度鳴いた。

⏰:09/12/10 23:57 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#404 [向日葵]
――――――――…………

華名に少し離れた自販機で飲み物を買ってくるように告げた宗助は、茉里とベンチに座って喋っていた。

「アンタも、なんでこんな早くから……。散歩か?」

「まさか。私にそんな日課ないもの。くそ馬鹿親父が仕事の都合上朝帰りだって言うから、会うのが嫌で逃げてきたの」

もっとも、茉里は仕事だなんて嘘だと思ってる。
どうせ、どこかの知らない女と一晩過ごし、帰ってくれば愛用している香水とは違う匂いを漂わせる。

それがどれだけ母を傷つけるかもしらないで……。

⏰:09/12/10 23:57 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#405 [向日葵]
「ほんっとにアンタは……」

1人で、自分が考えたことにイラッとしていた茉里は、宗助が腹が立ったように立ち上がるのを見ながら首を傾げる。

ん?どうしたんだろ。

「そういう時は連絡しろよ!なんで俺になんにも言わないんだよ!」

怒鳴り声が早朝の公園に響く。
何羽かいた鳩が、それに驚いたように飛んでいった

突然怒られた茉里はしゅんと頭を垂れる。

⏰:09/12/10 23:58 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#406 [向日葵]
そりゃ言うことだって考えてたけど、毎度こうして自分の為に時間を割いてもらうのは悪いと思ったから。
ときどき付き合ってもらうだけで、茉里は満足なのだ。

「あー、宗兄悪いんだあ。女の子は大事にしなきゃ駄目なんだよーう」

細い手に、3つの缶を精一杯持って、華名が帰ってきた。

ばつが悪そうな顔をする宗助は、茉里から数歩、後ずさる。
その間に華名が入り、茉里の前に立つ。
そして缶を1つ差し出す。

⏰:10/01/01 02:21 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#407 [向日葵]
それが視界に入った茉里は、顔を上げ、華名を見る。

初めて会ったというのに、華名はとても人懐っこい笑みを向けてくれるので、茉里はなんだかホッとして、思わずつられて笑う。

「お姉さん、お名前はあ?」

まるで子供のように訊くので、クスリと笑う。

「加賀 茉里だよ」

「華名は、笹部 華名っていいまーす。13歳ですう」

と言うと、サッとバドミントンの羽を出す。

⏰:10/01/01 02:21 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#408 [向日葵]
「茉里ちゃんは、バドミントン好きですかあ?」

「うん。中学生のときやってたからね。それなりに出来るよ」

「じゃあ、やりましょー」

引っ張られて、茉里はさっきまで宗助たちがいた芝生まで連れてこられた。

「ゆるしてあげてくださいねえ」

突然そう言われたから、茉里は華名の方を見る。
垂れ目がちの目が、気遣うように潤む。

「宗兄心配性だから、茉里ちゃんが気にになってしまってるんですう。気持ちの表し方が下手で、あれで、すごくすごくすごーく、茉里ちゃんを大事に思ってるんですう」

⏰:10/01/01 02:22 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#409 [向日葵]
そう言われて、ちらりと宗助を見る。
離れたところで、じっと茉里たちを見つめている。

うん、ちゃんと分かってるよ。
そんな宗助だから、あまり心配かけたくなかったんだよ。

「ありがとう華名ちゃん。大丈夫だよ。ちょっとびっくりしちゃっただけだから」

安心したように微笑まれると、似てるなあと思った。
そうやって、誰かの心配しちゃうのは。

しばらくバドミントンを楽しみ、時計の針がもうすぐ11時を指す頃、休憩するため、芝生の上に座ると、華名が言った。

⏰:10/01/01 02:22 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#410 [向日葵]
「茉里ちゃん、華名のお友達になってくれませんかあ?」

「え、私でいいの?もちろんオッケーだよ!」

膝を抱えて座っていた華名は、ギュッと膝を胸に寄せた。

「皆、華名の喋り方が嫌だって、離れていっちゃうんですう……」

眉も目も下がってしまった華名は、本当に悲しそうだった。

人は本当に身勝手で、嫌だと思った相手とは、口をききたいとも思わない。

⏰:10/01/01 02:22 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#411 [向日葵]
私みたいに。

でも華名と茉里の父とはまた訳が違う。
華名はこんなにもいい子だ。

それに比べて……。
と茉里はついイラッとしてしまう。

あんな最低な奴に、何故どんどんと女が寄ってくるのかが分からない。

こういういい子にこそ、人は寄るべきだと思う。

「私は、華名ちゃんの喋り方好きだよ。なんだかホッとするし、和むっていうかさ」

⏰:10/01/01 02:23 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#412 [向日葵]
照れたように、けれど嬉しそうに笑う華名は、ぴたりと茉里に寄り添う。
懐いてくれたみたいだと思えば、1人っ子で兄弟がいない茉里は、妹みたいだと華名が可愛くて仕方なくなった。

「お取り込み中悪いんだが……」

後ろから宗助が茉里たちを見下ろしていた。

「本当にタイミング悪いよ、宗兄い」

「だから謝ってんだろ。ところで腹が減った。どこか食べに行こう」

⏰:10/01/01 02:23 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#413 [向日葵]
「えー、まだ茉里ちゃんとお話したいー」

茉里の腕をギュッと組みながら、宗助を見る。

「朝から付き合わされた身になってくれ。お前は早くに起きたかもしれないけど、俺はお前から叩き起こされて、朝飯を食わせてもらえないままここまで来たんだぞ」

「わかったよう。でも華名はあ、お昼から他の用事があるから、とりあえず家に帰ります」

⏰:10/01/01 02:24 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#414 [向日葵]
なんじゃそりゃ、と宗助はカクンとこける真似をする。
マイペースすぎるほどマイペースな華名に、茉里は笑ってしまう。
「あ、華名ちゃん、携帯持ってる?」

「持ってますよー」

だした携帯は、華名の雰囲気には似合わない黒い携帯だったので、一瞬ポカンとしてしまった。

赤外線でメールアドレスを交換した華名は、満足といった風に微笑み、スキップするみたいに駅へと向かって行った。

⏰:10/01/07 15:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#415 [向日葵]
そして隣に宗助が残っていたので、アレ?と思う。

