星とぽんず。
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#201 [七瀬]
 
 
『は‥はぁ』

曖昧にうなずく。


「ってか、一緒に地方回れへん!?」

『いや‥それはさすがに、ちょっと‥』


「冗談やん!冗談」

また笑うまつりさん。
 

⏰:09/07/07 12:30 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#202 [七瀬]
 
 
『‥長いんですか?その‥こういう仕事して‥』


「うーん、さっきもゆーたけど、家がやってたからなぁ。ちっさいころから来てたわ。軽いバイト感覚で」


ちょっと
うらやましいような、

そうでないような‥
 

⏰:09/07/07 12:34 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#203 [我輩は匿名である]
 
「今は独立したけど、懐かしいなぁ‥神野商会」

まつりさんは
しみじみしてるようす。


『"独立した"って‥』


「あー、やっぱいつまでも親のスネかじってられへんやん?」


まつりさんは「となり」と横に親指を向けて言った。 

⏰:09/07/07 12:37 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#204 [我輩は匿名である]
 
 
その方向へ目を向けると、



いいにおいが
鼻をくすぐった。





「わたしの旦那」
 
 
 

⏰:09/07/07 12:39 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#205 [我輩は匿名である]
 
 
『‥旦那さん‥』


「ゆーきー!」

まつりさんの周りを、
気にせず叫ぶすがたに

少しびっくりしながらも


「なんやねん!」


二人を見てると、なんだか心があったかくなった。
 

⏰:09/07/07 12:43 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#206 [七瀬]
 
 
「カステラちょーだい!」

また叫ぶと、

"ゆうき"と呼ばれる
まつりさんの旦那さんが、持ってきてくれた。


「あんま、おっきー声出すなや。アユが起きるやろ」

「ごめんごめん」


当たり前だけど、
"夫婦"そのもののすがたになんだか感動した。

⏰:09/07/07 12:49 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#207 [七瀬]
 
まつりさんの旦那さんは、それだけ言うと、
カステラ屋に戻っていった。


「はい、これ食べ。柚子ちゃん」

『あ、ありがとうございます‥』


受け取ったそれは、
あたたかくって、ほかほかしてて。

口に入れると、
優しい甘さが広がった。

⏰:09/07/07 12:54 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#208 [七瀬]
 
 
『‥おいしい』

こっちまで、やさしい気持ちになった。


「せやろ?わたしの旦那、カステラだけはうまいねん、焼くの」

歯を見せて笑うまつりさんは、"女の子"だった。


それから数分、まつりさんと他愛もないことを話した。

⏰:09/07/07 12:58 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#209 [七瀬]
 
 
「あーー!」

『‥??』


歩志が変な声を上げたのはあたしとまつりさんが盛り上がっていたときだった。



「破れた」
 
 

⏰:09/07/07 15:12 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#210 [七瀬]
 
 
『へ、変な声あげないでよ!びっくりするじゃん!』

「ごめんごめん」


歩志が、破れたワッパを
まつりさんに渡した。


「二人とも、ありがとう。また来年しにきてな」

このことばは、別れのあいさつなんだなぁ、

と思うと寂しさが襲った。

⏰:09/07/07 15:16 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#211 [七瀬]
 
 
『ほんとにありがとうございました‥』

少し、しゅんって
なりながら、お礼を言って

その場を
あとにしようとすると、



「待って!」


歩志が引き止める。
 

⏰:09/07/07 15:19 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#212 [七瀬]
 
「まだ金魚数えてない!」


あたしが、キョトンとした顔をしたのか、


「勝負!勝負!」

歩志はムッとする。


『あぁ〜‥忘れてた』

だって、まつりさんと
夢中になって話してたんだもん。

⏰:09/07/08 16:29 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#213 [七瀬]
 
 
『ごめんごめん〜』

「しっかりしてよ、ぽんずちゃーん」


一匹ずつ、一匹ずつ。

慎重に数える歩志。


「1、2、3、4、5‥」


まるで、小学生。笑
 

⏰:09/07/08 16:33 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#214 [七瀬]
 
