こいごころ
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#851 [向日葵]
「宗兄もデリカシーというか、乙女心わからない人だからぁ、茉里ちゃんごめんねぇ」

「それと宗助があそこにいるのとどう関係が?」

「謝りたいけど、どう謝ればいいかわからないみたいー。とりあえずぅ、あそこで様子見してるんじゃないかなぁ」

ああまったく……。

宗助だけが悪いわけじゃないけど、確かに謝られても、今の気持ちでは火に油な気もする。

⏰:11/08/06 00:58 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#852 [向日葵]
「華名ちゃん。宗助が、私を家族に紹介してくれないのはどうしてだと思う?宗助は、私のことどれだけ好きだと思う?」

「宗兄はすごく茉里ちゃんのこと好きだと思うよぉ。家族に紹介しないのは、お父さんもお兄ちゃんも女好きなのと、お母さんを筆頭にイジられるのが嫌だから」

はい?

茉里はまたぽかんとした顔になってしまった。

「前に、話の流れで茉里ちゃんの話が出たのねぇ。お父さんとお兄ちゃんはさっき言ったとおり、そういう人だからぁ、好きな人を家族だろうがなんだろうが、そういう目で見られるの嫌だって言ってたのぉ」

私の、話……?

⏰:11/08/06 00:59 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#853 [向日葵]
私の話を、宗助が?

ちらりと宗助がいるところを見る。
やっぱりどういう表情かはわからない。

「あと宗兄ってぇ、笹部家ではイジられキャラだから、茉里ちゃんがいようがいながろうが、宗兄は二人のことでイジり倒されるってわかってるのよぉ」

「……なるほどねぇ」

自分は一人っ子な上、つい最近まで父である裕之とはギクシャクしていた為、そんな温かい家族の風景を思い浮かべると、こちらも温かくなる。

温かくなればなるほど、怒っているのが馬鹿馬鹿しくなって、なんだか笑えてきた。

⏰:11/08/06 00:59 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#854 [向日葵]
*アンカー*

>>817

⏰:11/08/06 01:04 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#855 [向日葵]
携帯変わりましたが、向日葵です(●´∀`●)

⏰:11/08/13 02:29 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#856 [向日葵]
「本当、面白くて好きだわ、宗助は」

「ありがとう。宗兄の彼女さんが茉里ちゃんで、華名も嬉しいー」

「私も華名ちゃんと仲良くなれて嬉しいーっ」

ぎゅうっと抱きしめあって、華名が小さな声で「あっ」と言った。

「忘れちゃうとこだったぁ。はい茉里ちゃん」

差し出されたのは、小さくて可愛らしい模様がついたピンク色の紙袋だ。

「なになに?」

「友チョコでぇす。初めて作ったから、味に自信はないんだけどぉ……」

「うっそ!ありがとう!嬉しいーっ!!」

⏰:11/08/13 02:38 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#857 [向日葵]
しかし、喜んだはいいものの、茉里の華名へのチョコは家だ。
会うのだから渡せばよかったのだが、どうせなら明日にと持ってこなかった。

「華名ちゃんの持ってくればよかった……」

「ううん、そんなぁ。今日は華名のわがままだから」

「もーぅ……華名ちゃんはなんていい子なのーっ!!誰かさんと違って!!」

視界の隅で、その誰かさんがビクリとする。

⏰:11/08/13 02:39 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#858 [向日葵]
「さて、あの人があんな状態でずっといるのがいたたまれないから、私は今日のところは帰るとするわ」

・・・・・・・・・・・

なにを話ているんだろうか。

宗助は柱の陰でこそこそと茉里と華名をみる。

こそこそと言っても、もうバレているとは知らずに。

平謝りすることも出来たけれど、そういうわけにもいかない気がするから、どうにかタイミングを見計らって出て行こうと思ったけれど、それも叶わず。

⏰:11/08/13 02:39 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#859 [向日葵]
「宗兄ストーカーの練習ぅ?」

