月蝕
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#32 [まぐろ]
「あの優しい方が、そんなことをするはずがありませんよ」
馬鹿にしたように笑う澪に苛立ちを感じながらも心中で同意する。
月夜は優しい。
誰よりも優しくて、強い。
俺に持てないものを簡単に持つことができる。
…とても重いものを。
:09/09/26 08:55 :SH705i :☆☆☆
#33 [まぐろ]
「…その優しい月夜に、嫌味ばかり言う澪は悪魔か?」
俺の言葉に、心外だとばかりにため息を吐く澪。
…間違ったことは言っていないのだが。
「太陽…僕をそんな風に思っていたのですか!」
正直に、頷いてやった。
:09/09/26 08:59 :SH705i :☆☆☆
#34 [まぐろ]
「…まあ、仕方ないですね。僕が彼女に言ったことは、あまりに酷なことばかりです、でも」
澪は目を伏せ、額に手を当てて苦笑する。
俺は黙って言葉の続きを待った。
「…いなくなって、しまえばいいんですよ」
その言葉に、他意はない。
悪意も、なかった。
:09/09/26 09:05 :SH705i :☆☆☆
#35 [まぐろ]
重い空気が漂った。
澪の真意は分かっている。
けれどきっと、澪の思う通りに事は進まない。
そんなに、甘くない。
「…“お月様”」
ぽつりと呟く。
彼女は、明るい日輪の方が
似合っているのに。
:09/09/26 09:09 :SH705i :☆☆☆
#36 [まぐろ]
「…じゃあさ!澪」
少し声を張り上げて、笑顔を作る。
伏せていた澪の目が、俺の目を見た。
「?」
眉を寄せ、首を傾げる澪に
提案する。
決して、叶わないことを。
:09/09/26 09:15 :SH705i :☆☆☆
#37 [まぐろ]
「…月夜と、澪と俺…三人で
ここから逃げようか?」
澪も、分かっている。
これは冗談だ。
すると澪は哀しく笑って、俺に背を向けた。
「貴方も、酷なことをしますね…。悪魔みたいですよ」
俺は、笑うしかなかった。
:09/09/26 09:20 :SH705i :☆☆☆
#38 [まぐろ]
.
俺の姉は、
月なんかじゃない。
脆くて弱い、
ただの人間だった。
.
:09/09/26 09:22 :SH705i :☆☆☆
#39 [まぐろ]
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私はまだ、
世界を知らない。
.
:09/09/30 07:54 :SH705i :☆☆☆
#40 [まぐろ]
「ねっ!見てあざみー!!」
がやがやと賑わうデパートの一角で、あたしは手招きをしながら友達の名を呼んだ。
もう片方の手には、しっかりと売り物のピアスを握って。
「何ー?
桜(サクラ)、まだ買う気?」
:09/09/30 07:59 :SH705i :☆☆☆
#41 [まぐろ]
あざみは面倒そうにあたしを一瞥して、その手中のものに興味を注いだ。
「…ピアス?
あんたにしちゃ、珍しく地味なデザインだけど」
「そうそう!なんか惹かれちゃったんだよね〜」
彼女の言う通り、いつもは大きめの派手なものを買うのに、何故かこの小さい地味なピアスが欲しかった。
:09/09/30 08:08 :SH705i :☆☆☆
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