死に至る病
最新 最初 🆕
#334 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
遠くから祭りの始まりを告げる太鼓の音が聞こえてきた。

僕達は太鼓の音に誘われて、我先にと急ぎ足で庭に出た。

祭りのある方角の空が、ほんのり明るい。


僕達は下駄を鳴らしながら、祭りまでの道のりを歩いた。

⏰:09/08/22 13:34 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#335 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
祭りには大勢の人がいた。

たくさんの出店、そのどれも人が囲んでいる。


直央がにこにこしながら、りんご飴を片手に僕の腕に組みついてきた。

異様に艶のある、水分を含んだ唇に、僕はどきっとした。

⏰:09/08/22 13:35 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#336 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央は上目遣いでじーっと僕を見つめたあと、にこっと子供みたいに無邪気な笑みを浮かべた。


「人酔いしたぁ?」

なんで、と返すと、

「ぼーっとしてたから」

と直央は苦笑いした。

⏰:09/08/22 13:37 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#337 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕は悩みや動揺が面に出やすい人間(初対面の人に嘘を見破られるくらい)だから、はたからみたら上の空だったんだろう。


前を歩くりこが、もう少しで花火があがるから土手に行こう、と言った。

直央は元気よく返事をする。

⏰:09/08/22 13:37 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#338 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「ごめんね、渉ちゃん」

うつむいて、直央が謝った。

なんで謝るんだよ、と僕の言葉はあまりにもか細くて、賑やかな話し声の中に混じって消えた。

直央の小さな手のひらが、ぎゅっ、と僕の腕をつかんだ。

⏰:09/08/22 13:38 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#339 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「乱暴してごめんなさい……。唇とか噛みついたから痛かったよねっ…。本当に、ごめんなさい」

「いいよ。反省の心さえあれば許してやる。その経験を糧にして今後の人生に役立てたまえ。……なんてな」

「ぷっ」


僕達は笑いこけた。

心の奥につっかえたものを洗い流すように、ずっと笑っていた。

⏰:09/08/22 13:42 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#340 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
やがて、僕は訊きたくなった。

理由もなく、雰囲気に流されたというのがぴったりかもしれない。

気づいたら訊いていた。



「直央ってさ」

「うん?」

「好きなやつ、いる?」

⏰:09/08/22 13:46 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#341 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
その時、だった。

暗闇をかき分けるように裂いて、空高く花火が上がっていき、大きな音を立て咲いた。

拍手がわきあがる。


それを合図にして、夜の花が次々と咲き乱れはじめた。

⏰:09/08/22 13:49 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#342 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
途切れることを惜しむように、絶え間なく咲く。

極彩色の花火は、黒の背景によく馴染み、映えていた。


直央は瞳に花火を映しながら、ぼんやり言った。

⏰:09/08/22 13:50 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


#343 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「うん、いるよ」



今ならいつでも止めれた。

そうなんだと相づちをうって、話を終わらせればよかったのに、僕は続けてしまった。

⏰:09/08/22 13:51 📱:N03A 🆔:SNme/9P6


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194