吸血鬼死重奏
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#72 [渚坂]
「死んだか?つまらん……」
その一言に私の中で沸き上がっていたある感情が沸点へと達した。一気に体温が上昇し、頭に血が上る。目の前がチカチカして視野はみるみる狭くなっていく。
今では魔王しか目に入らない。
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#73 [渚坂]
そして気付いたときには右足が地面を蹴り上げ、体は風を一身に受けていた。
「うわぁぁぁああ!!!!」
よくも綾辻を……。綾辻を!!
もちろん人間の私が“魔王”に勝てるはずがないのは分かってる。
“ヤメナサイ”
“ニゲナサイ”
“ナニガシタイノ?”
心の隅でもう一人の私が制止をかけるのだが、それ以上に熱い感情が私を突き動かす。友達が、私の大切な人を見捨てて逃げるなんで私には出来ない。
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#74 [渚坂]
「そちらから来ていただけるなんて有り難い。遠慮なく血を啜らせていただくぞ」
両手を広げ、ニヤリと笑う口から必要以上に尖った牙をむく魔王。その表情に一瞬だけ背筋が凍る。だけど、立ち止まってなんかいられない……!!
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#75 [渚坂]
チャンスは一度。
誰太君の懐に入ったその一瞬のみ。急かされるようにせわしなく足を動かしながらポケットから護身用の小さな金色の十字架を取り出す。
これは入学した誰もに渡されるただの備品。
吸血鬼の生徒たちには十字架になれるために渡されたようだが、今の私にはどんなものより心強い武器となっていた。
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#76 [渚坂]
:09/08/05 18:54 :F905i :zDPjXS.w
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