|| DEATH † LIFE ||
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#1 [遥]
 
私の名前は遥(ハルカ)。

遥彼方を、幸せな未来を、どこまでも見渡せるようにと、付けられた名前。

幸せな未来を…。それは名前の由来に限らず、誰もが生まれながらにして持っている権利。

私はその両方を持っていた。


持って…いた。


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⏰:09/08/03 14:46 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#2 [遥]
 
「遥、放課後のゴミ捨て当番代わってくれない?」

「え…」


高校に入って約2ヶ月が経ち、ようやく校舎の居心地にも慣れてきた頃、私は教室の中で数人と昼食を食べていた。

そこへ、このクラスのギャルのグループにいる1人が、私に話し掛けてきた。


「えっと…何で?」


あんまりにも上からの態度でゴミ捨てを代われというので、私は少しムッとなり、返事をする前に理由を聞くことにした。


「はぁ?んなもん決まってんじゃん、遊び行くから、ゴミ捨てなんかしてたら時間もったいないでしょ?」

「な…何それ」


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⏰:09/08/03 14:53 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#3 [遥]
 
なんとなく分かってたけど、そんな言い方ってないと思う。下手な言い訳された方が、まだマシだった。

苛つく。


「…分かった、いいよ、私が捨てとく」

「本当!?ありがとぉ〜!!」


苛つく…でも、私は面倒事になる方が嫌だ。

断ったりしたら、後でどんな事になるかって、想像するだけで胃がキリキリ痛む。

弱い私は何も言えない、何も出来ない。

だからいつも安全な場所にいる。私の周りの人達だって、きっと同じことを考えている。

⏰:09/08/03 14:56 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#4 [遥]
 
でもどんなに同じ境遇にいて、一緒に昼食をとったり、話しをしたりしても、私はその人達のことを決して"友達"とは呼ばない。

呼びたくない。


「遥さ、あのコ達に嫌われてるよね?でも気にしなくていいよ」

「困るよねぇ、でも頼まれたら断れないもん仕方いよ…遥?」


うるさい…。嫌われてるのは私だけじゃない、あんた達も同じなんだよ。


「うん、ごめん…ちょっと飲み物買ってくる」


私を慰めるそぶりをして、優越感に浸ろうとする奴らを後に、私は教室を出た。

⏰:09/08/03 14:58 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#5 [遥]
 

「ハァー…」


ため息が出た。

飲み物を買うというただの口実を実行することはなく、校舎の屋上に行った。

まるで自分の心を現したかのような、灰色の重い空を見上げる。


屋上は立入禁止になっているから、入る所を見られないか警戒しながら通路を進んだのに、廊下ですれ違う人々は、誰も私を見ていない。




「汚い世界…」


私が見る世界は汚れている。でも、あの私にゴミを押し付けてきたコから見る世界は…きっと、キラキラしてて、毎日が楽しいんだろうな。

⏰:09/08/03 15:01 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#6 [遥]
 

「死ねばいいのに…」


こんなこと口に出して言うなんて子供じみてる、バカみたい。

いくら相手を悪く言っても、その通りにならないと、こっちが余計に惨めになるだけなのに。


「……っ」


いろんな事がマイナスに思えてきて、泣きたくなる。

あと5分で昼休みが終わる。こんな気分のままで教室に戻りたくない。

⏰:09/08/03 15:35 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#7 [遥]
 

サボりなんて、したことないけど…


「…帰ろ」


午後の授業が始まり、廊下や階段に人がいないことを確認しながら、私は校舎を出た。

今にも雨が降り出しそうで、自然に早歩きになる。

何処に行くあてもなくて、私は家に向かう。

この時間なら誰もいないはずだから。

⏰:09/08/03 16:35 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#8 [遥]
 

「ただいまぁ…なんて」


やっぱり誰もいない。安心した…けど、少しだけいてほしかった。

怒られてもいいから、私に構ってほしい。

また、子供みたいなこと考えてる…。


「明日の、言い訳考えないと…面倒くさいな」


この日は何事もなく終わった。ただ学校から連絡があり、親から注意を受けただけ。

普通の家系で育ち、成績も身体能力も普通。容姿は…自分ではよく分からないけど、普通だと思う。

だから今日の早退は、親からすればけっこうな大事だったんだと思う。

⏰:09/08/03 17:13 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#9 [遥]
 
