― 短編箱 ―
最新 最初 全
#229 [栢]
差し出した絵の端から
パパの真っ白な顔が見えた
「パパ‥?
お星様、美知とお兄ちゃんでね‥」
ママが静かに泣いている声が聞こえた
「‥書いたの一生懸命
お星様にお願いしたの!
パパが元気になりますようにって!」
遠退いていく呼吸を
見て見ぬ振りをして‥
:09/11/02 17:42 :D905i :j2q9RMHc
#230 [栢]
「ねぇお兄ちゃん?
昨日書いたんだよね?」
無邪気に振り返った私に
お兄ちゃんは
肩を震わせながら小さく頷いた
「パパ‥あのね、」
部屋の静けさに
何か話そうと必死だった
:09/11/02 17:45 :D905i :j2q9RMHc
#231 [栢]
ピ―‥
今までに聞いたことのない
耳に突き刺さる音を聞いた
パパの手が氷のように冷たかった
「あなたぁ‥!
いかないで‥いかないでぇ‥」
ママがパパに寄り添い泣き崩れる
お医者が時計を見て何かを言った
:09/11/02 17:48 :D905i :j2q9RMHc
#232 [栢]
嘘だよ‥パパ‥
お星様、
一生懸命書いたのに‥
美知が色塗り下手だったから?
美知が本物のお星様
集められなかったから‥?
ねぇパパ‥わかんないよ
「パパ‥お星様‥」
堪えていた涙が
体の奥から溢れ出しす
:09/11/02 17:51 :D905i :j2q9RMHc
#233 [栢]
「美知‥ありがと‥」
パパが確かにそう言った
消えそうな壊れそうな声で
確かに私にそう言った
その瞬間
魔法が溶けたように
子供らしく泣きわめいた
小さくなって泣く私を
お兄ちゃんは優しく包んでくれた
:09/11/02 17:55 :D905i :j2q9RMHc
#234 [栢]
子供の私たちは
家に帰らされた。
お兄ちゃんと2人きりの家。
風が窓を揺らす音が
さらに寂しくさせた
「お兄ちゃん‥
パパ‥元気にならなかった」
うつむいて目を擦って
少し震える声で
「美知‥パパの秘密知ってる?」
そう言った。
頑張って明るく振る舞うその声に
私は涙を止めた
:09/11/02 18:00 :D905i :j2q9RMHc
#235 [栢]
顔を上げ
首を横に振って見せる
するとお兄ちゃんは
にっと笑って小声で言った。
「パパって、
お星様の国の王様なんだよ!」
「おうさま?!」
驚いて胸を時めかせた私の口を
塞ぐ
暖かくて大きな手‥。
:09/11/02 18:04 :D905i :j2q9RMHc
#236 [栢]
「だからあんなに
お星様に詳しいんだよ?
それで、今日は帰らなくちゃいけない日
お星様の国のみんなだって
パパが居なくちゃ困ってるんだ」
一気に涙が乾く
とっさに思いついた優しさに
私は笑顔を浮かべた
「だけど‥パパは
美知のパパなんだよ?
勝手に連れてっちゃいや‥」
大好きな初めての"恋人"に
やきもちを焼くくらい大人になった
:09/11/02 18:08 :D905i :j2q9RMHc
#237 [栢]
「美知にもパパが必要なように‥
あっちのみんなにもパパが必要なんだ。
パパは人気者なの、
"お友達とは仲良く半分こ"って
パパと約束したでしょ?」
澄み切った空気に包まれて
私は大きく頷いた
:09/11/02 18:12 :D905i :j2q9RMHc
#238 [栢]
「じゃあ美知‥
お星様の絵パパにあげる!
それで、
みんなに自慢してもらうの!
美知はこんなに上手な絵を書くんだよって!」
にこにこと笑みを浮かべた
ちょっぴり大人になった。
大好きな"恋人"を
少しだけ独占したかった。
「そうしようか」
安心したようにお兄ちゃんが笑う
:09/11/02 18:16 :D905i :j2q9RMHc
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194