― 短編箱 ―
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#297 [栢]
屋上‥?
検討もつかなかった
屋上から宇宙でも見えるのかな
‥それはさすがに有り得ない
じゃあ‥なんだろう。
非常階段を駆け上り
期待を胸に
勢いよく扉を開けた。
:09/11/24 18:02 :D905i :6NafA9lE
#298 [栢]
すぅっと
心地よい風が髪を撫でる
そこには
期待するものは何もなかった。
「中村さん‥意味わかんない」
小言を言いながらも
青い空に目をこらす。
「今日は‥星がよく見えますよ」
ふと目をやると
すらっとした少し華奢な男が
同じように空を眺めてた。
:09/11/24 18:06 :D905i :6NafA9lE
#299 [栢]
「紗代ちゃん‥でしたか?」
爽やかに笑われた。
少しばかり見とれた。
透き通るような白い肌に
真っ黒な縁の眼鏡
柔らかい声とは対照的な鋭い目
「中村にはめられたのでしょう」
少し参ったようにくすりと笑った
余裕ありげな言葉遣いが
気に入らなかった。
:09/11/24 18:11 :D905i :6NafA9lE
#300 [栢]
「‥誰?」
目を細めて警戒心を剥き出しにした。
「さぁ‥誰でしょうね」
からかわれてる。
面倒な人が少しばかり
いや‥大嫌いだった。
「何それ。バカにしないでよ」
あたしのこの威嚇もさらりと交わされる
一気に現る苦手意識。
:10/01/08 17:34 :D905i :TVGSibQw
#301 [栢]
そいつはあたしに目もくれず
ずっと空を眺めてた。
憎らしいのに
その美しさに見とれてしまうほど
透き通った肌‥
少し悩ましげな瞳
なんでだろう‥そいつは知りたくさせる
あたしの好奇心を掻き立てる。
:10/01/08 17:38 :D905i :TVGSibQw
#302 [松田DXさん]
「ねぇ‥あんた」
不完全な足から目が離せなかった
「あ‥足ですか?よく気づきましたね」
クスクスとまた余裕そうに笑う
固くて冷たそうなそいつの左足。
「生まれた時からないもんでね、
自分の中ではコレが僕の足です」
戸惑いも見せずに
悲しげな表情もせずに
:10/01/17 13:42 :D905i :fvQWoubw
#303 [松田DXさん]
「へぇ‥」
聞こうと思えば聞けたんだ
辛くない?痛くない?不便じゃない?
聞くまでもないような表情に
あたしは唇を噛んだ
「‥可哀想ですか?」
眉を下げて笑った
きっとみんな同情してきたんだ
"普通じゃない"
"自分と違う"
同情は何よりも身勝手で残酷
:10/01/17 13:48 :D905i :fvQWoubw
#304 [松田DXさん]
―――――――――‥
「紗代ちゃんって片方の目見えないんだってー」
「えー!?‥可哀想だねー」
「ほんと可哀想だねー」
小学校のころによく言われた
あたしは"可哀想"な子
ただ片方見えないだけ
それだけで人は"可哀想"な人間になる
:10/01/17 13:57 :D905i :fvQWoubw
#305 [松田DXさん]
「ねぇどうして見えないの?」
誰も他人の気持ちなんかわかりゃしないのに
"同情"なんてただ迷惑なだけ
「別にいいでしょ!!放っておいて!」
それからあたしは独りになった
宇宙にはまったのもこのせい
誰もまだ知り得ない世界
この世界で普通なことは
アッチでは普通ではないから
普通だとか可哀想だとか
そんな言葉がないとこに憧れた
:10/01/18 13:13 :D905i :IPeB6o1Y
#306 [松田DXさん]
――――――――‥
「別に可哀想じゃないよ
‥あたしも同じだから」
気が付けば心を開いてたようで
ソイツがあたしと同じように
孤独に生きてきたってわかった
あたしと同じ"可哀想"な目をしてる
「‥そうですか。」
深入りしようともせずに
また空を眺めてた
興味をもたれないことに
今のあたしは快感を得たんだ
:10/01/18 13:19 :D905i :IPeB6o1Y
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