―‐‐


「行ってきます」

「遥、もうあんな事は無いようにしてね?」

「うん、ごめんね…」


念を押されながら、私は心配をかけないように笑顔で家を出る。

久しぶりに怒られて、なんだか嬉しくなった。

昨日のあの苛立ちや、暗い気分が嘘のようだ。

学校には親が、体調不良で早退してしまった。と説明しておいてくれたので、気にすることなく登校できた。

⏰:09/08/03 17:38 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#10 [遥]
 
「おはよう」

昨日、一緒にいたコ達に挨拶をした。

大丈夫?とか、来て平気なの?とか…本気で心配してくれてるみたいで、卑屈に思ってしまったことを謝りたくなった。


「うん、もう平気!ねぇ、昨日の午後の授業ノート見せてくれない?」

「いいよ…あ、あのね!面白いもの持ってるんだけど見る?」


面白いもの、と聞いて、勉強の復習よりも当然興味が湧き、今の私はテンションが上がった。

⏰:09/08/03 18:03 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#11 [遥]
 
「ほら見て!」

「……何?これ」


目の前に出された物は、カードの束。トランプのように見える。


「これね、タロットカードだよ」

「タロット?…って、占いとかするやつ??」

「そう、あたしの姉さんが趣味でやっててさ、やり方教えてもらったから皆を占っちゃおうと思って」


説明しながら、カードを手早く操る彼女に見とれながら、ぼうっとしていると…


「…遥、ごめん」

「え?な、何?」


急に謝られたので驚いた。占いの結果が悪くてそう言ったのだと、私は気づけなかったから。

⏰:09/08/03 18:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#12 [遥]
 
机の上を見るかぎり、タロットのルールが分からない私には、何がどうなっているかなんて、全然理解できない。

でも注目すべき所は1つあった。

申し訳なさそうな顔をしている彼女が、隠すように持っている1枚のカード…。


「それ、見せてよ」

「いいけど〜所詮、素人がやった占いだからね?」


私が手を出すと、諦めたようにカードを差し出した。

⏰:09/08/03 18:36 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#13 [遥]
 
私の手の中にあるカードの絵には、ローブを羽織った骸骨が、大きな鎌を抱えている。


「…死神?」




 ガシャ─ンッ



"死神"と口にした途端、私の真横の窓硝子が、勢いよく割れた。

⏰:09/08/03 18:45 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#14 [遥]
 

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⏰:09/08/03 18:50 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#15 [遥]
 


「………っ」


頬に、鈍い痛みが走った。

周りからは悲鳴が上がり、野次馬達が集まってきているようだ。


「は、はる……か?…大丈…夫…」



「………」


私の名前を呼ぶ声が、遠くの方から聞こえてくる。


…痛い。


「痛…い、なに…コレ」


床を見下ろすと、赤い液体がポタポタと滴っていた…

私の…顔……から…?

⏰:09/08/04 19:54 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#16 [遥]
 
心音が、体中に響いている
ドッドッドって。

走った後みたいな、凄く早い、苦しくて激しい音。


「……っー…」


視界が真っ暗になる。

その時…最後に目に映ったのは、それだけやけにはっきりとした、妖しくニヤついた口元だった。

⏰:09/08/04 20:56 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#17 [遥]
 
『遥、あなたは幸せになるために生まれてきたのよ…。』


いつかお母さんに言われた言葉。その時は、すごい嬉しくて…"遥"っていう自分の名前が、けっこう好きだった。

最近は名前なんて意識したことなかったけど…

あの死神のカードが、私の運命を決めた日から…私は自分の名前が、大嫌いになった。

.

