悪 魔 の 誕 生 日
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#101 [七瀬]
 
演技?


「雷、もうすっかり、その気になっちゃってて…」


お腹を抱える真姫に
余計にムキになる俺。

『じゃっ、じゃぁ!
あの薬は
なんだったんだよ!』


「ああ、あれぇ?」

思い出したように言う。

⏰:09/04/14 20:35 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#102 [七瀬]
 
ガサゴソとカバンを漁っている。 


「あった!
これのこと?」

そう言って、
白い粒を取出し口へ入れた。


「甘〜い。」

その手には


“ラムネ”
 

⏰:09/04/14 20:39 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#103 [七瀬]
 
 
もう、止めだ。


やっぱり、
こんな変な女、関わらない方が身のためだ。

俺は、悪魔でいよう、
いつものとおり。





『アホらし。』 

俺はつぶやく。

⏰:09/04/14 21:04 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#104 [七瀬]
 
ラムネに頬を緩めていた
彼女の動きが止まった。


『もう
観光案内はおしまいだ。
じゃーな、真姫ちゃん。』


そうやって
すぐ近くの遊園地の出口へと歩く。




「待ちなさい。」
 

⏰:09/04/14 21:07 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#105 [七瀬]
 
俺は止まることなく
足を進めた。

それでも、
続けて言う彼女。


「おしまいなんてないのよ、悪魔さん。

だって、
あなたは姫の“ボーイフレンド”だもの。」
 
 
知るかよ、そんなの。
 
俺は無言で遊園地を出て、帰った。

⏰:09/04/14 21:11 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#106 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「これからも、
よろしくね……悪魔さん」 
 
 
 

⏰:09/04/14 21:24 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#107 [七瀬]
 
  
 
翌朝


「よ、雷。」

『京介、はよ。』


「ってか昨日はサボった後、なにしてたんだよ。
メールしても返って来ねぇし。」

ああ…そういえば、
メール一件入ってたっけ。 

⏰:09/04/15 11:40 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#108 [七瀬]
昨日は、家に着いた途端に眠気が襲って来て…

よっぽど疲れてたんだな、久しぶりに遊園地なんか
行って。

しかも変な女と。



『わりぃ。』

「まあ、いいけどよ。

…また女でも引っ掛けてたんだろ。」

京介はニヤニヤしながら
俺を横目で見た。

⏰:09/04/15 11:44 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#109 [七瀬]
 
『引っ掛けるどころか、
逆に引っ掛けられたし。』

「逆ナン?」


『う〜ん、分かんね。』

「なんだよ、それ。」


『さあな。』

昨日のことは、
もう思い出したくもない。


俺は適当に流した。

⏰:09/04/15 11:49 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#110 [七瀬]
 
 
「えーと、それでхが2乗するから、こうなって…」


『ふあ〜ぁあ…』

おっきな欠伸がさっきから止まらない。

この授業、終わったら
またサボろっかな。

と考えてたら、


コツン

頭になにか当たった。

⏰:09/04/15 22:48 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#111 [七瀬]
 
『…んだよ。』


「昨日は学校サボって、
なにしてたのよ。」

頭に当たったのは
大して痛くないところからノートの切れ端を丸めたものだろう。


そして、それを投げた
犯人はうしろの席の美里。


『別に…
関係ないじゃん。』
 

⏰:09/04/15 22:52 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#112 [七瀬]
 
「“関係ない”って
…ひどい。
誕生日は2人でお祝いしよって約束したじゃんっ!」


はあ…女って
ほんとめんどくせー。

『わかったわかった。
じゃあ今日しよっか。』


「ほんとに?」
 
そうやって上目遣いに
俺を見つめる美里。
 

⏰:09/04/15 22:57 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#113 [七瀬]
 
そういう目…


正直ウザい。

媚びてるみたいで嫌い。


それに…




あの女を思い出した。


昨日の女…
 
 

⏰:09/04/15 22:59 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#114 [七瀬]
 