「うわっ!か、華名……っ」

「茉里ちゃんから伝言。明日楽しみにしてるなら許してあげるですってぇ」

明日、バレンタインデー。
去年まではそれほど興味はなかったが、今年は違う。

「うん、楽しみにしてる」

「華名に言っても仕方ないでしょぉ。まったくぅ、宗兄はそういうところが茉里ちゃんを怒らせる原因よぉっ!」

妹までに言われてしまうなんて。

宗助はわかりやすすぎるぐらい肩を落とした。

⏰:11/08/13 02:40 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#860 [向日葵]
――――――――…………

バレンタインで浮足立ってる一方、卒業式の準備が着々と進められていた。

茉里たち二年生は、卒業生に「蛍の光」を歌わなければならない為、朝のホームルームに歌詞が書かれたB6サイズくらいのものが配られた。

バレンタインにわざわざ配らなくっても……。

ラブラブ気分が少々萎えた。

ホームルームが始まる前に宗助に渡せればよかったが、茉里は今日日直だった為に、今配られている紙束や、その他のプリントを運ぶ為に、教室と職員室を行き来していた。

⏰:11/08/13 02:40 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#861 [向日葵]
宗助も友達と話ていたりして、結局挨拶すら出来ないまま朝のホームルームが始まった。

「これから毎朝、歌の練習するらしいから、各自その間にちゃんと歌詞覚えんだぞ」

先生の言葉に、空気だけでほとんどの人が「ダルい……」と思っているのがわかった。

大体私たちが歌う意味ってあるのかしら……。

先輩たちは去年、どんな気持ちでこれを歌っただろうか。

「んじゃ歌うから、全員起立」

教室がブーイングの声に包まれた。

⏰:11/08/13 02:41 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#862 [向日葵]
*アンカー*

>>817

⏰:11/08/13 02:48 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#863 [向日葵]
きっと卒業式にこれを歌ってから、次に自分たちが歌ってもらう番の時がくるのは、あっという間なんだろうな……。

茉里はちらりと教室を見渡す。

やる気ないながらも、みんな歌っている。
中には歌ってない人もいるし、立っている人に紛れて座ってる人だっている。

真面目にやってる人からすれば、ちゃんとしろと苛立つ光景だけれど、卒業して、この教室のことを思い浮かべる時、そんなことすらも懐かしく、いとおしく、さみしくもあるのだろう。

⏰:11/08/20 13:06 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#864 [向日葵]
そう思うと、少しやる気を出して歌おうと思えた。

―――――――――…………

「加賀ー。現国の阿部先生が模造紙取りにきてくれってさー」

朝のホームルームも終わると、担任が言った。

ちょっと……、今日だけやけに日直の仕事多いじゃない……。

ちらりと宗助を見ると、茉里のことを気にしないかのように友達と談笑している。

⏰:11/08/20 13:06 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#865 [向日葵]
また気にしているのは私だけかと茉里は苛立つが、それをなんとか押さえる。

今日は喧嘩をする日じゃない。
仲直りをする日なのだから。

茉里は教室を出て、日直の仕事に専念しようと思った。
すると。

「茉里」

へ?

振り返ると、友達の輪から抜けたのか、宗助がこちらにやって来た。

⏰:11/08/20 13:07 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#866 [向日葵]
「日直の仕事、手伝う」

「え、でも……」

「だからさ……、ああ……、えっと……」

歯切れの悪い返事をするので、早くと心の中で思ったが、辛抱強く待つ。

「早く……、俺にチョコ……ください……」

言い終えてから、すぐに宗助は顔を真っ赤にさせた。
茉里はそれが宗助の精一杯の気遣いだと思うと、宗助が可愛く思えて仕方なかった。

⏰:11/08/20 13:07 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#867 [向日葵]
「ありがと。じゃあ荷物運ぶの手伝ってね」

「おう」

「ちなみにチョコじゃなくてクッキーだからね」

「いいよ。なんでも」

と言い終えた後、「あっ」と手で口を隠す。
茉里はどうかしたのかと宗助を見る。

「なんでも……っていうのは……、茉里の物ならなんでもって意味で」

⏰:11/08/20 13:08 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#868 [向日葵]
おお、なんかすごい頑張ってる。
華名ちゃんがなんか言ってくれたのかしら。

