― 短編箱 ―
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#5 [栢]

「太一もドキドキするんだね」

そのたびに言われたもんだ。

そりゃぁ、するよ と言う答えに
満足そうに笑う彼女。


そして今日も
「太一もドキドキするんだね」

お決まりのセリフを言われた。

⏰:09/10/02 15:50 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#6 [栢]

だけど、なんとなく今日は
お決まりの答えを
返す気分じゃなかったから

「なんでいつも聞くの?」

自分の中の
ちょっとした疑問をぶつけてみる


その答えが
不安げな顔と共に返ってきたもんだから
俺は少し戸惑ってしまうのだ。

⏰:09/10/02 15:53 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#7 [栢]

「あたしのこと好きなのかなぁって思って」

女の子ってわからない。
好きだから付き合ってるのに
なんでそんなことを思うんだろう

いつだって俺は
彼女中心なフリをして‥
何ひとつわかっちゃいなかった。

ここで一言言ってあげるべきなのに‥

⏰:09/10/02 15:57 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#8 [栢]

彼女の腕に
力が入るのがわかる。

その言葉を待っていたんだろう
ただ"好きだよ"と
言われたかったんだろう。



期待に応えられなかった俺。
情けない男だ

⏰:09/10/02 15:59 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#9 [栢]

「太一、
好きって言ってくれたことない」

ふてくされたような
今にも泣き出しそうな
そんな声で言われちゃあ‥


グサッと棘がささる。


女の子ってわからない

⏰:09/10/02 16:02 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#10 [栢]

なんで?
あたしのこと好きじゃない?

俺に問い詰める声が
だんだんと小さく
だんだんと安定感をなくしていく


2年間も不安にさせていたんだと
ここでやっと気づいたのだ。


だけど
女の子ってわからない

言わなきゃだめ?

⏰:09/10/02 16:05 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#11 [栢]

そして遂に
彼女は泣き出してしまった。

いつだって笑ってた彼女
時々落ち込んだり、怒ったりはしたけど
俺の前で泣いたことはなかったのに


今目の前で泣いている彼女を
どうするべきなのか
わからなかった

本当に情けない男

⏰:09/10/02 16:15 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#12 [栢]

どうしても
言ってやれなかった。

気持ちは確かなのに
言葉にすることを拒む口


この気持ちを
たった二文字で表すことを
惜しく思ってて、
今まで言葉にできなかったんだけど‥

⏰:09/10/02 16:21 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#13 [栢]

黙り込む俺を見かねてか

「わかった」
と小さく呟いて
俺を抱きしめる手を話した。


そのまま言ってやればよかったのに
好きじゃ伝わりきらないって
言ってやればよかったのに、



‥情けない男は彼女を失った

⏰:09/10/02 16:24 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#14 [栢]

あれから5年が経つ


「女の子ってわからんないよ」

「好きって言って欲しいのよ。
ただ言葉にしてもらえるだけで
安心するものなの」

「好きなんかじゃ足りない場合だって
あるんだからな?」

そんな口論は日常になった。

⏰:09/10/02 16:28 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


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