『ほんとだよ、ほんと。
どっか美味いもんでも食べに行こ。』


「で、その後は…」

美里が妖しく笑う。


そんな美里に
俺も笑って頷いた。

「なんか久々だね。
雷とヤるの。」


俺は毎日、お前以外の女抱いてるけどな。

⏰:09/04/15 23:03 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#115 [七瀬]
 
 
そんなことを思いながら


『俺もひさびさー!』

とか調子よく言う俺。




“悪魔”復活だ、復活。


昨日の俺は、ほんとどうかしてた。
 
 

⏰:09/04/15 23:07 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#116 [七瀬]
 
 
やっぱり俺はこうでなきゃな。


俺らしくない。


俺は毎日が誕生日で
毎日、違う女と遊んで…

“悪魔”なんだ。


あんな女の
“ボーイフレンド”
なんて、あり得ない。
 

⏰:09/04/15 23:11 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#117 [七瀬]
 
 
 
美里と約束した俺は
最後まで学校にいた。


「らーいっ!行こ!!」

『おう、行こっか美里。』



教室を出て、学校の玄関を出ようとした時、


やけに校門付近が騒がしい。

⏰:09/04/15 23:19 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#118 [七瀬]
 
 
『なんなんだ、あれ。』


男も女も、ある一点に群がっている。

圧倒的に男子の方が多いけど。


「さあ?
ま、なんでもいいじゃん。早く行こーよ、久々のデート!」
 
 
『そうだな。』
 

⏰:09/04/15 23:23 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#119 [七瀬]
 
美里に促され、
止めた足を再び動かす。


その時、

「おい、雷!」


ハァハァと息を切らして
京介が走って来た。

『どうしたんだよ。
んな急いで…』


「めっちゃかわいい娘いるんだよ!」
 

⏰:09/04/15 23:27 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#120 [七瀬]
 
そうやって、
京介はあの一点を指さす。


かわいい娘?


そこに目を運ぶ。


が、周りに人だかりが出来てて見えない。


その代わりに
たくさんの声が聞こえてきた。
 

⏰:09/04/15 23:30 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#121 [七瀬]
“ねえねえ!
その髪、染めてんの?”

“お前バカか!
地毛に決まってんだろ!!
それより、どこの国から来たの?”

“名前なんてゆーの?”

“お人形さんみたーい”

“ね!アドレス教えてよ”

“ちっちゃいねー、
ほんとかわいい。”

“その制服って
すぐそこのお嬢様高校のだよね。”

⏰:09/04/15 23:35 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#122 [七瀬]
 
 
ま、まさか…

嫌な予感がした。



「でさー、その娘フランス人みたいな顔してんだよなあ。
めっちゃ綺麗で…

特に、あの茶色い目は一度見たら忘れられないって感じ。」

京介が惚れ惚れした様子で言った。

⏰:09/04/15 23:39 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#123 [七瀬]
 
“その髪、染めてんの?”

“ちっちゃいねー。”

“フランス人みたいな顔してんだよなあ”

“特に、茶色い目は一度見たら忘れられないって感じ”


その言葉は
俺の頭に流れる。


「…い!雷!!」
 
美里の呼ぶ声で我に帰る。

⏰:09/04/15 23:43 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#124 [七瀬]
 
『あ…ああ…』


「どうしたの?
なんか変だよ?」

心配そうに俺の顔を覗き込む。


『…なんでもない。
早く行こうぜ。

じゃあな、京介。』

一人、興奮する京介を
放って、校門へと人だかりへと向かう。

⏰:09/04/15 23:47 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#125 [七瀬]
 
 
あり得ない。
そんなはずはない。

自分に言い聞かせる。


「ねー、
なに食べに行くー??」

俺の腕に自分の腕を絡ませて隣を歩く美里の言葉に
適当に相づちを打つ。


俺の心と目線は
あの一点に定められている。

⏰:09/04/15 23:54 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#126 [七瀬]
人だかりとすれ違う。

