― 短編箱 ―
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#258 [椎]
思い出と共に
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:09/11/14 19:22 :D905i :lSHpUp5E
#259 [栢]
きっと釣り合わないから
君から身を引いたんだ。
:09/11/14 19:23 :D905i :lSHpUp5E
#260 [栢]
あまりに美しすぎて
あまりに眩しすぎて
きっと
見えないふりをした‥。
今更もう遅いこと
:09/11/14 19:24 :D905i :lSHpUp5E
#261 [栢]
艶やかな黒髪が風に揺れる
いつだって遠くから見てた。
「瑞希ちゃん!
今日暇ならご飯食べに行かない?」
「瑞希ちゃんアドレス教えてよ」
いつだって君は人気者で
ひとりでいる事なんて
なかなかなくて
タイミングが掴めなかった。
:09/11/14 19:29 :D905i :lSHpUp5E
#262 [栢]
「あ‥ごめんなさい。
夜は家で夕食を食べるので‥」
「ごめんなさい。
あまりメールが得意ではないので‥」
下心の塊たちに
ひとつひとつ丁寧に言葉を返す。
そして柔らかく笑う。
‥憧れ、夢、理想
枯れ葉のこすれる音が物寂しい。
:09/11/14 19:32 :D905i :lSHpUp5E
#263 [栢]
後ろ姿を
もうどれくらい見つめただろう‥
少し大人っぽくなった。
少し背が伸びた気がする
だけど
相変わらず君は眩しくて、
僕は大人になったのだろうか。
背は少し伸びたんだけど
君は知らないんだろうな‥
:09/11/14 19:36 :D905i :lSHpUp5E
#264 [栢]
「橘くん‥?」
「あ‥俺?」
嬉しそうに頷いた姿が
愛おしすぎた
そんな顔されたら
叶わない想いにも
期待してしまいそうだ‥
「ノート‥ありがとうございました。」
丁寧な言葉遣いが余計に距離を感じさせる
もう7年目なのに‥
そこがまた君の魅力
:09/11/14 19:39 :D905i :lSHpUp5E
#265 [栢]
慌ててノートを受け取った。
少し手が触れた
どうしても目が泳いでしまう。
俺こそもうすぐ6年目なのに‥
なにも進展がないなんてな。
「見にくかったでしょ?
ごめんね(笑)」
思わず笑ってごまかした。
手がじわりと汗をかいた。
:09/11/14 19:43 :D905i :lSHpUp5E
#266 [栢]
「いえ、とても見やすかったですよ。
また‥
もしもの時は貸していただきたいです。」
ゆっくりと深く頭を下げて
いつものように柔らかく笑った。
「こ‥こんなんでよければ‥!」
ごくりと唾を飲む
もうこの笑顔だけで
僕は救われた気がしてしまう。
だからなにもできないでいる
:09/11/14 19:46 :D905i :lSHpUp5E
#267 [栢]
「あ‥あのさ、」
僕の口が思わぬとこで先走った。
「なんですか?」
きょとんとした顔。
可愛すぎて‥だめだもう。
「み‥瑞希ちゃんって、
中学の時から変わらないよね!」
意味がわからない発言。
あぁもう‥
:09/11/14 19:53 :D905i :lSHpUp5E
#268 [栢]
君の様子を
恐る恐るうかがってみると
少し困ったように‥
「それは‥
喜んでいいのでしょうか?」
透き通った手を口元に寄せて
クスリと笑った。
「もちろん!!‥いい意味だよ」
「ありがとうございます」
きっと褒められるのは慣れてるだろう
それなのに本当に嬉しそうに
笑ってくれるから
諦めきれないんだよ‥。
:09/11/14 19:57 :D905i :lSHpUp5E
#269 [栢]
「橘くんも‥
お変わりないですよ?」
僕に向けられた言葉が
優しく虚しさをかき消す。
「背は‥少し伸びましたけど、」
付け足すように言った言葉に
なんだか暖かくなった。
じわりじわりと
何かがこみ上げてくる
「背‥あぁ、
中学の時は小さかったしね」
:09/11/14 20:01 :D905i :lSHpUp5E
#270 [栢]
「高校生あたりから‥ですかね?
ぐんと伸びましたよね」
すごい‥よく知ってるな
思わず緩む口元に必死に力を込めた
「よく知ってるね!(笑)
そこまで話したりしてなかったのに‥」
「えぇ‥まぁ。
それくらいわかりますよ」
話の途中に細い髪を耳にかける
たぶんこれは君の癖。
:09/11/14 20:08 :D905i :lSHpUp5E
#271 [栢]
「そっか‥そうだよね(笑)」
奇跡なんかが起きたらいいなと
思ってはいけないのだ。
空一面が淡い紫に染まる
消えてゆく赤をよそ目に
真上では白い星が輝いた。
「日が落ちるの‥早くなりましたね」
腕時計を見つめて
ぽつり君がつぶやいた
:09/11/14 20:11 :D905i :lSHpUp5E
#272 [栢]
もう帰らなきゃな‥
送っていくとか言ったら
迷惑なのかな。
「瑞希ちゃん‥
あっちの駅まで一緒に帰らない?」
今日の僕はきっと心に決めたんだ。
もう終わりにしようって
「え‥あ‥、はい!
