悪 魔 の 誕 生 日
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#501 [七瀬]
「寒‥っ」
容赦ない雨に体が凍える。
雷‥どこにいるの?
あれから、学校を出たのはいいけど、傘を忘れてしまった。
とりに行こうか迷ったけど止めた。
:09/05/06 01:31
:N703iD
:p8oeFPTc
#502 [七瀬]
私としたことが、
とんだミスをしちゃった。
「はあ‥」
自然に漏れるため息と
雨の冷たさで震える手。
そして、不安。
私らしくない。
“真姫”はもっと強くて、賢くって‥‥
:09/05/06 01:35
:N703iD
:p8oeFPTc
#503 [七瀬]
雷もきっと、
そんな私が好きなの。
“私”じゃなくて“真姫”
でも、私、
雷に出会ってから、
バカで
弱虫な
真姫に
なっちゃったみたい‥
:09/05/06 02:26
:N703iD
:p8oeFPTc
#504 [七瀬]
寒い
冷たい
怖い
苦しい
雷に会いたい‥
:09/05/06 02:28
:N703iD
:p8oeFPTc
#505 [七瀬]
そんな中で
ただ耳の全てを支配する
ザーーという音を聞いていた。
:09/05/06 02:30
:N703iD
:p8oeFPTc
#506 [七瀬]
うーん、
これからどうしようか。
俺はまだ、
ホテルの入り口にいた。
ゆかちゃんは、
「彼氏に誕生日お祝いしてもらうの〜!!」
って雨の中、走っていった。
:09/05/06 13:35
:N703iD
:p8oeFPTc
#507 [七瀬]
『うう〜、寒〜』
雨は止む気配すら、
見せない。
姫は、委員会終わって、
ちゃんと帰ったかな。
‥って、
きっと大丈夫だな。
姫のことだから、
事前に傘を持っていっているはず。
:09/05/06 13:39
:N703iD
:p8oeFPTc
#508 [七瀬]
あの悪魔のことだし、
今ごろ、意地悪な笑みを口に浮かべているはず。
‥なのに、
なぜこんなに
不安なんだろう。
なぜか、
姫が呼んでるような気がした。
バカな俺の勘なんて、
当てにできない。
:09/05/06 13:46
:N703iD
:p8oeFPTc
#509 [七瀬]
だけど、
居ても立ってもいられなくて、
当てにならない勘だけを頼りに、姫の元へと向かった。
足下を雨で濡らしながら。
:09/05/06 13:49
:N703iD
:p8oeFPTc
#510 [七瀬]
やっぱり俺の勘は
当てにならなかった。
あ〜、どこに行んだよ。
寒さと不安ばかりが増し、雨を含んだ靴が重い。
頭もびしょびしょ。
今日、風呂入んなくても、いいかも。笑
:09/05/06 13:52
:N703iD
:p8oeFPTc
#511 [七瀬]
『‥っくしょん‥!!』
やっぱ撤回。
こりゃ今すぐ、風呂入んないと。
ほんと、今は4月下旬なのだろうか。
寒い、寒過ぎる。
:09/05/06 13:56
:N703iD
:p8oeFPTc
#512 [七瀬]
「‥‥い!らい!!」
『んあ?』
俺を呼ぶ声が聞こえて、
その声を辿っていくと
『京介。』
ばかやろーなダチの姿。
「お前、こんな雨降ってんのに、傘も差さねぇで、バカじゃねーの!?」
:09/05/06 14:00
:N703iD
:p8oeFPTc
#513 [七瀬]
『‥傘、忘れたんだから、しょーがねぇじゃん。』
またバカ呼ばわりかよ。
「はあ。
お前ら、どいつもこいつも‥」
京介が呆れたようにいう。
ん?