やっぱり、囲む男どもで
なにも見えない。

俺の勘違いで
終わってくれ…

そう心から祈った時、





「私、悪魔を探しに来たの」

声が聞こえた。

昨日の、俺を惑わした
あの声が…

⏰:09/04/15 23:59 📱:N703iD 🆔:1kyD36ys


#127 [七瀬]
 
 
“悪魔?”
と周りが頭にハテナを浮かべた時、


「あ、いた!悪魔さん!!」

これでもかってくらい
大きな声の先には



背伸びをして俺を指さす
昨日の女。

一斉に
みんなの目線が俺に。

⏰:09/04/16 06:35 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#128 [七瀬]
 
「この人が
私の探してた悪魔さん。」

そうやって、人ごみを掻き分け、俺の元へ。


「そして
私の“ボーイフレンド”」

そう美里が絡ませている腕の反対の方の俺の腕にギュッと抱きついた。


周りが騒めき立つ。

俺がカバンを落としたのは言うまでもない。

⏰:09/04/16 06:40 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#129 [七瀬]
 
 
な…なに言ってんだ?
この女。

俺の乏しい脳ミソは
なかなかこの状況に着いていってくれない。

いや、どんなに俺が天才だったとしても、戸惑っていただろう。



「“ぼぉいふれんどぉ”?」

この美里の怖〜い声で
やっとことの重大さに気付いた。

⏰:09/04/16 06:46 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#130 [七瀬]
 
「どういうことなの?」


『あ…いや、その…』

と、とりあえず
この状況をなんとかしないとね。


「誰?誰なのよっ!!
この女は!」


『え、えーと〜…』

精一杯、
思考回路を巡らす。

⏰:09/04/16 06:50 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#131 [七瀬]
 
 
そうだ!


『ただの、いも…』

俺がやっと考えてた見苦しい言い訳…
“妹”と言おうとした時、


「雷のガールフレンドの
真姫ちゃんでーすっ!」

そうやってピースした。
 
 

⏰:09/04/16 06:57 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#132 [七瀬]
 
 
「ガール…フレンド……」

気の強い美里も
さすがにうろたえている。


「あれ?
どうしたの、雷。」


“どうしたの”って

この状況、この展開…


唖然としない人なんて
いないだろ!

⏰:09/04/16 07:00 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#133 [七瀬]
 
 
真姫は丸い目を、より丸くした。

が、次第にその丸い目を
細めて意地悪そうに笑う。


「なーんだ、そういうこと」


そして美里を見た。

「お姉さん、良いこと教えてあげる」

うろたえる美里と
唖然とする俺。
 

⏰:09/04/16 07:05 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#134 [七瀬]
 
 
「な、なによ…」

美里は精一杯、
威嚇しているよう。


そして、それと正反対に
この女はクスッと笑った。

「悪魔はね…
毎日が誕生日なんだよ?」


美里も
俺と同じ顔になった。
 

⏰:09/04/16 07:08 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#135 [七瀬]
 
 
これ…



““悪魔”ってゆーのはな毎日が誕生日なんだぜ。”


そう。



昨日、俺が言った言葉と
まったく同じ。
 
 

⏰:09/04/16 07:13 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#136 [七瀬]
 
 
「な…なに言って…」

美里は訳の分からないみたいだ。


まあ、そうなるわな。

これから、一緒に誕生日のお祝いする男のガールフレンドと名乗る女が出てきて

“悪魔”がどうとか、
“誕生日”がどうとか
言われたら、

誰でも、うろたえるはずだよなあ。

⏰:09/04/16 17:45 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#137 [七瀬]
 
俺も戸惑いの色を隠せないでいる。


「えー、なんだよぉ。
また雷に持ってかれたよ」

この空気を破ったのは、
やって来たらしい京介。


「そういうことー!
じゃあねっ!!」

『ええぇ!?』


そう昨日のように裾を引っ張る真姫。

⏰:09/04/16 17:49 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#138 [七瀬]
 
 
やっぱりすごい力で
グイグイ引っ張る真姫。


後ろからは、
いろいろと声が聞こえたけど、
今はそれどころじゃなかった。



あの女が目の前にいる。

昨日と同じ風景。
 

⏰:09/04/16 21:22 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#139 [七瀬]
 
 
思い出したくないはずなのに、

もう二度と会いたくないはずなのに。


こいつとの再会に
喜んでる自分がいることを


俺は
認めざるを得なかった。

その証拠に

今、俺の胸は
ドキドキと弾んでいる。

⏰:09/04/16 21:30 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#140 [七瀬]
 
『どこ行くんだよ。』

「んー?こーえん!!」


公園?

