あの場所まで
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#101 [ミツバ]
愛莉のあの笑みが脳裏を過ぎる。

いったい何を企んでいるのだろう。

加奈子は身震いした。

⏰:09/07/07 20:23 📱:D904i 🆔:jjdZsMgw


#102 [ミツバ]
───────────

土日を挟んで、3日後テストが全て返却された。

国語、数学、英語、日本史、化学この大きく五科目の総合で勝負だった。

「…いくわよ」

「…いつでもどうぞ」

心臓が高鳴る。

⏰:09/07/07 20:31 📱:D904i 🆔:jjdZsMgw


#103 [ミツバ]
2人はせーので中間総合成績表を互いの前に出した。

「387点!!」

加奈子は勢い良く言った。

「残念ね…加奈子」

愛莉は可愛い顔からニヤリとと不適切な笑みを浮かべた。

「…398よ」

加奈子の負けである。

⏰:09/07/07 20:34 📱:D904i 🆔:jjdZsMgw


#104 [ミツバ]
買い物に付き合わされるのか、果たして何をやらされるのか加奈子は身構えて愛莉の口から発せられる言葉を待った。

「私のお願い聞いてくれるわよね」

得意の笑顔で愛莉は続けた。

「ケント君にアドレス聞いてきて欲しいんだ」

加奈子は胸にどんっとくる衝撃とともにざわめいた。

⏰:09/07/09 16:36 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#105 [ミツバ]
「え…ケント?」

そう言うのがやっとだった。

他に言葉が見つからない。

「そうだよ」

─愛莉はケントのこと好きだったんだ…。

加奈子はそう瞬時に考えた。

⏰:09/07/09 16:39 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#106 [ミツバ]
─格好いいって言ってたもんなぁ。そっかぁ…

加奈子はぐるぐると頭の中で呟いた。

鼓動は次第に大きくなり、手に汗が滲み、体中が熱くなり、モヤモヤと言い表せぬ感情が浮かんできた。

「お願いね」

愛莉は嬉しそうに言った。

⏰:09/07/09 16:46 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#107 [ミツバ]
加奈子はわかったと応えた。

「井上ぇ〜」

加奈子の教室から声がして、2人は振り返った。

ケントが総合成績表をひらひらと持って機嫌のいい声で言った。

「お前のおかげで赤点免れたわ、まじでありがとな」

⏰:09/07/09 23:29 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#108 [ミツバ]
ケントに肩を叩かれ、ドキッと先ほどよりも強く心臓が動いた。

─あれ…まただ。ケントの顔がまともに見れない

加奈子は顔を火照らせた。

「加奈子っ」

愛莉が何かいいたげな目で加奈子を見るので、今さっき話してた内容を思い出した。

⏰:09/07/09 23:34 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#109 [ミツバ]
─そうだ。ケントは愛莉の好きな人だから協力しなくちゃ

胸が締め付けられる。

「ケント、あのさっ」

言葉が詰まる。

ケントはどうしたと顔を斜めにして加奈子を真っ直ぐ見つめた。

⏰:09/07/09 23:36 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#110 [ミツバ]
─愛莉のためだ。なんで緊張なんかしてんだ、あたし…

一番固く結んだ唇を解いて言った。

「アドレス…愛莉に教えてっ」

「へっ?いいけど」

ケントはいきなりそんな言葉が来ると思わず上擦った返事になった。

⏰:09/07/09 23:43 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#111 [ミツバ]
胸はさらに締め付けられた。

教室に広がる雑音よりも自分の胸の音の方が気になった。

─愛莉のために言ったよ

心の中で呟き愛莉に向けて笑顔を作った。

⏰:09/07/09 23:47 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#112 [ミツバ]
「俺携帯取ってくるな」

そう言って、ケントは教室へ入っていった。

それを見送った愛莉はすかさず加奈子の頬をつねった。

「ちょっと、加奈子っあんた何とも思わないわけ?本当は自分の気持ちわかってるでしょ?」

⏰:09/07/09 23:49 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#113 [ミツバ]
愛莉は加奈子に向かって珍しく強く言った。

「はへ…らって、あいりケントろころふきなんでひょ」

加奈子は反論した。

「好きだなんて、言ってないわよ。私は加奈子のバレバレの態度見てイライラしてんだからっ正直になりなさいよ」

愛莉は珍しく熱く言った。

⏰:09/07/09 23:53 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#114 [ミツバ]
─正直に?

