こいごころ
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#821 [向日葵]
呼ばれたので、二人は声のする方を向くと、教室の入口に同じ部活の綾香がいた。
何の用かわからない二人は、ミュシャにひとこと言って綾香の元へ行く。
「どうかした?」
「色紙のお金もらおうと思って」
「色紙?」
二人そろって首を傾げるものだから、綾香は眉を寄せる。
「忘れたの?先輩を送る会するのにみんなで書かなきゃいけないでしよ?」
:11/07/09 03:38
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#822 [向日葵]
そこで二人はやっと気づいた。
二大行事どころじゃない。
三年生が卒業するということを忘れていた。
そういえば、自由登校になっていた三年生がいないことに今更気づく。
そして、千早先輩の顔を思い出す。
何故かずっといるものだと思っていた。
卒業するのはわかっていても、それは先の、ずっとずっと先のことで、先輩は、あの変わらない笑顔で自分たちのそばにいると思っていた。
:11/07/09 03:38
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#823 [向日葵]
その先輩がいなくなる。
それは、先輩が引退して、もう一緒に部活が出来なくなるという寂しさではなく、さっきまで隣にいた人が急にいなくなってしまうような、冷たい寂しさだった。
:11/07/09 03:38
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#824 [向日葵]
:11/07/09 03:39
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#825 [向日葵]
[最終話]君とこいごころ
休みの日、茉里はいつも部活をやっている道場前を訪れた。
先輩の卒業の日が近づいてくるにつれ、茉里はなんだか落ち着かない気分でいた。
寂しさはある。
卒業を祝う気持ちもある。
じゃあどうしてそわそわするのだろう。
道場に来たら落ち着く気がして、父の出かけようという誘いをけってまで来たのだが、自分の気持ちは闇の中のまま姿を現してはくれなかった。
:11/07/23 19:10
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#826 [向日葵]
うーん、冬だから感傷的になっているのかしら。
そう思えば、そう思わなくもない気がしてきた。
なので回れ右をしようとした時、道場の中から竹刀の音がきこえた。
「え?」と思った茉里は、すぐに道場へと向かう。
道場前の下駄箱を確認すれば、見慣れた靴がそこにあった。
閉まっている戸を開ければ、戸のすぐ近くにある練習用の人形に、宗助が打ち込んでいた。
:11/07/23 19:10
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#827 [向日葵]
急に戸が開いて驚いた宗助は、手を振りかぶったままとめて、茉里の方をみる。
宗助は制服のままだ。
「ああ、アンタか……。びっくりした……」
「宗助なにしてんの?」
「アンタこそ」
「質問に質問で返さないで。今は私がきいてるの」
宗助は振りかぶっていた手を下ろして、沢山の竹刀がささってあるところまで行き、竹刀をなおした。
:11/07/23 19:10
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#828 [向日葵]
「落ち着かなくて、竹刀でも振ったら、雑念が吹き飛ぶかもって。でも、全然駄目だった」
宗助の背中を見ながら、きっと宗助は自分と同じような気持ちになっているんだと思った。
それがわかるから、会話が続かず、外で練習している他の部活の声が、ただでさえ響く道場で響いていた。
「私も、そんな感じ。もう帰ろうとしたら、竹刀の音がきこえたからよったの」
「本当は自主練でもしたかったけど、俺の勝手な都合に誰かを付き合わせることは出来なかったから、一人で来た」
:11/07/23 19:10
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#829 [向日葵]
「私がマネージャーじゃなかったら良かったわね」
「女の子相手に、本気は出せないよ。力も体格も違うからな」
「私が宗助より強かったらどうするの?」
「力技は使わないだろ、やっぱり。体当たりしたらいくら強くても踏ん張れはしないだろ」
となると、綾香もそういう風に扱われているということになる。
綾香は女子主将なだけあって強い。
なんとなく、茉里はむっとなった。
:11/07/23 19:11
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#830 [向日葵]
人形の横に置かれていた竹刀を取って、このもやもやとした気分を晴らそうとしたが、竹刀がささくれていたのでやめた。
「さ、帰るか。どっか寄るか?」
「珍しい。宗助が寄り道しようだなんて」
「まだ昼前だし、このまま帰るのもったいない気がして」
「んーっ」と考えてから、茉里はポンと手を叩く。
:11/07/23 19:11
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