 
「‥‥19、20、21‥‥‥22匹!!」


『‥あたしと同じ』


輝かせていた目は、
瞬く間に、沈んでいく。

「ええ〜‥引き分けとか、つまんない‥」


「まぁ、ええやん!ええやん!二人でタコせんとかき氷食べれば」
 

⏰:09/07/08 16:37 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#215 [七瀬]
 
まつりさんのことばに


「ま、しょうがないか‥。勝負は勝負だし」

しぶしぶ
歩志も納得したよう。



『じゃあ、まつりさん』


今度こそ、別れのとき。
 

⏰:09/07/08 16:40 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#216 [七瀬]
 
 
『また!』

大きく手を振った。



瞬間

「待って待って!」


もぉ〜、次はなに〜!!
 

⏰:09/07/08 16:42 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#217 [七瀬]
 
 
「ちょっと柚子ちゃん!」


手招きをする
まつりさんに近寄ると、

こっそり耳打ちされた。



「歩志くん‥ゆーん?
彼、柚子ちゃんのこと、そーとー好きみたいやなぁ」


まつりさんの言葉に
耳が熱くなる。
 

⏰:09/07/08 16:45 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#218 [七瀬]
 
 
「さっきから‥ずーっと前から、柚子ちゃんとしゃべってたら、目ぇ合うねん」


チラッと
歩志のほうを見ると、

タイミングよく通った
おみこしを見ていた。


「‥最初はなんでかなぁ、思たけど‥」


おみこしの音がうるさくてよく聞こえない。

⏰:09/07/08 16:48 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#219 [七瀬]
 
クスッと笑った
まつりさんの息が、耳にかかってくすぐったい。



「柚子ちゃんのこと、気にしてたみたい」



なんでかなぁ。


こういうとき、
周りがもっとうるさくて

聞こえなかったら、
よかったのに。

⏰:09/07/08 16:52 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#220 [七瀬]
 
 
‥恥ずかしくって、

アイツの顔、まともに見れないじゃん。


「えーな。愛されてて。
うらやましぃ〜」


でも、助かった。

歩志がおみこし見ててくれて。


きっといま、あたし、
リンゴ飴状態だから。笑

⏰:09/07/08 16:54 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#221 [七瀬]
 
 
『なに言ってるんですか。まつりさんだって、素敵な旦那さんいるじゃないですか』


やられっぱなしは、
さすがにいやだから、

最後に一発言ってやって、ほんとにお別れした。


浴衣は、少し濡れてしまったけれど、

小さな風が吹いて
気持ちよかった。

⏰:09/07/08 16:58 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#222 [七瀬]
 
 
 
「なに話してたの?」

『え?』


「さっきの金魚すくいの、おばさんと」

『べっ‥べつに!
‥ってか"おばさん"って』


「だっておばさんじゃん」


‥まつりさんが聞いたら、キレちゃうだろーな。

⏰:09/07/08 18:36 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#223 [七瀬]
 
 
「‥ま、いーや」

すると、歩志はまたさりげなく


「買いにいきましょーか?約束通り、タコせんとかき氷」

あたしの手を奪った。


『うっ、うん!』
 

⏰:09/07/08 18:38 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#224 [七瀬]
 
 
‥というわけ。


まつりさんのことを
思い出すと、
自然と口が緩んでしまう。



「気になる‥」


アイツはまだ言ってた。
 

⏰:09/07/08 18:44 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#225 [七瀬]
 
 
『あ、見て見て歩志!』

「んー?ってあれ‥」


『うんうん!』

あたしの
輝く目線の先には


『リンゴ飴!!』


飴に包まれたフルーツたちは、宝石のようにキラキラしている。
 

⏰:09/07/08 18:47 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#226 [七瀬]
 
 
『歩志、確かりんご好きって言ってなかった?』

さっきと違って、
あたしがアイツの手を引っ張った。


『リンゴ飴、買う!?』

しかし、


「いや‥いいよ、俺は」

返事は思ったようなものじゃなかった。

⏰:09/07/08 18:49 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#227 [七瀬]
 
 
『ええー!?なんで?
なんでなんで!??』

買うだろうと、ほぼ確信していたあたしは驚いて聞いた。


「俺‥苦手なんだよね」

たくさんある宝石たちの中から、一つを指さす歩志。



「その"飴"が」
 

⏰:09/07/08 18:52 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#228 [七瀬]
 
『えー!
甘くておいしいのに‥』


「それに」

歩志は一つ、間を置いた。


「リンゴ飴なら、ここにあるじゃん」



‥ん?


