街がスカーレットに染まる時
最新 最初 全 
#109 [ぎぶそん]
「かなめは?どんな感じだった?」
彼の問い掛けでふと我に返る。
彼がこれから私からどんな話が聞けるのだろうと、好奇心旺盛の目で見てくる。
私は口数が少なくて、周りとの壁を作っていた幼少期を送っていた。
クラスに一人は存在するような、休み時間も誰とも馴染もうとせず席に座ってるような子だった。
そうに告げると、「あー、そんな感じがするわ」と納得したように言われた。
「そういえば一人だけ、『千明』って子はちょっかいを出してくれていたなあ」
私はある同級生の存在を、記憶の片隅から思い出した。
:09/12/07 22:29
:SH705i
:xg7qNZ7o
#110 [ぎぶそん]
小六の時同じクラスになった富田千明は小学生ながら美容やお洒落に関心を持っていて、実にませた子だった。
長身で子供離れしたスタイルを持っていたので、自分自身を高めたいという意識が早熟したのだろう。
そんな彼女は、自分とは対照的な地味で存在感の薄かった私を「あだっち」という愛称で呼び、放課後になるとちょくちょく遊びに誘ってくれた。
本屋でファッション雑誌を立ち読みしたり、グラウンドでやっているサッカー部の練習を眺めていたりしていた。
私は彼女といる時、いつも楽しくないと感じたことはなかった。
:09/12/10 00:28
:SH705i
:AKXQnaXE
#111 [我輩は匿名である]
111
:09/12/10 03:23
:SH904i
:wT5Q3hb6
#112 [ぎぶそん]
小学校を卒業した後は私は公立の、千明は私立の中学校へとそれぞれ進学することとなった。
小六の頃は夜になるとよく千明から自宅に電話が掛かってきていたが、中学に入ってからは新しい友達が出来たからなのかぱったりと音信が絶えた。
中学二年になりたての頃、千明が不登校気味だということを共通の知人から聞いた。
頭髪を派手に染め、露出の多い服を着て、コンビニの前で同じような仲間とたむろしているのをちょくちょく近隣に住む住民から目撃されているらしい。
私はそれを耳にした時、ただ千明らしいとだけ思った。
:09/12/13 00:37
:SH705i
:S2K0AsXE
#113 [ぎぶそん]
同じ年の秋に、偶然彼女と会った。場所は二人でよく行っていた本屋。
外見は不良そのものだったが、心もそうだとは彼女の変わらない優しい雰囲気からは感じられなかった。
彼女は私とは視線を合わせず、すれ違い様に「ばーか」とだけ告げた。
これが今の所、私が彼女を見た最後の瞬間だ。
その後風の噂で彼女は十五で十歳以上年の離れた男性との間に子供を身篭り、そのまま結婚したということを聞いた。
元気してるかな、千明。
もう一度会えた時は、あの時「ばーか」の意味を聞かせて欲しい。
:09/12/13 01:01
:SH705i
:S2K0AsXE
#114 [ぎぶそん]
「で、高校三年間もまた友達がいない生活だった」
私は過去の話を、自虐気味に閉じてみた。
それを真織は煙草の煙で咳込み、上手く笑えずにいた。
今思えば、千明が初めてだったかも知れない。
家族以外で、私を必要としてくれていた人。
中学校に入学した当初、千明は「あだっちがこっちの学校に転校してくればいいのに」と周りに口にしていたことがあったらしい。
その後、彼女は学校に通わなくなった。
私は嬉しかった。彼女の印象に私が残っていることが。
それと同時に悲しくなった。彼女の力になれなかったことを。
:09/12/13 01:21
:SH705i
:S2K0AsXE
#115 [のん]
書かないんですか?
更新楽しみにしてます
:10/01/30 07:24
:W56T
:msLOlqqg
#116 [ぎぶそん]
「またいつか出会うよ、忘れた頃にさ。
そんなもんでしょ?人生って」
彼が何時になく静かに煙を吐く。
表情もどこか儚げで哀しい。
今になって気づいたけど、彼は細くてとても綺麗な指をしている。
おかしな表現をすると、煙草を吸うのにも、ギターを弾くのにも持ってこいの指だ。
「明日のライブ、楽しみにしてるから」
私はその場を立ち上がり、ベッドへと向かった。
――あなたにも、もう一度会いたいと思ってる人がいるの?
喉元で詰まってしまった言葉を、深い心の奥底まで沈めながら。
:10/02/23 19:03
:SH705i
:C1TvH8W.
#117 [ぎぶそん]
翌日。
目覚ましのベルが鳴る前に起きてみたが、部屋に真織の姿はなかった。
きっと今頃、本番前の最後の予行練習に精を出していることだろう。
ライブに行くということを意識しながら、箪笥の奥で眠っていたジーンズを取り出す。
上は真織専用の衣類ボックスから、適当に選んだ黒のTシャツを拝借させてもらった。
鏡の前に立つボーイッシュな自分に、苦笑いを送る。
化粧はほんの気持ち程度にすることにした。"本日の主役"なんてのは私じゃないし。
テキトーテキトー。
:10/02/23 19:21
:SH705i
:C1TvH8W.
#118 [ぎぶそん]
――そろそろかな。
私は時計の針に目をやった。
予定では加奈がアパートに訪ねて来て、一緒にライブハウスまで行くことになっている。
そこでタイミング良くメールが届き、机の上の携帯が振動する。
宛先はその彼女から。
「ごめぇん。
昨日鈴木君誘ってOK貰ったから彼と行くねぇ!
また向こうで会お!」
彼女の自由気ままな性格は例えるならネコかな、なんて笑ってしまう。
そういえば、スピッツの歌にはネコがよく出て来るなぁ。
バンド名は犬だけど、草野さんは犬よりネコが好きなのかな、なんて思ってしまう。
:10/02/23 19:39
:SH705i
:C1TvH8W.
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194