― 短編箱 ―
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#302 [松田DXさん]
「ねぇ‥あんた」
不完全な足から目が離せなかった
「あ‥足ですか?よく気づきましたね」
クスクスとまた余裕そうに笑う
固くて冷たそうなそいつの左足。
「生まれた時からないもんでね、
自分の中ではコレが僕の足です」
戸惑いも見せずに
悲しげな表情もせずに
:10/01/17 13:42 :D905i :fvQWoubw
#303 [松田DXさん]
「へぇ‥」
聞こうと思えば聞けたんだ
辛くない?痛くない?不便じゃない?
聞くまでもないような表情に
あたしは唇を噛んだ
「‥可哀想ですか?」
眉を下げて笑った
きっとみんな同情してきたんだ
"普通じゃない"
"自分と違う"
同情は何よりも身勝手で残酷
:10/01/17 13:48 :D905i :fvQWoubw
#304 [松田DXさん]
―――――――――‥
「紗代ちゃんって片方の目見えないんだってー」
「えー!?‥可哀想だねー」
「ほんと可哀想だねー」
小学校のころによく言われた
あたしは"可哀想"な子
ただ片方見えないだけ
それだけで人は"可哀想"な人間になる
:10/01/17 13:57 :D905i :fvQWoubw
#305 [松田DXさん]
「ねぇどうして見えないの?」
誰も他人の気持ちなんかわかりゃしないのに
"同情"なんてただ迷惑なだけ
「別にいいでしょ!!放っておいて!」
それからあたしは独りになった
宇宙にはまったのもこのせい
誰もまだ知り得ない世界
この世界で普通なことは
アッチでは普通ではないから
普通だとか可哀想だとか
そんな言葉がないとこに憧れた
:10/01/18 13:13 :D905i :IPeB6o1Y
#306 [松田DXさん]
――――――――‥
「別に可哀想じゃないよ
‥あたしも同じだから」
気が付けば心を開いてたようで
ソイツがあたしと同じように
孤独に生きてきたってわかった
あたしと同じ"可哀想"な目をしてる
「‥そうですか。」
深入りしようともせずに
また空を眺めてた
興味をもたれないことに
今のあたしは快感を得たんだ
:10/01/18 13:19 :D905i :IPeB6o1Y
#307 [松田DXさん]
「あたし、こんな世界に生まれたくなかった」
ぽろっと零れた不安は
さっき出会ったばかりの奴に向けられた
少しこちらに目を向けて
またクスっと笑った
同じように孤独だったはずなのに
なんでそんなに笑えるの?
やっと仲間を見つけたと思ったのに‥
するとそいつはゆっくり立ち上がり
少しだけぎこちなくあたしの目の前にきた
:10/01/18 13:25 :D905i :IPeB6o1Y
#308 [松田DXさん]
またゆっくりとしゃがんだ時に
左足の冷たい音が微かに耳に入った
「じゃあ、誰も知らない未来に行きますか?」
「‥は?バカにしてるの?」
「いえ‥相対性理論、知りません?」
「‥今そんな技術はないでしょ
あたしたちにとっては夢のまた夢
その頃には死んでるわ」
そいつは空を見て
いつも夢見てたんだろうか
:10/01/18 13:30 :D905i :IPeB6o1Y
#309 [松田DXさん]
いつか宇宙に行きたい
そんな夢でさえ
きっとそいつにとっては困難なのに
「‥つまらない人生ですね」
じっとあたしを見つめた眼差しが
捕らえて離さなかった
「夢を見るのはただですよ
ただでさえ僕らは普通の夢さえ
困難な状況に置かれてる
僕らが一番に願う夢は‥
みんなにとっては当たり前なんです」
:10/01/18 13:34 :D905i :IPeB6o1Y
#310 [松田DXさん]
そいつは愛おしそうに左足を撫でた
「これでも何かと不自由です
だけど不自由だからこそわかる世界があって
不自由だからこそ可能性を信じたくなる
目が見えたらいいなって
あなたもどこかで願ってる
だから僕も本物の足を得て
遠く離れた星に行きたい」
そいつは人と違うからと言って
下を向いては居なかった
:10/01/18 13:47 :D905i :IPeB6o1Y
#311 [栢]
名前変わってました(´・ω・`)
生活板の名前になってました
松田=栢です(;_;)
:10/01/18 13:50 :D905i :IPeB6o1Y
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