― 短編箱 ―
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#2 [栢]
 
 
   君の、 匂い。

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⏰:09/10/01 17:23 📱:D905i 🆔:N3I8OBHs


#3 [栢]
 


「太一の匂いだぁ‥」

にこにこしながら
俺を見上げたのは

あと少しで
付き合って2年になる彼女。

俺の胸元に鼻を押し当てて
犬みたいに
くんくんと匂いをかぐ

改めて
小さいんだなぁと思う。

⏰:09/10/01 17:31 📱:D905i 🆔:N3I8OBHs


#4 [栢]

彼女は匂いフェチなのか
なんなのか‥

よくわかんないけど
こうするのが好きだった。


俺もなんとなく、
こうされるのが好きだった。


だだ、それだけ

⏰:09/10/02 15:47 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#5 [栢]

「太一もドキドキするんだね」

そのたびに言われたもんだ。

そりゃぁ、するよ と言う答えに
満足そうに笑う彼女。


そして今日も
「太一もドキドキするんだね」

お決まりのセリフを言われた。

⏰:09/10/02 15:50 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#6 [栢]

だけど、なんとなく今日は
お決まりの答えを
返す気分じゃなかったから

「なんでいつも聞くの?」

自分の中の
ちょっとした疑問をぶつけてみる


その答えが
不安げな顔と共に返ってきたもんだから
俺は少し戸惑ってしまうのだ。

⏰:09/10/02 15:53 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#7 [栢]

「あたしのこと好きなのかなぁって思って」

女の子ってわからない。
好きだから付き合ってるのに
なんでそんなことを思うんだろう

いつだって俺は
彼女中心なフリをして‥
何ひとつわかっちゃいなかった。

ここで一言言ってあげるべきなのに‥

⏰:09/10/02 15:57 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#8 [栢]

彼女の腕に
力が入るのがわかる。

その言葉を待っていたんだろう
ただ"好きだよ"と
言われたかったんだろう。



期待に応えられなかった俺。
情けない男だ

⏰:09/10/02 15:59 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#9 [栢]

「太一、
好きって言ってくれたことない」

ふてくされたような
今にも泣き出しそうな
そんな声で言われちゃあ‥


グサッと棘がささる。


女の子ってわからない

⏰:09/10/02 16:02 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#10 [栢]

なんで?
あたしのこと好きじゃない?

俺に問い詰める声が
だんだんと小さく
だんだんと安定感をなくしていく


2年間も不安にさせていたんだと
ここでやっと気づいたのだ。


だけど
女の子ってわからない

言わなきゃだめ?

⏰:09/10/02 16:05 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#11 [栢]

そして遂に
彼女は泣き出してしまった。

いつだって笑ってた彼女
時々落ち込んだり、怒ったりはしたけど
俺の前で泣いたことはなかったのに


今目の前で泣いている彼女を
どうするべきなのか
わからなかった

本当に情けない男

⏰:09/10/02 16:15 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#12 [栢]

どうしても
言ってやれなかった。

気持ちは確かなのに
言葉にすることを拒む口


この気持ちを
たった二文字で表すことを
惜しく思ってて、
今まで言葉にできなかったんだけど‥

⏰:09/10/02 16:21 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#13 [栢]

黙り込む俺を見かねてか

「わかった」
と小さく呟いて
俺を抱きしめる手を話した。


そのまま言ってやればよかったのに
好きじゃ伝わりきらないって
言ってやればよかったのに、



‥情けない男は彼女を失った

⏰:09/10/02 16:24 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#14 [栢]

あれから5年が経つ


「女の子ってわからんないよ」

「好きって言って欲しいのよ。
ただ言葉にしてもらえるだけで
安心するものなの」

「好きなんかじゃ足りない場合だって
あるんだからな?」

そんな口論は日常になった。

⏰:09/10/02 16:28 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#15 [栢]

未だに好きだと言わない俺に
彼女はすでに呆れ
情けなく頑固な俺を受け入れてくれた


「太一の匂いだぁ
太一もドキドキするんだね」

相変わらずそんなことを言われる


そんな「‥好きだよ」と
俺は初めて言って見せた

⏰:09/10/02 16:36 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#16 [栢]

彼女は驚いたようにぽかんとした

そりゃあそうだ。
7年経ってやっとだもんな


しかし彼女は
くすりと笑ってこう言うのだ。

「‥好きって言われるより、
あなたの匂いを感じてたほうが
よっぽど安心するみたい」


つられて俺も笑ってしまった。

そして、いつものように
抱き合って眠りについた。

⏰:09/10/02 16:40 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


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