加奈子は手をぶらりと下げ愛莉につねられた頬の痛みと胸の痛みを比べた。

─どっちも痛いけど、胸の方が痛い。そういえば、ケントのことばかり目で追ってた…

「…あたし…」

愛莉は加奈子の顔色を見て悟り、ため息をついた。

⏰:09/07/09 23:59 📱:D904i 🆔:B0acIMRw


#115 [ミツバ]
「ケント君の事好きなのは私じゃなくて加奈子よ。言われなきゃ気づかないわけ?相変わらず鈍感ね」

呆れて愛莉は加奈子から顔を背けた。

「あ、あいりぃ」

加奈子は顔を歪めた。

「あたし…ケントが好きだわ」

⏰:09/07/10 00:02 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#116 [ミツバ]
胸の苦しみも、熱く火照る顔や体もギュッとする痛みもみんなケントが好きだからと加奈子はやっと気付いた。

やれやれと言いながら愛莉は加奈子に微笑んだが2人は一瞬で固まった。
「あ…ケント…」
「あ…ケント…くん」

ドアの前で真っ赤な顔をしてケントが居場所がない事にしどろもどろしていた。

⏰:09/07/10 00:07 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#117 [ミツバ]
「あのさっ…井上、アドレス交換してくんね?俺もお前のこと好きなんだ」

照れながらもケントは真剣な面持ちで加奈子に携帯を差し出しはっきり言った。

加奈子も負けず顔を赤らめ携帯をポケットから出した。

─────完──────

⏰:09/07/10 00:11 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#118 [ミツバ]

"星に願いを"

>>64-117

⏰:09/07/10 00:40 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#119 [ミツバ]


感想&絡み
よろしくお願いします

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4452/

⏰:09/07/10 09:47 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#120 [ミツバ]


"H E R O"

⏰:09/07/10 09:50 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#121 [ミツバ]
伊波勇太22歳は照りつける日差しの中闘っていた。

子どもたちの声援が響く。

少しだけペンキの剥げた深緑色した体育館の舞台よりも広めな舞台の上に彼はいた。

⏰:09/07/10 10:02 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#122 [ミツバ]
6人が舞台の上にいた。

「こいっ悪者ども」

全身赤色の正義の味方はマントをひらりと翻し、拳を握りしめ言った。

「やってしまえっ」

如何にも悪役面の敵は武器である大袈裟な杖を振りかざした。

⏰:09/07/10 10:13 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#123 [ミツバ]
「キッーーー」

一斉に全身真っ黒の雑魚キャラは両手を上げて正義の味方に走り出した。

「がんばれー」
「負けるなぁ」

子どもたちの声はさらに大きくなった。

次々になぎ倒し、杖を持つ親だまにも勝った時会場は一斉に湧いた。

⏰:09/07/10 10:18 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#124 [ミツバ]
舞台の幕が下りた。

「お疲れさま」
「いやぁ暑いな」

「伊波、お疲れさん」

赤色のタイツの頭を外しながら近づく。

「佐伯さんっお疲れさまでした」

勇太は対照的な真っ黒の全身タイツを脱ぐのを一旦止め、頭を下げた。

⏰:09/07/10 11:37 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#125 [ミツバ]
「お前の動きが一番良かったよ」

佐伯は無精ひげを生やし、ガチガチの筋肉がチラリと見えた。

「ありがとうございます」

勇太は誰からも好かれるあの容姿に見とれた。

男臭さに惚れ惚れするほど佐伯は格好良かった。

⏰:09/07/10 11:48 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#126 [ミツバ]
佐伯は握手会のため、勇太の前を立ち去った。