⏰:09/08/05 08:35 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#18 [遥]
 
―‐


「………」


目が覚めて、しばらくは何も考えずに、ただ天井を見つめていた。

「……あ」

見たことのある景色だと思ったら、保健室のようだ。

壁に掛けてある時計を確認して、まだ2時限目くらいだと安心した。

昨日は早退で、今日もケガをして早退なんてことになったら、また親に心配させてしまう。

⏰:09/08/05 18:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#19 [遥]
 
「痛っ…鏡は…」


顔がやけに引き攣る。

それに、なぜか右目が押さえ付けられているかのように、開くことが出来ない。

ベットを降り、掛けられていた自分の制服のポケットから、折りたたみの鏡を取り出した。


「ヒッ………」

鏡を覗き込むなり、私は言葉にできないショックを受けた。

顔の右半分を、薄く血の滲んだ包帯が覆っていたから。

⏰:09/08/05 18:34 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#20 [遥]
 

「な…コレ、え?…包帯?私、ケガ…こんなこと…」


頭はパニック状態で、冗談だと思いたかった私は、その包帯の結び目に手をかけ、取り外して確認しようとした。

手が震え、上手くほどくことができない。

時計の秒針が刻む音が異様に大きく、それに焦らされている気持ちになり、嗚咽を漏らしながら、左目からは涙がボロボロこぼれ落ちる。

⏰:09/08/05 18:48 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#21 [遥]
 

「ぅ…っ……」


この包帯の下には、どんな傷があるの?本当に傷なんかあるの?ならこの痛みは何?

結んでいたのをほどくことは出来た…後は、何重にか巻かれた包帯を徐々に取っていくだけ。


「佐倉(遥の苗字)さん!?何してるの!!!!」


誰かが私の包帯を取る腕を、おもいっきり掴んだ。

⏰:09/08/06 19:20 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#22 [遥]
 

「…グスッ……先…生?」


保健の先生だった。

先生は私をなだめながら、新しい包帯を巻き直す。

傷が私に見えないように、鏡は閉じて遠くへ置いていた。


「もうすぐ迎えが来るから、病院へ行って治療と検査をしてもらいなさいね」

「……治療?…治療って、傷を縫ったりするってこと…?」

⏰:09/08/07 17:03 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#23 [遥]
 

「…そうよ」


全身がゾクッとした。

顔を縫わなければならないという恐怖に、震えるどころか、私は放心状態になった。


「だ、大丈夫よ、そんなに深い傷じゃないから、跡も…残らないかもしれないわ」


先生が言っている言葉は、今の私の耳には入っていなかった。もし聞いていたとしても、全然頼りになんてならない…。

⏰:09/08/07 17:17 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#24 [遥]
 
少しして、すぐに迎えが来た。お母さんは涙目になりながら保健の先生の説明を聞いていた。


「遥、行くよ…」

説明を聞き終えて、お母さんは私を支えるように歩きだす。

「行くって…病院?」

「ええ、早く診てもらわないと」

「縫わないと駄目なんでしょ…」

「………」


私とお母さんは、それから無言で病院へ向かった。

⏰:09/08/07 17:31 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#25 [遥]
 
―‐

病院から家へ帰ってきたのは、夕方だった。

あの事故があったのが、まだ午前中だったから、だいぶ時間が経っている。

お母さんが担任や保健の先生から聞いたことによると、硝子が割れたのは、外から野球ボールが飛んできたかららしい。

でも誰がやったのかは分からないという…。

⏰:09/08/07 17:45 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#26 [遥]
 
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⏰:09/08/07 17:47 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#27 [遥]
 
―‐

1週間、学校を休んだ。

傷は浅くて、包帯さえきちんとしていれば、生活に問題はないと言われたのだけど…

いろんなものが恐く思えて、学校へ行く気になんかなれなかった。

傷の痛みは段々と薄れてきてはいたけど、お母さんが包帯を巻き直してくれるから、私が傷自体を見ることはなく、直り具合はどうかなんて分からない。

⏰:09/08/08 19:52 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#28 [遥]
 

親は無理をするなと口では言ってくれるけど、きっと気持ちは、"早く元気に学校へ行ってほしい"だと思う。

だから今日私は決心して、1週間前のあの日の朝と同じような笑顔で、行ってきますと言って家を出た。


学校までの道のり…通学、通勤途中の人達が、みんな私の顔に注目する。

「嫌だなぁ…」

包帯をした顔の右側を隠すように押さえて、私は視線から逃げるように校舎へ入った。

⏰:09/08/08 19:53 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#29 [遥]
 