「なんで……」

しかし茉里はすぐに口を紡ぐ。
また怒鳴られないかと目をすがめる。

宗助が残る理由はただ1つ。
茉里が心配だからだ。

そんな茉里を見て、宗助はため息をつくが、そのため息とは別のことを話し始めた。

「中学で、バドミントン部ってあったんだ?」

「え……あ、ううん。放課後とかよく友達と学校の借りて遊んでたの」

⏰:10/01/07 15:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#416 [向日葵]
「じゃあ、帰宅部?」

「ううん、家庭科部。お菓子とか作ってたの。あ、また宗助にも作ってあげるからね!」

「あ、そうだ。お菓子とか言ったから、腹減ってたこと思い出した。なに食べたい?」

歩きだしなから言う。
茉里もその隣に並んで歩きだす。

「なんでも。でも久々にバーガーとか食べたいかも」

「じゃああの有名なとこだな」

⏰:10/01/07 15:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#417 [向日葵]
「看板がMの?」

「そういうこと」

どちらからともなく、手を繋ぐ。
もう、そうすることが当然のようになっていることに気づいた茉里は、密かに頬を染める。

そこで先日、宗助にあーだこーだ言って争っていたあのことを訊いてみる。

「ねえ、いい機会だから、いっそ名前呼んじゃってみてよ」

急なことにむせる宗助。

「いい機会って、どんな機会だよ」

⏰:10/01/07 15:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#418 [向日葵]
「なーまーえ!なーまーえ!」

茉里の名前コールに、うんざりしだす宗助。
その表情に、ムッとする茉里。

「なによ!恋人にはなっても、名前は呼べないって?じゃあ宗助は私と結婚しても”加賀“って呼ぶ気かあー!」

「考えが極端なんだよアンタは」

別に本気で怒ってない茉里は、勢いでも、その場のノリでもいいから名前を呼んでほしかった。

宗助に、名前を呼ばれたらどんな感じになるかを知りたかったのかもしれない。

⏰:10/01/07 15:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#419 [向日葵]
「……呼ばなきゃ宗助のことメガネって呼んでやる……」

「発想が幼稚すぎるぞ」

歩いた足を止め、茉里はそっぽを向く。
宗助も足を止め、困ったように眉を寄せる。

ここまで頑なに名前を呼ばないと言われては、まだ彼女である事を認めてないかのような気分になる。

宗助は確かに自分に彼女になって欲しいと言ってくれたし、彼女前よりは雰囲気も多少なりともあまくなったはずなのに、こんなことでは以前と変わらない。

⏰:10/01/07 15:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#420 [向日葵]
そう思えば泣きたくなった。
ひとりよがりな気分は、もう卒業できると思っていたのに……。

宗助がそっと息を吐きだし、繋いでいない方の茉里の手を握る。

向かいあうようにしても、茉里はまだそっぽを向いていた。

「悪かった……。だから拗ねるな」

「人を子供みたいに……」

「だから……。とりあえずこっちを向いてくれ」

言われて、ゆっくりと首を動かす、が、まだ目は合わせない。

⏰:10/01/07 15:17 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#421 [向日葵]
まだ怒っているとの意思表示のつもりだ。

「おい……」

案の定、宗助が不服そうな声を出す。

「そっちに向いたもん」

「茉里」

一拍おいて、茉里は驚く。

え?

顔を急いで上げると、宗助の顔は耳まで真っ赤になっていた。

⏰:10/01/07 15:17 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
「まっか……」

気の抜けるような声で感想をそのまま告げると、宗助はさらに顔を赤らめる。

「い……っておくがな、俺は誰かと付き合うとか、好きだって伝えるとか、名前を呼ぶとか、全部はじ……始めてなんだ」

「うっそぉ!」

変なイントネーションで驚いてしまう茉里。
更に宗助を真っ赤にさせる。

「……で、これからは名前で呼んでくれるの?」

⏰:10/01/07 15:18 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
「…………考えとく」

「よしっ」

満足そうに微笑む茉里を見て、宗助はホッとしたようだった。

ただ名前を呼ぶだけ、それだけにどれだけ勇気を出してくれたのかと思うと、なんだか今日呼んでくれただけでいいと思えた。

どんなことにも不器用ながら、一生懸命答えを考えてくれる宗助は、茉里の胸の中を温かくしてくれる。

また歩きだした宗助の手をそっと握ると、痛くならない程度に力を入れて握り返してくれる。

⏰:10/01/07 15:18 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
気持ちの温度差は違えど、きっと同じように感じてくれているだろうとわかるから、口が自然と綻ぶ。

こんな幸せな時がくるだなんて、ついこの間までの自分は知らなかった。

宗助はいつも彼女に新しい何かを与えてくれる。
茉里もまた、彼に新しい何かを与えている。

そうやって、お互いにないものを見つけながら、一緒にずっといたいと茉里は思った。

⏰:10/01/07 15:19 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
「そういえば、年明けたら修学旅行だね!宗助、私と一緒の班になろうよ!」

「久瀬が許すか?」

「なんでミュー?」

茉里は、ミュシャが宗助と犬猿の仲だと言うことは知らない。
もちろんミュシャが宗助を気に入ってないのは知っているが、夏休みの時に喧嘩を売りに行っていたり、終業式の日に一方的に言葉をぶつけてきたなんてことは知らない。

「まあ大丈夫よ!私がちゃんと説得するし」

⏰:10/01/21 03:19 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
そう言う茉里に、宗助はにっこり笑う。
宗助も、茉里とは同じ班になりたいと思ってくれていたようだ。

幸せすぎるのが切なくて、茉里はなんだか泣きたくなった。

――――――――……

家に一旦帰った華名は、茉里のことを思い出して微笑んでいた。

今度はいつ会えるだろうか。

メールアドレスを知ったことだし、メールをしてみようかな。

⏰:10/01/21 03:20 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
その時、家のインターホンが鳴った。
これから用事がある。
もしセールスとかだったら長引くし、めんどくさい。

ここは居留守を使うか。

しかし、そんな華名にドアを開けさせようとするかのように、インターホンが何回もなる。

さすがにしつこすぎて、穏やかな華名も苛立つ。
勢いよく、ドアを開けてやった。

「わあ!ちょっと!」

目の前の人物に、華名は口を大きく開ける。

「久しぶり、華名」

⏰:10/01/21 03:20 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
「栞ちゃん!」

そう呼ばれる女の子は、肩までの茶色い、少し波立った髪を揺らしながら、人懐っこい笑みを浮かべる。

歳は、16歳くらいだろうか。
まだ幼さの残る顔を、華名に近づける。

「ねえ、宗助は?」

「お出かけ中ー!しかも、彼女とー!」

そう言った途端、栞の顔から笑顔が消えた。
そして少し眉間にしわを寄せる。

⏰:10/01/21 03:21 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
華名はそんな栞の変化に気づかず、にこにこしながら栞の言葉を待つ。

