サークル ー番外編ー
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#201 [柚子]

よくある怪談。

でも当時の私を怖がらせるには十分だった。

その話を聞いた日は姉に一緒にお風呂に入ってもらったくらいだから。

⏰:09/08/10 20:22 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


#202 [柚子]

怖さというのは、実際に身を持って体験でもしない限り、時と共に薄れていくものなのだろうか。

大学生になった私は、その話のことはすっかり忘れてしまっていた。

思い出したのは、つい先日のことだった。

⏰:09/08/10 20:24 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


#203 [柚子]

姉と一緒に実家で夕飯を食べていた時だった。

その日の食卓は、20歳の誕生日を二週間後に控えた私の昔話で盛り上がっていた。

「昔は泣き虫だったのに、もう成人なんて早いわね」

⏰:09/08/10 20:32 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


#204 [柚子]

とかまぁ、そんな感じで次々と私の恥ずかしい過去が掘り返されていた。

その中にあの話が出てきたのだ。

口にしたのは姉だった。

⏰:09/08/10 20:34 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


#205 [柚子]

「綾子、昔はすっごい怖がりだったよね」

姉の言葉に、私は苦笑しながらとぼけてみせた。

「えー…そうだっけ?」

⏰:09/08/10 20:35 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


#206 [柚子]

「そうだよ。綾子、学校で怖い話聞いてくるたびに私と一緒にお風呂入ってたもん」

苦笑するしかなかった。

とぼけてはみたものの、確かに私の記憶にある出来事だった。

⏰:09/08/10 20:41 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


#207 [柚子]

「そういや何か20歳になるまでに忘れなきゃいけない言葉があるとか言ってなかったっけ?」

笑いながら姉が発した言葉で、眠っていた私の記憶が唐突に蘇った。

“*******”

⏰:09/08/10 20:47 📱:P906i 🆔:i4rwxxeQ


#208 [柚子]

その日からだ。私の周りで不可解なことが起こり始めたのは。

20歳までに忘れなければならない言葉。

あと二日で私は20歳になる。

⏰:09/08/11 00:07 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#209 [柚子]

「ふーん。それで不可解なことってゆうのは?」

私の話を聞いて、眼鏡の男はそう訊ねた。

5分は話していたであろう私の話は、ふーん。という一言でまとめられてしまった。

⏰:09/08/11 00:09 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#210 [柚子]

態度は悪いが、彼は一応このサークルの部長らしい。

「視えるんです。直接ではなく間接的にですけど…」

私の回答に、一瞬彼の目付きが変わった気がした。獲物を狙う動物みたいな視線。そんな感じだった。

⏰:09/08/11 00:12 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#211 [柚子]

「間接的に…とは?」

私と彼しかいない室内に、彼の言葉は静かに響いた。

「直接は視えません。でも鏡とか、何か物体を通すと視えるんです」

⏰:09/08/11 00:14 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#212 [柚子]

「物体を通すと、か…。鏡の他には?」

「電源の消えたテレビでも視えました」

「テレビか…」

⏰:09/08/11 00:16 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#213 [柚子]

「はい。テレビって消えた状態だと黒い色の画面ですよね。そこに部屋の物とかが反射して映ることあるじゃないですか」

ただ私が視たのは、物ではなく霊だったのだけど。

その時の様子を思い出し、寒気を感じた。

⏰:09/08/11 00:19 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#214 [柚子]

「なるほど…。他にはどうだ?」

「あと私が視たのは携帯ですね。同じように暗い画面の時に…」

友達のホームページを見ていた時だった。

⏰:09/08/11 00:21 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#215 [柚子]

背景を黒に設定している友達のホームページ。

そこにアクセスした時、携帯に私の顔が映った。

その私の顔の横に、それはいた。

⏰:09/08/11 00:23 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#216 [柚子]

ちょうど私の顔を覗きこむように、それは私を睨み付けていた。

驚きのあまり、怖さも忘れ振り向いたがそこには何もいなかった。

霊の気配なんて微塵もわからない私は、それ以上どうすることもできなかった。

⏰:09/08/11 00:25 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#217 [柚子]