「はいはい。私も悪かったから、あんまり無理しなくてもいいわよ」

「別に無理は……」

「宗助はそのままでいいの。あの時は……。私が少し過剰になってただけよ」

茉里はきょろきょろと辺りを見渡す。
「よし」と小さな声を出したかと思えば、宗助を手招きする。

⏰:11/08/20 13:08 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#869 [向日葵]
なんのことかと、宗助が茉里に顔を近づけると、一瞬やわらかな感触を頬に感じた。

してやったりと笑う茉里に対し、なにがあったかわからず、きょとんとした顔をする宗助は、次第になにをされたかを理解し、また赤くなった。

「さてと、宗助がゆでダコになる前に、早く日直の仕事しなくちゃだわねー」

「誰がしてるんだ誰が!」

「もちろん私。とっても嬉しい限りだわー」

⏰:11/08/20 13:09 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#870 [向日葵]
「覚えとけ……」

「記憶力はいいほうだから安心して」

言い負かされて、宗助は少しムッとするも、仲直り出来たほうに安心して、ムッとしたくても出来なかった。

―――――――――…………

そう、別にそれはそれでいい。

ただ見てみたい。
こんな機会だから見てみたい。
いや別に大した機会ではないけれど。

⏰:11/08/20 13:09 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#871 [向日葵]
「と思うのは罪かしら、綾香」

「罪というより、それはただただサディステイックだよ茉里ちゃん」

防具をつけてる綾香に、茉里は話しかける。
一方の茉里は、昨日片付けきれなかったコップを洗っている。

「だって、見てみたいじゃない。宗助が私に焦るとこ」

せっかくのカップルイベント、バレンタイン。
ならば宗助が、茉里を誰かにとられてしまうんじゃないかと焦るところを見てみたいと茉里が言い出したのは、つい先ほど。

ちなみに宗助にまだチョコ、ならぬクッキーは渡していない。

⏰:11/08/20 13:09 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#872 [向日葵]
帰りに渡すつもりだ。
そう言ったら宗助が「俺の手伝った意味は……」とグッタリしていた。

「笹部くんが茉里ちゃんのこと好きなのなんて、見てればわかるじゃない」

「よくよく考えてみればね、宗助になにかあったりしたら、焦ってるのっていつも私ばっかりな気がするのよ。たまには私がそれを味わいたい」

「笹部くんも大変ね」

苦笑いを浮かべて、綾香は面を置きに行った。

⏰:11/08/20 13:10 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#873 [向日葵]
んー……。
確かにやりすぎかもしれないけど、やりたいと思っちゃったらやりたくてうずうずするのよね。

泡のついた手を、冷たい水で洗い流し、近くのタオルで拭いた後、ポケットにあるカイロで手を暖める。
すると、綾香が声をあげた。

「千早先輩!」

茉里は考えるより早く、洗面所から道場入り口が見える場所にうつった。

⏰:11/08/20 13:11 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#874 [向日葵]
そこには、正月あった時よりも少し髪が伸びて、大人っぽさがさらに増した千早先輩がいた。
マフラーをまいて、寒さで鼻を赤くしている姿が、大人っぽさの中にあどけなさを残し、彼女の魅力を引き立てていた。

「えへへ、久しぶり。今日はね、防具を取りにきたの。皆はー……まだなんだね」

掃除当番に委員会が重なって、今道場にいるのは茉里と綾香だけだった。

「あとこれ、女子のみんなで食べて」

茉里に渡されたのは、3つほどにわけられた小さな可愛らしい紙袋。
中身は言わずともわかる。

「女子だけでいいんですか?」

⏰:11/08/27 00:12 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#875 [向日葵]
今日は一般的に言えば男子のほうに渡すべきだと思うが。

「もちろん。男子よりも女子の後輩のほうが大事だし」

「それ男子がきいたら泣きますよ」

笑う茉里につられて、千早先輩。

「さて、と、お母さん車に待たしてるから早く行かなきゃ」

「あ、ごめんなさい。運ぶの手伝います」

「ありがとう」

⏰:11/08/27 00:13 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#876 [向日葵]
手伝うほどの荷物なんてなかった。
ただ先輩といたかった。