『あ、あたし!?』
 

⏰:09/07/08 18:59 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#229 [七瀬]
 
 
「うん。さっきリンゴ飴みたいに真っ赤だった」


『さ、さささ‥さっきっていつよ?いつ!??』

「いつだったっけなぁ〜」


まつりさんに言われたときじゃないよね!?

あのとき、歩志
おみこし見てたじゃん!!

違う違うはず‥。
 

⏰:09/07/08 19:02 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#230 [七瀬]
 
 
「ぎゅっとしたときとか」


『な‥なんだ‥そのときのことか‥‥』

ちょっと安心。
ちょっと残念。


「なに?他にもあったの」

『ううん!なんでもない!なんでもないから、ほんとに!!』

ま、セーフということで。

⏰:09/07/10 18:49 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#231 [七瀬]
 
 
あたしは、お母さんのおみやげに姫りんごを一つ、

すねるので、
お父さんにも、みかん飴を一つ、

自分用に、ぶどう飴といちご飴を買った。


お姉ちゃんは、お祭りにきてるはずだから、買わなかった。


あたしの両腕はふくろで、いっぱい。

⏰:09/07/10 18:52 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#232 [七瀬]
 
 
右手が最後まで、
あったかかったのは、


まつりさんがくれた
カステラと、

アイツの熱のせい。



暑い熱い夏祭りだった。
 
 

⏰:09/07/10 18:54 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#233 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――


「なんか松田、今日きげんいいな」

夏祭りが終わって、


『え?そう?』

夏休みも半分切ったなぁとなんだか寂しい。
 

⏰:09/07/10 18:58 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#234 [七瀬]
 
 
「うん。なんかいいことあった?」

『んー?なんもないよー』


でも、その残り20日もない夏休みも、

この"剣道部マネージャー"として使わなければならない。


「そういえばさあ」
 

⏰:09/07/10 19:01 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#235 [七瀬]
 
 
『うん?』

でもまぁ、毎日ごろごろしてるより、いっかな。



「昨日の夏祭りさぁ、どうした?」


――どくん

心臓が大きく波打った。

⏰:09/07/10 19:04 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#236 [七瀬]
 
 
『‥え?どうしたって‥』

顔を引きつるのを
感じながらも、


「いや、行ったのかな、って思って」

笑みを貼りつけずには
いられない。


『い‥行ったよ』

やっぱ林原の前では
嘘はつけない。

⏰:09/07/10 19:08 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#237 [七瀬]
 
 
「ふーん。誰と?」


林原は汗をタオルで
拭いながら、言う。


『まりと三咲‥』


あたしが、
精一杯ついた嘘。

林原の表情が見えないのが助かった。
 

⏰:09/07/10 19:11 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#238 [七瀬]
 
 
「そ」

それだけ言った。


『‥林原は?』


「俺は行かなかったよ。
暑かったし、人の多いとこって苦手」


『昨日は熱帯夜だったもんね。ってか、人ごみが嫌いなんて林原らしい』

少し笑って言った。

⏰:09/07/10 19:15 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#239 [七瀬]
 
 
「松田」

面越しの林原の表情は
やっぱりわからなかった。



「‥‥なんか安心した」


ぽつり。

ほんとに、
ぽつりと言った。


ひとりごとのように、
ぽつり。

⏰:09/07/10 19:17 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#240 [七瀬]
 
 
『‥へ?‥‥』


「ううん、なんでもない」


『‥そう』

「じゃ」

『うん、頑張って』


竹刀を握った林原を
見送った。

⏰:09/07/10 19:20 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#241 [七瀬]
 
 
 
「……っても、まだまだ暑い日々は続きます。十分熱中症に注意して……」


『ふぁ〜あ』


華の女子高生?

