― 短編箱 ―
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#71 [栢]

ある時からじいちゃんは
ご飯を食べると
口の周りを汚していた

ご飯粒が口元についているのにも
全く気づかない。

口の場所がわからないのか
箸をうまく口に運べない。

何より
目が虚ろになっていて
私はそれに恐怖さえ覚えたものだ

⏰:09/10/11 23:35 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#72 [栢]

じいちゃんのことは
単純に優しいから好きだった。

だけど
それを見たときから
なんだか嫌になってしまって
"汚い"と思うようになった


病気だとかそんなことも思わなくて
くちゃくちゃぼろぼろと
食べてる姿が不快だったから

⏰:09/10/11 23:39 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#73 [栢]

「じいちゃん、これ食べる?」

お姉ちゃんが
修学旅行で買ってきたお菓子を
じいちゃんにあげた。

すると横からばあちゃんが
「いいんだよじいちゃんは!
どうせ食べらんないんだから」

と少し強めに言った。

じいちゃんは
食べたそうな顔をしていた
だけど言い出せないのか
黙ってタバコを吸い始めた

その姿を見るのがなぜか辛かった
見ていられなかった

⏰:09/10/11 23:44 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#74 [栢]

それから
じいちゃんに決定権はなくなり
どんどん無口になっていった

それに比例するかのように
じいちゃんの行動が
おかしくなっていくのを


あたしは薄々感じていた。

⏰:09/10/11 23:47 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#75 [栢]

相変わらず
ご飯粒を口元にくっつけてみたり

名前を呼ばれても
反応しなくなったり‥

終いには
ポットをやかんと間違えて
火にかけてしまったのだ。

底が真っ黒に焦げて溶けたポットを見て
ばあちゃんはじいちゃんに
怒鳴り散らした。

じいちゃんは
何も言わなかった

⏰:09/10/11 23:51 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#76 [栢]
じいちゃんが
"ボケ"ていることがわかった私は
だんだんと切なくなり

かわいそうだと思うようになった。

あの時じいちゃんは
悲しいと思ってたかはわからないけど‥
かわいそうに感じて

厳しく言うばあちゃんを
嫌うようになった。

ばあちゃんはじいちゃんのこと
嫌いなんだ 、と‥

⏰:09/10/11 23:53 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#77 [栢]

ある日

学校から帰ってくると
じいちゃんが家にいなくて
ばあちゃんに聞くと

「入院したんだよ」
とあっさり言われた。

じいちゃんがいなくなって
清々してるのか‥

更にばあちゃんへの憎悪は
大きなものになり
家が居心地悪かった。

⏰:09/10/11 23:56 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#78 [栢]

"肺に水がたまってしまう病気"

詳しい病名は
まだ私も小さかったから
教えてもらえなかった。

⏰:09/10/11 23:59 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#79 [栢]

お見舞いに行って
私は病室に入るのをためらった

じいちゃんは助からないと
どこかでわかっていたから‥

年も年だし
仕方ないとは思っていたけど
弱った姿を見たら
泣き出してしまいそうだった。

⏰:09/10/12 00:00 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#80 [栢]
お姉ちゃんに背中を押され
病室に入ると

ぐったりとした
たくさんの機械や管に繋がれた
じいちゃんがいた。


「ほらじいちゃん!
お見舞いに来てくれたんだよ!」
ばあちゃんが言うと


酸素マスクの下で小さな声で聞こえた

「ありがとう‥」

⏰:09/10/12 00:04 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


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