― 短編箱 ―
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#264 [栢]
「橘くん‥?」
「あ‥俺?」
嬉しそうに頷いた姿が
愛おしすぎた
そんな顔されたら
叶わない想いにも
期待してしまいそうだ‥
「ノート‥ありがとうございました。」
丁寧な言葉遣いが余計に距離を感じさせる
もう7年目なのに‥
そこがまた君の魅力
:09/11/14 19:39 :D905i :lSHpUp5E
#265 [栢]
慌ててノートを受け取った。
少し手が触れた
どうしても目が泳いでしまう。
俺こそもうすぐ6年目なのに‥
なにも進展がないなんてな。
「見にくかったでしょ?
ごめんね(笑)」
思わず笑ってごまかした。
手がじわりと汗をかいた。
:09/11/14 19:43 :D905i :lSHpUp5E
#266 [栢]
「いえ、とても見やすかったですよ。
また‥
もしもの時は貸していただきたいです。」
ゆっくりと深く頭を下げて
いつものように柔らかく笑った。
「こ‥こんなんでよければ‥!」
ごくりと唾を飲む
もうこの笑顔だけで
僕は救われた気がしてしまう。
だからなにもできないでいる
:09/11/14 19:46 :D905i :lSHpUp5E
#267 [栢]
「あ‥あのさ、」
僕の口が思わぬとこで先走った。
「なんですか?」
きょとんとした顔。
可愛すぎて‥だめだもう。
「み‥瑞希ちゃんって、
中学の時から変わらないよね!」
意味がわからない発言。
あぁもう‥
:09/11/14 19:53 :D905i :lSHpUp5E
#268 [栢]
君の様子を
恐る恐るうかがってみると
少し困ったように‥
「それは‥
喜んでいいのでしょうか?」
透き通った手を口元に寄せて
クスリと笑った。
「もちろん!!‥いい意味だよ」
「ありがとうございます」
きっと褒められるのは慣れてるだろう
それなのに本当に嬉しそうに
笑ってくれるから
諦めきれないんだよ‥。
:09/11/14 19:57 :D905i :lSHpUp5E
#269 [栢]
「橘くんも‥
お変わりないですよ?」
僕に向けられた言葉が
優しく虚しさをかき消す。
「背は‥少し伸びましたけど、」
付け足すように言った言葉に
なんだか暖かくなった。
じわりじわりと
何かがこみ上げてくる
「背‥あぁ、
中学の時は小さかったしね」
:09/11/14 20:01 :D905i :lSHpUp5E
#270 [栢]
「高校生あたりから‥ですかね?
ぐんと伸びましたよね」
すごい‥よく知ってるな
思わず緩む口元に必死に力を込めた
「よく知ってるね!(笑)
そこまで話したりしてなかったのに‥」
「えぇ‥まぁ。
それくらいわかりますよ」
話の途中に細い髪を耳にかける
たぶんこれは君の癖。
:09/11/14 20:08 :D905i :lSHpUp5E
#271 [栢]
「そっか‥そうだよね(笑)」
奇跡なんかが起きたらいいなと
思ってはいけないのだ。
空一面が淡い紫に染まる
消えてゆく赤をよそ目に
真上では白い星が輝いた。
「日が落ちるの‥早くなりましたね」
腕時計を見つめて
ぽつり君がつぶやいた
:09/11/14 20:11 :D905i :lSHpUp5E
#272 [栢]
もう帰らなきゃな‥
送っていくとか言ったら
迷惑なのかな。
「瑞希ちゃん‥
あっちの駅まで一緒に帰らない?」
今日の僕はきっと心に決めたんだ。
もう終わりにしようって
「え‥あ‥、はい!
ありがとうございます」
感謝したいのはこっちのほうなのに
君はいつだってそう言うね。
:09/11/14 20:20 :D905i :lSHpUp5E
#273 [栢]
人気の少ない無人駅。
あたりの稲穂が風に揺れて
寂しげに奏でてた。
地元同じでよかった‥ほんと。
同じ時間を刻むことに
ほんの些細なことに
君といると幸せを感じるんだ。
古びた小さな電車に乗って
穏やかに揺られて
「こうして一緒に帰るのは、
よく考えると初めてですね」
不器用に開いた2人の空間が
僕らの距離を表した
:09/11/14 20:25 :D905i :lSHpUp5E
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