一年目の夏休みは、
あっという間に過ぎていった。

なんだかんだで
忙しかったし。

⏰:09/07/12 10:18 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#242 [七瀬]
 
 
「………夏休みが終わり、新しい2学期が始まります。まだ夏休みモードの人がいますが、頭を切り替え…」


教頭の話長いんだよー、
まったく‥。

校長より長い。
いや、むしろ校長の方が
あっさりしている。


いっとくけど
まだ9月だよ?

⏰:09/07/12 10:22 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#243 [七瀬]
 
いくら
広ーい体育館だからって

こんなにすごい人口密度
――しかも男ばっか―


だったら、

すごい温度になるってことわかんないのかな!?


クーラーどころか、
扇風機すらないのに‥。
 

⏰:09/07/12 10:25 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#244 [七瀬]
 
 
「……て、勉学に励んでください。以上です」


‥やっと‥やっとやっと‥


「あ、もう一点」

全生徒の一瞬、緩んだ顔がまたたくまに、げんなりした顔になる。

もちろん、
あたしもそのなかの一人。


もぉ〜!勘弁して〜〜!! 

⏰:09/07/12 10:29 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#245 [七瀬]
 
 
「しばらく、お怪我によりお休みされてた長江先生が2学期から復活されることになりました」


ん?
長江先生?


1学期当初のマッキーの
言葉を思い出す。


"副担任の長江先生はお休みだ"
 

⏰:09/07/12 10:33 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#246 [七瀬]
 
 
‥ってことは、
あたしたちの副担?


「長江先生、こちらにどうぞ」


壇上に目を向けると、


「‥あ、みなさんお久しぶりです‥。長江です」

なんとも、
ひ弱そうなおっさん。

⏰:09/07/12 10:35 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#247 [七瀬]
 
 
‥な、なんか、
マッキーの手下的な‥。


あたしの第一印象は
これだった。

のちのち、まったく
変わってしまうのだけど。


まぁ、とりあえず
マッキーとは正反対な人だった。

おどおどしてて、頼りなさそうな。

⏰:09/07/12 10:38 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#248 [七瀬]
 
 
「これで、やっと体育が始まるね」

前から、声が。


『えっ?なんでなんで?』

「長江が復帰したからに、決まってんじゃん」


『え?え?』

ワケわかんないあたしに
歩志はため息をもらす。

⏰:09/07/12 10:47 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#249 [我輩は匿名である]
 
 
「体育の先生が戻ってきたのに、体育が始まらないわけないでしょ」

『あ‥そっか』


あたしの学校には、
体育の教師は3人いる。


ダントツ多い男に2人、
涙が出るほど少ない女子には1人、

先生の授業を受ける。
 

⏰:09/07/12 11:14 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#250 [我輩は匿名である]
 
 
そのなかの一人が長江先生で

さっき、教頭が言ったとおり、休んでたから体育ができなかった。


だから、1学期は、2学期にする保健を代わりにしていた。


要するに1学期は保健。
2学期は体育。
 

⏰:09/07/12 11:17 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#251 [我輩は匿名である]
 
 
この説明をマッキーから
聞いたときの

『えええー!』って
叫んだ自分のすがたを思い出した。



「ど?思い出した?」

『うんっ!!』


長江先生があまりにも
貧弱そうで、体育の先生のように見えなかった。

⏰:09/07/12 11:20 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#252 [七瀬]
 
 
でも、とりあえず
体育ができるしー!

いっか。


2学期は体育ざんまい。

よろこびでいっぱい!