『京介、“どいつもこいつも”って‥』
:09/05/06 14:03
:N703iD
:p8oeFPTc
#514 [七瀬]
「はい、これ。」
そうやって、
手を差し出される。
『これって‥』
まだ、かすかに濡れているもの。
「そ。真姫ちゃんの傘。」
姫の傘。
:09/05/06 14:05
:N703iD
:p8oeFPTc
#515 [七瀬]
『なんで、京介が‥』
「真姫ちゃん、ここに来たし。」
京介は、
すぐそこの俺の学校を指さした。
『なんで…』
「お前が、傘ないんじゃないかって、心配してたみたい。」
:09/05/06 14:08
:N703iD
:p8oeFPTc
#516 [七瀬]
胸が熱くなるのを感じた。
「で、お前がハナジョウの子と、どっか行ったって、言ったら、血相変えて雨ん中、傘も差さずに飛び出していった。」
ゆかちゃんだ。
「俺はてっきり、真姫ちゃんだと思ってたから‥すまん‥。」
『いや、さんきゅ。京介』
:09/05/06 14:35
:N703iD
:p8oeFPTc
#517 [七瀬]
そして、
また雨の中、飛び出す。
さっきよりも、
早く足を動かすと、やっぱり水が掛かって冷たい。
でも、そんなこと気にしている暇はなくって
今はただ、お姫さまを探すだけ。
:09/05/06 14:39
:N703iD
:p8oeFPTc
#518 [七瀬]
「ハァ‥ハァ‥‥」
やっぱ、俺の勘は当てにならない!!
それは、この30分間ほどで十分思ったこと。
姫は未だに見つからない。
でも、まだ京介が預かっててくれた姫の傘があったから、全身びしょびしょということは、免れた。
と、いってもピンクの傘は恥ずかしいけど。
:09/05/06 14:46
:N703iD
:p8oeFPTc
#519 [七瀬]
そうだ!
姫の携帯に‥
って、
俺、ケー番どころか、アドレスも知らない!!
デートの時は、姫がいつも校門に待ってたから‥
ああ〜っ、
俺って、役たたず!!
:09/05/06 16:50
:N703iD
:p8oeFPTc
#520 [七瀬]
無駄に光るディスプレイを見ながら、むしゃくしゃする。
しょうがない。
姫の家へ、行くか。
俺は、駅へ向かった。
:09/05/06 16:52
:N703iD
:p8oeFPTc
#521 [七瀬]
さすがに、
駅の近くまで行くと、
人も多くなる。
駅付近には商店街もあって老若男女で賑わっている。
‥ピンクの傘は恥ずかしい。
そんな羞恥心を持ちながらも、足を休めるこてはできない。
:09/05/06 16:56
:N703iD
:p8oeFPTc
#522 [七瀬]
が、俺の足は止まってしまった。
それは、痛くなったとか、疲れたとか、
ましてや、他の女に捕まったとかではない。
『‥ひめ!?』
愛しのお姫さまを見つけたから。
:09/05/06 17:01
:N703iD
:p8oeFPTc
#523 [七瀬]
そこには、商店街の隅っこで、雨宿りしている姫が。
『姫‥!』
もう一度、大きく叫ぶと、
「あ‥らい。」
小さく答えた。
『姫、
どこにいたんだよ!?』
:09/05/06 17:56
:N703iD
:p8oeFPTc
#524 [七瀬]
ぎゅっと小さい体を抱き締める。
‥冷たい。
びちゃびちゃに濡れた体は驚くほど、ひんやりしていた。
「雷こそ‥どこにいたのよ」
でも、その冷たさの中に、少し体温が感じられ、安心する。
:09/05/06 18:00
:N703iD
:p8oeFPTc
#525 [七瀬]
「ずっと‥探してたのに‥」
『ごめん‥っ、ひめ‥。』
安心したと同時に、
溢れる気持ち。
やっぱり、俺は姫が好き。
遊びなんかじゃなく、
本気で。
:09/05/06 18:03
:N703iD
:p8oeFPTc
#526 [七瀬]
お互い、雨に濡れていて、冷たかった。
でも、その中でも俺の胸が特に、濡れていたのは