「彼女?いたの?」

少し低めの声で問う。

「うん。ついこの間できたみたいーラブラブなんだよお」

「へー……」

ラブラブねえ……。
でも付き合い始めなら、ラブラブなのは当たり前よね。
そういう時は、少しの綻びが大きな穴になるんだよ。

⏰:10/01/21 03:21 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
「あたしね、来年の新学期からこっちの高校に来ることになったの」

「えー!ほんとーう?」

「しかも、おばさんがこの家に来ていいって!」

人懐っこい笑みを作るが、その裏は黒い気持ちでいっぱいだった。

大丈夫。宗助はすぐに目が覚める。
だってあたしがいつも近くにいるんだもの。

⏰:10/01/21 03:43 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#431 [向日葵]
恋愛なんて、少し距離があるだけで簡単に壊れちゃうんだから。

最近できた彼女だかなんだか知らないけど、あたしはアンタになんか負けない。

いや違う。
あたしは帰ってきたのよ。


宗助を、自分のものにするために。

⏰:10/01/21 03:44 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#432 [向日葵]
[12]そばに

「そーうーすーけー」

と呼んでいるのは、茉里ではない。
茉里は少し離れたとこれで、華名と遊びながら、2人の様子を見ている。

「ゲームしよゲーム!」

「お前強いから嫌」

「なによー、いいじゃん!」

そう言って、宗助の腕に絡みながら、引っ張っていく栞。
そんな彼女と、ふいに茉里は目が合った。

⏰:10/01/21 03:44 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#433 [向日葵]
にっこりと言ったふうに笑う彼女に、他意はないだろうと思いながらも嫌な気分が胸を覆うせいで、笑顔が引きつる。

あの子、なんなの……?

―――――――…………

新しい年を迎える前の日。
茉里は華名に誘われて宗助の家に来ていた。

華名からその前の日、泊まりに来ないかとメールがあったからだ。

茉里が大嫌いな父はずっと家にいるから、彼女には嬉しい誘いだった。

⏰:10/01/21 03:45 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#434 [向日葵]
しかし、仮にも恋人の家に泊まるのは反対されないかと心配になったが、あくまで友達である華名の家に行くので、「友達の家に泊まる」と告げた。
嘘ではない。

宗助がいつも降りる最寄り駅で華名と待ち合わせをし、初めて宗助の家を見た。

どこにでもある、普通の2階建ての家だ。

「おじゃまします」

「どうぞ」

⏰:10/01/21 03:45 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#435 [向日葵]
そう言ったのは、待っていたかのように玄関にいた女の子だった。
とても可愛らしい。
茉里を見ると、人懐っこい笑みを向ける。

「こんにちわ、茉里さん」

初めて会う人に戸惑い、誰なのかと華名に目で問い掛ける。

のんびり屋の華名が答える前に、その人物が答えた。

「あ、自己紹介が遅れました。あたしは田辺栞。華名や宗助とは昔からの幼なじみで、とーっても親しくさせてもらってます」

⏰:10/01/21 03:46 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#436 [向日葵]
“とーっても”の部分が強調されたのは気のせいだと思うことにする。

「で、来年の新学期から、1つ学年は下だけど、同じ高校に通うことになります」

ああそうなんだ、と納得する前に、階段から宗助が降りてきた。
「あ、アンタもう来てたんだ」

「あ、うん……」

華名が一緒とはいえ、好きな人と同じ場所で寝泊まりを共にするのは、やっぱりどこか照れてしまう。

⏰:10/01/21 03:46 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#437 [向日葵]
すると栞が宗助の頬を人差し指でつつく。

「彼女が来たのにそっけないなあ。ごめんなさい茉里さん、宗助って家族以外はあんまり素顔見せないから」

茉里はびくりと片眉を動かす。
少しひっかかったからだ。
なんでもないその言葉に、何故か棘を感じる。

わざわざそんな説明いるのだろうか。
それとも自分が気にしすぎているのか?

「もしかして、一緒の部屋で寝るの?」

「まさか。華名の部屋だよ」

⏰:10/02/07 01:13 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#438 [向日葵]
「あらそう。残念ね」

言いながら茉里を見る。

敵意を感じるのは、気のせい……?

――――――――…………

そんなことがあったのが約2時間前。

結局宗助は栞に付き合わされてゲームを開始した。

さっきからわざとらしいくらいに笑い声を上げている。

「茉里ちゃん、華名のお部屋に行きませんかあ?」

⏰:10/02/07 01:14 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#439 [向日葵]
「あ、いいね、行こっか」

じゃないと宗助の方ばかり気になってしまって、せっかくの華名との時間が無駄になってしまう。
それはいけない。

「ん?どこ行くの?」

宗助が問う。
口を開いた時、

「宗助ゲームオーバー!」

栞が声をあげる。
すると宗助も「え?!」と驚き、テレビの方を向いてしまった。

私よりゲームなわけ……?

少しムッとして、もう華名についていった。

「大丈夫だよお」

⏰:10/02/07 01:14 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#440 [向日葵]
華名が階段を昇りながら言う。

何が大丈夫なのかわからず、先に歩く華名を見る。

「栞ちゃんは兄弟がいないから、宗兄を本当のお兄ちゃんみたいに思ってて、とられたくないんだよお。だから華名みたいに家族じゃない異性はあんまり好きじゃないみたいー」

よほど茉里の顔に「ムカつく」と書いていたのだろう。
安心させるようにいってくれているのだと思えば、年下に気を遣われて、ちょっと情けないような、でも荒んだ心が癒されるような気がした。

こういう勘の鋭いとこというかなんというか、宗助に似てるよなー。

⏰:10/02/07 01:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#441 [向日葵]
「ありがとう。気にしてないから大丈夫だよ」

微笑めば、華名も微笑む。

「ここですう。どうぞお」

ドアを開けられて、中に招かれると、そこは淡いピンクで統一された部屋だった。

でも彼女の雰囲気とあっていたし、嫌味のない色調は、素直に素敵だと思えた。

「華名はピンクが好きなのお。茉里ちゃんは何色が好きですかあ?」

「んー、緑かな。部屋も緑系統の物が多いし」

⏰:10/02/07 01:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#442 [向日葵]
「そうなんだあ。華名もまたお邪魔したいなあ」