中庭や、玄関、更には廊下でも、皆がジロジロと見てくる。

久しぶりに登校したから、というのもあるかもしれないけど…やっぱりケガが気になるんだと思う。

私が客観的に見ても、他人のケガなんかには興味がわいてしまう。

注目されるのが好きな人なら、例え大怪我でも目立つことが出来て嬉しいのかもしれない。

私は、すごい不愉快な感じだけど…。

⏰:09/08/08 20:07 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#30 [遥]
 
見られすぎて、私の体は教室のドアの前まで来ると、緊張がピークに達していた。

ガラッとドアを開けると、やはり予想通り皆が私を一斉に見た。

「…あの、…おは…ょ」

片言になりながらも、一応笑顔で挨拶をしてみた。

そうでもしないと、ここから一気に空気が悪くなるような予感がしたから。

⏰:09/08/08 20:19 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#31 [遥]
 
「遥、大丈夫なの?」

「あの時すっごく流血してたけど…」

「もう!!恐いからソレ言わないでってばぁ〜!」


ザワザワし始める教室では、私をそっちのけで、勝手に事故のことを話し始める。


「てか!あれ悲惨だったよね〜?あたし佐倉の顔、潰れたと思ったもん!!アハハッ」

…あのグループだ。

⏰:09/08/08 20:33 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#32 [遥]
 
「それあたしも思った!絶対に顔面無くなったって!!」



何だろ…この気持ち。

"無神経な奴ら"ってだけじゃなくて、他のもっと汚い感情。



「うるさい」


いつものように、黙って聞き流していればよかったのに…私はその一言を言ってしまった。

⏰:09/08/08 20:44 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#33 [遥]
 
「はぁ?なにコイツ、今あたしらに"うぜぇ"っつった??」

"うるさい"って言ったんだけど…それよりどうしよう、さっきとはまた別の意味で注目されてる。


「死神女のくせに、調子のってんじゃねぇよ!!」

「死神…女?」


何それ?と思ったのは一瞬で、事故のあった直前に、私は死神のカードを見たのを思い出した。

⏰:09/08/11 15:43 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#34 [遥]
 
だからって、"死神女"なんて安易な呼び名は、あまりにも子供っぽすぎるのではないか…。


「"死神に殺される女"で、死神女だよね〜」


…死神に殺される?私が?


「もう…何でもいいけど、面白いなら呼べば」

また反感を買うのを分かっていて、私はそんな言い方をしてしまった。

⏰:09/08/20 16:25 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#35 [遥]
 
「あっそう、じゃあ殺されても文句ないのね?」


本当うるさい。殺されてもって、あんたが私を殺すつもり?

出来もしないバカな脅しなんかに、誰でも恐がると思わないでよね。


「そうだね…死神になら殺されてみたいかも」


.

⏰:09/08/20 16:27 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#36 [遥]
 

―‐

クラスで1番目立つグループに、生意気だと目をつけられた人は、その他のグループからも嫌われる。

普段から一緒にいたコ達も、その時はどちらに付けば有利かを考えて、結局は都合のいいように裏切る。

いじめの形式…?


この日から、私は教室で1人になった…。

⏰:09/08/20 16:28 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#37 [遥]
 

―‐

2日目、3日目、…1週間。

この週はずっと無視をされ続けた。

先生に言われた用事を、他の誰かに伝えなくてはいけないことがあっても、誰1人、私の声を聞こうとしない…私を見ようともしない。

殺されるって、もう殺されたってこと?

私は死んだから、死人の声なんか聞こえないの?姿が見えないの?

⏰:09/08/20 16:30 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#38 [遥]
 
まだ何かされた方がマシだと思ってしまった。

だから私は、何の躊躇いもなく、担任にこのことを告げた。

先生は当然怒り、クラスでの話し合いを提案してきた。

いつもの私なら、こんなことは悪化の原因になるから避けるはずだけど、今回はそれに賛成した。

⏰:09/08/20 16:31 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#39 [遥]
 

悪化すればいい。

死人扱いより、物質的に何かされた方がまだ楽な気がした。

最近は自分の声を、数えられるくらいにしか出してない。話し相手がいないから。

私が泣き叫ぶくらいの攻撃をしてくれれば、きっとこんなグチャグチャな気持ちも…。


.