「うっ‥うぅ〜‥‥ぐずっ‥」
お姫さまの涙のせい。
でも、その涙は
あったかかった。
:09/05/06 20:49
:N703iD
:p8oeFPTc
#527 [七瀬]
なんか‥
『ひめ‥ごめん‥‥』
俺も泣きそう。
ほんと、かっこわりぃ‥
「ふぇ‥ぐずっ‥‥」
ずっと泣いてる姫。
ゆかちゃん以上だな、これは。
:09/05/07 07:03
:N703iD
:ib47kqmk
#528 [七瀬]
『とりあえず、帰ろう。』
俺は姫を送ることにした。
電車の中、ふらふらな姫を座らせてあげたかったけれど、
びしゃ濡れだし、座るわけにもいかず、結局支えてあげるだけしかできなかった。
『姫‥大丈夫?』
「うん‥」
:09/05/07 07:07
:N703iD
:ib47kqmk
#529 [七瀬]
そんな、俺たちにやはり周りの目は痛かった。
いつもとは違って
弱気の姫。
それは冷めた体のせいだろうか。
それとも…
昨日の顔が忘れられない。
:09/05/07 07:12
:N703iD
:ib47kqmk
#530 [七瀬]
ピンポーン
この家のインターホンを
実際に押したのは、昨日が初めて。
ガチャ
「あら‥雷くん‥‥」
扉を開けた真姫のお母さんは、目を大きくしていた。
:09/05/07 22:16
:N703iD
:ib47kqmk
#531 [七瀬]
『いきなりすみません。』
「いや、いいのよ。
真姫は今、いないみた‥」
そこまで言って、
もう少しドアを開けると、
俺にぐったりと横たわっている真姫が目に入ったようで、
「真姫‥!!」
悲嘆する真姫のお母さん。
:09/05/07 22:40
:N703iD
:ib47kqmk
#532 [七瀬]
「え‥あ、えと‥‥」
あたふたと混乱する、
真姫ママに、
『お風呂、お願いします』
姫を抱き抱えた。
「は‥はい‥」
混乱しながらも、駆け足でお風呂場に向かっていった。
:09/05/07 22:44
:N703iD
:ib47kqmk
#533 [七瀬]
玄関へ上がると
「大丈‥夫。
一人で歩けるから。」
弱々しく姫が立ち上がった。
『ほんとに大丈夫?
今、お母さんにお風呂沸かしてもらってるから。』
「うん‥大丈夫。
ありがと‥‥」
:09/05/07 22:47
:N703iD
:ib47kqmk
#534 [七瀬]
相も変わらず、弱々しい足取りで階段を上り始める姫を支える。
「ほんと‥ありがとね。」
やけに素直なところが、
余計に弱っているように見えた。
『いいから、早く自分の部屋行って、着替えて‥』
コクリて頷くだけだった。
:09/05/07 22:50
:N703iD
:ib47kqmk
#535 [七瀬]
ふぅ
俺は姫の部屋の前で、
一息ついた。
今、姫は部屋で、着替えている。
バスタオルも渡したし、
後はお風呂に入って‥
そう思うと、少し安心した。
:09/05/07 22:53
:N703iD
:ib47kqmk
#536 [七瀬]
「らい‥」
カチャっと、ドアが開いて姫が顔を出した。
『お風呂、
もうちょっと待ってな。』
優しく微笑みかけた。
「うん。あのね‥雷。」
「お風呂、沸いたわよー」
姫がなにか言いかけた瞬間、下から声がした。
:09/05/08 17:17
:N703iD
:6lSCKeqg
#537 [七瀬]
『早く入っといで。』
「うん‥」
姫は階段を下りていった。
なにを
言いかけてたんだろう‥
:09/05/08 18:56
:N703iD
:6lSCKeqg
#538 [七瀬]
「真姫も、もう上がるだろうし雷くんも入ってって」
真姫ママがニコッと笑った。
『いや‥いいっすよ。』
「入って。」
風呂から、姫が出てきた。
『ひめ‥』
「風邪、引くから。」
:09/05/09 19:36
:N703iD
:pseT6E7s
#539 [七瀬]
『でも‥』
俺は傘があったから、姫ほど濡れてないし、