幕の外はまだ子どもたちの声が騒がしい。

勇太も備え付けのシャワーを浴びて、帰る支度をした。

⏰:09/07/10 11:54 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#127 [ミツバ]
日当を受け取り、勇太はオフィスから出た。

どんっと鈍い音が膝から聞こえ、じんわりと痛みが体を走った。

下を向くと鼻水を垂らしながら泣くぐりぐり頭の男の子がいた。

⏰:09/07/10 12:17 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#128 [ミツバ]
「うっ…うっ」

勇太のズボンに糸を引きながら男の子はゆっくり離れた。

「ちょっ…おまえ…迷子か?」

一瞬顔を引きつったものの瞬時に勇太は悟った。

こんな所で一人で泣いてるなんて、親とはぐれたと相場は決まっている。

⏰:09/07/23 09:45 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#129 [ミツバ]
コクンとゆっくり頷いて、グシュグシュと手の甲を使って男の子は涙と鼻水を拭いた。

「全く男の子がだらしないぞ」

勇太は男の子の両脇に手を添え、勢い良く抱きかかえ、ニカッと笑いかけながらそのまま自分の肩へと乗せた。

「メソメソすんな。名前は?」

⏰:09/07/23 09:51 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#130 [ミツバ]
「…ゆーた」

「おっおまえも"ゆーた"か。俺と同じ名前だな。よし、迷子センター連れて行ってやるからな」

ゆーたと名乗る男の子を乗せたまま勇太は歩き出そうと一歩踏み出した瞬時、ぐいっと頭の毛を引っ張られた。

「いってぇぇぇ。何すんだ」

⏰:09/07/23 10:00 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#131 [ミツバ]
ハゲたんじゃないかと思う程勢いが良かった。

ゆーたは徐に口を開いた。

「レッドレンジャーに会いたい」

この期に及んで、そんな事言われると思ってもいなかった勇太はあんぐりと口を開けた。

⏰:09/07/23 10:04 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#132 [ミツバ]
「おいおい。ゆーたはママを探してんだろ?」

「おれは、レッドレンジャーを探してたんだ。…そしたら…うわーん」

ゆーたはしどろもどろになりながら話すと、また泣き出した。

「わかったよ、すぐそこにいるから泣くな」

勇太はなだめるように言った。

⏰:09/07/23 10:09 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#133 [ミツバ]
今時の子供はたくましいんだかわからない。

勇太はそんな事を考えながら再び、佐伯、もといレッドレンジャーがいる騒がしい舞台へと歩き始めた。

自分もいつかは佐伯のように子供から好かれる役をこなし、悪と戦いたいと思い今のバイトを始めた。

⏰:09/07/23 10:14 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#134 [ミツバ]
しかし、そんな簡単に主役を貰えるわけはない。

初めてから3ヶ月、やっと舞台の役が来たかと思えば雑魚キャラ。

夢を見るのを辞め、本格的に就職活動を始めなくてはならない。

⏰:09/07/23 10:18 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#135 [ミツバ]
「おい、ゆーた。レッドレンジャーはかっこいいか?」

何気なく勇太は聞いた。

「一番かっこいいッ」

ゆーたはこれから間近で会える正義の味方に興奮しながら鼻息荒く言った。

(うらやましいよ、佐伯さん)

⏰:09/07/23 10:22 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#136 [ミツバ]
前を駆け抜ける子供たちは目を輝かせ彼を見る。

夢も希望も疑う事のない瞳は真っ白な光を降り注ぐ。

照りつける太陽をも蹴散らす正義の味方に熱い視線を向けるのだ。

⏰:09/07/23 18:05 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#137 [ミツバ]
長蛇の列を作っていたらしい列はもう十数人しかいなかった。

