街がスカーレットに染まる時
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#21 [ぎぶそん]
「…悪かったな。
あんたの楽しい大学生活、俺がぶっ壊しちまって」
何を思ったのか、彼の雰囲気がしんみりとしてきた。
ただの生意気な少年かと思ってたけど、一応悪気があるとか可愛いところあるじゃん。

「別に。この広い部屋を一人きりで過ごすのももったいないって思ってたし」
って、これは少し嫌味になるかな。

「…俺のことは呼び捨てで構わないよ。
俺はあんたのことを名前では呼ばないけど」
何だそれ。やっぱり生意気は生意気か。

「おやすみ。真織」
彼に背を向けるように、私は寝返りを打った。

⏰:09/10/14 03:08 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#22 [ぎぶそん]
翌朝目覚ましのベルで起きると、私も彼のスケジュールに合わせて朝食の準備をしたりせわしなく動く。
何か今の私、芸能人の付き人みたい。

「ちょっとネクタイ結んでくんない?」
皿洗いの途中、脱衣場にいた彼に呼ばれた。

「私、あなたの奥さんじゃないんですけど」
未完成の晴れ姿の彼に見惚れる間もなく、指示どおりに赤いネクタイを結んであげる。

「まあ、そう堅いこと言わないで」
「で、本当の理由は?」
「…中学も高校の時もずっと学ランだった」
ぷっ。結べないなら結べないって素直に言えばいいのに。

⏰:09/10/14 03:25 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#23 [ぎぶそん]
「昼はその辺のファミレスで食べてくるから用意しなくていいよ。
で、夜は俺の入学祝を兼ねてパァーッと焼肉でも食いに行こうぜ。
もちろん、あんたの奢りで」
玄関で革靴を履きドアを開けた彼が、ドアノブに手を掛けたまま私の目を見て歯を剥き出しにしてにやけた。

「そう年上の女にたからないで下さいな。
それに今日は、佳奈があんたの顔見たさに遊びに来るらしいよ。佳奈っていうのは、あんたにここを紹介した毛利さんのことね。
今晩は三人でお好み焼きパーティでもしましょうってさ」

お好み焼きかあ、それも悪くないなとぼやくと、彼は玄関のドアを閉め、外に出た。

⏰:09/10/14 03:45 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#24 [ぎぶそん]
昼過ぎ、約束どうり佳奈が私の部屋を訪ねてきた。

「どう?共同生活を一日終えてみて」
彼女が共同生活の差し入れにと、大きな紙袋から即席めんや袋菓子などの食糧を次から次へと取り出してテーブルに並べる。
今回私に頼んだこと、彼女自身も内心申し訳なさを感じているようだ。

「もう最っ悪。…ってのは嘘で、良くも悪くもないってところかな」

「で、その伊藤真織君がカッコいいっていうのは本当?佳奈、一目惚れでもしちやったらどうしよう〜!」佳奈が紙袋から取り出すスピードを速める。

⏰:09/10/14 04:05 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#25 [ぎぶそん]
おいおい。同じサークルの何トカクンが好きだとかいう話はどうなったのよ。
そう思いつつ、彼女に私が感じた限りの真織の特徴を伝える。

まん丸な眼に、綺麗に整えられた眉。
鼻は普通より高くて、唇は少しぼてっとしてる。
輪郭はシャープで、羨ましい限りの小顔かも。
髪の色は黒くて、毛先には緩やかにパーマがかかっていたかな。
身長は一七八センチくらい。ファッションはカジュアル系。

私の表現がよっぽどうまかったのか、佳奈は自身の想像上の真織に思いを馳せる。

⏰:09/10/14 04:19 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#26 [ぎぶそん]
でも、私にとって真織という少年の特に印象深かった部分は、セブンスターの煙草とマーティンのギター、透明感のある歌声、この三つ。
そうはっきりと思ったけど、佳奈には云わなかった。どうせ伝わらないだろうし。

「それから彼は、スピッツがとても好きみたいよ」
ベランダ近くで無造作に置かれてあった楽譜を佳奈に見せた。

「佳奈はあっちのがいい。『ダーリンダ〜リン』の人たち」
「ミスチル。私は別にどっちでもないな」

何てのは嘘。昨日の一晩で、スピッツという音楽アーティストに興味を持ったことは確か。

⏰:09/10/14 04:30 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#27 [ぎぶそん]
夕方、二人でうとうとしかけていると本日の主役の真織が帰って来た。
手には本屋の手提げ袋か。
また新しい楽譜でも買ったのかな。

「キャー!想像どおりの色男!
でもやっぱり、鈴木君の方がカッコいいかなぁ」

佳奈のハイテンションに、さすがの彼も少々たじっている様子だった。
でもまあ良かった。佳奈が彼を好きとかになったら、ますます話がややこしくなりそうだし。

佳奈と私はホットプレートを敷いたりと、夕飯の準備に取り掛かった。
部屋着に着替えた真織は、私たちの様子を何もしないではたからただ見ていた。

⏰:09/10/14 04:48 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#28 [ぎぶそん]
「それでは、真織君の入学を祝って乾杯〜!」

佳奈と私が昼間にコンビニで買ってきたコーラ片手に、祝杯を上げる。
本当は缶酎ハイ片手に、といきたいところなんだけど三人ともまだ未成年だし。

まあ、この中で一番若い彼はお構い無しにスパスパ煙草を吸ってるけどね。

佳奈お手製のお好み焼きを三人で味わいながら、佳奈がひたすら真織に質問をしそれを彼が受け答えする状態が続いていく。
その話の中で分かったことは、彼は理学部に進学するってこと、そして彼女はいないこと。

⏰:09/10/14 15:39 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#29 [ぎぶそん]
「真織君、何かサークルには入るつもり?
サッカー部だったらマネージャーとして佳奈もいるからね」
佳奈が缶コーラを一口飲んでから言った。

「軽音学部に入るつもり」
お。そうくるかなと思ってました。
彼がお好み焼きの皿を綺麗にたいらげた。

「高校の時は周りに自分と趣味の合う奴がいなかったから、大学では同じ趣味の奴に出会って一緒に演りたい」
そして今度は、コーラを一気に飲み干した。

自分の趣味って、スピッツのことなのかな。
中高生にとってはバンプやアジカンといったバンドの方が馴染みがあるしね。

⏰:09/10/14 16:05 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


#30 [ぎぶそん]
「足立さんは何かサークル入ってるんすか?」
彼が脚を崩し、テーブルに置いてたセブンスターの箱から煙草を一本取り出した。
よそよそしく名字でなんか呼んじゃって。

「かなめはね、今写真部に入ってるけど、同じ写真部にいた彼と別れちゃったから辞めるかもって」
私が質問を返す前に、代わりに佳奈が答えた。
他人の不幸は密の味といわんばかりににやにやしてる。

「ありがちな退部理由だな」
彼がライターの火を煙草に押し当てる。

⏰:09/10/14 16:19 📱:N703iD 🆔:Sv8iNI2o


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