柚子 ー短編・中編ー
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#8 [柚子]
その日は金曜日で、土日が休みの俺たちが帰宅するには少し勿体ないような時刻だった。
いつもならどちらかの家に行ってDVDを観たりしながらのんびりするのだが、その日は違っていた。
プロポーズするつもりだった。あの海で。
:09/06/28 12:21
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#9 [柚子]
ポケットに入れてある指輪の箱を指先でこっそり確認しながら、俺は海へと車を走らせた。
夜の海は思いの外静かで、プロポーズの舞台としてはピッタリな気がした。
歩道に寄せて車を停めた俺たちは、浜松を手を繋ぎながら歩いた。
:09/06/28 12:22
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#10 [柚子]
「座ろうか」
俺がそう言うと、渚は頷き立ち止まった。
(いよいよだ…)
自分でも自惚れていると思うけど正直言って断られた場合のことは考えていなかった。
:09/06/28 12:25
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#11 [柚子]
それよりもどうやって結婚の話を切り出すか、そのことで頭が一杯だった。
自分からは一度も結婚という二文字を口にしたことのない渚は、どんな顔をするだろうか。
感動屋の渚のことだから、もしかしたら泣くかもしれないな。
:09/06/28 12:26
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#12 [柚子]
その後で笑うんだ。俺の大好きなあの笑顔で。
幸福な妄想を膨らませてから俺は口を開いた。
“結婚しよう”
その言葉を、俺は渚に伝えられたのだろうか。
:09/06/28 12:27
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#13 [柚子]
突如、後頭部に衝撃が走り俺はその場に倒れ込んだ。
目を開けた時にいたのは、病院のベッドの上だった。
俺の意識が戻ったことに気付いた看護師が医者を呼ぶ声が聞こえた。
:09/06/28 12:27
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#14 [柚子]
「何があったんですか?」
俺の質問に、その医者は何も答えてはくれなかった。
五分ほどの診察の後、病室をノックしたのは渚でも俺の両親でもなく、警察の人間だった。
:09/06/28 12:29
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#15 [柚子]
「海で倒れていた」
「誰かに背後から頭を殴られたようだ」
そんな説明をされた後で、刑事は俺に聞いた。
「何か覚えていることはあるか?」と。
:09/06/28 12:30
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#16 [柚子]
俺は首を横に振った。殴られたせいか、包帯で巻かれた頭部がズキズキと傷んだ。
「渚は?一緒にいた女性は無事なんですか?」
俺の質問に、刑事は意識はあると渋い顔で答えてから言葉を続けた。
:09/06/28 12:31
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#17 [柚子]
「でも今は会わないほうがいいだろう」
「えっ?そんなに重症なんですか?」
「いや…体は元気だ。今はまだ検査中で結果は出ていないが、衣類の状態や体についている痣から暴行を受けた可能性が高いと我々は踏んでいる」
:09/06/28 12:34
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