死に至る病
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#65 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「渉ちゃん…」
僕の名前を呼ぶな、もう止めてくれ。
僕はもう。
二度と傷つきたくない。
…それなのに、気づいたら僕は彼女の頬へ手のひらをあてて親指で唇を撫でていた。
もう、だめだ。
:09/07/30 22:26
:N03A
:jOlV9rkE
#66 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「いやなんだろ。早く俺の手をどけてみろよ」
自分では出来ない臆病者は、生意気に言ってみせた。
「い…嫌じゃないよ…」
「……」
「渉ちゃんなら、嫌じゃない…」
:09/07/30 22:32
:N03A
:jOlV9rkE
#67 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ほら、期待させる。
どうして。
そういうこというから、臆病者はつけあがるんだよ。
「どうせ、嘘なんだろ」
唇が重なる。
吐息が重なる。
もうすべてがどうでもいい。
:09/07/30 22:33
:N03A
:jOlV9rkE
#68 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
目を開けると、直央は我慢するようにかたくまぶたを閉じていた。
…馬鹿なやつ。
嫌なら早く、突き飛ばせばいいのに。
僕は直央の肩に手をやると、滑るように首に舌を這わせた。
上から聞こえる小さな吐息。
「 」
そして僕は、言ってはならない言葉を口にした。
:09/07/30 22:35
:N03A
:jOlV9rkE
#69 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
――その時だった。
「い…いやっ……!!」
思い切り、容赦なく、残酷な言葉をそえて直央は僕を突き飛ばした。
直央は泣いていた。
いや、違う。
そうじゃない。
僕が泣かせてしまったんだ。
:09/07/31 07:29
:N03A
:nWXaJZio
#70 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「直央、ごめん…」
自分が許せなかった。
直央が怯えていたのは分かっていたのに、どうして止めなかったんだろう。
直央はただ、いつもみたいにじゃれたかっただけなんだ。
夜空を一緒にみて、寒いから手を繋いでみただけ。
……それなのに僕はまた分かりきったことを繰り返して、直央の信頼を傷つけた。
:09/07/31 15:06
:N03A
:nWXaJZio
#71 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
涙が、こぼれた。
どうして泣いているのか、自分でも分からない。
「ごめんね……、本当にごめんね……渉ちゃん……」
直央は言った。
「何で直央が謝るんだよ…」
直央はずっと泣いていた。
鈴虫の鳴き声と交わって、…まるで音楽みたいだった。
:09/07/31 16:03
:N03A
:nWXaJZio
#72 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
心に突き刺さる泣き声。
この泣き声を、覚えていよう。
きっと、彼女の優しさが僕に向けられなくなるまで、また僕は裏切りを繰り返すから。
――『愛してる』。
貪欲に、なんどでも。またこの言葉を口にするのだろう。
:09/07/31 21:14
:N03A
:nWXaJZio
#73 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央の家に着いた。
家は高く太い柵に囲まれていて、門のところで顔を証明しないと入れない仕組みになっている。
見慣れられている僕はそれで許されるが、普通はそうでない。
門までお手伝いさんがやってきて、ボディーチェックをさせられる。
頭のてっぺんから爪先までくまなくきっちりとだ。
:09/08/05 09:42
:N03A
:/M/uXit.
#74 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
刃物なんかでようものなら、怖いお兄さんに袋叩きにされそう(これは僕の想像だけど)だ。
直央の父さんは結構有名なIT企業の社長で、犯罪を防ぐためにセキュリティには敏感なのだという。
直央はご令嬢なわけだから、なぜもっといい都会の高校に通わないのか不思議だったりする。
中学生の妹は東京のお嬢様学校に入学しているから、尚更だった。
…まあそこは複雑な家庭事情があるだろうし、僕がとやかく言うことではないのだけど、やはり気になる。
:09/08/05 15:02
:N03A
:/M/uXit.
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