⏰:09/08/20 16:32 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#40 [遥]
 
その日の帰りのHRは急遽、"いじめについて"という議題が出された。

面倒くさそうな顔をしている人がほとんどで、皆私のことをちらちら見てくる。

そうだよ、私が担任に言ったの…これでもまだ死人扱いするの?出来るの?


……私、何考えてるんだろ。

こんな感情は初めてかもしれない。

私はただ普通に、普通の生活がしたいだけだったのに。

⏰:09/08/20 16:33 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#41 [遥]
 
面倒事なんか大嫌い。

普通のリズムが崩れてしまう。

こんな世界で生きるには、私は普通でいなくては生きていけない。

でも生きることに意味はあるの?

何で私は生きてるの?


こんな小さな教室(ハコ)の中に、私は何を求めているの?

⏰:09/08/20 16:34 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#42 [遥]
 

「ね〜先生、そのイジメってのさ、佐倉が関係あることでしょ?」

「うちら別にいじめてないし、ねぇ皆?」


やっと反論し始めた人達は、まるで多数決を取るようにクラス中を頷かせる。

担任は困った顔で、私を見る。

そして最後には、皆で仲良く卒業しましょう、みたいな教師としての言葉を吐いて、教室から逃げるように出ていった。

⏰:09/08/20 16:36 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#43 [遥]
 

残された私は、初めていじめらしいいじめを受けた。

机を蹴り倒され、中にあった教科書類をカッターで切り刻まれた。

カバンも靴も、ごみ箱みたいになった。

椅子に座ったまま固まって、それをじっと見ている私。

一通りやり終えると、皆は飽きたように下校していった。

黒板には大きく"死神女"と書かれている。

⏰:09/08/20 16:37 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#44 [遥]
 

「フ…フフッ……アッハハハハッ!!」

涙なんかよりも、笑いが止まらない。

汚い下品な笑い方。

笑いで思い出した。あの日、私がケガをした時…最後に見たあの笑った口元は、きっとあのグループの誰かだったんだ。

ふーん、ならボールを投げたのもあのグループの誰か…それとも、逆らえない弱い奴ら?

⏰:09/08/21 10:00 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#45 [遥]
 
そうか、始めから全員が裏切り者なんだよね。



…あれ?


私はこんなことを考える人間だったっけ?


「……………………」


もう、いい

考えるのとか面倒くさい。

いじめられるのも面倒くさそう。

⏰:09/08/21 10:02 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#46 [遥]
 
明日からのこととか

家に帰ってする事とか

この教室の片付けをどうするのかとか

椅子から立ち上がるとか

瞬きとか呼吸とかも

全部


面倒くさい。

⏰:09/08/21 10:04 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#47 [遥]
 

夕日が室内を赤く染める。

死神女の文字が光で霞む。

私はその眩しい夕日を見ようと、閉じられている窓の方を見た。

見た…

……だけだったはずなのに、私の手は、今の瞬間まで自分が座っていた椅子の足を握り


窓に振りかざした―‐

.

⏰:09/08/21 10:05 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#48 [遥]
 

 ―‐



窓硝子が砕けた。

久しぶりに聞いた硝子の割れる音は、顔の右半分に心地良く響いた。


割れて鋭く尖った硝子は、サッシの部分にまだ残ったまま。

私はそこに手を置き、吹き抜けの窓の外に身を乗り出した。

⏰:09/08/21 10:07 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#49 [遥]
 
ここは4階で、この真下は白いコンクリート。

今割った硝子の破片が、そこでキラキラと狂喜じみて輝いている。

ふと気づくと、窓のすぐ下の壁に、赤い液体が伝い落ちていた。

サッシから手を離そうとしたら、なかなか離れなくて、見ると細長い無数の破片が、手の平を縫い付けるように貫通しているみたいだった。

⏰:09/08/21 10:08 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#50 [遥]
 

痛みなんかはほとんど感じない。客観視してるのかな?他人の手を見ている気分。


あ、思い付いた。


この顔の包帯の中身を見てみよう。

今なら大丈夫。だってこれは私であっても、他人の顔だから。

包帯を取るために、サッシから伸びる破片達から、手をズズッーっと引き抜いた。

⏰:09/08/21 10:11 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#51 [遥]
 