いきなり来て、迷惑だろうし、
『やっぱり‥』
「早く、入って。」
茶色い瞳に捕らえられる。
「上がったら‥話あるから」
:09/05/09 19:39
:N703iD
:pseT6E7s
#540 [七瀬]
ドクン
心臓の音が聞こえた。
『‥‥わかった。』
風呂場へと、体を向けた。
:09/05/09 19:41
:N703iD
:pseT6E7s
#541 [七瀬]
この、無駄にデカい風呂に入るのも二回目だなあ。
今はいらないけど、
歯ブラシの置き場所もわかるし、
もうシャンプーとリンスを間違えることもない。
冷えた体にシャワーを当てる。
温かい。
:09/05/09 22:15
:N703iD
:pseT6E7s
#542 [七瀬]
‥なんだろう、話って。
水の流れる音が耳に入る。
俺の小さなため息は、
その音にかき消された。
シャワーは、体を温めてはくれたけど、
前みたいに疲れを流してはくれなかった。
:09/05/09 22:31
:N703iD
:pseT6E7s
#543 [七瀬]
風呂から出ると、
湯気の立ったマグカップが2つ、テーブルに。
「体、冷えたでしょ?」
そして、一昨日豪華なディナーが並んだそのテーブルのイスには、真姫が一人。
『ありがとう。
あれ、お母さんは?』
ふと、その広いリビングを見渡すと俺ら以外だれもいない。
:09/05/09 22:37
:N703iD
:pseT6E7s
#544 [七瀬]
「ママなら、寝室でテレビ見てる。」
なんだかんだ言っても、
姫の家族は気を遣ってくれる。
あのシスコン野郎も前に、気遣ってくれたし‥
「あ、ちなみに真王は部屋で勉強してる。」
‥ほらな。
:09/05/09 22:45
:N703iD
:pseT6E7s
#545 [七瀬]
だてに、常識外れなセレブじゃなくて、
だてに、子供に関心がないわけではない
って、やっと気付いた。
周りから、見たら冷たいとか、ほったらかしとかいう風に見えるんだろう。
事実、俺も最初はそう思ってた。
なんて、
いい加減な親なんだって。
:09/05/09 22:50
:N703iD
:pseT6E7s
#546 [七瀬]
だけど、そうじゃなくて
これがこの家の、愛し方なんだって思ったんだ。
顔が全然似てなくたって、姫と姫のお母さんもお父さんも弟も
みんなみんな家族なんだって、やっと気付いたよ。
:09/05/09 22:53
:N703iD
:pseT6E7s
#547 [七瀬]
『‥俺、ダメだな。
姫のこと、全然分かってなかったよ。』
自分が憎い。
マグカップへ向かいかけてた姫の手が止まる。
俺の顔は下へ。
だけど、見てなくても
姫がこっちを見てるんだってオーラが伝わってきた。
「そうね。」
:09/05/09 22:57
:N703iD
:pseT6E7s
#548 [七瀬]
ポツリと広いリビングに響いた。
「雷は私のこと、全然理解してない。」
俺は顔を上げることが
出来ない。
「わたし‥“真姫”のことを分かってない。」
:09/05/09 22:59
:N703iD
:pseT6E7s
#549 [七瀬]
“真姫”のことを分かってない‥
頭の中で、何回も何回も、鳴り響いた。
「らい‥顔上げて。」
それでも、まだ見れない。姫を見れない。
「おねがい‥おねがいだから‥」
悲しそうな声。
:09/05/09 23:21
:N703iD
:pseT6E7s
#550 [七瀬]
「やっと上げてくれたね。」
姫のそんな声を聞きたくない。
その一心で顔を上げて、
また後悔する。
だって‥そんな顔するから。
それは、怒っているわけでもなく、悲しんでいるわけでもない。
昨日と同じ。
声と恐ろしく反対な表情。
:09/05/09 23:25
:N703iD
:pseT6E7s
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