暗黙の了解かのように、千早先輩は竹刀袋を持たせてくれて、正門まで運ばせてくれた。

綾香は皆が来ては駄目だからと、ついて来なかった。

「ありがとうね。それにしても、まだ寒いわねー」

「あ、よかったらカイロ持ってますんでどうぞ」

「いいよ、茉里ちゃんが寒い……ん?なにか落としたよ?」

⏰:11/08/27 00:13 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#877 [向日葵]
カイロを出す時、一緒に落とした紙切れ。
それは今朝配られた、「蛍の光」の歌詞が書いたものだった。

簡単かつ適当にたたんでいたので、落とした拍子に軽く開いてしまった。

それを見ながら、千早先輩は眩しそうに目を細め、微笑む。

「私たちの、番なのね……」

「先輩……」

⏰:11/08/27 00:14 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#878 [向日葵]
「私はね、先輩たちが卒業するのがさみしくて、これを歌いながら泣いたたんだ。とても素敵な先輩だったから。それを今度は歌ってもらう番なのね」

「先輩も素敵な先輩でしたよ」

紙を丁寧に折りたたんで、茉里に渡す千早先輩は、とても嬉しそうに笑う。

「そう言ってもらって嬉しい。茉里ちゃんには、私の無神経なことが原因で傷つけてばっかりだったから」

「そんな……。あれは私が……」

⏰:11/08/27 00:14 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#879 [向日葵]
「それも思い出として残っていくのね」

「ここに」と呟きながら、千早先輩は胸に手を当てる。
いとおしそうに、目を瞑って。

茉里はなんと言っていいかわからず、そんな千早先輩をただみつめることしか出来なかった。

やがて目を開けた千早先輩は、またにっこりと微笑む。

「次に会うのは式ね。一緒に写真撮ろうね。じゃあ」

「あ、先輩!」

⏰:11/08/27 00:14 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#880 [向日葵]
車に乗りかけた千早先輩を、茉里は止めた。

なにか言わなきゃいけない。
今までのこと、これからのこと。先輩への賛辞、自分のこと。

しかし茉里がきいたのは、そのどれにもあてはまらないものだった。

「素敵な先輩は、どうしたらなれますか」

茉里の問いを馬鹿にすることなく、少し考えてから千早先輩はにっこりと笑って答えた。

⏰:11/08/27 00:15 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#881 [向日葵]
「そうやって考えた時から、もう素敵な先輩にはなってるんじゃないかな」

いっそうにっこり笑って、先輩は車に乗った。
しばらく車をみつめてから、少し足を動かす。

振り向けば、いつもの見慣れた学校があった。

下校している生徒、校舎内でなにか話している生徒、グラウンドからは、運動部の声がきこえてくる。

学校の風景や空気、雰囲気、一気に体に取り込んだ瞬間、胸がいっぱいになった。

⏰:11/08/27 00:15 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#882 [向日葵]
衝動的に、そしてどういう感情で出てくるかわからない涙を、必死に止めた。

それでも、溢れ出すようにして、滴がポタリと落ち、乾いた地面に吸い込まれていった。

こんな大勢の前で泣き顔を見られたくない。

茉里は早足で、道場へと帰って行った。

―――――――――
―――――――――…………

静かな静かな空気の中、卒業式は行われていた。

⏰:11/08/27 00:16 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#883 [向日葵]
*アンカー*

>>817

⏰:11/08/27 00:19 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#884 [向日葵]
在校生、つまり茉里たちはほぼ椅子に座ったままだったが、ところどころ合わせて立つところがあったりと、少し忙しない。

中には立たない人もいる。
寝ている人すらいた。

でも茉里は最後まで卒業式に参加した。
男子の方を見ても、宗助の姿は見えないけれど、きっと宗助も同じように、誰よりも姿勢良く、そして誰よりもまっすぐ前を向いているに違いない。

⏰:11/09/03 23:14 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#885 [向日葵]
千早先輩から朝に、他の部員も集めて道場前にいるから来てねとメールがあった。

