死に至る病
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#57 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「ほれ」
僕は笑って、着ていた制服を脱ぎ直央に放り投げた。
直央が僕をみる。
「いいの? 渉ちゃんが風邪引いちゃうよぅ…」
「ばーか、俺はお前と違って丈夫だから風邪なんて引かねーよ。分かったらさっさと着ろって」
「口悪ぅい…」
:09/07/30 22:19
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#58 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央はブーブー言いながらも僕の制服を着た。
袖を通したはずなのに手が見えず、まるで子供が大人の服を着てるみたいだった。
それでも直央は気に入ったらしい。
頭ごとかぶりボタンを全部しめて、
「見て見てぇ渉ちゃん、首なしライダーだぞぉ!」
とかわけの分からないことして遊んでいた。
:09/07/30 22:19
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#59 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
他にも、第二ボタンをもぎ取ろうとしたりとやりたい放題だった。
…小学生かこいつは。
「もう我慢ならん。返せ」
「やだよ〜ぅ。家につくまではわたしの物ですぅ。……あ、流れ星っ! すごぉい、さっき流れ星がふたつ流れてたよぅ!」
忙しいやつだな、ほんと。
夜空を指差しながらはしゃぐ直央は、なんだか微笑ましかった。
:09/07/30 22:21
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#60 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
悪態をつきながらも、僕も自転車を止めて一緒に流れ星を探した。
「…ねぇよ、流れ星なんて」
僕は草むらに座って、言った。
「意地悪な人には見えないのかもよぅ。流れ星だって見る人を選ぶのかも」
「そんなヘンテコな流れ星があるか。…それよりなんだよ、意地悪な人ってまさか俺か?」
:09/07/30 22:22
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#61 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「し〜らない」
直央はそう言うと、僕の隣に座って、肩に頭をもたれてきた。
僕が離れようとすると、直央は僕の手を強く握ってそれを制した。
心臓が早鐘をうつ。
長いまつげが、髪の匂いが、白い肌が、手の温もりが、僕の思考を鈍らせてしまう。
理性を抑えてしまう。
:09/07/30 22:23
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#62 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「や、……」
やめろ。
その一言が、言えない。
僕は臆病者だから、拒めば二度とこうしてくれないんじゃないかと怯えてる。
それに、僕達には決まりがある。
:09/07/30 22:24
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#63 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
はっきり口にしたわけではないけど、直央は昔、僕の友情を越えた好意を拒否した。
それ以来、恋人でなく、親友のままでいようというのが暗黙の掟として僕達の胸に深く刻まれた。
失恋の傷。
それは癒えることなく、僕の胸の中で今でも血を流していた。
:09/07/30 22:25
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#64 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
――直央が僕を見つめる。
青い瞳には泣きそうな顔した僕が映っていた。
ひどくみっともない。
その気もないくせに、そんな瞳で僕を見るな。
近寄るな。
触れるな。
:09/07/30 22:25
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#65 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「渉ちゃん…」
僕の名前を呼ぶな、もう止めてくれ。
僕はもう。
二度と傷つきたくない。
…それなのに、気づいたら僕は彼女の頬へ手のひらをあてて親指で唇を撫でていた。
もう、だめだ。
:09/07/30 22:26
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#66 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「いやなんだろ。早く俺の手をどけてみろよ」
自分では出来ない臆病者は、生意気に言ってみせた。
「い…嫌じゃないよ…」
「……」
「渉ちゃんなら、嫌じゃない…」
:09/07/30 22:32
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