あまりに頻繁に視るようになってきた私が、最初に相談したのは姉だった。

「そうゆう話なら、綾子の大学のサークルの人に相談してみたら?」

姉は私にそう言った。

⏰:09/08/11 00:27 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#218 [柚子]

「綾子の大学の学祭に行った時に、そのサークル、コックリさんやってたわよ」

姉の話によると、無料で心霊現象を解決してくれるらしい。

⏰:09/08/11 00:29 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#219 [柚子]

半信半疑だったが、他に頼る宛てもなかった私は

「一応相談してみる」

と、答えた。

⏰:09/08/11 00:30 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#220 [柚子]

「大人になったと思ってたけど、綾子もまだまだ子供ね」

と、姉は笑っていた。

おそらく、私の話など半分くらいしか信じていなかったのだろう。

⏰:09/08/11 00:31 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#221 [柚子]

でも、今私の目の前にいる彼は違うようだった。

真剣な顔で、私の話をぶつぶつと反芻している。

しばらく彼の顔を眺めていると、彼と目が合った。

⏰:09/08/11 00:33 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#222 [柚子]

「急に霊が視えるようになった原因に何か心当たりはあるか?」

彼に聞かれた私の脳裏に浮かんだのは、あの言葉だった。

「部長さんは今何歳ですか?」

⏰:09/08/11 00:35 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#223 [柚子]

質問を質問で返され、彼は少し面食らったような表情を浮かべた。

「21歳だが…」

それが何だという顔で私を見つめていた。

⏰:09/08/11 00:37 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#224 [柚子]

「私、あと二日で20歳になるんです」

彼はまた困惑したような表情を浮かべ、私を見つめていた。

「20歳になるまでに忘れなければならない言葉って知ってますか?」

⏰:09/08/11 00:40 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#225 [柚子]

「いや…聞いたことないな」

「小学生の頃、友達からその言葉を聞いたんです。ずっと忘れてたんですけど、二週間くらい前に思い出してしまって…」

私はそこで口をつぐんだ。思い出したのを姉のせいにしたくなかったからだ。

⏰:09/08/11 00:42 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#226 [柚子]

「その言葉を思い出してからなのか?霊が視えるようになったのは?」

彼に聞かれ、私は首を縦に振った。

「その話の流れからすると視えているのは同じ霊か?」

⏰:09/08/11 00:44 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#227 [柚子]

私は再び頷いた。

「なるほど…。その話が本当なら、その霊は20歳になるまでにその言葉を忘れなかったお前を狙いにきた霊ということになるな」

部長というだけあって、彼の話は筋が通っていた。

⏰:09/08/11 00:46 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#228 [柚子]

「それで、その言葉というのは?」

「*******」

彼の質問に、私が答えた瞬間だった。

⏰:09/08/11 00:47 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#229 [柚子]

部室のドアが開き、二人ほど中に入ってきた。

一人は若い男の子、もう一人は女の子だった。

「純、桃、ちょうどいいところに来た。お前ら誕生日は何月だ?」

⏰:09/08/11 00:49 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#230 [柚子]

「に…二月ですけど…」

先に答えたのは、男の子のほうだった。続けて女の子が小さな声で

「五月です」と答えた。

⏰:09/08/11 00:51 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#231 [柚子]

その答えを聞いた彼は満面の笑みを浮かべ言った。

「じゃあ純、お前はまだ19歳だな」

彼の意図がわかった私は、彼の顔を見た。

⏰:09/08/11 00:53 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#232 [柚子]

少年みたいにキラキラした瞳で

「純、お前*******って知ってるか?」

と口にした彼を見て

(この人絶対Sだ…)

そう思った。

⏰:09/08/11 00:55 📱:P906i 🆔:NffYOibQ


#233 [柚子]

彼が私の話を説明する間に女の人が2人、部室に入ってきた。

2人ともサークルの部員らしく、これで部員は全員揃ったようだった。

短時間で5人から自己紹介をされた私は全員の名前を覚えるのに必死だった。

⏰:09/08/14 12:33 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#234 [柚子]

私の相談を担当してくれるのは、最初に話を聞いてくれた部長さんと、純くん、桃ちゃんの3人に決まった。

「歳が近いほうが気楽なんじゃない?」

という空さんの意見が反映されたようだ。

⏰:09/08/14 12:41 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#235 [柚子]