やっぱり
こいつ3歳児か?


…じゃなくて、

『もうとっくに通り過ぎてるし!』


ほんとに昨日と同じ状況。 

⏰:09/04/16 21:34 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#141 [七瀬]
 
 
「そ。
じゃ、回れぇー右!」


そう言って
いきなり方向転換するもんだから、
少しこけそうになった。


なーにが
“回れぇー右!”だよ!!


そう思いながらも
“これから”
にワクワクしている。

⏰:09/04/16 21:44 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#142 [七瀬]
 
 
“これから”


“これから”
なにが起こるんだろう…






が、その“これから”で
俺の身に待ち構えていたのは悪夢だった。

一度ハマったら最後、
抜け出せない甘くて恐ろしい夢…

⏰:09/04/16 22:37 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#143 [七瀬]
 
 
『えーと…
で、なにしに来たの?』

俺は上がったテンションを必死に押さえようと
少し素っ気なく接した。


が、彼女は
そんなのにはちっとも気をくれなかった。

「ボーイフレンドに
会いに来ただけよ。」
 
 
その余裕がムカつく。
 

⏰:09/04/16 22:56 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#144 [七瀬]
 
『だから…』

少し間を開ける。


『俺はお前のボーイフレンドになった覚えはない。』


「あなたに拒否権はないのよ、悪魔さん。」


なに?命令かよ。


拒否権ないって…
俺はペットじゃねぇし。
 

⏰:09/04/16 23:00 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#145 [七瀬]
 
 
それに…



その澄ました横顔、
落ち着いた声
遠くを見つめる瞳…




なんだか
壊したくなった。


その余裕な彼女の
戸惑う姿が見たい。
 

⏰:09/04/16 23:04 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#146 [七瀬]
 
 
 
俺は







気付いたら
彼女の唇と自分の唇を重ね合わせていた。
 
 
イチゴのような赤い彼女の唇に。
 

⏰:09/04/16 23:08 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#147 [七瀬]
 
 
今、目を開けたら

唇を離したら

この女の少しは焦る姿を見れるのだろうか。


緊張が俺を襲う。

ゆっくりと目を開ける。



『…!!?』
 
 

⏰:09/04/16 23:12 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#148 [七瀬]
 
目を開けたと同時に
唇を離そうとしたのに
それは出来なかった。


彼女の手が俺の首にしっかりと回っていて、
俺の唇をしっかりと捕らえていたから。

もちろん彼女の唇で。


『んん…んっ…』

彼女は何度も深く深くキスをした。
 
息が出来なくなるほどに。

⏰:09/04/16 23:16 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#149 [七瀬]
 
『ハア…ハァハァハア…』


息の限界という時に
やっと離してくれた。

ほんと酸欠になると
思ったぜ…


息が整はない俺に



「ちゃんと責任とってよね悪魔さん?」

まだ手を俺の首に回したまま言った。

⏰:09/04/16 23:21 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#150 [七瀬]
 
そんな悪魔に
俺も負けじと言った。


『ハア…上等だぜ……
責任、とってやるよ。
きちんと、な。』


「フフッ、楽しみね。」
 
 
 
これで、俺らは晴れて恋人同士になった


……のだろうか。
 

⏰:09/04/16 23:26 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#151 [七瀬]
 
 
 
それとも







悪魔に捕まった
だけなのかもしれない…
 
 
 

⏰:09/04/16 23:35 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#152 [七瀬]
 
 
 
「えーっとね…
あれとこれ。
あ、それの色違いもちょうだい。」


真姫が指さす先、
通る店がすっからかんになっていく。


『姫!まだ買うの?』

「姫は、
まだ買い足りないのっ!!」 

⏰:09/04/16 23:46 📱:N703iD 🆔:5v6a24gA


#153 [七瀬]
 
俺の両手はもう紙袋でいっぱいいっぱい。


これがセレブ買いというやつなのか?