「いつでもいいよ。今度は華名ちゃんがお泊りに来てね」

にこりと微笑めば、照れるように華名はもじもじする。

「茉里ちゃんに、思い切ってメールしてみて良かったあ」

顔を少し桃色にしながらいうものだから、可愛らしくて思わず抱きしめてしまう。

「華名ちゃんみたいな妹欲しかったなあ……」

「茉里ちゃんは兄弟いないのお?」

⏰:10/02/07 01:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#443 [向日葵]
「うん……。……ってか、1人で良かった」


「どうしてえ?」

訊かれたが、茉里は答えられなかった。

こんな純粋な子に、あんな思いを話すのは酷だと思ったからだ。
でも、初めて会った茉里に、友達がいないと自分のことを話してくれた華名には、隠したくないとも思った。

「うーん……。クソ親父が嫌いだから」

それだけ言った。

茶化すように笑いながら言えば、華名も茉里の言い方がおかしかったのか、クスクス笑った。

1人で良かった。

⏰:10/02/07 01:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#444 [向日葵]
本当を言えば、華名に言ったみたいに妹が欲しかった。
妹がいれば、きっとすごく可愛がるだろう。

でも、あんな思いを妹にはさせたくない。

そう思えば、自分だけが苦しめばいいと思った。

眉を寄せれば、華名が心配そうに見るから、安心させるように微笑んでから、またギュッと抱き締めた。

―――――――――…………

「彼女、美人だね」

ゲームをしながら栞が言った。

⏰:10/02/07 01:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#445 [向日葵]
「ああ、まあな」

「まあな?なにその曖昧な返事」

笑いながら栞は言う。

「別に自慢したって仕方ないだろ」

「そう?普通あんな美人なら、自慢したいのが男なんじゃないの?本当に好きなのおー?」

「……好きだよ」

画面を見ている宗助の顔を、栞はちらりと見る。
その目が、切なさと親愛に満ちているのが嫌になって、栞はコントローラーを置いた。

⏰:10/02/07 01:16 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#446 [向日葵]
「ちょっと華名のとこ見てくるー!」

階段を駆け上がる。

ムカつく。
なによ、あんなのそこら辺にいるのと変わらないじゃない。
一体あたしとなにが違うの?
絶対あたしの方が可愛いのに!

ノックもなしに、急に部屋のドアを開けた。
栞が集めている絵本を読んでいた2人は、驚きそちらを見る。

「ごめんなさい、驚かせて。あたしも茉里さんとお話してみたくて」

⏰:10/02/07 01:17 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#447 [向日葵]
「あ、うん」

愛想よく微笑む茉里だが、第一印象があまりよくないから、少し戸惑う。

「宗助って昔っからゲーム弱くて、でもムキになって勝つまでやろうって言うんです。なんか子供っぽいけどそういうとこ好きなんですけど、1時間以上も一緒にやってたら飽きちゃって」

ここに来てから、自分の方が宗助と一緒にいるということをアピールする。

栞の言葉を彼女が理解したのか、それともわかってないのか、茉里は曖昧に笑った。

⏰:10/02/07 01:17 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#448 [向日葵]
>>446
訂正

栞が集めた ×
華名が集めた ○

⏰:10/02/07 03:59 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#449 [向日葵]
「ゲームと言えば、昔ジャングルジムに早く登ったほうが勝ちっていうのやってて、あたし落ちたんですよ。そしたら宗助があたしを助けてペチャンコになっちゃって!」

アハハと声をあげて、栞は笑う。しかししばらくすると、うっとりした目をした。

「かっこよくて、大好きなんですけど……。でもペチャンコになっちゃダメだろ!っていうね!」

ただの昔あった笑い話。
華名だって楽しそうに笑っている。
茉里ももちろん笑った。

……でも、心からは笑えなかった。

⏰:10/03/01 03:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#450 [向日葵]
さっきから、宗助が好きだとか、大好きだとか、よく主張してくる。

それに、茉里だけが知らない話ばかりだ。

気分が悪くなった。

これは本当に、兄弟を思う独占?
違う。絶対違う。
せっかく楽しかったのに、どうしてそれを壊すの……?

「うるさい。近所迷惑」

開いたままだったドアから、宗助が現れた。

⏰:10/03/01 03:33 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#451 [向日葵]
なんだかホッとしたような、でも来てほしくなかったような、よくわからない気持ちが、胸の中をいっぱいにする。

「あー、ごめんごめん。続きやろっか」

「いい。やっと途切れて一段落したし、今から夕飯の買い出しに行く。加賀、付き合え」

呼ばれて、ぼんやりしていた茉里は、宗助のほうを「え?」といったふうに見る。

「だったらあたしも……」

栞も当然のように立って、一緒に行こうとしたが、宗助に止められた。

⏰:10/03/01 03:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#452 [向日葵]
「おまえはいらん物まで買うからいい」

「買わないから!」

「いい。そんなに大人数でも邪魔なだけだ。」

そう言われて、栞はしゅんと肩を落とす。

「でもあたし……力あるし……」

「俺のほうが、お前よりずっとある」

それで話をきるようにして、まだ座り込んだままの茉里を引っ張り立たすと、上着と財布を持って、そのまま出ていった。

いつも手を繋ぐが、今はなんだか素直に繋げなかった。

⏰:10/03/01 03:34 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#453 [向日葵]
それに気がついた宗助は、少し後ろにいる茉里を振り返る。

「どうした?」

「え?あ、……ううん、なんでも」

拗ねているように、自分が唇を突き出しているのがよくわかった。

宗助はなにも悪くないのに、2人っきりになった途端に、胸の中がぐちゃぐちゃになりだした。

「栞がなにかしたか?」

「なにも……」

⏰:10/03/01 03:35 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#454 [向日葵]
言ってから、いつの間にか食いしばっていた歯が緩み、唇がわなわなと震え出した。

心配したように、宗助が茉里を覗き込む。

「なんで……泣く?」

宗助の手が、頬に優しく触れる。触れられれば、余計に涙が流れ出す。

いやだ。
こんな自分、宗助に嫌がられる。

宗助の過去を聞いても、その場にいなかった。
出会ってすらいない。
そんな自分は、あきらかに蚊帳の外で、せつなくて、はがゆい。

⏰:10/03/01 03:35 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#455 [向日葵]
でも1番嫌なのは、宗助の過去すら自分のものにしたがる、ひどい独占欲の自分。
醜い、いや、消えてよこんな感情。