部長さんから、故意にあの言葉を聞かされた純くんは少し不貞腐れたような顔をしていた。

「私のせいで巻き添え喰っちゃってすいません」

と謝ると

⏰:09/08/14 12:45 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#236 [柚子]

「悪いのは部長だから気にしなくていいですよ。綾子ちゃんに怒ってるわけじゃないから」

そう言って、笑顔を覗かせた。

いい人そう。ってのが純くんの第一印象だった。

⏰:09/08/14 12:49 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#237 [柚子]

桃ちゃんは

「20歳になった後で、その言葉を聞いた場合はどうなるんですか?」

と、泣きそうな顔をしていた。

⏰:09/08/14 12:50 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#238 [柚子]

「無効じゃない?」

そう口にしたのは、空さんだった。

部長さんと優さんも空さんの意見に同意するように頷いていた。

⏰:09/08/14 12:52 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#239 [柚子]

「20歳になってから聞いたら忘れる猶予がないし」

空さんは2人が頷くのを見て、そう続けた。

「そうだな。空の言うように無効じゃないと変だな」

⏰:09/08/14 12:57 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#240 [柚子]

口を開いたのは、部長さんだった。

「綾子が例の言葉を思い出してから霊が視えるようになったことを考えると、忘れなければならないというある種の契約みたいなものだと思うから」

⏰:09/08/14 13:00 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#241 [柚子]

契約という単語に、僅かだが背筋が寒くなった。

「うん。そうだね。20歳以上でその言葉を知っている人全員が対象だとしたら、この話はもっと有名になってるハズだね」

⏰:09/08/14 13:03 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#242 [柚子]

部長さんと空さんの会話はすごく理論的だった。

私には少し難しかったけど聞いているうちに、この人たちなら何とかしてくれるんじゃないかって気持ちになった。

⏰:09/08/14 13:05 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#243 [柚子]

「それで何か対策はあるんですか?」

2人の会話が終わるのを待って、純くんが訊いた。

「とりあえず…」

⏰:09/08/14 13:07 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#244 [柚子]

質問に答えたのは部長さんだった。

「ネット巡ってみるか」

心霊現象の解決にインターネットに頼るなんて少し意外だった。

⏰:09/08/14 13:13 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#245 [柚子]

インターネットの近代的なイメージと霊とは、何だかしっくりこない。

そんなことを考えていると部長さんが

「あったぞ」と、私たちのほうに振り返った。

⏰:09/08/14 13:16 📱:P906i 🆔:ODTjDhYo


#246 [柚子]

部長さんが開いていたのは都市伝説を集めたサイトだった。

「都市伝説?」

純くんが不思議そうな顔でパソコンを覗き込んでいる後ろから私もサイトに目を通した。

⏰:09/10/30 04:58 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#247 [柚子]

口裂け女やテケテケなどのタイトルに混ざって、あの言葉が載っていた。

クリックするとその都市伝説にまつわる話や情報が読めるようになっているようだ。

部長さんがマウスを動かしページを開いた。

⏰:09/10/30 05:01 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#248 [柚子]

そこに書かれていたのは、私の知っている話とほとんど同じだった。

“*******”

この言葉を20歳までに忘れないと霊が迎えに来るという内容だった。

⏰:09/10/30 05:04 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#249 [柚子]

「迎えに来るって何がですか?」

純くんの質問に部長さんは

「ここにソースになる話が載ってるぞ」

と、新しいページを開いた。

⏰:09/10/30 05:06 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#250 [柚子]

私は何とも言えない緊張感を覚えながらその話を読んだ。

それはある少女の話だった。

彼女には好きな人がいた。同じ大学に通うAくんだ。

⏰:09/10/30 05:09 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#251 [柚子]

Aくんはみんなから好かれている人気者だった。逆に彼女は友達のいない暗い子だった。

彼女はAくんとは違った意味でまわりの注目を浴びていた。

注目を浴びる原因は彼女の顔にあった。

⏰:09/10/30 05:13 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#252 [柚子]