こんなに服やらアクセサリーやら、買って本当に使うのか?


俺の疑問は止まらない。
 
が、その間にも
姫は「あれとそれ!」と
店員に指示している。

⏰:09/04/17 06:54 📱:N703iD 🆔:yz1MYARo


#154 [七瀬]
 
 
真姫と付き合うようになってから、気付いたことがある。 


それは真姫は自分のことを“姫”と呼ぶ。

最初出会った時は
“私”だったのに。


意味わからない。

そして俺も気付いたら
“姫”と呼んでいた。
 

⏰:09/04/17 06:58 📱:N703iD 🆔:yz1MYARo


#155 [七瀬]
 
 
これもなぜなのか
わからない。


うん、とりあえず
もう一週間になるけど、
いっつもこんな感じ。

デートつっても
ただ姫に付き合ってるだけというか、

振り回されてるだけだけ
というか…
 

姫と会った後は
ドッと疲れる。

⏰:09/04/17 07:02 📱:N703iD 🆔:yz1MYARo


#156 [七瀬]
 
 
 
『なぁ〜あ、
どっかで休もうぜ〜。』


すると、
軽くスキップしていた足を止めた姫。


「お茶にしよっか。」


やっと…やっと……


俺たちは
喫茶店へ入った。

⏰:09/04/17 22:49 📱:N703iD 🆔:yz1MYARo


#157 [七瀬]
 
 
カップを両手で包むようにして持っている姫。


おとなしいのは
お茶を飲んでる時くらいか。


こう見たら、かわいいのになんだか勿体ねぇな…


なんて、一人思いながら、俺も一口コーヒーをすすった。

⏰:09/04/19 01:13 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#158 [七瀬]
 
「ねえ、コーヒーって
おいしいの?」

俺はカップを口に付けながら、前を見ると
向き合って座っている真姫が首を傾げている。


『飲んでみる?』

きれいな姫の顔が歪む。


「えー、やだ。
だってそれブラックでしょ?
お砂糖もミルクも入ってないもん。」

⏰:09/04/19 01:18 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#159 [七瀬]
そんなこと言いながら、
生クリームのたっぷり入ったココアを飲む姫。



お!
弱点発見!!


『なあ、飲んでみ?』

カップを
姫の前に差し出す。


「しつこいなあ!
いらないってば。」

顔をフンと反らされた。

⏰:09/04/19 01:21 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#160 [七瀬]
 
 
バッ!


「なにするのよっ!!」


『いいから飲んでみて?』


俺は姫と俺のカップを
無理やり入れ替えた。


茶色い目が俺を睨む。
 
 

⏰:09/04/19 01:24 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#161 [七瀬]
 
 
が、観念したように
コーヒーの入った方の
カップを手に。


だんだん姫の口へと
近づいてゆく。



『あ!
なにすんだよ!』

次は俺が叫んでいた。


ベーと舌を出す真姫。
 

⏰:09/04/19 01:26 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#162 [七瀬]
 
 
店員の目が俺たちに
突き刺さる。


そりゃそうだよな。



だって

俺たちの机の上には
小分けされた砂糖の開けた後のゴミがこれでもかってくらい乗っていた。
 

⏰:09/04/19 01:30 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#163 [七瀬]
いくらタダだからって
全部入れられたら…なぁ。


俺だったら
絶対キレるだろうな。



そう姫は
俺のコーヒーにあるだけの砂糖を入れた。

そして、そのコーヒーを一口飲んで


「おいしい」

って一言笑った。

⏰:09/04/19 01:33 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#164 [七瀬]
 
 
こいつ
絶対、味覚オンチだろ!