「口緩んでるけど」

『だって、うれしーもん』 

⏰:09/07/12 11:22 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#253 [我輩は匿名である]
 
 
「ぽんずちゃんらしーね。でもよかったんじゃない?眠気、吹っ飛んだみたいだし」


『ははは!まーね!』


うん、とにかく歩志の
嫌味も気にならないくらいうれしかった。


だって、技術の
次に得意な科目だし!
――この2つしか得意分野ないんだけど―

⏰:09/07/14 22:28 📱:N703iD 🆔:E3cO4tsA


#254 [七瀬]
――――――――
―――――
―――


「おーい、みんな。
しゃべってないで早く席着けー」


このひとことで、

一斉にみんなを座らせる
マッキーの権力は
相変わらずだと思う。
 

⏰:09/07/14 22:33 📱:N703iD 🆔:E3cO4tsA


#255 [七瀬]
 
 
「さっき教頭先生から、お知らせがあったが、今日から復帰なさる長江先生だ」

みんながドアに注目する。


――ガララ―

ドアが開く音が聞こえた。

「あ‥どうも」


さっきの
弱々しい声と共に。

⏰:09/07/14 22:38 📱:N703iD 🆔:E3cO4tsA


#256 [我輩は匿名である]
 
 
「こちらに。どうぞ」

マッキーに促され、
たどたどしい足取りで
やってきた。


「長くお休みしてしまい、すみません‥。1ー2の副担の長江です」

至ってふっつーの
あいさつをした。
 

⏰:09/07/14 22:43 📱:N703iD 🆔:E3cO4tsA


#257 [七瀬]
 
 
「担当は女子の体育‥」


えーーっ!!

『女子の体育って、ふつうは女の教師がするもんなんじゃないの?』

心では、驚きつつも
ひそひそ声で歩志に問う。


「うーん‥ふつうはそうだね。ふつうは」

あれっ?あんま興味なし?

⏰:09/07/15 06:49 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#258 [七瀬]
 
 
『もー!
 ちゃんと聞いてる?』

少し声量を大きくしたけど歩志は目に涙を溜めて答えた。


「きーてるよー」

‥ほんとかよ。


「しょーがないじゃん。
先生足りないんだから」

それだけ言って、
前を向いてしまった。

⏰:09/07/15 06:53 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#259 [七瀬]
 
やだなー。

あんなおっさんが担当なんて‥。

ちゃんとした体育できんのかなー。


それにしても
アイツは、昨日なんじに寝たんだ、いったい‥。

あんなに欠伸をしまくってる歩志を初めて見たものの

"長江担当女子体育"が
頭に焼き付いて、
あまり気にならなかった。

⏰:09/07/15 06:59 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#260 [我輩は匿名である]
―――――――――
―――――
―――


チャイムが
HRの終わりを告げ、


『歩志ー。行こー』

「うん、待って」


教室からは、
みんな出ていった。
 

⏰:09/07/15 07:02 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#261 [我輩は匿名である]
 
今日は、部活がある日。


『ちょっと
 なにやってんの‥』

珍しく
歩志がもたもたしている。


「待って」

机やら、カバンやらを
あさっている。


『なに探してんの?』

歩志に近づく。

⏰:09/07/15 07:05 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#262 [七瀬]
 
 
「宿題がないんだよー。
 数Aの」

『ふーん』

歩志が宿題を忘れるなんてことも初めてだった。


『あたしも一緒に探すよ』

そうやって、歩志に
近づいたときだった。



「あゆ!」
 

⏰:09/07/15 19:36 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#263 [七瀬]
 
落ち着いた、
だけど、少し高い声。




「‥‥はづき‥」


‥だれ??


ドアのそばに、小さい
女の子が立っている。
 
 

⏰:09/07/15 19:41 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#264 [七瀬]
 
 
あ、

「あゆ、これ‥」


あの子、たしか‥

「なんで、はづきが持ってんの」

頭の血を一気に巡らせる。


「ごめんなさい。
昨日、間違えてわたしが、あゆのノート持って帰っちゃったみたい」
 

⏰:09/07/15 19:46 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#265 [七瀬]
 
あ、あ、

『あーー!』

あたしが声を上げると、
驚いたように二人が見る。



‥やっぱり。

ふわふわしたショート。
白い肌に映える黒い瞳。


さっきの、歩志にノートを渡したときの手を頬にかざすしぐさとか‥。

⏰:09/07/15 19:49 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#266 [七瀬]
 
