― 短編箱 ―
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#295 [栢]

もうきっとすべて読み尽くした。
司書さんにも顔を覚えられた。

いつも休日はここへ来て
窓際のいすに座る

そしてひたすらに
日が暮れるまで"宇宙"に触れる


見た目は
少し田舎じみているが
普通の女子高生なはずだ

⏰:09/11/24 17:55 📱:D905i 🆔:6NafA9lE


#296 [栢]

「‥紗代ちゃん。」

司書の中村さんが
小声で私を呼んだ。

不思議そうに近寄る私に
にこにこしながらこう言った


「屋上に‥いってごらんなさい
きっとあなたをわくわくさせる
素敵なものがあるわ」

やりなれたように
片目を瞑ってウィンクすると
中村さんはせかすように
私の背中をぐいと押した。

⏰:09/11/24 18:00 📱:D905i 🆔:6NafA9lE


#297 [栢]

屋上‥?

検討もつかなかった
屋上から宇宙でも見えるのかな
‥それはさすがに有り得ない
じゃあ‥なんだろう。

非常階段を駆け上り
期待を胸に
勢いよく扉を開けた。

⏰:09/11/24 18:02 📱:D905i 🆔:6NafA9lE


#298 [栢]

すぅっと
心地よい風が髪を撫でる

そこには
期待するものは何もなかった。

「中村さん‥意味わかんない」

小言を言いながらも
青い空に目をこらす。


「今日は‥星がよく見えますよ」

ふと目をやると
すらっとした少し華奢な男が
同じように空を眺めてた。

⏰:09/11/24 18:06 📱:D905i 🆔:6NafA9lE


#299 [栢]

「紗代ちゃん‥でしたか?」

爽やかに笑われた。
少しばかり見とれた。

透き通るような白い肌に
真っ黒な縁の眼鏡
柔らかい声とは対照的な鋭い目

「中村にはめられたのでしょう」
少し参ったようにくすりと笑った

余裕ありげな言葉遣いが
気に入らなかった。

⏰:09/11/24 18:11 📱:D905i 🆔:6NafA9lE


#300 [栢]

「‥誰?」

目を細めて警戒心を剥き出しにした。

「さぁ‥誰でしょうね」

からかわれてる。
面倒な人が少しばかり
いや‥大嫌いだった。

「何それ。バカにしないでよ」

あたしのこの威嚇もさらりと交わされる
一気に現る苦手意識。

⏰:10/01/08 17:34 📱:D905i 🆔:TVGSibQw


#301 [栢]

そいつはあたしに目もくれず
ずっと空を眺めてた。

憎らしいのに
その美しさに見とれてしまうほど
透き通った肌‥
少し悩ましげな瞳

なんでだろう‥そいつは知りたくさせる
あたしの好奇心を掻き立てる。

⏰:10/01/08 17:38 📱:D905i 🆔:TVGSibQw


#302 [松田DXさん]

「ねぇ‥あんた」

不完全な足から目が離せなかった

「あ‥足ですか?よく気づきましたね」

クスクスとまた余裕そうに笑う
固くて冷たそうなそいつの左足。

「生まれた時からないもんでね、
自分の中ではコレが僕の足です」

戸惑いも見せずに
悲しげな表情もせずに

⏰:10/01/17 13:42 📱:D905i 🆔:fvQWoubw


#303 [松田DXさん]

「へぇ‥」

聞こうと思えば聞けたんだ
辛くない?痛くない?不便じゃない?

聞くまでもないような表情に
あたしは唇を噛んだ

「‥可哀想ですか?」

眉を下げて笑った
きっとみんな同情してきたんだ

"普通じゃない"
"自分と違う"

同情は何よりも身勝手で残酷

⏰:10/01/17 13:48 📱:D905i 🆔:fvQWoubw


#304 [松田DXさん]

―――――――――‥

「紗代ちゃんって片方の目見えないんだってー」

「えー!?‥可哀想だねー」

「ほんと可哀想だねー」

小学校のころによく言われた
あたしは"可哀想"な子

ただ片方見えないだけ
それだけで人は"可哀想"な人間になる

⏰:10/01/17 13:57 📱:D905i 🆔:fvQWoubw


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