今度は震えもなく、結び目も簡単にほどけ、難無く包帯を解いた。

手の中から溢れ出る血が、掴んだままの包帯に染み込んで、染み込みきれなくなった血は、床に血溜まりをつくる。


割れた硝子に映った、他人のような自分の顔を覗き込んでみた。

⏰:09/08/21 10:14 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#52 [遥]
 


これは…



私じゃ…ない…私じゃない…私じゃない!私じゃない!!私じゃない!!!!私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない…………。

⏰:09/08/21 10:16 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#53 [遥]
 


私じゃない私の顔は、醜くて悲惨。

…この血と硝子の組み合わせは凄く綺麗なのに。

汚いものと綺麗もの…何でこんなに違うんだろ?

あの破片の中に飛び込めば、私じゃないこの醜い私も、綺麗に見えるかな?

キラキラした世界は、私にも見ることができるのかな?

⏰:09/08/21 10:21 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#54 [遥]
 


想像するの。

死神に殺される…私は幻想的な死に方を思い浮かべてる。




「綺麗かもしれない」



_

⏰:09/08/21 10:27 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#55 [遥]
 











 ドシャッ



.

⏰:09/08/21 10:29 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#56 [遥]
 
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4502/

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⏰:09/08/21 10:40 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#57 [遥]
 
真っ白な地面に、輝く硝子の破片を散りばめて、そこに壊れた人形みたいな、血に塗れた私が寝そべる。

破片と破片の間に、血が惘脈のように繋がりながら、どこまでも赤が広がる…。


これは私のただの想像。


現実は…そんなに綺麗じゃなかったみたいだけど。


.

⏰:09/08/21 19:56 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#58 [遥]
 


「…聞いた?うちの学校で去年"飛び降り自殺"した人がいるんだって」

「あ〜知ってる、先輩に教えてもらった!"死神女"ってやつでしょ?恐いよね」

「恐いってかキモかったって!!死体見た人が言ってたらしいんだけど…体のいろんな部分に硝子が刺さってて、関節が変な方向に曲がってたり、頭が潰れてたり、内臓が……って」

⏰:09/08/21 20:06 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#59 [遥]
 
「オェッ…やめてよ、想像しちゃったじゃん」

「アハハッごめん、それでね、自殺の原因はイジメだったみたいなんだけど、クラスの全員がイジメなんか無いって言い張ったから、学校もイジメの事実を隠したんだって」

「何そのやばい話し…こんなの、うちらみたいな無関係な人にまで伝わってるんだったら、警察も知ってんじゃん?」

⏰:09/08/21 20:10 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#60 [遥]
 
「ん〜だよね、でもきっとアレだ、"面倒くさかった"んじゃないの?」

「うっわぁ"面倒くさい"で片付けられたら、あたし悲劇の自殺できねぇ〜アハッ」

「何?悲劇の自殺って?」

「いろんな人に、可哀相とか同情されてみたいの!!一生心に残っちゃうくらい悲しい死に方して…」


.

⏰:09/08/21 20:12 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#61 [遥]
 

「1年前、当時まだ16歳だった女子高生が、何等かの原因を苦に自殺した…校内取り調べの際、"死神"という言葉を何人かが発言したことにより、妙な都市伝説のような噂が学校の近辺で流れた。"死神女.死神少女.死神の獲物"etc…か?クククッ」

少女の不幸を、面白気に淡々と語る男。

最後の部分が疑問形なのは、男の正面のソファーに座っている…少女に対して。

⏰:09/08/30 17:14 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#62 [遥]
 
「本当、失礼な話し…」


少女は怪訝な顔をしながら、目の前に、自分と同じように座る男を見る。

漆黒の髪に漆黒の瞳、服装まで黒…黒がよく似合う、スッキリとした容姿。

男なのに、女性に見間違いそうな程、綺麗な顔をした…


 死 神

.

⏰:09/08/30 17:16 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#63 [遥]
 

 ―‐


…身体が…動かない…。

わ…たし…

…死ん…だ?


ああ、だから…
…こんな…
真っ暗…なんだ…。


でも不思議……


真っ暗なのに…

目が…見えるって…。

⏰:09/08/30 17:19 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#64 [遥]
 
目が…見…………ん?