彼女はかなりの出っ歯だった。そのせいで幼い頃から苛められてきた彼女はまわりの人間と距離をとるようになった。

出っ歯を気にして人と話すことができなくなった。

そんな陰気な雰囲気が余計に彼女を悪目立ちさせた。

⏰:09/10/30 05:15 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#253 [柚子]

「あの出っ歯の暗い子」

そんな風にまわりは彼女を笑った。それは大学に入学しても変わらなかった。

だがAくんは違った。自分から彼女に話しかけていた。

⏰:09/10/30 05:18 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#254 [柚子]

Aくんのような接し方をされたのは初めてだった。

しかもAくんは男前だし、人気者だ。彼女はAくんを好きになった。

だがAくんは彼女を利用していただけだった。

⏰:09/10/30 05:20 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#255 [柚子]

真面目に講義に出ている彼女に代弁を頼んだりノートをコピーさせてもらったり…と、楽して単位を取る為に彼女に近付いたのだ。

そのことは彼女以外みんな知っていた。

彼女だけ知らずにAくんへの想いを募らせていった。

⏰:09/10/30 05:22 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#256 [柚子]

Aくんの友達は

「お前悪い男だなー」

と笑い話にしていたが、たとえ利用されているだけでもAくんから話しかけられているということを妬む女子もいた。

⏰:09/10/30 05:25 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#257 [柚子]

その日は彼女の20歳の誕生日の前日だった。

彼女のことを妬む女子は、彼女にこう訊いた。

「Aくんに告白しないの?」

告白すればフラれるとわかっていてそう訊いた。

⏰:09/10/30 05:28 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#258 [柚子]

妬む女子を仮にB子としよう。

B子は彼女の味方のふりをしてAくんに告白するように彼女を説得しその気にさせた。

一時間ほど説得を続けB子はついに

⏰:09/10/30 05:31 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#259 [柚子]

「告白する!」

と、彼女に言わせることに成功した。

Aくんのもとへ向かう前に彼女は明日20歳の誕生日なのだとB子に言ったらしい。

⏰:09/10/30 05:33 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#260 [柚子]

「20歳までに恋人を作るのが夢だったの」

と言い残して彼女はAくんに告白しに行った。

B子も酷いがAくんはもっと酷かった。

⏰:09/10/30 05:34 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#261 [柚子]

「お前みたいな出っ歯と付き合えるわけないだろ」

彼女に告白されたAくんはそう言った。さらに

「お前鏡見たことあるのかよ?」

と、自分の持っていた鏡を彼女に渡したのだ。

⏰:09/10/30 05:36 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#262 [柚子]

でも彼女は純粋だった。

「じゃあこの出っ歯が治ったら私と付き合ってくれる?」

彼女は訊いた。

「あーいいぜ。治るんならな。ま、そんだけ出てりゃ矯正したって無理だと思うぜ」

⏰:09/10/30 05:39 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#263 [柚子]

そこまで言われても彼女のAくんへの想いはかわらなかった。

彼女はすぐにB子のところへ報告に行った。

「出っ歯さえ治れば付き合ってくれる」

⏰:09/10/30 05:42 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#264 [柚子]

その言葉がB子の怒りを駆り立てた。

「あんたの出っ歯、屋上から飛び降りるくらいの衝撃与えないと治るわけないじゃん!」

彼女は純粋だった。

⏰:09/10/30 05:44 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#265 [柚子]

「じゃあ私ちょっと試してくる!」

そう言って彼女は屋上へ向かいそのまま飛び降りた。

Aくんの鏡で自分の顔を見ながら飛び降りる姿を何人もの生徒が目撃していた。

⏰:09/10/30 05:47 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#266 [柚子]

「何だかかわいそうですね、この子…」

話を読み終えた純くんがそう呟いた。

他の部員さんもやりきれないような表情を浮かべていた。

⏰:09/10/30 05:50 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#267 [柚子]

唯一、部長さんだけは

「馬鹿馬鹿しい」

と、呆れていた。

話の信憑性はわからないけどこの話に出てくる彼女が迎えに来るというのが都市伝説のようだ。

⏰:09/10/30 05:52 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#268 [柚子]

その日はそれで解散ということになった。

翌日同じ時間に部室に集まる約束をし、家に帰った。

その夜は二回ほど“彼女”を視た。洗面所の鏡とテレビの画面に彼女はいた。

⏰:09/10/30 05:59 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#269 [柚子]

