　　　　　　― 短編箱 ―

彼女は困った様子だった

そりゃそうだろう
ここの人じゃないんだから､

‥これはチャンスだと思った｡

｢おばあちゃん､
西沼行きはあそこのバス停ですよ｣

俺はうまく会話に入り込んだ

わくわく(｡･ω･｡)

>>119

ありがとうございます ^^*

おばあさんはにっこり笑い
小さくお辞儀をして
お礼にと飴を２つくれた

雨の日に飴って‥（笑）

そんなことはどうでもよくて
さぁ､どうしようこの状況｡

ちらっと様子をうかがった時に
ばちりと目が合った

｢ありがとう‥ございます｣
彼女は礼儀正しく深く頭を下げた

初めて聞いた
彼女の柔らかくて安心する声

尚も雨は降り続く

いえいえと笑いのける
それはもう､爽やか気取りで｡

内心にやけっぱなし
口元緩んでたかも‥

｢傘‥忘れたんですか？｣

心配そうに彼女は言った｡

｢今日､天気予報見るの忘れてて（笑）｣

なんだか照れくさい

すると彼女はくすっと笑って
｢私もです｣と言った｡

なんか一気に事が進んで
運命とかロマンチックを気取りたくなる

むしろもう
雨止まないでくれ｡
一瞬にして雨が好きになる俺

だけど天気は気まぐれで
そこまで味方はしてくれない

雨がだんだん弱くなる｡

｢飴‥!!どっちがいい？｣

さっき貰った飴のことを
ふと思い出したのだ

彼女のきょとんとした顔も
初めて見た

｢桃と林檎､どっち好き？｣

俺の質問に
謙虚に透き通った声で答える

｢じゃあ､林檎がいいです｣

少し恥ずかしそうで嬉しそうな彼女
こっちまで
嬉しくさせる笑顔

雨が止んだ｡

あっという間に時がすぎてしまって
彼女はまた深く頭をさげて
にこりと笑って去っていった｡

夢のようだ‥｡
まだあの優しい空間に包まれる

結局
名前も駅のことも彼氏のことも
何ひとつ聞けなかった