あり得ねーよ。

いくら甘いもん好きでも、あれな無理だろ!



ほんっと
信じらんない。

しかも、人のコーヒーに。 
 

⏰:09/04/19 01:36 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#165 [七瀬]
しかもしかも!

俺は、その砂糖たーっぷりコーヒーを一滴も残さず、全部飲ませれた。

そのおかげで
今でも口内が甘ったるい。


でも、そんな俺を見て
姫は喜んでいた。

もうほんとにやだ!!



とりあえず、
姫の小腹と意地悪心は満たされたよう。

⏰:09/04/19 01:40 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#166 [七瀬]
 
 
『…もう出よ。』

これ以上、
ここにいたくない。


買い物して、お茶飲んで、姫の相手して…

今日も疲れた。


「そうね。
もう行きましょ。」


うんうん、帰ろ帰ろ。
 

⏰:09/04/19 10:24 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#167 [七瀬]
 
 
「まだまだ回らなくちゃいけない店が残ってるし。」



えっ?


『…帰らないの?』


すると真姫は

「もちろん。
って逆に聞くけどもう帰るの?」
 
目を丸くした。

⏰:09/04/19 10:29 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#168 [七瀬]
 
 
今度は、わざとじゃなく 本当に不思議がってるみたい。


“逆に聞くけど”って…

俺も、
逆の逆に聞きたいよ。


俺の疲労が増すことは
目に見えている。


それと
ため息も。

⏰:09/04/19 18:40 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#169 [七瀬]
 
 
「うーん!!
やっぱり
ここのプリンは最高!」


ただいま
本日2回目の喫茶店。


あれから3時間、
また買い物。

どれほど
歩き回ったことか…

足痛い。
肩も痛い。
 

⏰:09/04/19 18:54 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#170 [七瀬]
 
「雷も食べる?」

くりくりした目で
聞いてくる。


『…いらない。』

「ふぅん、そ。」

そうやって
本日2個目のプリンを食べはじめた。


「これ。」

口をもごもご動かしながら指さす真姫。

⏰:09/04/19 21:19 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#171 [七瀬]
 
 
その先に目を向ける。


「なんの絵か分かる?」

プリンを乗せている皿にはなんらかの絵が描かれている。



『…かぼちゃの馬車?』


「当たり。」
 

⏰:09/04/19 21:22 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#172 [七瀬]
それは、かぼちゃの馬車に女の子…

多分シンデレラだろう。

シンデレラが
かぼちゃの馬車に乗っている絵が黒いシルエットになって皿にプリントされている。

その絵は皿だけでなく
カップ、机、窓と喫茶店の至るところに描いてある。


「ここはね。
かぼちゃのお菓子の専門店なの。」
 

⏰:09/04/19 21:28 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#173 [七瀬]
 
『へぇ、そうなんだ。』


気付かなかった。

ただ疲れていて
姫に促されるがまま
この店に入った。


「うん。
今、姫が食べてるのも
かぼちゃプリンだもん。」


そう言われたら
なんか色の濃いプリンだなと思った。

⏰:09/04/19 22:43 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#174 [七瀬]
「他にも、シフォンとか
マフィンとか、かぼちゃを使ったスゥィーツがいっぱいあるの。」

確かに、周りを見ると
オレンジの濃いお菓子が
並んでいた。

かぼちゃを使ってたから
みんな、あんな色だったんだ。


「それでね、雑誌にも載ったことあるんだよー。
この店。」

かぼちゃプリンを
頬張る真姫。

⏰:09/04/19 22:51 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#175 [七瀬]
 
「ま、姫は雑誌に載る前から来てたけどね。」

得意気に話す姫が
とても愛らしく見えた。



『じゃあ、
このかぼちゃの馬車に乗ってるのは姫だな。』


「あったりまえー!」


嬉しそうな真姫の姿に
俺もうれしくなった。

⏰:09/04/19 22:55 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#176 [七瀬]
 
