あの場所まで
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#125 [ミツバ]
「お前の動きが一番良かったよ」

佐伯は無精ひげを生やし、ガチガチの筋肉がチラリと見えた。

「ありがとうございます」

勇太は誰からも好かれるあの容姿に見とれた。

男臭さに惚れ惚れするほど佐伯は格好良かった。

⏰:09/07/10 11:48 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#126 [ミツバ]
佐伯は握手会のため、勇太の前を立ち去った。

幕の外はまだ子どもたちの声が騒がしい。

勇太も備え付けのシャワーを浴びて、帰る支度をした。

⏰:09/07/10 11:54 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#127 [ミツバ]
日当を受け取り、勇太はオフィスから出た。

どんっと鈍い音が膝から聞こえ、じんわりと痛みが体を走った。

下を向くと鼻水を垂らしながら泣くぐりぐり頭の男の子がいた。

⏰:09/07/10 12:17 📱:D904i 🆔:TpxPxFlc


#128 [ミツバ]
「うっ…うっ」

勇太のズボンに糸を引きながら男の子はゆっくり離れた。

「ちょっ…おまえ…迷子か?」

一瞬顔を引きつったものの瞬時に勇太は悟った。

こんな所で一人で泣いてるなんて、親とはぐれたと相場は決まっている。

⏰:09/07/23 09:45 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#129 [ミツバ]
コクンとゆっくり頷いて、グシュグシュと手の甲を使って男の子は涙と鼻水を拭いた。

「全く男の子がだらしないぞ」

勇太は男の子の両脇に手を添え、勢い良く抱きかかえ、ニカッと笑いかけながらそのまま自分の肩へと乗せた。

「メソメソすんな。名前は?」

⏰:09/07/23 09:51 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#130 [ミツバ]
「…ゆーた」

「おっおまえも"ゆーた"か。俺と同じ名前だな。よし、迷子センター連れて行ってやるからな」

ゆーたと名乗る男の子を乗せたまま勇太は歩き出そうと一歩踏み出した瞬時、ぐいっと頭の毛を引っ張られた。

「いってぇぇぇ。何すんだ」

⏰:09/07/23 10:00 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#131 [ミツバ]
ハゲたんじゃないかと思う程勢いが良かった。

ゆーたは徐に口を開いた。

「レッドレンジャーに会いたい」

この期に及んで、そんな事言われると思ってもいなかった勇太はあんぐりと口を開けた。

⏰:09/07/23 10:04 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#132 [ミツバ]
「おいおい。ゆーたはママを探してんだろ?」

「おれは、レッドレンジャーを探してたんだ。…そしたら…うわーん」

ゆーたはしどろもどろになりながら話すと、また泣き出した。

「わかったよ、すぐそこにいるから泣くな」

勇太はなだめるように言った。

⏰:09/07/23 10:09 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#133 [ミツバ]
今時の子供はたくましいんだかわからない。

勇太はそんな事を考えながら再び、佐伯、もといレッドレンジャーがいる騒がしい舞台へと歩き始めた。

自分もいつかは佐伯のように子供から好かれる役をこなし、悪と戦いたいと思い今のバイトを始めた。

⏰:09/07/23 10:14 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


#134 [ミツバ]
しかし、そんな簡単に主役を貰えるわけはない。

初めてから3ヶ月、やっと舞台の役が来たかと思えば雑魚キャラ。

夢を見るのを辞め、本格的に就職活動を始めなくてはならない。

⏰:09/07/23 10:18 📱:D904i 🆔:Kyi.5K4c


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