「加賀、別に迷惑だなんて思わないから、言って?じゃないと泣く理由がわからなくて、俺どうしたらいいかわからないよ」

いつまでも、ただ声を押し殺して泣く茉里に困惑して、宗助は優しく、まるで子供に話すみたいに茉里に話しかける。

その優しさが、宗助の家に来てから荒んでいた心を、柔らかくしてくれる。

⏰:10/03/01 03:36 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#456 [向日葵]
「ごめん……。だって嫌だったの」

「何が?」

「宗助を、1番好きなのは、私なのに……っ」

会話が成立していないが、宗助はその言葉だけで、茉里がどうしたのかわかった。

まだ栞が引っ越していない頃、いいなと思った女の子ががいた。
多分両思いだったと思う。

すると、栞はいち早く察知して、妨害した。
それを知ってる

⏰:10/03/01 03:36 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#457 [向日葵]
だからか、茉里の言葉足らずの言い分を、理解してくれたのだろう。

「知ってる。だから、気にするな。大丈夫だから」

でも宗助は、そんな彼女を可愛く思い、柔らかく微笑む。

頭を撫でるが、まだ茉里の涙は止まらない。

そして泣いたことで、甘えたがっているのか、彼女は宗助に要求する。

「ハグがいいっ」

撫でていた宗助の手が不自然に止まり、固まる。

⏰:10/03/01 03:37 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#458 [向日葵]
「……ごめん。なんか聞こえなかったていうか、耳が言葉を受け付けなかったというか……」

こういうところが、またいい。
彼女がいたことのある男子なら、きっとなにも言わなくても抱きしめてくれているかもしれない。

でも、そんな宗助だから、茉里は好きなのだ。

涙もおさまり、茉里は笑顔になる。

「買い物、行こっか」

歩き出すが、宗助は歩き出さない。茉里の背中をじっと見つめ、そしてハッとすると、茉里の腕を引っ張る。

驚く茉里の頭を寄せ、そのまま抱きしめる。

⏰:10/03/01 03:37 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#459 [向日葵]
要求したくせに茉里は、急な宗助の行動にうろたえ、思わず胸を押し返して、距離を作る。

「な、なになに!どうしたの!」

さっきまでの空気とは違い、宗助は真剣に茉里を見つめる。

「アンタはふざけて甘えれても、本当に甘えたいときは甘えないだろ。それを我慢する必要なんかないんだ。俺が……いるから」

その言葉が、温かく胸に広がる。どうして、そうやって、1つずつ私の心を暴いていってしまうのだろう。

嬉しくて、幸せで、どんどん好きになっていく。

好きって気持ちに上限がなくて、自分でもどこまでいくかわからない。

⏰:10/03/01 03:38 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#460 [向日葵]
でもせっかくだからと、その胸に顔をうずめて、その暖かさを確かめる。

しばらくして、顔を上げた。

「ありがとう……」

それから仲良く手を繋ぎ、歩き出した。

・・・・・・・・・・・

なにあれ……。

華名の部屋の窓から、茉里と宗助を見ていた栞は、眉間に深くシワを寄せた。

泣くなんて卑怯だわ。

⏰:10/03/01 03:38 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#461 [向日葵]
あれじゃあたしが悪者みたいになるじゃない。
それでなくてもあたしはハンデがあるっていうのに。

カーテンを掴み、力を入れすぎて、その手が震える。

しかも宗助から抱き寄せるなんて。
あの宗助が、誰かを抱き寄せるだなんて……っ。
そんなの、見たくなかったのに。

あの女…………っ!

「栞……ちゃん……?」

栞の様子がおかしくなったのに気づいた華名が、栞の背中に呼びかける。

⏰:10/03/01 03:38 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#462 [向日葵]
「あ、ごめん、なになに?」

振り返った時、窓の外に向けていた鬼の形相を捨てて、いつもの優しく人懐っこい笑みに戻す。

「紅白終わったらねえ、初詣にいかなあい?」

「うん、もちろん」

「やったあ!」

「ところで、あの人、いつまでいるの?」

「えー?茉里ちゃん?可愛いよねえ。宗兄ともお似合いだしい」

話が噛み合っていないが、栞にとって、そんなこと今はどうでも良かった。

⏰:10/03/01 03:39 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#463 [向日葵]
ど、こ、が!
あたしのほうが若いし、可愛いし、こんっなに一途じゃない!

「華名……、あたしよりも、茉里さんがいいんだ……。寂しいな……」

そう言えば、優しい華名は、悲しそうな顔をして、栞に抱きつく。

「そんなことないよお!栞ちゃんだって大好きだもおん!」

「じゃあ、あたしがこの家の家族になってもいい?」

つまりは奥さんになりたいという意味だが、華名はわからず、首を少し傾けながら微笑む。

⏰:10/03/01 03:39 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#464 [向日葵]
「心配しなくても、栞ちゃんはもう家族みたいなものだよお。もちろん、本物の家族になってくれたら、お姉ちゃんが出来たみたいでうれしいけどお」

「茉里さんは?」

「茉里ちゃんもお姉ちゃんみたいで大好きだけどお、その前に、華名の初めてのだーいじなだーいじなお友達だものお」

そうよ、あたしはまだまけてなんかない。
あたしは家族みたいに近しい存在でも、あの人は所詮友達、彼女、つまりは他人止まりなんだもの。

その前向きな解釈に、さっきまでのむかついた気持ちはマシになった。

あの人よりも、あたしのほうが優位に立っている。
まだ、諦めるのは、早い。

⏰:10/03/01 03:40 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#465 [向日葵]
―――――――…………

買い物に行って、元気が回復した、……とは言えなかった。

「宗助、ガラスのお皿出していいー?」

「ああ」

夕飯の用意を、宗助と一緒にやろうと思っていた茉里は、キッチンの中にいる宗助と、そこに自分がいるはずの場所にいる栞とを見る。

納得がいかない。
どうして割り込まれなきゃならないのだろう。

⏰:10/03/18 13:07 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#466 [向日葵]
30分前のことだった。