その笑顔は
やっぱり本物のお姫さまみたい。



「姫がシンデレラならー、雷はね…」

『王子さま?』


…が幸せな時間は
長くは続かない。



「ううん、これ。」
 

⏰:09/04/19 22:59 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#177 [七瀬]
 
そうやって
また皿の絵に指さす。


これって…




「お馬さーん。」


かわいくおどけて見せる
真姫とは対照的に
俺はいやーな予感。
 

⏰:09/04/19 23:03 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#178 [七瀬]
 
姫はかぼちゃの馬車の前にいる馬を指さしていた。


「雷はねー、
いっつも姫に付き合ってくれるでしょ?
だからいつも馬車を引っ張ってくれるお馬さん!」



それって要するに
パシリじゃん!!
 
 
声が出ない。
 

⏰:09/04/19 23:11 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#179 [七瀬]
 
この姫の言葉は
俺がこの一週間に感じていた小さなしこりを大きくしてしまった。



俺たちは本当に
付き合っているのか?


姫のわがままに振り回されても

俺はこれを“デート”
だと思っていた。
 

⏰:09/04/19 23:15 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#180 [七瀬]
 
でも真姫にとっては
ただ買い物に付き合ってもらってただけみたいだし。



それに俺は姫の

パシリでも
保護者でも
荷物持ちでもない。



姫にとって
俺という存在はなんなんだろう。

⏰:09/04/19 23:19 📱:N703iD 🆔:0xVppyms


#181 [七瀬]
 
 
そんな俺の思いとは
裏腹に、姫は


「お馬さん、お馬さーん。」

と一人ルンルンしている。



なあ、姫。

お前にとって俺は
どういう存在なんだよ。


聞きたいけど聞けない。

⏰:09/04/20 17:28 📱:N703iD 🆔:rMHgfQT.


#182 [七瀬]
 
 
だって


もし姫の口から…





ああ…なにやってんだ。

こんな女一人に。



いつから俺は
女に対してこんなに臆病者になってしまったのか。

⏰:09/04/20 17:31 📱:N703iD 🆔:rMHgfQT.


#183 [七瀬]
 
 
 
「どうしたの〜?雷。」


ハッと我に帰ると
真姫がこっちを見ていた。


『なんでもねぇよ…』


「そう。
じゃあ行こっか、
お馬さん。」
 
 
立ち上がった真姫。

⏰:09/04/20 17:34 📱:N703iD 🆔:rMHgfQT.


#184 [七瀬]
 
 
“お馬さん”…



俺の不安は
小さくなることはない。


どんどん俺の中を
いっぱいにしてしまった。



こんな気持ち…
初めてだ。

なんなんだ?この痛みは。 

⏰:09/04/20 17:37 📱:N703iD 🆔:rMHgfQT.


#185 [七瀬]
 
 
ズキズキする胸。


まさか…


俺は大事なことに
気付いてしまった。








姫の心臓弱いの移った?
 

⏰:09/04/20 17:40 📱:N703iD 🆔:rMHgfQT.


#186 [七瀬]
 
いや、でもあれは
嘘だったはずだし…


うーん、わからない。






バカな俺に

この気持ちの
本当の正体に気付くのは


もう少し先の出来事。
 

⏰:09/04/20 17:43 📱:N703iD 🆔:rMHgfQT.


#187 [七瀬]
 
 
 
っあ!


ちなみに先に言いますけど






姫の心臓弱いのが移ったわけではありません。

心臓弱いのは移らないのでご安心を。
 
 

⏰:09/04/20 17:45 📱:N703iD 🆔:rMHgfQT.