心なしか彼女の口元が出ていたように思えたのは、気のせいだろうか。

彼女を視たという話は次の日部室に行ってすぐに話した。

急がないと私の誕生日が来てしまう。

⏰:09/10/30 06:01 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#270 [柚子]

私の話を聞いた部長さんは純くんを呼んだ。

「お前、昨日何か視たか?」

部長さんの質問に純くんは首を横に振った。

⏰:09/10/30 06:03 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#271 [柚子]

「やっぱりそうか…」

と、呟いてから部長さんは私の顔をまじまじと見ながら

「残念だが俺たちに出来ることは何もない」

と言った。

⏰:09/10/30 06:06 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#272 [柚子]

「えっ?」

唖然とする私に、部長さんは説明した。

「迎えに来る女なんてものは初めから存在しない。すべて作り話だ」と。

⏰:09/10/30 06:08 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#273 [柚子]

「じゃあ私が視たのは一体何だったんですか?」

「霊ではないな。まだ…」

「まだ?」

私の隣で話を聞いていた純くんもきょとんとした表情をしていた。

⏰:09/10/30 06:11 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#274 [柚子]

「簡単に言えば綾子が怖いと思ったりあの話を信じる気持ちが呼んだもの…といったところだ」

「そんなはず…」

「だったら昨日視た時に、出っ歯に視えたのはどう説明する?あの話を読んで想像が膨らんだからじゃないのか?」

⏰:09/10/30 06:14 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#275 [柚子]

反論できずにいる私に部長さんは追い討ちをかけるように続けた。

「前は睨んでいる表情が印象的だと言っていたのに、今は口元に注目している。それに間接的にしか視えないのも実際には存在しないからと考えれば納得がいくしな」

⏰:09/10/30 06:17 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#276 [柚子]

「部長そんな言い方しなくても…」

純くんが間に入ってくれなかったら泣いてしまってたかもしれない。

相談しに来て責められるとは予想もしていなかった。

⏰:09/10/30 11:42 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#277 [柚子]

「純、お前だって証人だ。お前が何も視えなかったのは信じてないからだ」

嘘つきってレッレルを貼られた気分だった。

「いいか、よく聞け」

半泣きの私に、部長さんは言った。

⏰:09/10/30 11:45 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#278 [柚子]

「こうゆう都市伝説みたいなものは信じすぎたり怖がっちゃダメなんだ。今はまだ実体がなくてもお前の気持ち次第で本当になることだってあるんだ」

部長はさらに伝説を現実にするのは私みたいな人間だと続けた。

⏰:09/10/30 11:49 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#279 [柚子]

とことん上から目線なその言葉に、私は無言のまま部室を飛び出した。

その夜、夕食を終えた私は姉の部屋でこれでもかってくらい部長さんの愚痴をこぼした。

姉は笑いながら私の話を聞いていた。

⏰:09/10/30 11:52 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#280 [柚子]

「ほんっっとムカつく、あの男!」

と、暴言を吐く私に姉は

「まぁまぁ。でもその部長さんの言うことも一理あると思うよ」

と、部長さんの肩を持った。

⏰:09/10/30 11:54 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#281 [柚子]

「でも私、ほんとに視たんだよ!」

「はいはい。私だって可愛い妹が嘘ついてるなんて思ってないよ」

「じゃあ…」

⏰:09/10/30 12:07 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#282 [柚子]

「でも、視えたのは綾子が信じて怖がってるからってのはあると思うよ」

そう言って姉は私の頭をポンポンと優しく叩いた。

「そうゆうの信じてないって言うんだよ…」

⏰:09/10/30 12:09 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#283 [柚子]

「信じてるわよ。でも視えたにしても原因はあの言葉のせいじゃないと思うよ」

「えっ?」

「だって20歳の誕生日まで私も覚えてたから。あの言葉」

⏰:09/10/30 12:13 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#284 [柚子]

姉はもう一度私の頭をポンポンして

「気にしないのが一番よ。怖いなら今夜は一緒にいてあげるから」

と、微笑んだ。

⏰:09/10/30 12:16 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#285 [柚子]