夕飯のメニューも決まり、キッチンに一緒に立った茉里。

あ、なんか新婚みたい。

だなんて浮かれながら手を洗っていると。

「ちょっと宗助!」

少し甲高い声が聞こえた。

「お客様になにやらせてるの。料理なんて、招待した側がやるものでしょ!」

「あ、いいのいいの。私がやりたいって言ったから」

⏰:10/03/18 13:07 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#467 [向日葵]
そう言う茉里の言葉を無視して、栞はにっこりと笑って茉里に言う。

「あたしの方が勝手もわかりますから、茉里さんは座っててくださいな。お客様なんですから」

と、半ば強制的に引っ張られ、近くのソファに座らされた。
料理が出来ない華名も、もうすぐ紅白だからと、録画の準備をするために座っている。

「茉里の口に合う料理を宗助と作りますね」

あっという間にポジションを奪われ、茉里は肩をがっくりとさせた。

⏰:10/03/18 13:08 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#468 [向日葵]
そして今に至る。

「茉里ちゃん、茉里ちゃん」

華名が新聞を広げ、紅白出場する人達の欄を指差す。

「茉里ちゃんは、好きな人出る?」

「あ、うん。この人達大好きだよ」

茉里は、男性アーティストのトップバッターを指した。

「ファンクラブも入ってるし、ライブも行くんだー」

「すごーい!今度華名も連れていってえ」

⏰:10/03/18 13:08 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#469 [向日葵]
「もちろん!華名ちゃんは?」

「華名はこの人お」

女性アーティストの中盤あたりに出てくる人物を指す。

「へー。聞いたことないなあ」

「今度CD貸すよお」

「加賀誰が好きってー?」

キッチンから宗助が会話に入る。新聞を持った茉里は、宗助のところまで行き、さっき指したアーティストを教える。

⏰:10/03/18 13:08 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#470 [向日葵]
すると、宗助が驚く。

「マジで?俺も好きだよ」

「すごい!じゃあ今度皆でライブ行っちゃう?」


盛り上がりかけた時、何かが落ちる音が聞こえた。
隣を見れば、栞が足を押さえてうずくまっていた。

どうやら用意しようとしていたガラス皿が、足の上に落ち、強く打ったらしい。

「だ、大丈夫?」

茉里が急いで駆け付ける。

⏰:10/03/18 13:09 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#471 [向日葵]
「大丈夫です……。ごめんなさい……」

青い顔をする栞は、明らかに大丈夫ではなさそうだった。
心配していると、栞は目を潤ませながら宗助のほうを見る。

「宗助え……、手当てしてくれる?」

宗助は仕方がないなというふうに栞のところまで来て、立たせるために手を貸す。

「加賀と華名……。……華名、栞の手当て、してやってくれ」

その言葉に、栞は目を見開く。

「な、なんで?あたしは、宗助に頼んだのに!」

⏰:10/03/18 13:09 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#472 [向日葵]
「華名のほうが手当ては綺麗にしてくれる。足なら尚更、歩くのに邪魔にならないよう綺麗にしたほうがいいだろ」

「でも……っ」

「うだうだ言ってる暇があるなら、さっさと行け」

冷たく引き離した宗助は、ソファに座り、もう華名のことには構わない様子だ。

それに気分を害し、青ざめていた顔が反対に赤くなった栞は、本当に足が痛いのかというぐらいスタスタとリビングをあとにした。
華名もあとに続く。

「そんな冷たい言い方しなくても……」

と言いながらも、宗助がここに残ってくれるのが嬉しい。

⏰:10/03/18 13:10 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#473 [向日葵]
「じゃあ、ついて行けばよかった?」

意地悪な問いに口を尖らせた茉里は、宗助の隣に座る。

「そういうわけじゃ……」

「だってアンタ、行かないでって顔してたように見えたからさ」

「うん……。ごめん、思った」

「なんで謝んの。いつものアンタなら、それで当たり前みたいな言い方するくせに」

おかしそうに、でも意地悪そうに笑う宗助に、ドキリとする。

⏰:10/03/18 13:10 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#474 [向日葵]
「心配しなくても、俺はアンタしか見てないし」

「……名前呼ぶのためらうくせに、そういうクサイ台詞は言えるのね」

「やかましい」

親しみのある力加減で、茉里の頬をつねる。
おかしそうに茉里が笑うと、宗助と目が合う。

茶目っ気を含んだ宗助の目が、切なげな雰囲気を漂わせる。
その目をじっと見つめているうちに、2人の距離が縮まっていた。

⏰:10/03/18 13:10 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#475 [向日葵]
つねられていた指が緩まったかと思えば、その手は、優しく頬にそえられる。

眼鏡かけたままキスって出来るのかしら……?

ふいに思った疑問は、今の状況にはどうでもよすぎて、頭のどこかへいってしまった。
前髪が触れ、吐息と体温を近くに感じる。

まつげ……長いなあ……。

そう思ったのを最後に、ゆっくりと目を閉じた。

「茉里……」

宗助が、名前を呟く。

すると、足音が近づいくるのが聞こえ、2人同時に目を開ける。
開ければお互いの顔がすぐそこにあり、うろたえ、素早く離れた。

⏰:10/03/18 13:11 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#476 [向日葵]
耳に、心臓があるみたい……。
うるさい……すごく……。

「栞ちゃんの手当て終わったよお」

「あ、そう!お疲れ様!」

絶対に顔が赤い。
それを知られたくなくて、テレビを見てるふりをしながら華名にちらりと視線を向け、またテレビを見る。

隣の宗助を盗み見れば、そっぽを向いていた。
しかし、その耳は、これ以上ないくらい真っ赤になっていた。

さっきみたいな甘いやりとりを、茉里は何度か経験したことがある。
しかし、その甘い雰囲気に浸りすぎて、相手をちゃんと見ていなかった気がする。

⏰:10/03/18 13:11 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#477 [向日葵]
手や、近くに感じる体温。
触れる柔らかな前髪。
潤んで自分を映し出す黒い目。
自分の名を呟く、低く、甘い声。

全てを意識し、全てが頭を真っ白にさせた。

こんなの、本当にキスしちゃったらどうなるんだろう……。
キスだけじゃない……。
もしも……。

そんなことを考えてしまうだけで、熱が出そうだ。

むずがゆい感情を、どうすればいいかわからなくて、茉里は立ち上がり、近くにいた華名をギュッと抱きしめた。

⏰:10/03/18 13:12 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#478 [向日葵]
[13]君は大切な友達