後に会えるはずなのに、茉里は千早先輩がいる場所をじっと見ていた。

「卒業生、退場」

一斉に立ち、茉里たちの学年は、今まで練習した「蛍の光」を歌う。

教室で歌ってた時や予行で歌っていた時とは違う雰囲気が、歌をより一層寂しく響かせる。

なのに卒業生が花道を退場している時、笑顔だった。

⏰:11/09/03 23:15 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#886 [向日葵]
照れくさいのか、やっと卒業出来るという安堵なのか、楽しかったと充実した気持ちからくるものなのか、わからないけれど。

それでも、その清々しい笑顔は、送り出す茉里たちの胸を締めつけた。
思わず歌っている時、声が詰まりそうになって、必死に持ち直した。

全員が退場してしまった後、茉里たち在校生は座るように言われた。
座る時に、宗助が見えた。
宗助もこちらを見ていた。

⏰:11/09/03 23:16 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#887 [向日葵]
見えるはずもないけれど、微笑むと、宗助も微笑んだ。
それだけでドキリとしたので、茉里は落ち着くために素早く座った。

――――――――…………

「せんぱーいっ!」

綾香が道場前に集まった先輩たちのところへ走っていく。
そのまま女子の先輩のところへ突っ込んでいく。

「わっ!綾香ちゃんは元気だねー」

「違いますっ。元気にしとかなきゃ泣きそうなんですっ」

と言った途端、綾香の目が涙で満たされていく。
けれど綾香は耐えていた。

⏰:11/09/03 23:16 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#888 [向日葵]
「可愛いやつめ!心配しなくてもちゃんと遊びに来てあげるわよ」

「来なかったら罰金ですからね」

「そういえば、他の子たちはー?」

「もうすぐ来ると思いますよー。あ、茉里ちゃんは少し遅れるかもー。デジカメ教室に忘れたとかって言ってたから」

集まれば、みんなワイワイと話だすので、ただでさえ声が響く廊下がよりうるさい。
そんな中、千早先輩だけが、何かを考えているかのようにしていた。

⏰:11/09/03 23:17 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#889 [向日葵]
「ねえねえ綾香ちゃん」

「はい?」

「お願いがあるの」

―――――――――…………

少ししてから、宗助がやって来た。
他の部員は道場で盛り上がっているらしく、外まで笑い声がきこえてくる。

入り口にある下駄箱付近に、綾香と千早先輩が談笑していて、宗助は二人に寄っていった。
二人も宗助に気づく。

⏰:11/09/03 23:19 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#890 [向日葵]
「やっと来たね宗助」

「すみません、遅くなって」

一言言ってから、宗助は少し背筋を伸ばしてから、軽く頭を下げる。

「ご卒業、おめでとうございます」

「ありがとう。……ったく、アンタはいつまでも堅いねー」

「……余計なお世話です」

「ところで笹部くん。茉里ちゃん知らない?なかなか来ないんだけど」

⏰:11/09/03 23:19 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#891 [向日葵]
「さあ……。俺も友達と話してたりして、別々だったから」

なあんだ、と綾香はため息をつく。

「もしかして……」

千早先輩がつぶやく。
しかしハッとして手を口にあてる。
まるで言ってはいけないことを言いそうになったかのように。

気になった宗助て綾香は、先輩のほうを首を傾げてみつめる。

「先輩、なにが“もしかして”なんですか?」

⏰:11/09/03 23:20 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#892 [向日葵]
宗助が眉間にしわを作って訊く。

「ええっと……」

千早先輩のわりに歯切れが悪い返事が返ってくる。

宗助は無言で千早先輩に詰め寄る。

「あのね……、茉里ちゃんって結構人気者だから、告白する人があとをたたないんじゃないかなって……。告白するぞ!って意気込んでる人もいるって小耳にはさんだし」

綾香はのんきに「茉里ちゃんモテるもんねー」と言う。
宗助はさっきよりも表情が硬くなって、口に軽く力を入れて入れる。

⏰:11/09/03 23:21 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#893 [向日葵]
そんな宗助を知ってか知らずか、千早先輩は続ける。

「ファンクラブとまではいかないけど、茉里ちゃんの友達の久瀬さんだっけ?2人は結構なファンがいたわよ」

「ファンクラブって今どきあるんですか……?」

「現に北高の沢口くんはファンクラブあるじゃない」

会話が穏やかに和やかに交わされるなか、宗助の表情はだんだんと険しくなっていく。

これは迎えにいくべきなのか……?