#188 [七瀬]
 
 
 
夕方なのか夜なのか…
分からないが

この暗やみが
決して6時や7時ではないことを語っている。


というわけで…


俺が家へ着いたのは
もう10時過ぎ。
 

⏰:09/04/21 06:54 📱:N703iD 🆔:h6N19cEk


#189 [七瀬]
 
今日は朝の8時半から
姫に付き合わされた。



今朝


「おはよ。
ってあれ……」

『はよ、京介。
ん?なんだよ。』


珍しく寝坊せずに
学校へと向かっている途中だった。

⏰:09/04/21 06:58 📱:N703iD 🆔:h6N19cEk


#190 [七瀬]
 
 
京介が俺の後ろを
呆然と見ている。


「あれ…
真姫ちゃんじゃねえ?」

振り向くと



「らーい。」

こっちに
ブンブンと手を振る姫。
 

⏰:09/04/21 16:52 📱:N703iD 🆔:h6N19cEk


#191 [七瀬]
 
『姫!?どうしたの?』


俺はビックリした。


だって姫、
制服来てないし。

今日は平日だよ?


「えへへー。」

そうやって俺の腰に
手を回した。


『学校は!?』

⏰:09/04/21 16:55 📱:N703iD 🆔:h6N19cEk


#192 [七瀬]
 
俺の通ってる高校と
真姫の通ってる高校は、
一駅違い。


結構近くって
驚いたんだけど、

それ以上に

姫があの高校に通ってたこと自体に驚いた。


だってあの高校…
つまり華城学園は


超お嬢様高校で有名。

⏰:09/04/22 05:49 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#193 [七瀬]
 
しかもかなり賢い。
うん、ビックリした。

姫は頭良いんだなー。
意外に。



しかも、そこの女子高、
かわいー娘多いんだよな!


あそこで何度、
引っ掛けたことか…

それも姫に出会ってから
遠い昔のことのように感じるけど。

⏰:09/04/22 05:56 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#194 [七瀬]
 
 
 
「今日、姫の学校ねー、
創立記念日なの!」


『へえ〜、いいな。』

うらやましい。
俺も休みたい。


「だからヒマ。
どっか連れてって〜!!」


『今から!?』

ちょっと待て!

⏰:09/04/22 06:00 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#195 [七瀬]
 
「もちろん。」


俺、もうそろそろ
単位やばいんだよ。

数学サボり過ぎて…

『姫、今日はちょっと…』

昨日、担任にも
釘刺されたばっか…


「なんで?」


“なんで”って…
 

⏰:09/04/22 06:05 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#196 [七瀬]
 
第一に、

姫は休日でも
俺にとっては平日だし
普通に登校日だし…


と言っても

真姫には通じないだろう。“知らなーい”って
跳ねられるのがオチだ。


『姫、聞いて。
俺ね、このままじゃ学年上がれない。
留年しちゃうよ?留年。』 

⏰:09/04/22 06:09 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#197 [七瀬]
 
「なんでなんで?
なんで
留年しちゃうわけ?」


『それは…』

“サボり過ぎたから”
とは言えな…



「サボり過ぎて!!」

後ろにいた京介が
笑いながら言った。
 

⏰:09/04/22 06:13 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#198 [七瀬]
 
「サボり過ぎて?」

まだ抱きついたままの姫が上目遣いに俺を見る。


「そーそー!!
こいつサボり過ぎて、出席日数足んねぇんだよ!
な、雷?」

そうポンポンと
俺の肩を叩く京介。


『京介…』

なに言いやがるんだよ!!
こいつ!

⏰:09/04/22 06:18 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#199 [七瀬]
 
そんな俺の思いに
気付いたからか

「まあ、いーじゃん。
どうせ今日1日行ったくらいじゃダメだし。
お前のサボり癖を直さなきゃ一生2年生のままだな。」


確かに…

『…おっしゃる通りでございます』


「だからな?
真姫ちゃんに付き合ってあげれば?」

⏰:09/04/22 06:23 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


#200 [七瀬]
 
うっ…
京介まで…


「お前の
“お姫さま”なんだし…
な?」





こうして

京介がこっそり耳打ちした言葉を胸に俺は姫に捕らえられ、今に至る。
 

⏰:09/04/22 06:27 📱:N703iD 🆔:Di.X6F5w


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