新年になり、自分の部屋でぼんやりと過ごしていたミュシャは茉里からのメールで初詣に行くための準備をしていた。

神社はミュシャからも近い場所なので、ミュシャも行くと返事をしたところだ。

階下のリビングにいる両親に一言言ってから家を出れば、初詣に向かうのか帰るのか、人がぽつぽつといる。

歩くこと20分、神社近くになればなるほど、ガヤガヤとした声が聞こえる。

⏰:10/04/26 22:22 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#479 [向日葵]
「あ、来た来た。ミュー!こっちだよー!」

鳥居近くの階段に、ミュシャに向かって大きく手をふる茉里。
その少し後ろに宗助と、知らない女の子が2人いた。

茉里はミュシャを待ちきれなくて、小走りで迎えにいくと、満面の笑みを向けた。

「あけましておめでとー!今年も仲良くしてねっ」

「あけおめ。こちらこそ」

2人で笑みを交わしていると、宗助が後ろから声をかける。

「おーい。2人の世界に入るなよ」

⏰:10/04/26 22:22 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#480 [向日葵]
ミュシャはにやりと笑いながら宗助たちの元へ行く。

「妬くな妬くな。女にまで妬いてたらアンタ身がもたないわよ」

「いや妬いてないから」

「それはそうと、こちらのお嬢さん方は?」

ミュシャは華名と栞に目を向ける。

ミュシャに見とれていた華名は、ハッとして、にこりと笑う。

「はじめましてえ。宗兄がいつもお世話になってますう、妹の華名といいまあす」

「栞です。宗助とは幼なじみで、昔から仲良くしてます」

⏰:10/04/26 22:23 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#481 [向日葵]
「久瀬ミュシャ。茉里の幼なじみよ」

自己紹介もすんだところで、一同は階段を上って、上にある境内を目指す。
当然、茉里は宗助と並んで行くと思いきや、隣を陣取ったのは幼なじみの栞だった。

ご丁寧に宗助の袖を少しだけ掴んでいる。
隣にいる茉里を見れば、ミュシャの視線に気づき、苦笑いを浮かべる。

それだけで全てを理解したミュシャは、宗助に声をかける。

「おい、多分彼氏の笹部」

「多分て……」

「彼女が流されそうになってるぞ。手を繋いでリードしなさい」

茉里の手を掴んで引っ張り、宗助の元へやる。

⏰:10/04/26 22:23 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#482 [向日葵]
「頼むから、迷子にならないでくれよ」

「そんなヘマしません!」

憎まれ口を叩きながら、2人は仲良く手を繋ぐ。
茉里はそっとミュシャを振り返ると、ミュシャはウィンクをした。

「余計なことを……」

右斜め後ろから、低い呟きが聞こえた。

なるほど、あなたはそういう性格。

栞をチラリとみる。

⏰:10/04/26 22:24 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#483 [向日葵]
大方、この栞とやらに邪魔されたりしたのだろうとミュシャは思った。
でなければ茉里があんな表情を見せないだろう。

「あのう……」

おずおずという風に、華名がミュシャに話し掛ける。

「ん?」

「ミュシャさんにはあ、彼氏さんとかいらっしゃるんですかあ?」

「ううん。いた時もあったけど、今はいないかな」

「へえ。意外ですね」

⏰:10/05/15 23:28 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#484 [向日葵]
そう言ったのは栞だ。

本性がわかってしまったのもあってか、人懐っこそうな笑顔が、ミュシャには白々しく見えて仕方がなかった。

そしてさっきのこともあってか、ミュシャは栞から敵と判断されたようだった。

「ミュシャさん素敵だから、百戦錬磨っぽいですよね。なんていうか……男には困らないというか」

真っ正面から喧嘩をふっかけるのか。

本人たちしか、言外にある罵った言葉はきこえない。
つまり今、栞はミュシャに、「男遊びしてそうだ」と、「淫らな女」だと言ったのだ。

そんな密かな戦いをしているだなんて知らない華名は、大人の恋愛をしているミュシャに尊敬の眼差しを送る。

⏰:10/05/15 23:28 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#485 [向日葵]
「か、華名も……ミュシャさんみたいになれますかあ……っ!」

「他人のマネなんてしなくていいのよ。自分にあった恋愛をちゃんとすればいいわ」

「華名を好いてくれる人はいるでしょうかあ……」

「いるわよー。むしろ華名ちゃんみたいなタイプなんか、無駄に気取ってて嫌なタイプよりかは全然モテるんだからねー」

トドメとばかりに言ってやれば、栞は何を言い返そうかと悔しそうに歯噛みした。

喧嘩を売る相手を間違ってんのよ。

ミュシャは栞をちらりと見ながら思った。
そして今度は前を歩く2人を見る。

⏰:10/05/15 23:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#486 [向日葵]
幸せそうに笑う茉里と宗助。
つい最近まで殺伐としていた空気を持っていただなんて誰が思うだろうか。

でもミュシャは、あんな茉里よりは、恋愛バカと言えるような茉里の今のあの気の抜けた顔のほうが断然良かった。

もう、自分の無力さを知るのは、こりごりだ。

今も、昔も……。

――――――――…………

委員会で遅くなった小学生のミュシャは、ぶつぶつ言いながら自分の教室を目指していた。

⏰:10/05/15 23:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#487 [向日葵]
ったく、誰もやろうとしないから私がやるはめに……。

イライラしながら教室につくと、同い年の友達より背が高いミュシャは、皆が見にくいであろうドアの窓から、教室の中を見る。

誰かいる……?