ありがとうございます」
感謝したいのはこっちのほうなのに
君はいつだってそう言うね。
:09/11/14 20:20 :D905i :lSHpUp5E
#273 [栢]
人気の少ない無人駅。
あたりの稲穂が風に揺れて
寂しげに奏でてた。
地元同じでよかった‥ほんと。
同じ時間を刻むことに
ほんの些細なことに
君といると幸せを感じるんだ。
古びた小さな電車に乗って
穏やかに揺られて
「こうして一緒に帰るのは、
よく考えると初めてですね」
不器用に開いた2人の空間が
僕らの距離を表した
:09/11/14 20:25 :D905i :lSHpUp5E
#274 [栢]
「大学入ってから一回も
駅で会ったことないもんね」
電車の音など気にならない
向かいの窓に映る君しか見れない
「なんだか不思議な気がします」
またクスリと笑う君を
窓越しに見つめた。
いつの間にかアナウンスが
僕らの別れを告げた。
:09/11/14 20:30 :D905i :lSHpUp5E
#275 [栢]
地元はやっぱり落ち着く
君と出会ったこの地が好きだ。
「今日はありがとうございました。」
改札を出て振り向いた君を
このまま連れ去りたかった。
「いえいえ‥こちらこそ」
僕らの声しか見当たらない
静かな夜に
ほんのり駅の光が差し込む
:09/11/14 20:34 :D905i :lSHpUp5E
#276 [栢]
「あのさ、瑞希ちゃん
今日は‥伝えたいことが‥」
僕の言葉に被せるように
君が僕の名前を呼んだ。
「あの‥私、明日からもう‥
大学通えないんです。」
チカチカと消えかかる光から
小さな虫たちが去っていく
虚しくすぎる電車の音に
耳を塞ぎたくなった。
:09/11/14 20:38 :D905i :lSHpUp5E
#277 [栢]
「それって‥」
「アメリカに引っ越すんです。
父の仕事の関係で‥
とても急な話で、私も驚きました。
最近、大学を休んでいたのは‥
そういうわけで、」
だんだんと小さくなる声を
拾うように目を閉じた。
振られた気がした。
もう会えなくなる‥。
君の笑った顔も丁寧な言葉遣いも
もうこれっきり
:09/11/14 20:41 :D905i :lSHpUp5E
#278 [栢]
「‥そうなんだ‥。そっか‥」
自らに納得させるように
何度も呟いた。
笑顔で見送ろうとしたけど
僕はそんなにできた人間じゃなくて‥
「それで‥、ずっと‥」
君の手に力が入ったのがわかった。
「橘くんを‥もう‥
見ていられないと思うと‥
胸が‥苦しくなりました。」
小さく小さく君が震えるから
泣いた顔なんて見たことなかったから‥
:09/11/14 20:47 :D905i :lSHpUp5E
#279 [栢]
言葉が出ない僕をよそに
声を絞り出して‥
「少し‥遅すぎました、
どうせなら‥気付かなければ‥
私‥橘くんが‥好きでした。」
月明かりに照らされた君は
まるで天使のようで
その涙も愛おしく思えるほどに‥
口を不格好に開いて
支えるのがやっとなほどに
体の力が抜けていった。
:09/11/14 20:51 :D905i :lSHpUp5E
#280 [栢]
「瑞希‥ちゃん‥、
それ‥本当‥?」
冷静そうなその声に
君は大きく頷いた。
「‥先に言わせてよ‥。
瑞希ちゃんが、好きだよ
‥もう、夢でもいい‥。」
ぎゅっと小さな体を抱きしめた
温もりをかんじた。
たった一時の夢でも
僕は君に近づけた。
:09/11/14 20:57 :D905i :lSHpUp5E
#281 [栢]
いつもは大人びた君も
ぐしゃぐしゃに泣いて
子供のように僕に抱きついた。
「知らなかった‥
釣り合わないと思ってたから‥
本当に‥本当に」
「‥私も、
叶わないと思ってました‥」
不安定な声が耳の中をくすぐる
「ありがとう‥大好きだよ」
もう離したくないさ‥
どこにも行かせたくない‥。
君は僕をわがままにさせた
:09/11/14 21:01 :D905i :lSHpUp5E
#282 [栢]
たった一時の幸せに
浸ることなんて嫌いだった。
あとに残る虚しさに
僕は勝てるほど強くなかったから
だけど今は、君だけは‥
僕を一番強くした。
「ずっと‥ずっと見てました。」
涙を拭いて恥ずかしそうに顔をあげて
こんなに小さかったんだ‥
初めてこんなに近づけた。
:09/11/14 21:05 :D905i :lSHpUp5E
#283 [栢]
「ずっと‥って、
高校の時から‥?」
「ええ‥その前から、」
目を細めて僕を真っ直ぐに見つめた
長い睫が涙に濡れていた。
「前って‥中学?」
「もちろんです‥。
姿を見れるだけで、幸せでした」
はっきりと言ったその声に
僕は顔を赤く染めた。
:09/11/14 21:10 :D905i :lSHpUp5E
#284 [栢]
「もっと‥
早く言えばよかったね、
そしたらもっと‥。」
君の傍にいれたのに‥
「気持ちが伝われば
私はそれで、十分でしたから‥
今こうしていられるだけで‥」
僕は優しく口付けた。
君の温もりが伝わる。
時が止まればいいと願ったのは
これが初めてだった‥。
:09/11/14 21:13 :D905i :lSHpUp5E
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