迷ってる宗助に追い討ちとばかりに、綾香たちの会話が進められる。

⏰:11/09/03 23:22 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#894 [向日葵]
*アンカー*
>>817

⏰:11/09/03 23:24 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#895 [向日葵]
「すぐにあきらめてくれる相手ならいいですけどね」

「昨今物騒になったもんね。変わった人も多くなってるし」

「気をつけなきゃ茉里ちゃん危ないですよね!?私迎えに行こうかな……っ!?」

その綾香の言葉が終わるか終わらないかで、宗助が素早く回れ右をして走って行った。

走っていく所は、言うまでもないだろう。

⏰:11/09/10 01:24 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#896 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・

「まったく、遅いわよ行動が」

走って行った宗助を見ながら、千早先輩が呟く。
綾香はあははと笑う。

「あー面白かった!でも先輩、今のがお願いですか?」

「うんそうよ。茉里ちゃんのお願いを叶えてあげようと思って」

綾香は首を傾げる。

そんなこと茉里は言っただろうか。

表情から綾香の思っていることを読み取った千早先輩は、にっこりと笑う。

⏰:11/09/10 01:24 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#897 [向日葵]
「バレンタインの時言ってたじゃない。宗助の焦ったとこを見てみたいって」

確かに言っていた。
でもそれは結局実行されず、その計画はどこかへ消えてしまったのだった。

綾香は目を見開く。

そんな前のことを覚えていただなんて。

「先輩はやっぱりすごいですね」

「それほどでも〜。さ、私たちもみんなの輪の中に入りますか」

「そうですね。カップルはカップルでお楽しみタイムでしょうし」

二人であっはっはと笑いながら、さらに大きな声で笑っている道場の中へと入って行った。

⏰:11/09/10 01:25 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#898 [向日葵]
―――――――――…………

あれ?あれ?

教室で忘れたデジカメを取りに来た茉里だが、あると思っていた場所にデジカメがない。

もう一度鞄を探すもなく、ひっくり返してもやっぱりなく、辺りを見回してもない。

根本的に家に忘れちゃったのかしら……。
でも学校に来て鞄を見た時にはデジカメのケースは見た。
見た気がした……。

時間が経つにつれ、だんだんと忘れた場所よりも持ってきたかどうかのほうが心配になってきた。

⏰:11/09/10 01:25 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#899 [向日葵]
ううん……、どうしようか……。
もしかしたら落とし物として預かってます的な感じかしら!

茉里の学校は携帯以外は大抵許されているのでそういうものも職員室に忘れ物として預けられる。

どちらにしても携帯も持って来ているというのは誰しもがわかっているが、暗黙の了解で見つかってしまうまではお咎めはなしだ。

頭の上でぐるぐると渦巻きが浮いてる時、携帯のバイブが鳴ってびくりとした。

⏰:11/09/10 01:25 📱:P04C 🆔:☆☆☆


#900 [向日葵]
もしかしたら綾香か宗助かもと、携帯を入れているブレザーの内ポケットに手を突っ込む。

「加賀さん」

と同時に声をかけられたものだから、茉里は文字通り飛び上がる。

「ごめんなさいごめんなさい!ちょっと気を緩めて持ってきただけなんです!」

と一息で謝りながら振り向くと、教師ではなかった。
一方的にああだこうだ言われた相手は、何を言われたかわからなかったのか、茉里の勢いにおされたのか、ポカンとしていた。

「あ……えと……どなたで……」

今さらながら訊く。
胸元を見れば、小さな一輪だけのコサージュがつけてあった。

卒業生だ。

⏰:11/09/10 01:26 📱:P04C 🆔:☆☆☆


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