こいごころ
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#616 [向日葵]
茉里は泣きそうな顔で嫌がっていた。
それは父と一緒に帰るのが嫌なのか、嫌いな父の車に宗助が乗るのが嫌なのかはわからないが、宗助が言ってもきいてくれないような気がした。

茉里の闇が大きいのは知ってる。彼女が未だ、その闇に耐え切れず、沈みこむのを知っている。

けれど、いつまでもこの状態がいいわけがない。

どこかで、和解は出来なくても、距離を縮めることは出来るはずだ。

何度、遠くの線路で電車が通過した音をきいただろうか。
茉里がゆっくりと宗助の目をみつめかえす。

⏰:11/02/05 23:50 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#617 [向日葵]
宗助は安心させるように薄く微笑む。

安心……?

その時、宗助は思った。
茉里は、恐がっているのではないかと。

「…………わかった」

ほとんどきこえないくらいだったが、茉里は納得したようだった。
宗助が引っ張るようにして、茉里の父が開けた後部座席へと行く。

茉里は、恐がっているのかもしれない。
茉里は本当はもう、父を許したいと思ってるのではないだろうか。

⏰:11/02/05 23:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#618 [向日葵]
憎しみや、嫌悪が消えたわけじゃない。
でも、それでも少し、歩み寄ってみようと思ってるのかもしれない。
ただ、彼女の中に引っかかるのは、“また裏切られてしまったらどうしよう”という思いだ。

バタンとドアが閉まった瞬間、茉里の手にグッと力が入った。
力のせいか、それとも他のことか、少し震えている。

暗い車内に入る光を頼りに茉里を見れば何かと戦っているのか、眉間にしわを寄せて、口を食いしばって目を瞑っていた。

⏰:11/02/05 23:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#619 [向日葵]
かける言葉がみつからないから、宗助は手を握りかえした。

―――――――………………

「中学校から剣道を……。段は今はどれくらいかな?」

「まだ2段です。もう少ししたらまた昇段試験があるんで、それを受けようかと」

車内では、他愛のない会話をしていた。
茉里の父はゆったりとした話し方をするので、簡単に気を許してしまいそうになるが、そうするのは躊躇った。
茉里は先程よりは顔に険しさはなくなったが、相変わらず眉間にしわをよせて、過ぎ行く街並みを見つめていた。

⏰:11/02/05 23:51 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#620 [向日葵]
「茉里とは、付き合ってどれくらいに?」

「1ヶ月ほどです。友達からの付き合いを足すと、1年の頃からになります」

「茉里は嫉妬深いだろ。母親似でね」

「……よく言う」

いつもの茉里の声からは考えられないぐらいの低い声がした。
嘲笑のようなものを浮かべて、茉里はまだ街並みを見ている。

この話題はきっとまずい。

「妹がいて、よく遊んでもらってます」

話をさりげなく変えてみる。

⏰:11/02/05 23:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#621 [向日葵]
「妹がいるのかー。茉里も妹がほしかったか?」

「いらない。妹も私みたいにしたいの?」

気まずい空気が、車内を包む。
溝を埋めるつもりが、深さはそのままに距離がどんどん出来てるように思う。

「嫌われてるだろう、私は」

ハハハと父は笑う。

平気なんだろうか。

そうですね、なんて言えないので、宗助は苦笑いを浮かべる。

茉里をちらりと見た。
茉里の目に、涙がたまっているのがうっすらとわかる。
きっと、何か思い出したのだろう。

⏰:11/02/05 23:52 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#622 [向日葵]
やっぱり、乗るべきではなかったか?

抱きしめてやりたいけれど、それが出来ないから、指と指が組むようにして、手を繋いだ。

いくら繋いでいても、茉里の手が暖かくならなかった。

ごめん、俺の勝手な思いで……。泣かせるつもりなんてなかった。

ただ茉里が、これまでよりも、もっと晴れ晴れ笑えるようになったらって思ったんだ。

⏰:11/02/05 23:53 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#623 [向日葵]
――――――――………………

「私は宗助くんを送っていく。茉里は家に入りなさい」

茉里の家まで帰ってきた宗助は、心配そうに茉里をみる。
茉里は無言で宗助と手を繋いだまま外へ出た。

父親が見てる前でも構わない。

後ろ手にドアを閉めた宗助は、すぐに茉里を引っ張り、力いっぱい抱きしめた。

茉里も、宗助の胸に顔を埋める。

しばらくそうしてたが、茉里の方から離れた。

⏰:11/02/12 23:21 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#624 [向日葵]
「大丈夫よ宗助。私も、強くならなきゃ。この前だって、元気もらったし、ねっ」

鼻を赤くして、茉里は微笑む。
そんな彼女がいとおしくて、宗助はまたギュッと抱きしめた。

そしてまた車へ乗り込んだ。
車が発進して後ろを見たら、茉里がまた立っていた。

きっと車が見えなくなるまで見送るのだろう。
宗助は前を向く。
ふとルームミラーを見ると、父と目があった。
柔らかく微笑む父に、宗助は複雑な思いを抱く。

⏰:11/02/12 23:21 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#625 [向日葵]
「お訊き……したいことがあります」

「うん。なんでも言ってくれ」

「茉里さんから、貴方のことを色々ときいたことがあります」

ゆるやかなカーブだが、宗助は油断していたのでよろける。
父は宗助の続きを待っているのか、黙ったままだ。

「浮気…………なさっていたんですか。……本当に」

父は黙ったままだ。
急にハンドルをきられて、また宗助はよろける。
車がしばらくしてとまり、着いたのはどこかのお店だった。

⏰:11/02/12 23:22 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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