佐伯はこの炎天下の中、劇が終わって疲れていながらも自ら進んで握手会に参加している。

一時間以上、あのコスチュームを着ている事になる。

⏰:09/07/23 18:09 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#138 [ミツバ]
勇太は人を上手く避けながら最後尾に付いた。

「ほら、ゆーた。もうすぐだからな」

「うんッ」

もう肉眼で捉えられる距離にまで達した事に興奮気味らしく勢い良く答えた。

「レッドレンジャーと握手したら迷子センター行くんだからな、わかったか?」

⏰:09/07/23 18:13 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#139 [ミツバ]
「おうッ」

ゆーたは目を輝かせ言った。

調子のいいヤツだなと勇太は思いながらも弟が出来たようで内心嬉しかった。

辺りでは女の子も男の子も親に手を引かれ、レッドレンジャーに会ったとはしゃいでいた。

⏰:09/07/23 18:17 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#140 [ミツバ]
列は何事もなくスムーズに流れあっという間に自分たちの番になった。

「おッお兄ちゃん、レッドレンジャーがいるよ」

さっきからいたというのに、えらく興奮しているゆーたはそう口にした。

そんなに会いたくて、母親からはぐれても一人でここを目指してたんだなと勇太は改めて思った。

⏰:09/07/23 18:23 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#141 [ミツバ]
「そういやお前、レッドレンジャーの劇見なかったのか?」

ふと疑問に思い訊ねた。

「…ママが時間間違えたんだ」

明らかにふてくされた声がしたので、おかしくなり勇太は笑った。

⏰:09/07/23 18:26 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#142 [ミツバ]
レッドレンジャーと握手出来る距離まで来て、勇太はゆっくりゆーたを肩から下ろした。

「おや?兄弟かな?仲がいいんだね」

そう言いながらレッドレンジャーは腰を曲げてゆーたに手を伸ばした。

ゆーたは差し出された手をしっかりと握り締める。

⏰:09/07/23 18:31 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#143 [ミツバ]
言うまでもなく目はキラキラと輝いていた。

勇太は笑いながら違いますよと否定した。

すると、はいっとレッドレンジャーは勇太に向き直り手を差し出した。

⏰:09/07/23 18:33 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#144 [ミツバ]
勇太はびっくりしながらも中が佐伯だという事がわかっていたから、素直に手を握った。

「頑張れよ」

表情は見えないが、佐伯のあの笑顔が勇太には見えた。

⏰:09/07/23 18:35 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#145 [ミツバ]
「ありがとうございます。レッドレンジャー」

懐かしい。

勇太は少年に戻ったような心地になった。

昔、自分もゆーたと同じ年頃の頃こうして正義の味方と握手した記憶が鮮明に脳裏に映った。

⏰:09/07/23 18:39 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#146 [ミツバ]
年を取って忘れていた。

夢見るということ。

正義の味方が自分に夢を与えてくれたように、自分も子供たちのために夢を与えるんだと、ずっと思っていた。

どんな役だって、今出来る精一杯をしなくては誰も心動かない。

⏰:09/07/23 18:43 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#147 [ミツバ]
「暗黒の魔導師とあの変な黒い敵、レッドレンジャーがやっつけてよね」

ゆーたはレッドレンジャーを見上げ両手の拳を握りしめ言った。

「おうッレッドレンジャーに任せろ」

そう言って得意の決めポーズをして見せた。

⏰:09/07/23 18:50 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#148 [ミツバ]
変なと言われた自分の役に苦笑いしたが、そう簡単にやられてたまるかと思った。

這いつくばって、正義の味方に食らいついてやる。

自分自身のために。

⏰:09/07/23 18:54 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#149 [ミツバ]
空は澄んで、青々としていた。

雲が流れ、ジージーとせわしなく鳴く蝉の声に混ざり、目を輝かせている少年の名前を呼ぶ声が遠くから聞こえた。

━━━━━END━━━━━

⏰:09/07/23 18:59 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#150 [ミツバ]


"H E R O"

>>120-149

⏰:09/07/23 19:02 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


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