柚子 ー短編・中編ー
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#36 [柚子]
という提案も、寝てれば治ると思うからと断られてしまった。
「そっか。それじゃ仕方ないな。ゆっくり休めよ」
ありがとうと渚は言った。それが俺の聞いた渚の最後の言葉だった。
:09/06/28 13:15
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#37 [柚子]
あの日、少しだけでも渚の顔を見に行けば良かった。
そう後悔するのは、その日から二日経った後だった。
体調が治らないのか、メールすらない渚を心配した俺は渚の部屋に行った。
:09/06/28 13:17
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#38 [柚子]
チャイムにも反応がないので、渚から貰った合鍵を使い中に入った。
玄関には、渚が出かける時にいつも履いていた靴がきれいに並べられたままになっていた。
「渚?寝てるのか?」
:09/06/28 13:20
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#39 [柚子]
声を掛けながら寝室を覗いたが渚の姿はなかった。
次にリビングも見たがやはり渚の姿はなかった。
キッチンはリビングと一緒になっているので、見てないところと言えばトイレと風呂場だけだった。
:09/06/28 13:25
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#40 [柚子]
出かけた形跡もなかった。
シャワーの音はしなかったが、念のためにと覗いた風呂場に渚はいた。
お湯が真っ赤に染まった浴槽の中に渚は浸かっていた。
:09/06/28 13:33
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#41 [柚子]
渚が何故そんな姿で最後を迎えることを選んだのかはわからない。
だが、全裸で真っ赤な浴槽に浸かる渚の姿は今までで一番綺麗に見えた。
息を飲んだ自分の喉の音で現実に戻された俺は、渚を浴槽から抱き上げた。
:09/06/28 14:23
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#42 [柚子]
渚の青白い顔を見た時から予想はしていたが、渚はすでに息を引き取っていた。
お湯の温度なのか渚の体はまだ温かく、脈を確認するまではまだ生きているという希望がどこかにあったのかもしれない。
俺はバスタオルで渚を包み寝室のベッドへ運び、寝かせた。
:09/06/28 14:25
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#43 [柚子]
そこで脈を取り渚の死を改めて確信した。不思議と涙は出なかった。
悲しみとか絶望とかそういった感情はなく、というより何の感情も込み上げてこなかった。
愛する者の死というのは、こんなにもあっさりと受け入れることができるものなのだろうか。
:09/06/28 14:26
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#44 [柚子]
俺はベッドに腰をおろすとゆっくりと渚の頬に手を伸ばした。
まだ微かに温かい渚の頬に触れた俺は、渚の死体を発見してから初めて“感情”に襲われた。
それは怒りでも憎しみでもまして悲しみでもなく、欲望だった。
:09/06/28 14:47
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#45 [柚子]
頬に触れただけにも関わらず、俺は今にも射精してしまいそうなほどの興奮に襲われていた。
渚と一つになりたい。
その欲望を抑えるだけの理性が、その時の俺にはなかった。
:09/06/28 14:49
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