 
「どうしたの、ぽんずちゃん」


フラッシュバック。

『あの‥あのときの‥‥』


その子は首をかしげた。


『ほら‥夏休みに大廊下でぶつかった‥』

その子はピンときたようにもともと大きい目を、これでもかってくらい広げた。

⏰:09/07/15 19:53 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#267 [七瀬]
 
 
「ああ、あの時は‥。
どうもすいませんでした。急いでたものですから‥」

そういって、
手を頬にかざすすがたは
"女の子"そのもの。


『いえいえ!
気にしないでください!
あれは、あたしも悪かったし‥』


「なに?
二人とも知り合い?」

⏰:09/07/15 19:58 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#268 [七瀬]
 
 
「知り合いというか‥」

"はづき"と呼ばれる女の子は

ちょっと困ったように、
照れたようにあたしを見上げる。


『あ、あたし柚子ってゆーの!松田柚子!!』

「柚子さんですね。
わたしは、飯田はづきです。よろしくお願いします」
 

⏰:09/07/15 20:02 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#269 [七瀬]
 
『はづきちゃん!
よろしくね!!』

手を出すと、


「は、はい‥」

雪のような
手を差し出した。



「‥あの、二人の世界に入らないでくれる?」
 

⏰:09/07/15 20:04 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#270 [七瀬]
 
 
‥忘れてた。


『ごっごめんごめん』

「もー」

その光景にはづきちゃんはクスクスと笑った。


「おもしろいですね、柚子さん」

「でしょー。飽きないよ。からかいがいありすぎて」

⏰:09/07/15 20:07 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#271 [七瀬]
 
 
『もう!歩志のバカっ!!』


はははは、と笑いが
静かな教室に響いた。



『‥ってか、はづきちゃん。敬語じゃなくっていーよ。タメなんだし。
呼び方も"柚子"でいいし』


「‥いや‥でも‥」

口ごもるはづきちゃん。
 

⏰:09/07/15 21:19 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#272 [七瀬]
 
 
「はづきは18だよ」

そんな、はづきちゃんのようすを見て、歩志が、口を挟んだ。


『へ?18‥歳?』

「そ。俺らより2こ上」


『う、うそーー』

じぃーっと、恥ずかしそうにしている、はづきちゃんを見た。

⏰:09/07/15 21:22 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#273 [七瀬]
 
 
「はい‥そうなんです。
あゆの言うとおりです‥」


別に、はづきちゃんが
子どもっぽいってわけじゃない。

むしろ、そう言われれば、18歳に見える。


ただ、あたしくらいしか
身長がないし、


『てっきり同い年かと‥』 

⏰:09/07/15 21:26 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#274 [七瀬]
 
 
「はづきは正真正銘の18歳だよ。ちなみに俺とはづきは幼なじみ」


‥へー、そうなんだぁ。



「あ、そうそう。言っとくけど、はづきは俺らと同じ1年生だから」


『えっ?なんで??』
 

⏰:09/07/15 21:30 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#275 [七瀬]
 
 
「2年間休学してました」


「はづきは、昔から体が弱かったからね」


たしかに、白い顔は
健康そうには見えなかった。


「でも、少し体調がよくなったから、
やっぱり、休みがちになっちゃうけど、学校来ようって思って‥」
 

⏰:09/07/15 21:34 📱:N703iD 🆔:1V.eaxfY


#276 [七瀬]
 
 
『そうなんですか‥』


その健気なすがたに
思わず、感動してしまった。

『あ‥なんかすいません。馴れ馴れしく呼び捨てにしてしまって‥』


「いーえー。いいんです」

はづきさんは
大きくかぶりを振った。
 

⏰:09/07/21 00:29 📱:N703iD 🆔:cWCs/.Bs


#277 [七瀬]
 
 
「正直うれしかったです」

『え?』


「ほら‥わたし、こうやって名前呼んでくれる友だちって、あまりいなかったから‥」

はづきさんは、
少し目線を下げた。


「うれしいです。
 "はづきちゃん"」

照れくさそうに、言った。

⏰:09/07/24 21:24 📱:N703iD 🆔:.eR6q1vI


#278 [七瀬]
 
