こいごころ
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#477 [向日葵]
手や、近くに感じる体温。
触れる柔らかな前髪。
潤んで自分を映し出す黒い目。
自分の名を呟く、低く、甘い声。
全てを意識し、全てが頭を真っ白にさせた。
こんなの、本当にキスしちゃったらどうなるんだろう……。
キスだけじゃない……。
もしも……。
そんなことを考えてしまうだけで、熱が出そうだ。
むずがゆい感情を、どうすればいいかわからなくて、茉里は立ち上がり、近くにいた華名をギュッと抱きしめた。
:10/03/18 13:12
:SH05A3
:☆☆☆
#478 [向日葵]
[13]君は大切な友達
新年になり、自分の部屋でぼんやりと過ごしていたミュシャは茉里からのメールで初詣に行くための準備をしていた。
神社はミュシャからも近い場所なので、ミュシャも行くと返事をしたところだ。
階下のリビングにいる両親に一言言ってから家を出れば、初詣に向かうのか帰るのか、人がぽつぽつといる。
歩くこと20分、神社近くになればなるほど、ガヤガヤとした声が聞こえる。
:10/04/26 22:22
:SH05A3
:☆☆☆
#479 [向日葵]
「あ、来た来た。ミュー!こっちだよー!」
鳥居近くの階段に、ミュシャに向かって大きく手をふる茉里。
その少し後ろに宗助と、知らない女の子が2人いた。
茉里はミュシャを待ちきれなくて、小走りで迎えにいくと、満面の笑みを向けた。
「あけましておめでとー!今年も仲良くしてねっ」
「あけおめ。こちらこそ」
2人で笑みを交わしていると、宗助が後ろから声をかける。
「おーい。2人の世界に入るなよ」
:10/04/26 22:22
:SH05A3
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#480 [向日葵]
ミュシャはにやりと笑いながら宗助たちの元へ行く。
「妬くな妬くな。女にまで妬いてたらアンタ身がもたないわよ」
「いや妬いてないから」
「それはそうと、こちらのお嬢さん方は?」
ミュシャは華名と栞に目を向ける。
ミュシャに見とれていた華名は、ハッとして、にこりと笑う。
「はじめましてえ。宗兄がいつもお世話になってますう、妹の華名といいまあす」
「栞です。宗助とは幼なじみで、昔から仲良くしてます」
:10/04/26 22:23
:SH05A3
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#481 [向日葵]
「久瀬ミュシャ。茉里の幼なじみよ」
自己紹介もすんだところで、一同は階段を上って、上にある境内を目指す。
当然、茉里は宗助と並んで行くと思いきや、隣を陣取ったのは幼なじみの栞だった。
ご丁寧に宗助の袖を少しだけ掴んでいる。
隣にいる茉里を見れば、ミュシャの視線に気づき、苦笑いを浮かべる。
それだけで全てを理解したミュシャは、宗助に声をかける。
「おい、多分彼氏の笹部」
「多分て……」
「彼女が流されそうになってるぞ。手を繋いでリードしなさい」
茉里の手を掴んで引っ張り、宗助の元へやる。
:10/04/26 22:23
:SH05A3
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#482 [向日葵]
「頼むから、迷子にならないでくれよ」
「そんなヘマしません!」
憎まれ口を叩きながら、2人は仲良く手を繋ぐ。
茉里はそっとミュシャを振り返ると、ミュシャはウィンクをした。
「余計なことを……」
右斜め後ろから、低い呟きが聞こえた。
なるほど、あなたはそういう性格。
栞をチラリとみる。
:10/04/26 22:24
:SH05A3
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#483 [向日葵]
大方、この栞とやらに邪魔されたりしたのだろうとミュシャは思った。
でなければ茉里があんな表情を見せないだろう。
「あのう……」
おずおずという風に、華名がミュシャに話し掛ける。
「ん?」
「ミュシャさんにはあ、彼氏さんとかいらっしゃるんですかあ?」
「ううん。いた時もあったけど、今はいないかな」
「へえ。意外ですね」
:10/05/15 23:28
:SH05A3
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#484 [向日葵]
そう言ったのは栞だ。
本性がわかってしまったのもあってか、人懐っこそうな笑顔が、ミュシャには白々しく見えて仕方がなかった。
そしてさっきのこともあってか、ミュシャは栞から敵と判断されたようだった。
「ミュシャさん素敵だから、百戦錬磨っぽいですよね。なんていうか……男には困らないというか」
真っ正面から喧嘩をふっかけるのか。
本人たちしか、言外にある罵った言葉はきこえない。
つまり今、栞はミュシャに、「男遊びしてそうだ」と、「淫らな女」だと言ったのだ。
そんな密かな戦いをしているだなんて知らない華名は、大人の恋愛をしているミュシャに尊敬の眼差しを送る。
:10/05/15 23:28
:SH05A3
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#485 [向日葵]
「か、華名も……ミュシャさんみたいになれますかあ……っ!」
「他人のマネなんてしなくていいのよ。自分にあった恋愛をちゃんとすればいいわ」
「華名を好いてくれる人はいるでしょうかあ……」
「いるわよー。むしろ華名ちゃんみたいなタイプなんか、無駄に気取ってて嫌なタイプよりかは全然モテるんだからねー」
トドメとばかりに言ってやれば、栞は何を言い返そうかと悔しそうに歯噛みした。
喧嘩を売る相手を間違ってんのよ。
ミュシャは栞をちらりと見ながら思った。
そして今度は前を歩く2人を見る。
:10/05/15 23:29
:SH05A3
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#486 [向日葵]
幸せそうに笑う茉里と宗助。
つい最近まで殺伐としていた空気を持っていただなんて誰が思うだろうか。
でもミュシャは、あんな茉里よりは、恋愛バカと言えるような茉里の今のあの気の抜けた顔のほうが断然良かった。
もう、自分の無力さを知るのは、こりごりだ。
今も、昔も……。
――――――――…………
委員会で遅くなった小学生のミュシャは、ぶつぶつ言いながら自分の教室を目指していた。
:10/05/15 23:29
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