それから姉と思い出話とか大学のこととか話した。

「綾子がもう20歳なんて信じられない」

って10回は言われたんじゃないだろうか。

⏰:09/10/30 12:18 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#286 [柚子]

気付いたら日付けが変わっていた。

「あ…」

携帯のディスプレイに表示された時刻に思わず声が漏れた。

⏰:09/10/30 12:21 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#287 [柚子]

私の声に姉も時刻を確認し笑顔を見せた。

「誕生日おめでとう。ね?私の言った通り大丈夫だったでしょ」

「うん。ありがとう」

⏰:09/10/30 12:23 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#288 [柚子]

「綾子の20歳の豊富はビビリを直すことだね」

などとからかわれながら夜中まで姉と話した。

誕生日から一週間。私はあの部室の前にいる。

⏰:09/10/30 12:39 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#289 [柚子]

結局あれ以来一度も霊もどきを視ることはなかった。部長さんの言葉は正しかった。

今日はその報告とこの間のお詫びに来た。

人数分のケーキも買った。

⏰:09/10/30 12:50 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#290 [柚子]

謝りにきたって知ったらあの俺様部長何て言うかな。

「やっぱり俺の言った通りだった」

と、得意気な顔をするかもしれない。

⏰:09/10/30 13:13 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#291 [柚子]

やっぱりちょっとムカつくけど、そんな顔を見るのもいいかもしれない。

少しだけドキドキしながら私は部室のドアをノックした―――…。

⏰:09/10/30 13:17 📱:P906i 🆔:UjKXiWL2


#292 [柚子]



ーside storyー


卒業



⏰:09/11/07 12:21 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#293 [柚子]

“卒業”という二文字を意識しはじめたのは桃ちゃんの言葉だった。

「部長さんたちがいなくなったら寂しくなりますね」

頭の片隅ではもっと前から意識していたのかもしれない。

⏰:09/11/07 12:24 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#294 [柚子]

考えると悲しくなるから、わざと頭の隅の奥の奥のほうにしまっていたのかもしれない。

「そうだね。俺と桃ちゃんだけになっちゃうね」

力なく笑うと、桃ちゃんに背中を叩かれた。

⏰:09/11/07 12:26 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#295 [柚子]

「しっかりして下さいよ。純くんは次期部長じゃないですか」

「あー…うん。そうだね」

「嫌ですよ、私。せっかく部長さんたちのやってきたこのサークルを私たちの代でなくしてしまうの」

⏰:09/11/07 12:28 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#296 [柚子]

最近の桃ちゃんは少し変わった。

はっきりとまではいかないけど自分の意見を言うようになったしよく笑うようになった。

桃ちゃんの変化はいい意味でなのだけど、何となく寂しいような気がした。

⏰:09/11/07 12:35 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#297 [柚子]

空さんや部長さんの影響もあるかもしれないが、一番影響を与えているのはあの男かもしれない。

桃ちゃんの彼氏だ。

やきもちとかじゃなくて、何だか俺だけ置いてきぼりを喰らってるような気分にならずにはいられなかった。

⏰:09/11/07 12:37 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#298 [柚子]

部長たちの卒業式まで一ヶ月を切った頃だった。

部長が左の頬を腫らして部室にやってきた。

「どうしたんですか?」

という桃ちゃんの声に俺も振り向いて部長の顔を見た。

⏰:09/11/07 12:41 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#299 [柚子]

「親父と喧嘩した」

とだけ部長は言った。

詳しく説明してくれたのは少し後で部室に来た空さんと優ちゃんだった。

⏰:09/11/07 12:42 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#300 [柚子]

どうやら就職のことでパパさんと意見がわかれたのが原因のようだった。

「しっかし、あんたんとこの親父さん意外と手が早いんだねぇ」

あっけらかんと笑い飛ばす空さんの笑い声に少しだけ部内の空気が和んだ。

⏰:09/11/07 12:45 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


#301 [柚子]

「昔っからだよ。しかも今回はグーで殴りやがった」

「亮太のことが心配なんだよ」

ふてくされている部長に、優ちゃんがそう言った。

⏰:09/11/07 12:48 📱:P906i 🆔:j/HSyc7s


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