目をこらすが、オレンジ色の光が差し込んでるせいで、眩しくて見えない。

とりあえず入らなきゃ始まらない。

ガラッと開けると、教室にいた人物が振り向いた。
振り向いたのは、ミュシャもよく、いや、知りすぎているぐらいの人だった。

⏰:10/05/15 23:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#488 [向日葵]
「あ、ミュー……」

茉里だった。
大人っぽくもあり、小学生らしい可愛らしさもそなえている彼女は、少し気取っている自分よりも魅力があった。

それ故に、好きになる男子も数知れなくはない。
女子にも好かれている。

「あ、委員会?お疲れ様」

「うん」

ランドセルに筆記用具を入れ、帰り支度をする。
そんなミュシャを、ぼんやりとみつめる茉里。
ミュシャがランドセルを背負っても、茉里は帰るそぶりを見せない。

⏰:10/06/06 23:29 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#489 [向日葵]
そういえば、この頃変に帰るのを嫌がってる気がしなくもないわね。

今日はたまたまミュシャが委員会があって一緒に帰ることは無理だと思っていたが、それ以外の日は、なぜか一緒に帰ろうとはしなかった。

時計をちらりと見れば、もう4時半を過ぎている。
子供っぽい男子ならば一目散に帰り、5時までには帰ってくるようにという親の言い付けを守っている頃だというのに。

それに、どこか上の空だし。

「帰らないの?」

ミュシャが訊く。

⏰:10/06/06 23:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#490 [向日葵]
「夕日が綺麗だから……」

きっぱりとしない否定は、逆に言ってしまえば帰ることを拒絶しているかのようにも聞こえた。

言ってくるまで訊かないつもりだったがもう限界だ。

「何かあったの?」

その言葉を聞いた途端、わずかに口元に笑みを残していた茉里は、悲しみに口を震わす。

そして、涙を静かに流し始めた。

⏰:10/06/06 23:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#491 [向日葵]
「お父さん……がね……」

ぽつりぽつりと紡がれたのは、まだ幼い親友を苦しめる出来事だった。

―――――――――…………

「おい久瀬!」

自分の世界から帰ってきたミュシャは、呼んだ宗助を見る。

「なに」

「勝手に行動するな。はぐれたらどうするんだ……って言っても遅かったか……」

⏰:10/06/06 23:30 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#492 [向日葵]
後ろを見れば、華名はいたが、栞がいなかった。
おそらく人波に紛れてどこかに行ってしまったのだろう。

「いやむしろいない方が……」

「え?なに?」

「いや別に。……ってか、アンタこそ茉里はどうしたのよ」

「いるじゃないか、ちゃんとここ……」

と振り返った宗助の後ろは、知らない人達が行き来してるだけだった。
固まり、言葉をなくす宗助。

⏰:10/06/06 23:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#493 [向日葵]
あまりのコントのような状況に、腹を抱えて笑い転げたくなったミュシャだが、宗助の前で素の自分をさらけ出すのには抵抗があった。

携帯をコートのポケットから出し、電話をするが、多分気づいてないのだろう、出てくれない。

その後何回かかけ直したが、やっぱり出ないので、諦めてメールを打つことにした。
神社の階段の横に、確か公園があったので、そこで待つと入れる。

⏰:10/06/06 23:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#494 [向日葵]
ミュシャ達も、その場に向かう。

屋台などがある近くのベンチで、華名だけが座り、ミュシャと宗助は立ったまま待つ。

「あ、そういえば宗兄いー」

ゆったりとした口調で、華名は宗助に話し掛ける。

「茉里ちゃんを好きになったきっかけってえー、なあにいー?」

思わず噴き出す宗助。そして咳込む。

「そ、そんなこと、なんで兄弟で語り合わなきゃならないんだよ!」

⏰:10/06/06 23:31 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#495 [向日葵]
「あらいいじゃない。私は1人っ子だから、そういうの憧れるけど」

「兄と妹だと、話題だって違うだろ。せめて兄貴とするならまだしも、なんで妹と……」

「男尊女卑いー。兄弟なんだからそんなのなしだと華名は思いますうー」

「男尊女卑て……」

頬を可愛らしく膨らませて、バタバタと足を振り、華名は茉里との馴れ初めをねだる。

⏰:10/06/06 23:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#496 [向日葵]
宗助からしてみれば、それはすごく難しいことのようだ。

まあ、コイツ変に格好つけだからな。

ミュシャは兄弟のやりとりを、1歩離れて面白そうに見る。
宗助は茉里にしろ華名にしろ、女の子には振り回される運命らしい。

もちろんミュシャは振り回してなどいない。
いつだって宗助よりも優位に立つことを考えている。

「ねえー、なんで付き合おうと思ったのー?」

⏰:10/06/06 23:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#497 [向日葵]
華名に頭を抱えはじめる宗助。

そんな2人を見つめながら、ミュシャはまた、昔に思いを馳せる。

そう、いつだって、相手より優位に立った。
その思いは、あの頃から変わらなかったけれど、より一層、強いものにはなった。

どんな時でも、私が守ってあげると。

―――――――――…………

まだ自分達にはわからない、でもわかる世界が、そこにはあった。

⏰:10/06/06 23:32 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#498 [向日葵]
茉里の話を聞いて、信じられないという思いで茉里を見つめていた。

あの優しく紳士らしい茉里のおじさんが、浮気……?
何かの間違いでは……?
でも、1回や2回の話ではないみたいだし……。

ポタポタと雫のしたたる音が聞こえる。
目の前で、茉里が静かに泣いている。

自分の家族が、壊れるのではないかという不安。
母の悲しそうな姿。
裏切りを繰り返す父。
その怒りを、どうすればいいかわからない迷い。

⏰:10/06/09 00:19 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#499 [向日葵]
この子は、1人で戦ってたの?

両親にも言えない。
かと言って、友達にも言えない。言ったところで、知恵の少ない自分達は、何も解決出来やしない。

ミュシャは、なんとも言えない気分で茉里を見つめる。
それは次第に怒りに変わり、そして絶望に変わった。

力になれない。
何も出来ない。
苦しんでいた友達に気づけなかった自分が、腹立たしい。

私は、今のこの子に、何が出来る?

⏰:10/06/09 00:20 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#500 [向日葵]
そう思う前に、ミュシャは茉里を抱きしめていた。
力一杯。
そして、茉里と同じように、静かに涙を流す。

ごめんね。
ごめんね。
守ってあげられなくて。
気づいてあげられなくて。
力になれなくて。

ごめんね……ごめんね……。
なんども、胸の中で繰り返す。

口にすれば、安っぽい言葉になってしまう気がして、出来なかった。
だから、抱擁でそれを示す。

⏰:10/06/09 00:20 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#501 [向日葵]
「ミュー……」

茉里がミュシャの腕の中で呟く。
「ただ好きってだけで、そばにはいれないの?いてくれないの?好きなだけじゃ、皆、去っていってしまうの……?」

そんなことないと言いたかった。
でもそれこそ安っぽい言葉になると思った。

「それだけで、好きってだけで、そばにいてくれたらいいね……。いつか茉里に、そんな人が出来たらいいね……」

しばらくの間、お互いの鼻をすする音しか聞こえなかった。
茉里がミュシャの胸に擦り寄るように顔をうずめる。

⏰:10/06/09 00:21 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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