目?誰の?


『ハルカ、おはよう』


おはよう…?

あれ?今度は口が見える??

…あの口元…見たことある気がする…

…って!?

⏰:09/08/30 17:20 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#65 [遥]
 
「やっと起きた?」


目と、口が、暗闇の中に位置を定めずに浮いている。

そしてソレは私の名前を呼び、私に挨拶をしてきた…

これが例え死後の世界だとしても、私には何が何だか全く理解出来ない状況。

⏰:09/08/30 17:22 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#66 [遥]
 
「よく1年間も眠れるね、俺なんか眠り方を忘れたよ」

……何を言っているの、この口…てか"人"の?

「人じゃない、俺は人間の世界で言う、"死神"ってやつ」


死神?

…そっか、これ夢なんだ。自殺したのはこの夢の中で、私まだ死んでないんだ。

⏰:09/08/30 17:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#67 [遥]
 
じゃあ起きたらまた、いつものように学校に行って、いつものように皆とくだらない話しをして、いつものように…



「死んだよ」


………。


「クスッ…何だハルカ、今更そんな反応して…未練でもあったの?」

⏰:09/08/30 17:25 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#68 [遥]
 
未練…?そんなもの、あるわけない。

「なら何?死んだって言われた時の、あの絶望感溢れる顔は?」

目が私を見下すように見る。口が私を嘲笑うように攻め立てる。

……何なの?

何で私は死んでまで、こんな気持ちにならなくちゃいけないの?

⏰:09/08/30 17:27 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#69 [遥]
 

「あれ?ハルカまだ声出せないの?いい加減、俺が疲れるんだけど…ほら、喋ってみなよ」

喋るって…そういえばさっきからこの目と口、私が声に出してないのに応えてる。

でも、声の出し方が分からない…。

「無理?…いいよ、出さしてあげる…」

⏰:09/08/30 17:30 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#70 [遥]
 
口が、ニヤっと笑った。

次の瞬間、目と口は闇に溶けるように消えた。

そして代わりに、細く白い腕が現れ、私の首をゆっくり掴んだ。

闇の中で私は身動きをとることも出来ず、何をされているのかも分からない状態のまま……

⏰:09/08/30 17:40 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#71 [遥]
 

「!?…あ゙…っ、ゥ゙……ァ…」

喉に激しい痛みが生じた。

喉の、中を…掻き回されているような、苦くて、熱い…。

それのせいか、僅かでも声が出た。

「ア……ゃ゙…め…ッグ………もっ…イィ…」

この白い腕を引きはがしたいのに、自分の手の感覚すらわからなくて…私はただ苦痛みに耐える。

⏰:09/08/30 17:51 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#72 [遥]
 

「あ、声出たね」

さっきの口の声がして、白い腕が私の首から離れ、それもまた闇に消えた。

「ハァッハァッ…あ…なた…"何"?」

今度は現れない身体のパーツ達に、分かっている答えをもう一度聞く。

「じゃあさ、ハルカは"何"?」

⏰:09/08/30 18:01 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#73 [遥]
 
私は…何?


「私は……ゅ、幽霊…カナ?」

自信なさ気に、でも1番自分では納得できる答えを言うと…


「フッ…」

「なっ、何その反応?」

自称死神は、失礼にも私の答えを鼻で笑った…。

⏰:09/09/03 13:19 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#74 [遥]
 
「ふーん、幽霊ね…面白い、クククッ」

死神の笑いのツボがよく分からない。Ghostって言っても笑うのかな?

「どうでもいいけど…姿くらい現してよ、もしくは場所を移動させてほしいな…」

しつこく笑われて不愉快な気分の私は、話しを変えようと、とりあえずこの身動きできない状態を何とかしてほしいと頼んだ。

⏰:09/09/03 13:20 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#75 [遥]
 
「ああ、そうだね、ハルカも起きたことだし家に帰ろうか」


「………」


家に、帰る?


死神って名乗ったり、身体のパーツ外れたり、私の首絞めたり(?)、幽霊がツボだったり…家って何?

何この不可思議な展開?夢としか思えないんだけど。

⏰:09/09/03 13:22 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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