死に至る病
最新 最初 全 
#71 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
涙が、こぼれた。
どうして泣いているのか、自分でも分からない。
「ごめんね……、本当にごめんね……渉ちゃん……」
直央は言った。
「何で直央が謝るんだよ…」
直央はずっと泣いていた。
鈴虫の鳴き声と交わって、…まるで音楽みたいだった。
:09/07/31 16:03
:N03A
:nWXaJZio
#72 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
心に突き刺さる泣き声。
この泣き声を、覚えていよう。
きっと、彼女の優しさが僕に向けられなくなるまで、また僕は裏切りを繰り返すから。
――『愛してる』。
貪欲に、なんどでも。またこの言葉を口にするのだろう。
:09/07/31 21:14
:N03A
:nWXaJZio
#73 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央の家に着いた。
家は高く太い柵に囲まれていて、門のところで顔を証明しないと入れない仕組みになっている。
見慣れられている僕はそれで許されるが、普通はそうでない。
門までお手伝いさんがやってきて、ボディーチェックをさせられる。
頭のてっぺんから爪先までくまなくきっちりとだ。
:09/08/05 09:42
:N03A
:/M/uXit.
#74 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
刃物なんかでようものなら、怖いお兄さんに袋叩きにされそう(これは僕の想像だけど)だ。
直央の父さんは結構有名なIT企業の社長で、犯罪を防ぐためにセキュリティには敏感なのだという。
直央はご令嬢なわけだから、なぜもっといい都会の高校に通わないのか不思議だったりする。
中学生の妹は東京のお嬢様学校に入学しているから、尚更だった。
…まあそこは複雑な家庭事情があるだろうし、僕がとやかく言うことではないのだけど、やはり気になる。
:09/08/05 15:02
:N03A
:/M/uXit.
#75 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ちなみに妹の名前は鈴夏ちゃんという。
東京がらこちらへ帰省しているときに、何度か会ったことがある。
おっとりした、大和撫子系のきちんとした子だ。
黒髪黒目、日本系の整った顔立ちに長身と、ルックスは直央と正反対だった。
性格もすこし内気。
あまり似てない姉妹だった。
:09/08/05 15:03
:N03A
:/M/uXit.
#76 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
>>752行目に「東京がら〜…」とありますが、訂正します。
「東京から〜…」です。
誤字すみません。
また夜に更新します(^ω^)
:09/08/05 15:12
:N03A
:/M/uXit.
#77 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「黒木さん、直央です」
直央は慣れた調子で言った。
門は重そうにゆっくりと開き、僕達を招き入れた。
僕達が門をくぐり玄関に近づくと、センサーが反応してひとりでに外灯が灯った。
直央の家はこの田舎には不釣り合いな立派な洋式豪邸で、ここいらでは有名だった。
:09/08/05 18:52
:N03A
:/M/uXit.
#78 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
見かけ倒しじゃなく、内装も家具もすごいし、たくさんのお手伝いさんがいる。
直央はあまり口に出したがらないが、お小遣いも平均を軽く上回っているらしい。
さすがご令嬢。
だから頻繁にファミレスで大食いしても、福沢諭吉を惜しみなくぽんぽんだせるわけなのだ。
…お金持ちって羨ましい。
:09/08/05 18:53
:N03A
:/M/uXit.
#79 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央は僕に借りていた制服を両手で差し出して言った。
「今日はとっても楽しかったよぅ。またファミレス行こうねぇ」
満天の笑顔がまぶしい。
僕は黙って制服を受け取り、すぐに羽織った。
重く長い沈黙。
ありがとうも言えなかった。
:09/08/05 18:54
:N03A
:/M/uXit.
#80 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
さすがに直央は困った顔をして、苦し気に小さく笑った。
「あと……、明日からも、これまでと同じように仲良しでいようね。渉ちゃんの気持ち、わたしすごく嬉しかったよぅ。これは本当、嘘なんかじゃないから…」
直央は言った。
いつもの軽い感じじゃなく、とてもしっかりしたもので驚いた。
誰にも頼らない、この意志だけは譲らない、そんな強い光をもった瞳でまっすぐ僕を見ている。
しっかりとそらさずに。
:09/08/05 18:55
:N03A
:/M/uXit.
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194