 
『は、はづきちゃん!』

はづきさんは、少し驚いたように、こちらを見た。


『こんなことで、喜んでくれるなら、いっくらでも呼んじゃいます!
‥‥‥"はづきちゃん"』


すると、また照れたように下を向いた。
 

⏰:09/07/26 23:56 📱:N703iD 🆔:T6L90Ygw


#279 [七瀬]
 
 
「‥ありがとう」

小さく言った
はづきちゃん。

歩志を見ると、少し微笑んでたように見えたのは、
気のせいだろうか‥。


「じゃあ、出しに行こっかな。ノート」

「あ、うん。
あゆ、ごめんね」

「もういいって」

⏰:09/07/27 00:01 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#280 [七瀬]
 
 
あたしは、まりの言うとおり、ほんとうに鈍かった。

鈍感だった。



林原についても、

今、目の前にいる
二人についても。


だから、はづきちゃんが
手をかざした頬を赤く染める理由を

あたしはまだ知らない。

⏰:09/07/27 00:08 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#281 [七瀬]
 
 
「じゃあ、はづき。
俺ら、部活だから」

『ばいばーい、はづきちゃん』


先生んとこに、ノートを
提出しに終えた。


「はい。あゆ、柚子さん。さようなら‥」


『あ、待って。はづきちゃん』
 

⏰:09/07/27 00:14 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#282 [七瀬]
 
 
いきなり、呼び止め
戸惑うはづきちゃんを
よそに、あたしは
こっそり耳打ちをした。


『あたしのことは、呼び捨てでいいですから』


「え、でも‥」

より困惑する、はづきちゃんに


『もし、いやでしたら、
"柚子ちゃん"で』

⏰:09/07/27 00:18 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#283 [七瀬]
 
少しくすぐったいくらい
笑い掛けた。


「また二人で‥なに話してんの」

歩志が口を挟む。


『ひーみーつっ!!』

人差し指で唇を押さえる
しぐさをして見せた。


「ちょっとー。
最近、"秘密"多いよー?」

⏰:09/07/27 00:21 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#284 [七瀬]
 
 
『いいの!歩志は!
これは女同士の"秘密"なんだから!』


ね?って、はづきちゃんに視線を送ると

クスクス笑った。


「ケチー」

まだ歩志は、なんか言ってたけど‥笑
 

⏰:09/07/27 00:24 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#285 [七瀬]
 
 
「じゃあ、今度こそ。
ほんとに、ばいばいです。あゆ‥‥」

ちょっと間ができる。
でも、いやな気分はしない。



「‥‥柚子ちゃん!」

むしろ、気持ちいい。


夏には似つかわしくない
さわやかな風が、あたしたち三人を包んだ。

⏰:09/07/27 00:29 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#286 [七瀬]
 
 
「なるほどー。そういうこと」

はづきちゃんと別れ、
廊下を歩いていると、


「やるじゃん。"柚子ちゃん"」

歩志が笑って、言った。


『‥まーね』

心なしか、照れてしまった。
 

⏰:09/07/27 13:22 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#287 [我輩は匿名である]
 
 
「でも、ありがとな」


『ん?なにが?』

「いや‥ほら。さっき言ってたけど、あいつにはそんな友だちいなかったから」



あ、

「はづき、ほんとにうれしそうだった」


やっぱ、気のせいじゃない。

⏰:09/07/27 16:18 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#288 [我輩は匿名である]
 
 
柔らかい笑顔。
やさしい瞳の色。
    メ



『よかった』


歩志が、そんな表情すると        カ オ
あたしも、頬が緩む。
 
 

⏰:09/07/27 16:21 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#289 [我輩は匿名である]
―――――――――
―――――
―――


『‥二時間目‥プール?』


「うん」

あっさり頷きやがったな、コイツ‥。



新学期がはじまって、
早くも一週間が過ぎた。
 

⏰:09/07/27 16:25 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#290 [七瀬]
 
 
『うそーー!そんなの、あたし聞いてない!!』


「昨日、マッキーが言ってたじゃん。出張でいない長江先生の代わりに」

『‥うそぉ』


「ぽんずちゃん、聞いてなかったんでしょー」

『‥‥うん‥』


完全に聞いてなかった。

⏰:09/07/27 16:29 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#291 [七瀬]
 
寝てたし、爆睡だし。


『どぉしよ‥』

「始まって、早々忘れ物ってことで。さあ、移動移動」

むぅ〜、冷たいな〜。


っあ!

