あの場所まで
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#36 [ミツバ]
「紗代里、紗代里っ」
紗代里はぐいぐいと腕を引っ張られた。
「あれ、テレビでやってたやつだよ」
優介は嬉しそうにメディアに取り上げられた店を見ていた。
「寄ってもいい?」
楽しそうに言うので、紗代里はくすりと笑って頷いた。
:09/07/04 14:49 :D904i :2xlbwZBE
#37 [ミツバ]
潮風が舞う。
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店から出て、紗代里と優介は有料のエスカレーターには乗らず歩いて登る事にした。
石階段を上がり、左手に『エスカーのりば』が見えた。
:09/07/04 15:01 :D904i :2xlbwZBE
#38 [ミツバ]
歩きよりも、エスカーに乗る人の方が多かった。
その中に白い帽子を見つけた。
「あれ?」
紗代里はドキンと胸が鳴った。
:09/07/04 15:03 :D904i :2xlbwZBE
#39 [ミツバ]
「優介、私もあれに乗りたい!」
紗代里は慌てて優介に言った。
「いいけど、体ツラいのか?」
心配そうに優介が聞いてくる。
「違うよ、元気だよ。私もあれに乗りたいの」
体のだるさなんて全く感じてはいなかった。
:09/07/04 15:08 :D904i :2xlbwZBE
#40 [ミツバ]
一つしかない切符売り場に3人も並んでいた。
顔を見てみたい。
もう一度見渡すと白い帽子はもういなかった。
:09/07/04 15:11 :D904i :2xlbwZBE
#41 [ミツバ]
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『おじいちゃん危ないから早く帰ってきて』
母から紗代里あてにメールが届いた。
夕暮れ時。
紗代里が高校3年生の秋だった。
:09/07/05 10:22 :D904i :zokoJNWk
#42 [ミツバ]
まだ半袖のワイシャツを着て部活の帰りの事だった。
脈打つ心臓。
手は震えていた。
:09/07/05 10:27 :D904i :zokoJNWk
#43 [ミツバ]
家に着く前にもう一通母からメールが届いた。
『やっぱりダメだった。病院から連れて帰るね』
紗代里は焦りのあまり自分の足を絡ませホームで崩れ落ちた。
「…もう会えないの?」
握りしめた携帯電話は何も応えない。
:09/07/05 10:34 :D904i :zokoJNWk
#44 [ミツバ]
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紗代里は中学に上がり、部活が忙しくなった。
高校も中学以上に部活が忙しく、おじいちゃんとおばあちゃんの家にはもうめったに行かなかった。
もっと会いに行けばよかったのに、もっと…。
:09/07/05 10:39 :D904i :zokoJNWk
#45 [ミツバ]
もうどうしようもない事を何度も何度も考えた。
それほどおじいちゃんっ子であったのだ。
エスカーはゆっくりと紗代里を上へと運んでいく。
:09/07/05 10:45 :D904i :zokoJNWk
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