『はづきちゃんに借りてこよっと!』

もしかしたら、はづきちゃんも今日プールかも。

⏰:09/07/27 16:33 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#292 [七瀬]
 
 
「え?今日、水泳あるかって?」

二階、下の5組の教室に来たのは今日で3回目。

以前の2回は、
委員会でだった。


「ありますよ」 

もしかしたら、もしかすると。

そう思って、少し遠いとこまで、来てみたけど、
その甲斐があったみたい。

⏰:09/07/27 16:39 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#293 [七瀬]
 
 
『貸してください!』

手を合わせて、
お願いしてみる。


が、

「えっとぉ‥‥」


あまり、
反応がよろしくない。


顔を上げると、また頬に手を当てている。
 

⏰:09/07/27 16:42 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#294 [七瀬]
 
 
「あのぉ‥」


『あ!まさか、はづきちゃんも忘れたの?』

それなら、
それで仲間意識。


「‥いえ。一応持ってきました」


ガクッ

一気にテンションDown。
 

⏰:09/07/27 17:37 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#295 [七瀬]
 
 
「‥ごめんなさい」

そんな、あたしを見て
はづきちゃんは申し訳なさそうに、言った。


『ううん!元はと言えば、忘れたあたしが悪いんだし、気にしないで下さい!』


「いや‥貸してもいいんですけど‥‥わたし入れるかどうかわからないんで‥」 

⏰:09/07/27 17:40 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#296 [七瀬]
 
『あ、もしかして、はづきちゃんも二時間目?体育』

「はい。そうですよ」


あちゃー、忘れてた。


この高校は前にも言ったとおり、女子が圧倒的に少ない。

だから、女子体育は違う組と共同で行う。

今日は、あたしのクラスの2組とはづきちゃんのクラス5組が共同の日だった。

⏰:09/07/27 17:44 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#297 [七瀬]
 
「‥やっぱり、貸しましょうか?」

ムンクになったあたしを見て、はづきちゃんは気を遣ってくれたよう。

でも

『いいよ、いいよ!
おとなしく怒られます!笑‥ってか、長江でしょ!?怖くなさそうだし、よゆーよゆー!』

にかーって
ブイサインをすると、

「ふふっ、わかりました」

⏰:09/07/27 21:24 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#298 [七瀬]
 
控えめに、
ブイって返してきた。



か、か‥


かーわーいー!


な‥なんて、女の子なのかしら‥‥。


女のあたしも、
クラッとしてしまった。
 

⏰:09/07/27 21:28 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#299 [七瀬]
 
 
ってか、今ぜぇったい
フェロモン出てた!


ふわーって!
やつの周りにだけ、
バラが舞ってた!!

ふわーってふわーって!


一人で興奮していると、

キーンコーン
カーンコーン

二時間目開始のベルが鳴った。

⏰:09/07/27 21:31 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#300 [七瀬]
 
 
やばー!
次、視聴覚室じゃんっ!

『ごめんっ!次、移動教室みたいだから、行くね!
ありがと、はづきちゃん!また後で!』

なんとも、あわただしい
あいさつをして、

1ー5の教室を出た。



――はぁ、はぁ‥―

全力疾走!全力疾走!
 

⏰:09/07/27 21:35 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


#301 [七瀬]
 
視聴覚室は、3階にある。

一気に長ーい階段を上って、激しく息を吐いた。



「松田」

『‥はあ、はぁっ
‥‥??‥‥林原ぁ‥?』

そこには、のんびりと階段を降りてくる林原のすがたが。


「なにやってんの?」
 

⏰:09/07/27 21:39 📱:N703iD 🆔:tagz6t3s


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